歯科用語集
2025年10月28日

うつ病

「うつ病」とは?歯科用語の解説と症例を紹介

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定義・語源

うつ病とは、気分が持続的に沈み、興味や喜びを感じにくくなる精神的な障害である。英語では「depression」と呼ばれ、ラテン語の「deprimere」(押し下げる)に由来する。うつ病は、単なる気分の落ち込みではなく、日常生活に支障をきたすほどの深刻な状態を指す。日本においては、厚生労働省が定義した「精神障害の診断と統計マニュアル(DSM)」に基づき、診断基準が設けられている。うつ病は、軽度から重度までの幅広い症状を持ち、個々の患者によって異なる経過をたどることが特徴である。


臨床における位置づけ・判断基準

臨床において、うつ病は精神科医や心理士によって診断されることが一般的である。診断基準には、持続的な抑うつ気分、興味喪失、体重変動、睡眠障害、疲労感、自己評価の低下などが含まれる。これらの症状が2週間以上続く場合、うつ病と診断される可能性が高い。歯科医療においても、患者の精神的健康状態を把握することは重要であり、特に治療に対する不安や恐怖感が強い患者に対しては、適切な対応が求められる。

関連用語・類義語との違い

うつ病に関連する用語には、軽度うつ、重度うつ、気分障害などがある。軽度うつは、うつ病の初期段階であり、症状が軽微であるが、放置すると重度うつに進行する可能性がある。重度うつは、日常生活に著しい影響を及ぼす状態であり、入院治療が必要となることもある。気分障害は、うつ病を含む広範な概念であり、躁うつ病(双極性障害)なども含まれる。これらの用語を理解することで、うつ病の特性や治療方針をより明確に把握することができる。

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うつ病と歯科医療の関係。歯科臨床での症例と診断のポイント

うつ病と歯科医療の関係。歯科臨床での症例と診断のポイント

うつ病の定義と歯科医療への影響うつ病は、気分障害の一種であり、持続的な抑うつ気分や興味・喜びの喪失を特徴とする。これにより、患者の日常生活や社会的活動に影響を及ぼすことがある。歯科医療においては、うつ病の患者は治療への意欲が低下し、口腔衛生の維持が困難になることが多い。これにより、歯周病やう蝕のリスクが高まるため、歯科医師は患者の精神的健康を考慮したアプローチが求められる。うつ病患者における歯科治療の注意点うつ病患者に対する歯科治療では、いくつかの注意点が存在する。まず、治療に対する不安や恐怖感が強い場合があるため、患者とのコミュニケーションを重視し、安心感を提供することが重要である。また、薬物療法を受けている患者の場合、薬の副作用が口腔内に影響を及ぼすことがあるため、事前に確認し、必要に応じて適切な処置を行うことが求められる。うつ病と口腔衛生の関連性うつ病患者は、口腔衛生の維持が難しいことが多い。これは、気分の低下により歯磨きや定期的な歯科受診を怠ることが原因である。さらに、うつ病に伴う食欲の変化や嗜好の変化が、食事内容に影響を与え、結果として口腔内の健康状態を悪化させることがある。歯科医師は、患者の口腔衛生状態を定期的に評価し、適切な指導を行うことが重要である。うつ病患者への歯科治療の具体的な手順うつ病患者への歯科治療は、以下の手順で進めることが推奨される。まず、患者の精神的状態を評価し、治療に対する意欲や不安を確認する。次に、必要に応じて、心理的サポートを提供する。治療中は、患者の反応を観察し、必要に応じて治療計画を調整することが重要である。また、治療後には、フォローアップを行い、患者の口腔衛生状態を確認することが望ましい。うつ病患者における歯科治療のメリットとデメリットうつ病患者に対する歯科治療には、いくつかのメリットとデメリットが存在する。メリットとしては、適切な治療を行うことで口腔内の健康を改善し、患者の生活の質を向上させることが挙げられる。一方、デメリットとしては、患者の精神的状態によって治療が困難になる場合があり、治療の進行が遅れることがある。歯科医師は、これらの点を考慮しながら治療を進める必要がある。うつ病患者への歯科診断のポイントうつ病患者に対する歯科診断では、患者の精神的健康状態を考慮することが重要である。具体的には、患者の病歴や現在の治療状況を確認し、口腔内の状態を詳細に評価する。さらに、患者の生活習慣や食事内容についてもヒアリングを行い、口腔衛生の維持に向けた具体的な指導を行うことが求められる。うつ病と歯科医療の今後の展望今後、うつ病と歯科医療の関連性についての研究が進むことで、より効果的な治療法やサポート方法が明らかになることが期待される。歯科医師は、患者の精神的健康を考慮した治療を行うことで、口腔内の健康を維持し、患者の生活の質を向上させる役割を果たすことが求められる。
1D編集部
2024年6月1日
【超解説】非歯原性歯痛のエビデンス【1万字】

【超解説】非歯原性歯痛のエビデンス【1万字】

患者の多くは、歯痛を主訴として歯科医院を訪れる。歯科医師であれば真っ先に歯髄炎や歯周炎を疑うところだが、近年では歯を疼痛の発生源としないにも関わらず歯痛を訴える疾患に脚光が集まってきた。※ 非歯原性歯痛の診断・治療のレクチャーは こちらから詳細を見る非歯原性歯痛とは?非歯原性歯痛とは、歯に原因がないにも関わらず、歯に痛みを感じる疾患である。非歯原性歯痛は、歯痛全体の2.1〜9%を占めると推定され、Nixdorfらのシステマティック・レビューによれば、一般の歯科医院での非歯原性歯痛の発現頻度は5.3%であると推定されている。さらには、年間で68万本の歯が根管に原因のない根管治療をされているという報告もある。歯に原因が見つからないにも関わらず患者が痛みを訴えるため、歯科医師により抜髄や抜歯など効果のない不可逆的な歯科治療が行われることもある。当然抜髄や抜歯を行っても歯痛は継続するため、原因不明の痛みとして困窮している患者や歯科医師が、いまも日本全国に存在しているのだ。口腔顔面痛は、歯学部の教育課程にあまり盛り込まれていなかった経緯があり、臨床上でも見過ごされがちだった領域である。本記事では、日本口腔顔面痛学会『非歯原性歯痛の診療ガイドライン(改訂版)』を下敷きとして、非歯原性歯痛のエビデンスを徹底解説する。非歯原性歯痛の原疾患非歯原性歯痛を誘導しやすい病態としては、「筋・筋膜痛による歯痛」「神経障害性疼痛による歯痛」「神経血管性頭痛による歯痛」「上顎洞疾患による歯痛」「心臓疾患による歯痛」「精神疾患または心理社会的要因による歯痛」「特発性歯痛」などが挙げられる。筋・筋膜痛による歯痛筋・筋膜痛の関連痛として、歯痛が生じることがある。筋・筋膜痛による歯痛は非拍動性の疼くような痛みを特徴とし、歯原性歯痛と比べると痛みの持続時間が長いという特徴がある。筋・筋膜痛による歯痛は筋の酷使による疲労によって生じ、心理的ストレスによって悪化するとされる。筋・筋膜痛による歯痛の最大の特徴は「トリガーポイント」の存在である。トリガーポイントは骨格筋の疲労により形成される易刺激性の圧痛点であり、このトリガーポイントへの刺激によって口腔顔面部に関連痛を生じさせる。具体的には、咬筋や側頭筋、胸鎖乳突筋の触診によるトリガーポイントの5秒間の圧迫により歯痛が再現され、当該の筋への麻酔(トリガーポイントインジェクション)によって疼痛が軽減することが特徴である。筋・筋膜痛による歯痛の原因となる筋は、咬筋が約半数の47%、側頭筋が30%、胸鎖乳突筋が17%の順に多いと報告されている。神経障害性疼痛による歯痛神経生涯生疼痛による歯痛は、「発作性神経障害性疼痛」と「持続性神経障害性疼痛」とに分類される。発作性神経障害性疼痛は「三叉神経痛」に代表されるように、発作的に生じる電撃様疼痛が特徴である。誘発部位への些細な刺激で激烈な痛みが発作的に数秒間生じる。現に、三叉神経痛の患者の多くは歯痛を主訴として最初に歯科医院に来院している。一方の持続性神経障害性疼痛は、灼熱性の痛みが間断なく持続する症状を特徴とする。持続性神経障害性疼痛の発症前に外傷や外科処置などの既往歴があり、多くの場合に知覚鈍麻やアロディニアなどの神経障害性疼痛の特徴を伴っている。神経血管性頭痛による歯痛神経血管性頭痛の患者の多くは、歯痛を主訴として歯科医院を受診している。神経血管性頭痛とは、脳血管の神経原性炎症によって生じる一次性頭痛のことであり、これも歯痛を生じることが多い。片頭痛や三叉神経・自律神経性頭痛が神経血管性頭痛である。片頭痛では、臨床症状として上顎臼歯部の拍動性自発痛が一般的であるが、下顎犬歯に生じたケースもある。また群発頭痛では、上顎大臼歯部の持続性の激痛が15分〜180分間生じるが、突然消失するという臨床症状を持つ。上顎洞疾患による歯痛上顎洞疾患による歯痛は、文字通り上顎洞の疾患が原因で生じる歯痛のことである。急性上顎洞炎による歯痛が最も頻度が高いとされるが、上顎洞がんや真菌感染などの疾患との鑑別診断が必要である。上顎洞炎のうち、18%に歯痛が生じる。歯痛が生じる部位は、上顎洞が解剖学的に近接している上顎の小臼歯〜大臼歯に多い。また、上顎洞がん患者の36%は、病初期に上顎臼歯部の歯痛を訴えるという報告もある。冷水痛、咀嚼時痛が認められ、かみしめにより違和感を生じるほか、鼻症状や発熱などの感冒症状も認める。心臓疾患による歯痛狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患に代表される、心疾患の関連痛として歯痛が生じることもある。虚血性心疾患の発作時に口腔顔面部に痛みが生じる割合は38%であると明らかにした研究があるが、38%のうちの5.9%は、口腔顔面部の痛みが唯一の症状であった。この場合の関連痛の特徴は、「圧迫痛」や「灼熱痛」である。虚血性心疾患の患者が、歯痛を唯一の主訴として歯科医院に来院する可能性があること、それを見逃してしまうと患者の命に関わる結末になりかねないことを、歯科医師は知っておく必要があるかもしれない。精神疾患または心理社会的要因による歯痛シェイクスピアは、妊娠した妻を持つ夫が歯痛を訴えることがあると書き残した。妊婦の夫は、妻の出産が不安で非歯原性歯痛を訴えることがある。また、うつ病や双極性障害、身体症状症、妄想性障害身体型、パーソナリティ障害によって非歯原性歯痛が生じることも報告されている。心身医学的な歯痛では、病理所見が疼痛部位に存在しない。こうした精神疾患または心理社会的要因による歯痛は、患者の訴える歯痛の部位が解剖学的な整合性を欠くことから推測できることが多い。特発性歯痛(非定型性歯痛を含む)特発性歯痛は、1本以上の歯または抜歯した後の部位に生じる持続性疼痛で、通常の歯科的原因が全く存在しないもの、と定義されている。その病態は現在でも解明されていない部分も多い。非定型性歯痛の病態も未解明の部分が多い。神経障害性疼痛であるとする説や心理的な要因が原因で生じるとする説、中枢性感作によるとする説、脳内の疼痛処理過程の変調で生じるとする説など諸説ある。非定型性歯痛の70〜83%が歯科治療をきっかけに発症するとされ、これらの患者は医療への不信感や怒り、不安などが見られることがある。精神疾患の既往があるケースが多いことを考えても、非定型性歯痛の患者は精神状態や心理社会的な状態を総合的に考える必要がある。非歯原性歯痛はなぜ起こるのか?前章では、非歯原性歯痛のそれぞれの原疾患について解説した。それでは、非歯原性歯痛はどのような原因で生じるのだろうか。非歯原性歯痛の発生機序は、「関連痛」「神経障害による痛み」「器質的異常が認められない慢性疼痛」の3つに分類される。関連痛前章で解説した筋・筋膜痛による歯痛、神経血管性頭痛による歯痛、心臓疾患による歯痛、上顎洞疾患による歯痛が「関連痛」による非歯原性歯痛に含まれる。例えば筋・筋膜痛による歯痛では、疲労が蓄積した筋に形成されたトリガーポイントからの関連痛により生じる。トリガーポイントにトリガーポイントインジェクションを行ったところ歯痛が消失するということも根拠となっている。神経障害による痛み神経障害による痛みは、末梢神経性疼痛と中枢神経性疼痛とに分類され、神経障害性疼痛による歯痛の発生機序とされる。末梢神経性疼痛は、末梢性感作、神経腫、エファプス伝達、交感神経の関与、表現形の変化により生じる。また中枢神経性疼痛は、発芽、ワインドアップ、長期増強、中枢性感作、内因性痛覚抑制機構の失調により生じる。器質的異常が認められない慢性疼痛精神疾患や心理社会的要因によって歯痛が生じているケースなどが、この「器質的異常が認められない慢性疼痛」に含まれる。これらはこれまで原因不明と考えられてきたが、脳科学・神経科学の発展とともに、中枢における神経伝達物質などの生化学的変化や情報処理過程の変調などによるものと解明されつつある。非歯原性歯痛の治療非歯原性歯痛に有効な薬物療法非歯原性歯痛に対する治療法として、薬物療法が挙げられる。原疾患ごとに適用されるべき薬物は異なるため、歯科医院としては適切な診療科を患者に選択させることも重要である。筋・筋膜痛による歯痛に対しては、鑑別診断目的を含めてトリガーポイントインジェクションが有効である。他にもNSAIDs(イブプロフェン)、低用量のアミトリプチリン、アセトアミノフェン、トラマドール塩酸塩/アセトアミノフェン配合錠、混合ビタミンB群、ジクロフェナクナトリウム、塩酸チザニジン、リン酸コデイン、ベンゾジアゼピン、漢方などが有効であったとする報告があるが、いずれもエビデンスレベルが十分なものは少ない。その他の原疾患に対する薬物療法に関しても、原疾患ごとに有効な薬物が異なり、その有効性をそれぞれで評価する必要がある。非歯原性歯痛に理学療法は有効?非歯原性歯痛に対する治療として、理学療法は有効だろうか。結論から言えば、非歯原性歯痛に対する理学療法の科学的なエビデンスは十分ではない。筋・筋膜痛による歯痛にはストレッチやマッサージ、ホットウォーターバスなどの理学療法の有効性が報告されているが、いずれの研究もエビデンスレベルは高くない。理学療法は可逆的で侵襲が少ない治療法であり、多くの疾患に対して経験的に有用であると評価されているため、今後の研究が待たれるところである。非歯原性歯痛に抜髄・抜歯は有効か?非歯原性歯痛に対して抜髄や抜歯といった不可逆的的な処置は無効である。なぜなら、歯に原因が無いからである。非歯原性歯痛に対して抜髄や抜歯を行っても疼痛が改善されなかったケースや、むしろ増悪したケースが多数報告されている。同様に、咬合調整や義歯調整などの治療も効果は無いため、非歯原性歯痛では不必要な可能性のある歯科治療を行うべきではない。非歯原性歯痛にスプリント療法は有効か?非歯原性歯痛のうち、筋・筋膜痛による歯痛に関しては、スプリントによる一時的な疼痛軽減が期待できる。しかし、その他の原疾患に対してスプリント療法を行うことには理論的な根拠は無い。非歯原性歯痛の実際の臨床では原因が特定できていない場合が多く、スプリント療法などの可逆的な治療法を「とりあえず」で選択してしまいがちである。しかしいずれの病態の非歯原性歯痛に対しても、スプリント療法のエビデンスは十分とは言えない。非歯原性歯痛の予防非歯原性歯痛の予防法は、現在のところ研究されていないと言ってもよいほどに文献が少ない。例えば筋・筋膜痛による歯痛には生活習慣の改善が治療として行われるため、予防法としても有効なようだ。今後非歯原性歯痛の認知拡大に伴って予防法に関する研究も進んでいくだろう。今後さらなるエビデンスが求められる日本口腔顔面痛学会『非歯原性歯痛の診療ガイドライン』は、2011年に初めて発行された。2019年に大幅な改定が行われ、一般臨床家にも徐々に周知されてきている。冒頭で述べたように、非歯原性歯痛は出現度の低い疾患ではない。非歯原性歯痛が原因で歯痛を訴える患者に対して不可逆的な侵襲が行われないためにも、今後さらなるエビデンスの充実や、歯科医療者に対する情報の提供は必要不可欠である。非歯原性歯痛の診断・治療のプラクティス強い痛みを訴える患者に対し、原因が特定できないまま抜髄や抜歯をしてしまったこと、ないでしょうか。抜髄・抜歯に至らなかったとしても、投薬のみで経過観察していませんか?その歯、非歯原性歯痛だったかもしれません。単に非歯原性歯痛といっても、その原因やメカニズムは多様です。筋・筋膜痛、三叉神経痛、群発頭痛。どれも患者は「歯の痛み」を訴えて受診します。中には歯髄炎の症状と酷似しても、X線画像では異常が認められず、結果として中枢性の疼痛ということもあります。これら”非歯原性”の歯痛に対して、正しく診断し適切な治療ができなければ、なかなか治らない病に患者は不安を感じてしまうでしょう。オーバートリートメントを防ぐためにも、正しい知識を身につけ非歯原性歯痛に対応できるスキルを身につけましょう。セミナー詳細を見てみる参考文献一般社団法人 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1D編集部
2021年5月12日
「咬合に違和感」患者は "気にしすぎ" ではない可能性 研究結果

「咬合に違和感」患者は "気にしすぎ" ではない可能性 研究結果

福岡歯科大学の研究チームは、「咬合に違和感がある」が主症状のPhantom bite syndrome(PBS)患者において、脳活動パターンの微妙な乱れがあることを明らかにした。研究成果は、Neuropsychiatric Disease and Treatmentに掲載されている。オンラインセミナー「脳科学で解明する、咬合異常感」2021年7月28日水曜日、Phantom Bite Syndrome(咬合異常感症候群)を徹底的に深掘りするオンラインセミナーが開催されます。PBSが気になる方は是非ご参加ください!セミナーに参加するPhantom bite syndromeとは?Phantom bite syndrome(PBS)は、1976年にMarbachにより提唱された概念である。歯科処置を繰り返しても改善しない咬合の違和感と、それに関連した全身の症状を特徴とする。Marbachによって、Phantom bite syndromeの臨床的特徴は以下のように解説されている。歯科治療後に咬合修正を求め続ける幻想的かつ固有な理想咬合像に強く執着断片的な歯科的知識を持っている種々雑多な過去の治療の残骸(丁寧に詰め込まれた歯列模型、金冠やプラスチックの装置、エックス線写真、汚いレジンの暫間義歯、過去の顔写真など)を持参するしばしば、くどくどとした文章で自ら歯の問題を詳細に述べるPhantom bite syndromeの患者は、補綴物や修復物、咬合調整など通常の歯科治療を繰り返すものの解決することはなく、いわゆる「名医」を求めてdental shoppingに陥ってしまうことが多いとされる。下図はPhantom bite syndrome患者の口腔内写真であるが、咬合の調整やレジン修復を繰り返した痕跡が多数見られる。近年、このような患者で咬合感覚に関する中枢神経系の機能異常が生じていることが示唆されてきたが、これまで体型的な研究はなされておらず、脳のどの部分で不調が生じているかについては解明されていなかった。脳の機能異常が原因の可能性研究グループは、放射性同位元素の99mTc-ECDを用いた脳血流single photon emission computed tomography(単一光子放射型コンピュータ断層撮影、SPECT)を行い、Phantom bite syndrome患者に特有な脳活動パターンを調べた。まずは健康な被験者とPhantom bite syndrome患者の脳の様々な部位の血流の状態をSPECTで検査したところ、両者の直接比較では明らかな脳活動パターンの差は認められなかった。しかし、咬合に違和感のある歯の部位によって検討すると、左側に咬合の違和感がある患者では、うつ病を患っていた人が多いことがわかった。さらに、違和感のある歯の位置を右側/左側/両側に分類し、脳活動の状態に差があるかを検討したところ、左右どちらかに歯の違和感が残る患者では、違和感と同側の頭頂葉の活動が反対側よりも多くなっていることが明らかになった。一方、視床では、歯の違和感と反対側の脳活動が、同側よりも増加していることがわかった。つまり、Phantom bite syndrome患者が感じる咬合の違和感には、統合失調症などの精神疾患や口腔セネストパチーのそれとは異なる、微妙な脳の機能異常が潜んでいる可能性があることが考えられる。「利益なき歯科治療」解決の糸口に今回の研究から、Phantom bite syndrome患者においては、歯の部位に応じて脳活動の微妙なアンバランスが生じていることが示唆された。「気にしすぎな患者」「神経質な患者」と思われがちだったPhantom bite syndrome患者は、脳におけるごく僅かな機能異常によって咬合に違和感を感じている可能性が示されたのである。歯科医院を訪れる患者は、「歯を削ったり、補綴物を作り直してくれないと、絶対に症状が改善しない」と思い込んでいる節もある。しかし、咬合の違和感の原因は実は「歯そのもの」よりも「脳でそう感じるエラーが生じている」ためであった可能性がある。本研究を通じて研究グループは、「咬合の違和感の原因を、脳のシステムエラーまで射程を広げて再検討することで、余計に歯を削ったり、義歯を作り直したりといった益の少ない歯科治療の繰り返しやDental shoppingから、患者を救済できる可能性が高まることが期待される」と述べている。オンラインセミナー「脳科学で解明する、咬合異常感」2021年7月28日水曜日、Phantom Bite Syndrome(咬合異常感症候群)を徹底的に深掘りするオンラインセミナーが開催されます。東京医科歯科大学歯科心身医学の豊福明教授に、PBSの病態から患者対応、治療法、最新の知見をレクチャーいただきます。第一人者にライブで質問できるチャンスです!この記事を読んで興味が出た方は是非ご参加ください!セミナーに参加する参考文献1. 福岡歯科大学プレスリリース2. Marbach JJ: Phantom bite syndrome. Am J Psychiatry, 135(4): 476-479, 1978. PubMed PMID: 637145.
1D編集部
2021年1月17日
「食の多様性」は口腔の健康のセンターピンである

「食の多様性」は口腔の健康のセンターピンである

私たちは食事をするとき、さまざまな食材を組み合わせて多くの栄養素を摂取している。そのため、栄養摂取量を評価する際は、多様な食品群・栄養素から構成される食事の質を評価することも重要である。食事の質を評価する指標として、「多様な食品を摂取すること(食事の多様性)」がある。これをスコア化するための方法はいくつかあるが、この記事ではそれらを用いた調査と、そこからわかったことを紹介しよう。「食事の多様性」を見る方法3つ食事の多様性をスコア化する、代表的な3つの方法は以下である。①DVS:食品摂取の多様性得点以下それぞれに点数を付けて合計点(10点満点)で評価を行う。ほぼ毎日食べる・・・1点、それより低い頻度で食べる・食べない・・・0点とする。【10食品群】肉類魚介類卵類牛乳大豆製品緑黄色野菜類海藻類果物いも類油脂類②FDSK-11:食多様性スコア以下それぞれに点数を付けて合計点(11点満点)で評価を行う。1週間に一度以上食べるもの・・・1点、それより低い頻度で食べる・食べない・・・0点とする。【11食品群】穀類いも類野菜類肉類乳製品魚介類卵豆・豆製品海藻類果実類種実類「多様な食品を摂取できていないこと」のスクリーニング色が強く、また海外での調査を見据えて「穀類」を評価項目に加えているのが特徴である。③HEI:食事の質の指標以下の項目に分けて点数を付けて合計点(100点満点)で評価を行う。野菜類果実類豆類穀類乳製品肉類油脂類など。HEIはアメリカで用いられている食事の質の指標である。調査①「健康習慣」と食事の多様性【対象者】地域在住の高齢者【調査内容・条件】健康習慣が歯の喪失・歯周病リスクへ与える影響を評価6年間の前向きコホート研究のもと実施【調査方法】4つの健康習慣たばこを吸わない定期的に運動する適正な体重を保つ多様な食品を摂取するこれらのうち、実践している数がいくつあるかを評価。0〜1個2個3個4個この数と歯の喪失・歯周病リスクとの関連を調査した。なお健康な食事の評価にはDVSを用いた。【調査結果】実践している健康習慣の数と、歯の喪失・歯周病リスクは反比例の関係にあることがわかった。具体的には実践している健康習慣の数が0〜1個の群を1とすると、4つすべて実践している群では歯の喪失リスクは0.41、歯周病のリスクは0.34にも低下することがわかった。調査②「歯数」と食事の多様性【対象者】地域在住の高齢者252名(平均年齢81.2歳、男性84名・女性168名)【調査内容・条件】FDSK-11を使用し、食事の多様性と現在歯数の関連を調査無歯顎者は除外【調査方法】対象者を現在歯数20本以上10〜19本1〜9本の3つに分け、男女別にFDSK-11スコアFDSK-11と咬合支持・義歯適合の関連を比較。【調査結果】女性において、現在歯数が少ないほどFDSK-11スコアが有意に低い義歯の適合に問題を感じている群は、咬合支持が維持されている群よりFDSK-11スコアが有意に低い「義歯の適合」と食事の多様性【対象者】50歳以上4820名の米国国民【調査方法】対象者を現在歯数18本以上18本未満で義歯の適合に問題がないと感じている群18本未満で義歯の適合に問題があると感じている群の3つに分けHEIスコアを比較。【調査結果】義歯の適合に問題があると感じている群はHEIスコアが有意に低い現在歯数18本以上の群・義歯の適合に問題がないと感じている群の間には有意差がなかった3つの調査からわかったこと3つの調査からわかったことは以下である。多様な食品摂取を確保することは、身体機能や認知機能を維持するだけでなく、口腔疾患のリスクをも抑制すること定期的に歯のメンテナンスを行い、義歯の適合・機能を維持していれば食事の質が保たれること食事の多様性は、健康習慣の維持を並んで口腔疾患を予防するための重要な因子であることまた別の調査では、口腔の痛みや咀嚼困難、嚥下困難を感じている者はHEIスコアが低いということもわかっている。口腔内状態が悪いと栄養摂取に影響を与えるという研究はよく目にする。ただこれらの調査により、口腔の健康はそれだけではなく食事の多様性・質にも影響を与えていることが示された。歯科セミナーなら「1D(ワンディー)」で!日本最大級の歯科医療メディア「1D」では、診療に役立つオンラインセミナーを多数開催中。もっと知りたい臨床トピックから超ニッチな学術トピックまで、参加したいセミナーが見つかります。下記ボタンから、開催中のセミナーを見てみましょう!開催セミナーを見てみる参考文献深井穫博 編「健康長寿のための口腔保健と栄養をむすぶエビデンスブック」医歯薬出版, 2019愛し野内科クリニック, 愛し野塾第189回うつ病と食事療法, URL, 参照2019-12-01黒谷佳代, 食事バランスガイドの有用性, URL, 参照2019-12-01
ミホ
2020年2月16日
働く歯科医療者の「メンタルヘルス」

働く歯科医療者の「メンタルヘルス」

うつ病は16人に1人が生涯に経験していると推定されており、誰にとっても身近な病気である。うつ病は気分の浮き沈みが激しく、仕事に支障をきたすこともある。「迷惑をかけている」と自分自身を責めてしまう本人はもちろん、周りのスタッフも心配になるので、悩んでいる歯科医院も多いのではないだろうか。うつ病とは?うつ病とは、感情と意欲の障害を周期的に繰り返す精神病のことである。うつ病には、ハイテンションで活動的な躁状態と憂うつで無気力なうつ状態を繰り返す”双極性”、そのどちらか一方だけをもつ”単極性”がある。歯科医院はうつ病を抱えるスタッフが多い?平成30年の就業歯科衛生士数を年齢階級別にみると「25~29歳」と「50歳以上」の割合が高くなっている。歯科衛生士は結婚・出産前の年齢と仕事復帰した年齢の人がほとんどのようだ。また、うつ病の初発年齢は20代後半がもっとも多く、次のピークは40歳代後半~50歳代前半にみられる。男女比では男性より女性の方が多い。つまり、うつ病の悩みを抱える歯科衛生士の確率も高くなるのではないだろうか。がんばり屋ほど、うつ病になりやすい躁うつ病者の体型には肥満体型が多く、性格は陽気で社交的な性格である。他に、几帳面で熱中しやすく、自分の意見よりも他人を尊重する性格の人がなりやすいとされている。こういった性格をみると、ムードメーカーで思いやりのある素晴らしい歯科衛生士だと感じる。しかし、人一倍がんばり屋な人ほど、うつ病にもなりやすいのである。うつ病の症状とは?うつ病の主症状は悲哀感、絶望感が強く、何でも悲観的に捉える特徴がある。不安感、焦燥感、苦悶感も強くなることがある。それらは何らかのきっかけから始まることもあるが、環境や心理的状況に影響されにくく、その場を離れても抑うつ気分は変わらず継続する。もっとも、うつ病では日内変動という現象がみられ、朝の起床時にはもっとも気分が悪く、夕方から夜にかけていくらかよくなるという気分の変動がある。意欲の障害もみられ、何もやる気がおきない、何をするのも億劫だという状態になることが多い。重症度はあれど、こういった悩みを抱えるスタッフは多い。うつ病で悩むスタッフとの関わり方まずは専門の医師にみてもらうよう促すことが先決である。次に周りの人が気をつけるべきことは、スタッフを叱咤激励しないということ。うつ状態は「やる気がないのではなく、やる気をエネルギーに変換する機能が壊れている」のである。そんななか「頑張れ」といってもパンクしてしまうのだ。まずは”やる気をエネルギーに変換する機能”の部分を正常に機能するようサポートしてあげること。うつ病は周りのサポートが大切である。本人はもちろん周りのスタッフにも病気であることを受け止めてもらい、十分に休息をとることを勧めて支持的に接することが必要である。回復してきている時期であれば、家族や院内のメンバーとも連携して環境調整を行い、今後の過ごし方について話し合っていくことが求められる。歯科セミナーなら「1D(ワンディー)」で!日本最大級の歯科医療メディア「1D」では、診療に役立つオンラインセミナーを多数開催中。もっと知りたい臨床トピックから超ニッチな学術トピックまで、参加したいセミナーが見つかります。下記ボタンから、開催中のセミナーを見てみましょう!開催セミナーを見てみる参考文献『就業歯科衛生士数について』公益社団法人日本歯科衛生士会, 2019年1月6日閲覧. 『はじめて学ぶ人の臨床心理学』杉原一昭, 中央法規出版, 2003.『平成18年度厚生労働科学研究費補助金 こころの健康についての疫学調査に関する研究』川上憲人ほか, 2007.
本吉 ひとみ
2020年1月21日

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