歯科ニュース

【槻木恵一寄稿】唾液検査に「ちょっと待った!」

近年、PCR検査をはじめ様々な検査の検体として唾液が用いられるようになった。中でも国民皆歯科健診を控え、歯周病のスクリーニングとして唾液検査が検討されていることは歯科界においても注目が高いだろう。唾液検査は簡便で患者の負担も少なく非常に有益であるが、そのイメージだけが先行し乱雑に応用されることの危険性について専門家たちが警鐘を鳴らしている。今回は特定非営利活動法人日本唾液ケア研究会理事長であり、神奈川歯科大学副学長の槻木恵一先生に特別に寄稿いただいた。唾液検査学は未成熟である唾液を用いた検体検査は、新型コロナウイルスに対するPCR検査の普及で、短期間に大きく国民の認知を得ることができた。これは急激な変化であり、そのプラスの面とマイナスの面を十分考慮しないといけないと考えている。特にプラスの側面としては、唾液検査の認知度の飛躍的な向上であるが、一方でせっかく認知された唾液検査が、マイナスの側面により、後退することがあってはならないと危惧をしている。マイナスの側面とは何だろうか。最大の問題は、唾液検査学という学問が未成熟で確立されていないことである。検査というカテゴリーに属する事項であれば、ヒトを対象としていることから、そこには厳粛な対応が必要であり、裏打ちされた学問に基づかなければ、単なる民間療法の域をでないことになる。そして、国民から唾液検査そのものが怪しいものに映るかもしれない。実際、インターネットで購入できる唾液検査の商品にはクオリティの低いものが登場している。唾液という存在を扱い体系的な教育を行っているのは、歯学部や歯科衛生士の養成課程であり、医師、薬剤師などでは唾液に関する教育はほとんど行われていない。看護師と管理栄養士の国家試験では口腔ケアに関連し唾液が出題されることがあるようなので、何らかの科目で触れているのであろう。これらの教育状況を考慮すると唾液の主たる専門家は、歯科医師と歯科衛生士であることは疑いない。すなわち、唾液検査学をリードするべき使命が歯科医師や歯科衛生士にはあると確信している。本解説では、唾液検査の歴史、世界的動向、唾液検査の問題点などを踏まえて、最後に唾液検査に関する提言を行いたい。歯科医療における唾液検査現在の唾液検査の現状を鑑みると、唾液検査といっても大きく2つに分類できる。歯科系唾液検査とそれ以外である。それ以外に分類される唾液検査が扱う領域は非常に多岐である。ここでは、歯科系の唾液検査以外を臨床唾液検査と称したい。歯科医療における唾液検査の利用目的は、う蝕のリスク診断、歯周病のリスク診断や病勢診断などになる。しかし、これらは本格的な保険導入がされていないことから、主に自費での扱いになり、意外に歯科医療においては唾液検査への関心は薄いのではないだろうか。そのことが、口腔という乾燥を大敵とする臓器において、極めて重要な生理的働きを行う唾液の機能性に注目をしない歯科医療が続いているような気がする。例えば、唾液量を測定するだけでも、口腔の疾患に対するリスク要因を理解でき、う蝕や歯周病の診療にも大いに役立つ情報の筈である。う蝕や歯周病の病変の特徴は、予防が効果的な病変であることである。特にう蝕に対して生体は、免疫機構や再生現象が働かず、すなわち自然治癒がないので、そもそも病気にならないことが最も重要である。その点では、医科で扱う疾患概念とは大きく異なる病変と言える。医科は、やはり治療主体の医療であり、病気を治すことができなければならないが、歯科は、病気にさせない取り組みこそ、病変の特徴から考えて重要な医療としての役割ではないだろうか。そのための検査として唾液の有用性には疑いがない。昨今取りざたされている国民皆歯科健診においては、そのスクリーニング検査として唾液検査が導入される可能性が指摘されている。国民皆歯科健診は、その趣旨に沿い実行されれば、8020運動と同様に成果を上げ、そして国民の健康レベルを底上げできると考えられる。その理由は簡単で、歯科医療が扱う病変はもともと予防が効果的に実行できるからである。そして、唾液検査からはじまる国民皆歯科健診となった場合、唾液検査の歴史上、歯科医療における初めての唾液分野でのブレイクスルーとなることが予想できる。だからこそ成功させたい。医科では3度のブームが到来歯科系の唾液検査について医中誌で調査すると最も古い文献は、1982年の「歯科臨床における口腔環境評価へのアプローチ唾液検査用試験紙(pH,緩衝能,潜血およびグルコースクリアランス)の実用化」という原著論文である。口腔環境評価というタームは、非常に重要で、口腔環境とは唾液そのものである。口腔という臓器は進化の過程で考えると、海中から陸上に上がるにあたり、大きな変化が起こっている。それは、海中では口が乾燥することは無く、水流が常に生じているので汚れることも無い。そのため魚にはう蝕が無い。しかし、陸上に生活の場を変えたことで、口が乾燥する状況が生じ、唾液による100ミクロンの薄い流体で覆われるシステムが備わった。また、口から食べることにより、嚥下や咀嚼に唾液が必要となり大唾液腺が発達してくるし、食べるものの違いで唾液の組成が進化していく。この様に、唾液は口腔の機能維持や感染予防としての機能を発達させてきており、進化の側面から考えると唾液が如何に重要かわかる。しかし、口腔の評価としての唾液を用いた歯科系唾液検査が、話題を呼ぶことは20年来一度もない。一方で、臨床唾液検査では3回の社会を賑わすブームが存在している(図)。唾液ブームの1回目は、約22年前の1999年頃に唾液を用いたストレス測定が大きな話題となった。唾液中のクロモグラニンが精神ストレスと関連することを見出し、トヨタ製の車の乗り心地の評価に使われた。さらに、2007年頃、アミラーゼでもストレスの測定ができることを示し、簡易的に測定できるアミラーゼモニターが開発され、唾液検査において社会実装された初めての機器となった。現在でも販売されている。その他、IgA、コルチゾールなどストレスを測定する唾液マーカーが開発されている。2回目のブームは、2010年頃に唾液からがん診断できることが発見され、マスコミから大きな注目を集めた(後程解説あり)。3回目のブームは、唾液を用いた新型コロナウイルスの検出である。唾液を用いた感染症の診断で保険収載されており、完全な社会実装を短期間で獲得した。これら3つのブームの立役者は、システムエンジニアと医師であり歯科医師ではない。現在でも、唾液の特徴である非侵襲性が注目され唾液検査の開発競争が様々な企業で展開されている。臨床唾液検査の開発と世界的動向唾液は、血液から産生されることから血液中の成分が移行してくる。すなわち血液と唾液は相関性が高いはずである。しかし、相関する成分もある一方、相関性のないことも多い。相関性がある場合も、一般的に血液より唾液の方が100倍から1000倍濃度が低い。すなわち薄まっている。これまで、臨床唾液検査で、非常に成功しているのは、主に感染症の診断である。HIVの唾液による抗体検査は正診率が92%といわれている。この場合の抗体は、感染後に血中に存在する抗HIV抗体であり、血中から移行してきた抗体を検出している。同様の理論で、新型コロナウイルスに対するIgG抗体検査も存在するが、抗体の形成には時間がかかることから、今現在の感染を診断するためにはPCRが用いられてきた。今後も感染症の診断に唾液検査の開発が進むと思われる。また、癌のリスク検査については、メタボローム解析を用いたAIによるリスク判定が社会実装されている。膵臓癌、胃癌、大腸癌などの癌のリスク診断に関しては、論文も非常に多く信頼性が高く、世界をリードする研究として発展している。癌に関する唾液検査は、アメリカUCLAのDevid Wong教授の研究がリードしていたが、現在では日本が最先端を走っている。唾液による診断への応用は、分析技術の進歩により、唾液プロテオーム、トランスクリプトーム、マイクロRNA、メタボローム、およびマイクロバイオームを調査する「唾液オミクス」と呼ばれる新しい時代が開かれており、臨床唾液検査は極めて有望な分野であることは間違いない。唾液検査「最大の難点」唾液検査と血液検査を比較すると、唾液検査の利点は簡便で非侵襲性に採取でき、誰でもできるという事が挙げられる。一方で、欠点もあるのだが、唾液検査の利点ばかりに注目されてきたところに問題があるのではないかと考えている。結論から示すと唾液検査は、血液検査と比較して、基準値の設定が難しい点が最大の難点である。特に単一の出口から唾液が出ればよいが、実際は3大唾液腺からの分泌により混合されてしまう。また唾液が口腔内に放出された瞬間から、空気に触れpHの変動範囲は、血液よりかなり大きい。また、口腔細菌により代謝されることで成分の変動や不純物が大量に含まれてしまう。この様に唾液は、血液のような濃度調整が厳密に行われた液体ではないのである。さらに、採取法によっても成分の変動が生じることが報告されている。この難題に対して、唾液中の成分の濃度をnormalizeする内部標準の開発や、適切な採取条件についてのガイドラインの作成など、唾液を扱う研究者が集まり検討が求められている。唾液学・唾液検査学の学問的確立に向けて唾液の取り扱いの標準化は、今後の唾液検査の開発には非常に重要な要素である。新型コロナウイルスPCR検査で唾液検査が急激に一般化したため、唾液の検査における基盤作りが間に合わない状況にあるため喫緊の課題と認識している。今後、歯科医師・歯科衛生士をはじめとした様々な医療職種や分野を超えて、この問題に加速度をつけて解決に向かう必要がある。特定非営利活動法人日本唾液ケア研究会(理事長:槻木恵一、会員123名)は、唾液を学際的に取り扱い、未成熟の唾液学、唾液検査学の確立を目指し、さらに国民の健康増進を推進する組織として2021年に設立した。唾液におけるプロフェッショナルな組織として、社会に貢献するために活動をはじめたばかりであるが、特に、唾液学・唾液検査学の学問的確立に是非とも貢献したい。最後に、「唾液・唾液検査学の確立」の一環として、「唾液の取り扱い」に関する標準化に向けた取り組みが必要である。多くの皆様とこの問題を共有したく考えている。そこで特定非営利活動法人日本唾液ケア研究会のホームページに意見を求めるサイトを作成した。多くの皆様からご意見をお寄せいただきたい。>>NPO法人日本唾液ケア研究会HPはこちらから第2回日本唾液ケア研究会学術集会が開催2023年11月26日(日)、第2回日本唾液ケア研究会学術集会が神奈川歯科大学横須賀キャンパスで開催される。日本歯科大学菊谷武教授による特別講演や、国民皆歯科健診を取り上げ厚労省から政策的な現状のヒアリング、神奈川歯科大学口腔衛生学分野山本龍生教授を交えた唾液検査に関するシンポジウムが行われる予定だ。オンデマンドでも配信されるため(配信は12月を予定)、ご興味のある方は是非登録してほしい。>>学術集会の詳細はこちらから
槻木 恵一
2023年11月25日

【DLCあり】すぐに使える!物販POP集

今回は歯科医院のお悩みをズバっと解決していくぞ! 本日のお悩みはこちら!!「物販POPに興味はあるけど、いまいち作り方がわからないんだよね……」「多忙だから物販POP作ってる時間がなくて……」「そもそも、物販POPデザインの作り方がわからない……」あれば便利だけど、なかなか作れないPOP……そんな歯科医院に向けて、すぐに使える物販POPを作ってみた! デザインコンセプトどこに貼っても目立ちやすい!どんなコンセプトの歯科医院でも使いやすいデザイン!カッチリしすぎないデザインで、手書きの文字と相性抜群! ちょうどいいスペースで、短めの文章から長めの文章まで対応!次の項目からデザインを紹介していこう。ちなみに、今回のデザインは記事の最後でダウンロードできるので、お見逃しなく!歯ブラシ左:実際のデザイン右:サンプル商品名や値段をPOPに盛り込みたい派も、そうでない派も、両方使えるようなデザインに整えてみた! 細字のペンなら文字が結構入るので、たくさん書きたい派も安心!フロス左:実際のデザイン右:サンプル太字のペンで文字を入れるとこんな感じ! とにかく文字を大きく書きたい派にも使い勝手バツグンになるよう、心掛けたぞ! デンタルペースト左:実際のデザイン右:サンプル中字で書くとこんな感じになる! どんな備品のペンでも合うようになっているから、気軽に使いやすいのではないだろうか。ふきだしシンプルな「オススメ」POPもご用意! 左に貼る用・右に貼る用と2種類あるから、どんな環境でも使えるはずだ。上で紹介した歯ブラシ等のPOPと合わせて使ってみてもイイ感じになるぞ!フリーPOPもあるよ!「歯ブラシ・歯磨き粉・フロス以外の商品にも使いたいんだけど……」というそこの貴方! このPOP集ではフリーPOPもご用意しているぞ! アイデア次第でどんな使い方もできる、無限の可能性を秘めたPOP……それがフリーPOPである!POPのダウンロードはこちら!お待ちかね、ダウンロードコーナー! A4サイズのPDFでご用意したから、専用のソフト等は特に必要なし! 本当にすぐに使えるので、ぜひお試しあれ。POPをダウンロードする(カラー印刷推奨だが、意外とモノクロでも使える! 経費削減派の歯科医院はモノクロ印刷で使ってみてもいいだろう)
otomo _
2023年11月24日

【検証】タブレットだけで歯科医院は成り立つのか?

近年DX(デジタルトランスフォーメーション)が根付いてきた歯科業界だが、実際どこまでデジタルツールが導入されているのか気になるところだ。一般社会ではあらゆるものがデジタル化されているし、歯科医院に必要なツールもほとんどがデジタルデバイスに対応してきている。カルテをはじめ予約管理、会計など事務作業周りではもはや紙とペンは不要になりつつあるし、もっと言えばパソコンさえ必須か怪しくなってきた。そこで今回は「歯科医院の1日はパソコンよりもさらに身軽なタブレットで回るのか?」実際の歯科医院の診療フローを再現しながら検証してみたいと思う。検証にはサブカルテのDXツール「Dental eNote®︎」を主に使うが、無料体験版の用意もあるので気になる方がいれば是非使ってみてほしい。無料体験版を使ってみるよくある歯科医院の1日と必要になってくるツール検証に入る前に、まずは一般的な歯科医院の診療フローを定義したい。そのサンプルをもとにタイミングに合わせて必要なツールを考える。始業出勤・準備:診療前の環境整備や器材準備が始まる。その前にまず出勤の打刻をするはずだ。ご存知の方もいると思うが、打刻もタブレットやスマートフォンからボタンを押すだけのサービスも展開されている。アポイントの確認:朝礼で行われることも多いと思うが、1日の診療の流れをスタッフ全員で確認する。予約管理はかなりデジタル化が進んでいるところで、タブレットでアポ帳を確認することも見慣れたシーンだろう。診療開始受付:まずは受診した患者の登録から。オンライン資格確認なんかも始まり、いかにもデジタルな感じにシフトしているだろう。申し訳ないがここはタブレットオンリーとはいかなそうだ。診察:患者導入前にカルテ、もしくはサブカルテは確認すると思うが、タブレットでできた方が圧倒的に楽なところ。診察後のカルテ入力もタブレットならその場でできるし、パソコンに比べ省スペースだ。会計・予約:飲食店などでも最近はタブレットやスマートフォンで会計表示されるのを目にしないだろうか。いわゆるレジ機能はタブレットでも十分できる世の中になっている。予約は始業時にある通り。終業片付け:診療中に欠品に気づくなんてこともたまにあると思う。メモしておいて片付けながら確認し発注するとしたら、タブレットを持ちながらやるのが効率的だ。レジ締め:キャッシュレスにしていればもはや必要ないかもだが、現金会計していれば一定の集計が必要になる。タブレットにはきっと電卓もついているので安心だ。かなり大雑把ではあるが1日の流れをまとめた。これに沿って実際に歯科医院を借りてシミュレーションしてみたい。実際にそれっぽく検証してみる今回は編集長・イシカワの先輩が開業するクリニックをお借りして、歯科医院ごっこをさせてもらった。1Dクリニック開業。まず出勤から。受付にあるタブレットで打刻完了。GPSを使って自身のスマートフォンを使うサービスやIC機能を用いるものもあるが、今回の検証としては紙のタイムカードがデジタルになればなんでもいいので割愛する。とにかくタブレットで問題ない。準備してたら材料が少ないことに気づくこともあるだろう。その場合はタブレットにメモしておいてあとでまとめて発注すればいい。朝礼が始まる。アポイントを確認しながら1日のイメージをして、いかに早く昼休みに入り、数秒でも終業を巻けないか考える。スタッフそれぞれがタブレットを持っていれば各自確認しながら話せるしメモもできるし抜かりない。予約管理ツールは「Dental eNote®︎」と連携している「DentNet」を用いて検証している。その日分のカルテをあらかじめ用意しておく必要もなければ、慌てて探す必要もないので心が穏やかになる。タブレット最高だ。診療時間を迎える。歯科医療者の壮絶な戦いが始まる。ネット予約の患者か確認して予約管理ツールから受付。連携しているサブカルテもタブレットで表示するだけなのでミスもトラブルも圧倒的に少なくなるはずだ。治療開始。治療もタブレットでできたらいいのに。治療前の説明やプランニング、補綴メニューはタブレットでできるとサッと出せて視覚的にも理解しやすくメリットが大きい気がする。またタブレットであれば、嵩張る大量の書類の束をめくる必要もない。検索機能や治療履歴の一覧から過去の治療歴などを一瞬で振り返ることも可能で、患者とのコミュニケーションも滞りなく行える。一通り治療が終わったら次回の治療について話すが、チェアサイドで予約も取れてしまうのはDXの醍醐味かもしれない。この辺は歯科医院のシステムにもよるが患者にとってもスムーズではないだろうか。診察後のカルテ記入ももちろんタブレットで。「Dental eNote®︎」はタッチペンでの手書き入力も可能なので歯科医療者の使い勝手も変わらず移行もスムーズだ。「Dental eNote®︎」で記入された情報はクラウドで同時に共有されるので、受付での対応にもラグがない。患者を待たせることなく会計のタイミングで次回についての会話もできる。最後の診察が終わればあとは帰宅準備。スタッフは各自カルテの確認や片付け、在庫の確認と発注を行う。それぞれのタブレットで作業ができるので自分の仕事に集中できる分効率的だ。結論タブレットだけで歯科医院は回る(たぶん)。現実的にはパソコンや紙媒体が必要になるシーンは出てくると思うが、理論上問題ないことの方が多いだろう。タブレットによるあらゆるタスクのデジタル化は何より、細かな時間短縮と圧倒的な省スペースを実現し、歯科医院全体の効率化が見込める。歯科医院に限らず、業務の無駄を省くことが最も経済合理性が高い施策なので、その点においてタブレットの活用とDXの推進は欠かせない取り組みになっていくはずだ。余談ではあるが、導入医院の話では受付業務の一部をリモートワークで行うことが可能になったそうだ。アポイントの管理などがオンラインで連携できるので、産休・育休に入ったスタッフが出勤しなくとも働き続けているという。高齢化が進む現代では介護などを理由に退職を余儀なくされる場合も少なくない。世間で広まるリモートワークが歯科医院でも可能になることは画期的な「働き方改革」だろう。今回使用したツール今回の検証に用いた「Dental eNote®︎」は歯科医院で必要な様々なサービスとの連携を進めており、本記事でも利用した「DentNet」はその連携の代表格だ。どちらも既存の必要なツールをリプレイスしているものなので、歯科医院の効率化を検討している方は導入を考えてみてはいかがだろうか。「Dental eNote®︎」は無料体験版が用意されているので気軽に試すことができる。ぜひこの機会に触ってみてほしい。無料体験版を使ってみる今回協力いただいた歯科医院
1D編集部
2023年11月17日

忘れられた記憶その先の笑顔:知っておこう!認知症と歯科について

認知症ってどんな病気?近年日本では高齢化の進展とともに認知症患者が増加しており認知症の予防や早期発見が重要な課題となっている認知症という病気はその名の通り徐々に記憶や認識力が低下していく病であり、記憶障害や認識障害、言語障害や判断力の低下などが主な症状である。まずは主な症状について知っておこう記憶障害過去の出来事や日常的なことを覚えることが難しくなり家族や友人の顔や名前を忘れることがある。認知障害物の名前や物事を理解することが難しくなり行動においての目的や理解が乏しくなる。言語障害言葉を話したり理解することが難しくなりコミュニケーションの障壁が生じてしまう。また、判断力の低下により日常生活において適切な判断ができなくなる。認知症の先に輝く歯科のケア高齢化が進む現代社会において認知症はさまざまな分野で深刻な問題として浮上している。家族や友人の中で認知症に苦しむ方々が増える一方で、その対応には多くの課題が立ちはだかる。そんなある日、とある歯科医院で訪れた認知症の患者のエピソード。患者は付き添いの家族との関係性もわからないほどの認知症で、高齢になってからは歯科治療もほとんどしてこなかった。今日はどうされましたか?と尋ねると歯科とは関係のない過去の話をひたすらに語る。しかしどうやら様子を伺っていると口腔内の義歯が当たり痛がっている様子。歯科受診もかなり久しぶりということもあり少し不安気な表情。椅子を倒し口腔内を観察すると残っている歯のほとんどが虫歯になっており義歯はクラスプと呼ばれるワイヤー部分が破損しておりまわりには食べカスがびっしりと付着している。しかし、先生とスタッフはじっくりと患者と向き合い認知症による苦しみを理解し、穏やかな声で説明する。「今日は歯を綺麗にして入れ歯を治し、美味しいご飯を食べられるようにしましょうね」すると患者の表情がほんのりと和らいだ。治療を行い、先生とスタッフは丁寧に患者の口腔内をケアする。補助するスタッフも手際よく補助し認知症患者の笑顔を取り戻すためにチーム一丸となり治療を進めていく。治療中は時折眉間にしわを寄せたり不安気そうな表情を浮かべることもあるがなんとか椅子に座り治療は進行していく。そしてついに待ちに待った治療を終えた。患者の表情はまだうっすら戸惑いの表情が見えるものの口元には満足気な微笑みが浮かんでいる。「お疲れ様でした。よくがんばりましたね。」とスタッフが言うと患者は感謝の気持ちを交えながら喜びの表情とともに「こんなに心地よいことはないです」と嬉しそうに帰って行った。このとある歯科医院でのエピソードで認知症の患者は一瞬でも心温まる笑顔を取り戻した。口腔内のトラブルは認知症の方でも、そうでない方でもストレスに関わる。認知症の進行、認識障害や言語障害により場合によっては十分な治療を進めることが難しい場合もあるが歯科医院では認知症の患者の特性を理解し、優しさと思いやりを持ってコミュニケーションを取る方法や口腔ケアのアプローチをしていく。本来の笑顔のために、認知症について理解し歯科との関わりに心を寄せ、支えていくことが大切なのかもしれない。認知症患者への歯科ケアのアプローチ歯科疾患の早期発見、治療、予防的なケアは認知症の進行を抑制し、口腔の健康維持に役立ってくる。認知症の進行、認識障害や言語障害により自らの状態を理解しにくい場合があるので場合によっては十分な治療を進めることが難しいケースもあるが患者の特性を理解し、優しさと思いやりを持ってコミュニケーションを取る方法や口腔ケアのアプローチをしていく。認知機能障害のある患者に対するアプローチ言語障害歯科業務の中には患者と通常のコミュニケーションがとれる場合ととれない場合がある。そのためミュニケーションがうまくとれない患者に対しては絵や写真などを用い、簡単に理解しやすい情報提供を心掛ける必要がある。例えば義歯の着脱や口腔ケアなどである。歯科医療者が言葉だけではなくこれらを用い、説明をすることで患者が適切な口腔ケアを覚え日常生活でも継続して取り入れやすくなる。認識障害認知症患者に対する歯科治療において理解や判断に時間を要することがある。治療や口腔ケア、歯磨き指導の際は慌てずゆったりとしたペースで患者に無理なく協力してもらえる環境を作ることが大切であると言える。また治療中の痛みや不快感は認知症患者にとってよりストレスに繋がるため可能な限り無痛治療を心掛け患者が治療を受けるにあたって負担を軽減する配慮なども必要である。記憶障害や運動障害記憶障害や運動障害には短期記憶、長期記憶、物忘れ、時間感覚の混乱などの症状がある。これらの症状に伴う歯磨きのタイミングや義歯の置き忘れなど歯科関連に対するアプローチ方法としては次のようなことが挙げられる。・カレンダーやメモなどを活用し日常において必要な習慣、情報をリマインドしておく・簡単な言葉や短文を用いわかりやすく説明する・家族や介護者が共同でサポートを行い必要な情報やケアを行う・記憶障害に対する精神的なサポートを行うまとめ認知症患者への歯科ケアは多くの問題がありますが一方で小さな変化が患者の笑顔を作り出し大きな喜びと幸せをもたらします。患者が口腔健康を保ち笑顔に過ごせるためには歯科医療者と家族の理解とサポートが欠かせませんね。これからの未来に向けて歯科と認知症の繋がりをよく理解し、患者の心に寄り添ったケアを実践していく必要があるのではないでしょうか。
1D編集部
2023年11月14日

「ワンディー24時間セミナー」全演題と見どころを一挙に解説

2023年11月11日(土)〜12日(日)にわたって開催される、「ワンディー24時間セミナー2023」。各分野からトップランナーの臨床家・研究者の先生方を招聘し、耐久セミナーを配信します。臨床のコツから経営論に至るまで、歯科医師としての知識・スキルを一段と高める1日になるはず。今回は、その見どころを取り上げます。すべての演題は「無料」で配信されますので、ぜひ参加登録をお願いします。参加登録をする(完全無料)演題・タイムテーブルそれでは、各演題の見どころを解説していきましょう。参加登録は10秒で完了しますので、ぜひお早めにお申し込みをお願いします。参加登録をする(完全無料)【16時ごろ】スグに使える歯科医院の物販学「物販王子」こと中原 維浩(医療法人社団栄昂会 理事長)先生が、待合室を「収益」に変えるノウハウをお伝えするセミナー。かつては "待つだけ" だった待合室には、大きな可能性があります。待合室を変え、医院経営と健康意識を変えるためのチャンスです。【17時ごろ】歯内療法とバイオセラミックスMTAが臨床応用されるようになってから、歯内療法におけるバイオセラミックス材料の可能性には非常に注目が集まっています。とはいえ、その材料に関する知識は、まだ十分に普及していません。このセミナーでは、エンド治療を行うすべての歯科医師のために、バイオセラミック材料の基礎から応用に至るまで、林洋介先生にわかりやすく解説していただきます。【18時ごろ】自費が選ばれる患者説明の方法「もっと高い利益率を目指したい」「患者さん一人一人にもっと時間をかけたい」と思うこと、ありますよね。このセミナーでは、患者さんへの説明に「とある工夫」を導入することで、そんな悩みを解決する方法を、伊勢海信宏先生から伝授していただきます。クリニックを成功させるための第一歩として、ぜひご視聴ください。【19時ごろ】結果が出る、ホントの予防歯科巷には、「予防歯科」という言葉が溢れています。しかし一方で、院内でどのように予防歯科を進めていくのかについて悩まれている先生方も多いのではないでしょうか。歯周病には「つまようじ法」ブラッシング、う蝕予防にはフッ化物の応用。黒瀬真由美先生が、その臨床のエッセンスをギュッと詰め込んだ座談会形式でお届け。【20時ごろ】早い・うまい!抜歯の基本手技もう「なかなか抜けない…」で焦らない。確実かつ迅速に、正しく抜歯を行うためのテクニック、知りたくありませんか?辻要先生が、抜歯術の基本から実際の臨床場面での応用テクニックを解説します。【21時ごろ】接着の操作とラバーダムの技法接着操作は、治療の成功/失敗を分けるほどの重要性を持ちます。特に、ラバーダムを用いた防湿手技は、接着操作において重要なファクターとなっています。このセミナーでは、接着操作の基礎知識から、ラバーダム防湿のテクニックまで、日々の診療のクオリティを一段引き上げる技法を学ぶことができます。【22時ごろ】歯科衛生士のモチベーション論近い将来に控えている「国民皆歯科健診」の実現は、歯科業界全体に大きな変革をもたらすと期待されます。この新しい動きに伴い、特に歯科衛生士は、その職業としてさらに重要な役割を果たすことが求められています。そんな時代に生きるすべての開業医・歯科衛生士に奥山洋実が伝えたい、令和の歯科医療者の「モチベーション」論。ここまでで、ライブ配信開始から7時間が経ちました。次の演題からは、深夜に突入していきます。11月11日(土)日中にご視聴予定の方も、深夜にご視聴予定の方も、ぜひ24時間セミナーにお申し込みくださいませ。参加登録をする(完全無料)【23時ごろ】プロが直伝する「伝え方」講座多くの人々から愛されてきた番組『ためしてガッテン』のウラには、元NHKディレクター・北折一氏の手腕と独特の「伝え方」のテクニックがありました。そんな北折氏が歯科医療者向けに、その「伝え方」の秘訣を大公開します。日常診療におけるコミュニケーションや伝え方のスキルが大きく飛躍すること、間違いなしです。【25時ごろ】アイドル歯科医師クイズバトル元SKE48・矢作有紀奈 VS キミ歯科・鹿乃さやか。2名のアイドル歯科医師が、深夜に繰り広げるクイズバトル。お題はもちろん「歯科診療」。次々と出題されるクイズに、彼女たちはどれほど正解できるのかーー。第一回アイドル歯科医師クイズバトル、女王の座に輝くのはどっちだ!?深夜だからこそできる、歯科セミナーらしからぬ意欲的な企画です。【26時ごろ】土曜深夜の「しくじり」人生考「なんとなく開業したけど、幸せってなんだっけ?」。見失いがちな「歯科医師人生の目的」を、多方面で引っ張りダコの角祥太郎先生が独自の視点からやさしく解説。臨床のコツももちろん大事ですが、それ以上に歯科医師としての生き方や価値観を見直す時間も大事です。【翌5時ごろ】エリザベス女王杯「大予想」SP2023年11月12日(日)、15時40分。ワンディー24時間セミナーが終わった直後、エリザベス女王杯(GI/阪神競馬場/芝2200m)が出走します。最強牝馬決定戦、「著名歯科医師の "買い目予想"」とは?飛び入りでの予想公開も大歓迎です。競馬好きの歯科医師は、ぜひお申し込みください。【朝6時ごろ】編集長がイチオシするセミナー日本最大級の歯科医師向け学習メディア、1D編集長のユースケイシカワが激オシする、「絶対に見ておくべき」歯科セミナーとは?「どんなセミナーを観たら良いのかわからない」「セミナー選びで失敗したくない」という先生方に、現在も臨床現場に立つ歯科医師、かつ編集長という独自の立場から、本当にオススメのセミナーをご紹介します。【朝7時ごろ】みんなでおはようブラッシングブラッシングにまつわるA to Zを、歯科衛生士の井上和先生がわかりやすく解説。プラーク除去効率の良い歯磨きの方法、歯ブラシ以外の道具の選定などについて、臨床的・学術的な視点から語ります。朝7時からのセミナーですので、ぜひ歯ブラシをお手元にご用意した上でご参加ください。【朝8時ごろ】2023年の歯科ニュースを解説2023年、歯科医療業界では何が起きていたのか。東京医科歯科大の合併発表、国民皆歯科健診の検討など、今年も歯科業界には大きな動きがありました。1年をインサイトとともに振り返ります。ワンディー株式会社代表取締役・松岡周吾による解説。ここまでで、時刻は朝を迎え、9時になりました。もう始めから視聴されている先生は誰もいない時刻になりましたが、配信は続きます。参加登録をする(完全無料)【朝9時ごろ】誤解も多い「TCH」を再確認顎関節症、ブラキシズムに関連し現代病として注目されている「TCH」、意外と勘違いしている人も多いです。巷に流れる迷信に惑わされず、エビデンスに基づいた正しい知識と対処の基本を身につけておきましょう。東京医科歯科大学・西山暁准教授による特別レクチャーです。【10時ごろ】根管治療の失敗を原因から学ぶ根管治療中の失敗は、実は類型化して考えることができます。特に、「根管形態に由来する失敗」について、注意が必要な歯種や、GP(一般開業医)が陥りやすい失敗について、深掘りします。東京歯科大学准教授の松永智先生、同大学講師の山田雅司先生の両専門家によるエンド談義。このセミナーで、歯内療法における確かな技術と知識を身に付け、根管治療における成功率を高めましょう。【11時ごろ】前歯部の美しい歯肉縁下形成法審美性が高く長期安定する補綴物のための支台歯形成のコツ、知りたくありませんか?補綴治療を成功させるためには、適切な支台歯形成が欠かせません。このセミナーでは、前歯部の歯肉縁下形成を中心に、審美補綴治療を成功させるための支台歯形成のテクニックを、遠山敏成先生が詳しく解説します。【13時ごろ】摂食嚥下リハ、きほんの「き」「人生100年時代」に生きる我々が、知っておくべき摂食嚥下リハビリテーション。このセミナーでは、摂食嚥下リハビリテーションのきほんの「き」を、網羅的に学ことができます。実践的な対応力を高め、患者さんの介入につなげることができるようになるはずです。人生100年時代を生きる歯科医師・歯科衛生士として学ぶべき、摂食嚥下リハビリテーションの基礎講座。戸原玄先生によるレクチャーです。すべてが「無料」でご参加いただけます各演題とタイムテーブルの見どころを解説しました。上記の演題は、完全無料でご視聴いただけます。当日は、YouTubeライブで配信を行います。気になる演題だけ見ていただくだけで構いません。ぜひお気軽に、参加登録をしてみましょう!参加登録をする(完全無料)
1D編集部
2023年11月8日

もし、目の前の患者がアナフィラキシーを起こしたら?

アナフィラキシーの生涯有病率は0.3〜5.1%とされ、日本では年間50〜80名弱がアナフィラキシーで死亡しているとされる。また患者に複数回、問題無く使用できていた医薬品等であっても、アナフィラキシーを生じることがあるため注意が必要だ。ただ歯科の臨床現場では頻回に遭遇するものではないため、対応に自信の無い人も多いだろう。今回は歯科におけるアナフィラキシーについて、症状や適切な対応等を解説していく。歯科におけるアナフィラキシーアナフィラキシーの原因になりやすい抗原としては、ラテックスや薬剤が挙げられる。ラテックスアレルギー患者のうち30〜50%は、クリ、バナナ、アボカド、キウイフルーツなどを口にした際にアナフィラキシー反応を起こすことがある。そのため問診時にこれらを摂取したときの状態をよく聞いておくことが重要である。アナフィラキシーが生じやすいタイミング周術期においては、アナフィラキシーのうち90%が麻酔導入時に見られる。これはアナフィラキシーが生じる原因となる、薬剤やラテックスなどへの暴露が麻酔導入時に集中しているためである。また冒頭で述べた通り、これまで問題無く使用できていた医薬品等であってもアナフィラキシーを生じることがある。もちろん逆に、初めて使用した際に生じることもある。加えてアナフィラキシー症状が落ち着いた後も、数時間〜72時間を経過したあ後に再度同様の症状が現れることがある。アナフィラキシーの症状患者がアナフィラキシーを起こしたとき、以下のような顔貌・外見の変化が起こる。口腔内口唇・舌の腫脹顔面周囲顔面蒼白・浮腫粘膜の膨張・流涙鼻閉・鼻水呼吸嗄声喘鳴気管支けいれんチアノーゼ呼吸困難全身血圧低下頻脈あるいは徐脈発汗悪心・嘔吐昏迷・意識喪失けいれん心停止皮膚・粘膜紅斑発赤かゆみじんましん などその他、アナフィラキシーを起こしている本人の自覚症状としては以下が挙げられる。死んでいくような不安感金属臭のような味めまい発汗目のかゆみ腹痛・下痢 など症状により症状の出方はさまざまであるが、参考までに、それぞれの症状の出現頻度は以下の通りである。皮膚症状膨疹・血管性浮腫:85〜90%紅潮:45〜55%かゆみ:2〜5%呼吸器症状呼吸困難・喘鳴:45〜50%上気道浮腫:50〜60%鼻症状:15〜20%循環器症状めまい・失神・血圧低下:30〜35%腹部症状悪心・嘔吐・下痢・腹痛:25〜35%その他頭痛:5〜8%胸痛:4〜6%けいれん:1〜2%なお周術期においては、麻酔がかかっていることで患者からの訴えが無かったり、滅菌ドレープ等で顔・体が覆われているため症状や外見の変化に気づきにくかったりするため注意が必要だ。アナフィラキシー発生時の対応アナフィラキシーによる死亡は、気道の血管性浮腫や気管支けいれんによる低酸素血症と、ショックによる循環の虚脱により起こる。一般的な歯科臨床(外来)での対応方法と、手術室での対応方法に分けて解説する。外来での対応一般的な歯科臨床においては、アナフィラキシーと診断されたら即座にアドレナリンを外側大腿広筋に筋注する。投与量は以下の通りである。成人:0.3mg小児(体重15kg以上):0.15mg成人(0.3mg)の場合、投与量は以下の通りである。方法①:空のシリンジを使用する場合1A(1mg/1ml)のアドレナリンを、1mlのシリンジに0..3mlだけ吸って注射方法②:すでにアドレナリンが充填された「アドレナリン注0.1%シリンジ「テルモ」(1ml)®」を使用する場合まず0.7mlを捨て、0.3mlのみ注射(1mlのままで0.3mlのみ筋注するのは難しく、過量投与を防ぐため)方法③:エピペン®を使用する場合(便利だが、コスト面や使用期限が短いという欠点あり)安全キャップを外す大腿をしっかり押さえて固定するオレンジ色の部分を注射部位に対して垂直に当て、「カチッ」と音がするまで強く押し付ける。押しつけたまま数秒間待つオレンジ色の部分が伸びたことを確認する外側大腿広筋への筋注により、10分未満で最大血中濃度に達する。上腕三角筋への筋注よりも平均の最大血中濃度が高く、効果の発現も早いとされている。またアナフィラキシー発症後はできるだけ早く、また経時的に採血を行うことが推奨される。手術室での対応アドレナリンの静注を行う。これは麻酔時にはすでに静脈路が確保されていること、また血圧計や心電図モニターが装着済みであることなどが理由である。投与方法は以下の通りである。20倍アドレナリン溶液(1A(1mg/1ml)を20mlに希釈したもの)を準備1.を1ml(50μg)緩徐に静脈内投与効果が得られなければさらに1ml投与高リスク患者へのアドレナリン投与多数の全身疾患を持つ患者や、心疾患を有する高齢者などにおいては、「アドレナリン投与は禁忌なのでは」と考えてしまうかもしれない。しかしアナフィラキシーによるリスクの方がはるかに高く、アナフィラキシーにおけるアドレナリン投与の絶対的禁忌は存在しない。アナフィラキシー時にアドレナリンを迅速に投与することのベネフィットは明らかであり、したがって、躊躇すべきではない。参考文献歯科臨床におけるアナフィラキシーの診断と対応(PDF)アナフィラキシーガイドライン2022(PDF)エピペン公式サイト(URL)
1D編集部
2023年11月3日
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