シェードのないCR「オムニクロマ®︎」使ってみてわかった衝撃の実力は
その話題性からか、生産の都合で発売延期となっていたシェード選択不要なコンポジットレジン「オムニクロマ®︎」が11月24日、満を辞して解禁された。”シェードのない世界へ”というコピーとともに発表された画期的なCRは、歯科医療者の注目を一身に集め、皆の想像力を掻き立てている。筆者もその一人で、運よく入手できたこともあり早速テストしてみることにした。本記事では従来のCRと比較し、忖度なくその実力を吟味していこうと思う。シェードのないCR「オムニクロマ®︎」とは?それ自体が周囲の色に同化することで、シェードという概念をなくしたコンポジットレジン「オムニクロマ®︎」はトクヤマデンタルが開発し2019年に北米市場で先行導入、すでに北米でのシェアは約3%に上る。国内では2020年8月に保険収載され、10月に販売開始予定であったが生産の都合上11月にずれ込んだが、今後10億円の売り上げを見込んでいるそうだ。「どんな色でもこれ1本で色が合う」と言われてもにわか信じがたいが、確かにそれが実現するのであれば歯科医院はシェードごとに大量の在庫を抱える必要がなくなるし、どんなに色調選択のセンスに欠けていても患者を満足させるCR修復ができる。売れないわけがない。適合するシェードもA1からD4と謳っており、ホワイトニングにも追随して変化するらしくもはや無敵だ。本製品以外のCRは需要がなくなってしまうだろう。そのメカニズムのヒントは「構造色」にあると解説している。構造色とは、昆虫ではモルフォチョウや玉虫、鳥ではクジャク、(中略) これらの生物が持つ鮮やかな色は、構造色と呼ばれる発色の仕組みを持っています。 色素による吸収の色ではなく、光の波長程度の微細な構造が、干渉や散乱などの光学現象を起こして着色しています。(東京理科大学 吉岡研究室)難解であるがつまり、そのもの自体に着色しているのではなく反射によって何らかの色に見えている、ということだ。ここに目をつけたトクヤマはフィラーの構造を見直し、構造色の原理をCRに取り込むことに成功した。実は新しいCRの開発中に失敗作として生まれたそうで、よくある成功物語みたいで感心する。一般的なCRは様々な形のフィラーで構成されているが、オムニクロマ®︎は260nmの均一な球状フィラーが含有されている。これにより窩洞の色調に同化するそうだ。ちなみにオムニクロマ®︎の由来は、Omni-(ラテン語で「すべての」「あらゆる」の意)とChroma(色相と彩度を含んだ色の意)の組み合わせだそうだ。今回はレビュー記事なので、より細かい技術仕様に関しては割愛させていただく。その実力やいかにまず、発表資料からみていただきたい。これはそれぞれシェードの異なる人工歯にオムニクロマ®︎を充填したサンプルだ。少し画像が荒いが硬化後は全く見分けがつかないほど同化している。前セクションで解説は省いていたが、モノマーがポリマーになることで屈曲率が変化し、硬化後に歯質の色調と同化するように設計されている。これが天然歯でも再現できるのか。今回は手持ちの抜去歯を用いてテストしてみた。撮影には松風のアイスペシャルC-IVを使用した。従来のCRと比較するため、第一小臼歯の抜去歯を1歯2窩洞に形成しそれぞれ充填する。今回は近遠心にⅡ級窩洞を形成した。まず従来のCR(ペーストタイプ、シェードA3)を充填したものがこちら。しっかりとシェードテイクを行いCRを選択することが望ましいが、今回はあえて一般的に使用頻度が高いA3を用いることとした。在庫管理的にシェードが限られている歯科医院も少なくないはずだ。次にオムニクロマ®︎を充填したものがこちらだ。いかがだろうか。正直、驚くほどの同化度ではないだろう。しかし、しっかりと周囲に同化していて、特に咬頭付近と辺縁隆線に色調の差が出ていることがわかる。隣接面観はどうだろうか。こちらははっきりと差が出ている。研磨を施していいないので表面は粗造だが、オムニクロマ®︎の同化度は高い。実際肉眼で見ると、オムニクロマ®︎は少し明るく感じ、透明度が高いためエナメル質の再現には優れていると感じた。しかしこれ1本で全て解決!とまではいかなそうで、今回のテストでは必要十分を満たしているレベルだと結論づけたい。言ってしまえば筆者レベルの臨床スキルで、保険診療が中心のDrならばこれ1本あれば十分かもしれない。やや流動性の高い操作感実際に充填操作を行ってみて感じたのはやや流動性が高いという点だ。個人の好みになるところでもあるが、チクソトロピー特性が高いというか、細かめに光硬化させないと形態付与が困難だった。逆に言えばフローが高いので辺縁の適合などは比較的容易に得られるのかもしれない。器具離れは良く、硬化速度も緩やかなので操作時間にも余裕があり全体的な充填操作としては扱いやすいと感じた。コストパフォーマンスは?使用した従来のCRは4g希望価格2,700円のもので、対してオムニクロマ®︎は同じ4gで3,900円と1,200円高価になる。正確な使用量は測れないが仮にシリンジ1本で100回充填できるとすると、その差は12円だ。単純窩洞における光重合型レジン(歯科充填用材料Ⅰ)の診療報酬は110円なので先ほどの仮定でオムニクロマ®︎を使用すれば1窩洞あたり71円の利益、従来のものであれば83円に利益となる。この差をどうとるかは個人の価値観によるが、シェード別にシリンジを数本用意しなくてはならないと考えればコストパフォーマンスに優れた製品だと言えよう。新技術と言うこともあり従来製品よりは高価だが、そこまで気にならない範囲の価格設定なのではないだろうか。使いどころで効果が発揮されるどんなものでもそうだが、使いどころを考えることで最大限の魅力が引き出されるはずだ。このオムニクロマ®︎も、症例とスキルによって別物になると感じた。オムニクロマ®︎には「ブロッカー」というオペークレジンのようなものも展開されており、前歯の切縁(Ⅲ,Ⅳ級窩洞)や金属色の遮蔽に用いると審美性がより向上すると使用を推奨している。製品自体の透明度が非常に高く、接着面の色調が大きく影響するメカニズムのためブロッカーの使用は効果的だと予想できた。補足的にブロッカーを使用してテストも行ってみた。条件は大臼歯のⅠ級窩洞で、ブロッカー有り、無しでの比較だ。微妙な差ではあるが、ブロッカーを使用した方が辺縁のグラデーションが滑らかに見える。そしてどちらも周囲の色調には見事に同化しており、ぱっと見では修復済み歯だとは気づかないだろう。使用した抜去歯のように明るいシェードの歯に対しては非常に審美的な修復が可能になると考えられる。また今回はテストできなかったが、切縁の修復に対して大きな期待ができそうだ。透明度が高いため天然歯エナメル特有の透け感が再現できる可能性が高い。機会があれば今後掲載したいと思う。本格展開後に真価が問われる技術の評価は実際に活用されてからが本番だ。一般の歯科医師たちが使用し、患者がその施術を受け、予後がどうなっていくかに注目したい。メカニズムから考えればCRは変色していかないし、歯自体が変色してもそれに追随する形で適合していくはずだ。耐摩耗性や強度ももちろん検証されているだろうが、実際の口腔内でどうなっていくのかが重要であり、シェアが拡大してからその真価が問われるだろう。個人的には大きな期待を持ってウォッチしていきたいと考えている。歯科セミナーなら「1D(ワンディー)」で!日本最大級の歯科医療メディア「1D」では、診療に役立つオンラインセミナーを多数開催中。もっと知りたい臨床トピックから超ニッチな学術トピックまで、参加したいセミナーが見つかります。下記ボタンから、開催中のセミナーを見てみましょう!開催セミナーを見てみる参考文献株式会社トクヤマデンタル「オムニクロマ®︎特設サイト」<URL>株式会社トクヤマデンタル「オムニクロマ®︎クリニカルガイド」[PDF]株式会社トクヤマデンタル「オムニクロマ®︎パンフレット」株式会社トクヤマニュースリリース, 2020年9月29日「歯科充填用コンポジットレジン「オムニクロマ®」待望の日本上市」<URL>株式会社トクヤマ「トクヤマCSR報告書」[PDF]東京理科大学理工学部物理学科吉岡研究室「生物の構造色」<URL>