歯科用語集
2025年10月28日

冷水痛

「冷水痛」とは?歯科用語の解説と症例を紹介

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定義・語源

冷水痛とは、冷たい水や冷たい物質が歯に触れた際に生じる痛みを指す。これは主に知覚過敏によって引き起こされる現象であり、歯のエナメル質が薄くなったり、歯髄が刺激を受けたりすることが原因である。語源としては、「冷水」と「痛」を組み合わせたもので、冷たい刺激に対する痛みを表現している。冷水痛は、特に歯の治療後や虫歯の進行に伴って見られることが多い。


臨床における位置づけ・判断基準

冷水痛は、歯科診療において重要な症状の一つである。患者が冷水痛を訴える場合、まずはその原因を特定することが求められる。判断基準としては、痛みの強さ、持続時間、発生する条件(冷たい物質に触れたときなど)を考慮する必要がある。また、冷水痛が見られる場合、歯の状態を詳細に評価し、知覚過敏の治療や虫歯の治療を行うことが重要である。冷水痛の軽減には、フッ素塗布や知覚過敏用の歯磨き粉の使用が推奨される。

関連用語・類義語との違い

冷水痛に関連する用語としては、「知覚過敏」や「歯髄炎」が挙げられる。知覚過敏は、冷水痛を含むさまざまな刺激に対する過敏な反応を指し、冷水痛はその一部である。一方、歯髄炎は、歯の内部にある歯髄が炎症を起こすことで生じる痛みであり、冷水痛とは異なる病態である。冷水痛は一時的な症状であることが多いが、歯髄炎はより深刻な状態であり、適切な治療が必要である。これらの用語を理解することで、冷水痛の診断と治療に役立てることができる。

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冷水痛の診断と処置。歯科臨床で役立つ症例と術式の判断ポイント

冷水痛の診断と処置。歯科臨床で役立つ症例と術式の判断ポイント

冷水痛とは何か冷水痛は、冷たい飲食物が歯に触れた際に生じる痛みであり、主に知覚過敏やう蝕、歯髄炎などが原因となる。冷水痛は、患者にとって非常に不快な症状であり、日常生活に支障をきたすことがある。歯科医師や歯科衛生士は、この症状を正確に診断し、適切な処置を行うことが求められる。冷水痛の原因と関連症状冷水痛の主な原因には、歯のエナメル質の損傷、歯周病、う蝕、歯髄の炎症などがある。これらの状態は、冷たい刺激に対する歯の感受性を高めるため、冷水痛を引き起こす。特に、知覚過敏は多くの患者に見られる症状であり、冷水痛の原因として非常に一般的である。冷水痛の診断手順冷水痛の診断には、詳細な病歴の聴取と臨床検査が必要である。まず、患者の症状や痛みの発生状況を確認し、次に視診や触診を行う。必要に応じて、X線検査を実施し、う蝕や歯髄の状態を評価することが重要である。これにより、冷水痛の原因を特定し、適切な処置を決定することができる。冷水痛に対する処置と術式冷水痛の処置には、知覚過敏に対するフッ化物塗布や、う蝕の治療、歯髄炎の場合は根管治療が含まれる。知覚過敏の場合、フッ化物を用いた処置が効果的であり、患者の痛みを軽減することができる。また、う蝕が原因の場合は、適切な充填材を用いて修復することが必要である。冷水痛の治療におけるメリットとデメリット冷水痛の治療にはいくつかのメリットとデメリットが存在する。メリットとしては、適切な処置を行うことで患者の痛みを軽減し、生活の質を向上させることができる点が挙げられる。一方、デメリットとしては、治療に伴うコストや時間がかかること、また、場合によっては再発の可能性があることが挙げられる。冷水痛に対する注意点冷水痛の治療においては、患者の状態に応じた適切な処置を選択することが重要である。また、治療後のフォローアップも欠かせない。特に、知覚過敏の患者には、日常生活での注意点や予防策を指導することが求められる。冷水痛の症例と臨床での応用冷水痛に関する症例は多岐にわたるが、特に知覚過敏の症例は臨床でよく見られる。例えば、歯のクリーニング後に冷水痛を訴える患者には、フッ化物塗布を行うことで症状を軽減することができる。また、う蝕が進行している場合は、早期の治療が必要である。まとめ冷水痛は、歯科臨床において頻繁に遭遇する症状であり、適切な診断と処置が求められる。歯科医師や歯科衛生士は、冷水痛の原因を特定し、患者に最適な治療を提供することで、患者の生活の質を向上させることができる。
1D編集部
2024年6月1日
【1D的セミナーログ】これでパーフェクト!「歯髄炎」

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先日、1Dでは福岡歯科大学 口腔治療学講座 歯科保存学分野教授・松﨑 英津子先生をお招きし、『これでパーフェクト!「歯髄炎」 90分で分かる歯髄炎の診断・病態・処置』と題したWebセミナーを行った。1Dでは本セミナーの他にも、多数の歯科臨床セミナーを開催している。プレミアム会員であれば追加料金ナシでセミナーや講義動画が見放題となるため、歯科医師・歯科衛生士の方はぜひご活用しただきたい。1Dプレミアムでセミナーを視聴する当日は多くの歯科医師・歯科衛生士の方々が参加し、質問も多く盛況となった。本記事では、そのセミナーの内容をかいつまんで解説する。構成は、1.歯の痛み、歯髄疾患の分類 2.歯髄疾患の診査・診断 3.歯髄保護 4.抜髄法 の 4項目に分かれており、それぞれ豊富なデータに基づいた解説がなされた。痛みの種類歯髄の感覚というのは痛覚でしか存在しないため、歯髄疾患における自覚症状というのは全て疼痛として認識される。痛みには、何もしなくても痛いという自発痛と外から刺激を加えることによって生じる誘発痛がある。誘発痛には冷水痛、温水痛、酸味痛、甘味痛、擦過痛、打診痛、咬合痛、切削痛、電撃痛がある。診断のポイントとして、冷水痛、酸味痛、甘味痛は初期の歯髄炎で起こる症状であり、温水痛は歯髄炎の進行に伴い誘発される。問診時でも、冷たいものにしみるか、温かいものにしみるかなど、よく質問される事項だろう。また痛みの持続時間なども聞いておくのもポイントである。歯根膜に分布する感覚神経を診査するときには打診痛、咬合痛を調べるが、これは通常では痛みを誘発しない刺激で痛みが発生するかを調べている。根尖歯周組織にまで炎症が生じると、閾値が低下して、正常歯では痛みを誘発しない刺激でも痛みを感じる。歯髄疾患の分類と診断の難しさ歯髄疾患の分類としては、病理組織像に基づく分類が広く採用されているが、臨床において、切片を作り生検をすることは現実的ではない。そこで、歯髄が保存できるかに基づく分類(米国歯内療法学会;AAE の分類に基づく)に従って分類した方が都合がいいのはないかと考えられてきた。この分類では、正常歯髄、可逆性歯髄炎、不可逆性歯髄炎(症候性、無症候性)、歯髄壊死に分けられており、昨年発売された教科書にも掲載されている。歯髄の保存において、可能か不可能かを判定することは重要である。しかし、上記に示したように、歯髄を直視することは難しく、処置中の歯を生検することはできないため、病理確定診断はできない。また、診査の多くが患者の主観である痛みに依存するため、歯髄診断としては不確実性が高い。とりわけ歯髄充血、急性単純性(漿液性)歯髄炎では判定に非常に苦慮することがある。そのため、原因除去と薬剤貼付により臨床症状が改善するかどうかを確認する待機的診断法によって判定することもある。歯髄保護歯髄保存の観点から、生活力の旺盛な幼若永久歯などに対しては、感染している冠部歯髄のみを除去する断髄が選択されてきた。しかし、近年、根部歯髄を保存することの重要性が見直され、根が完成した永久歯に対しても根部歯髄を保存することが重要であることが、ヨーロッパやアメリカでは提唱されてきている。このような観点から、以前は歯髄除去療法に分類されていた断髄が、歯髄保存療法として分類されるように教科書も改訂がなされている。このような背景には、MTAセメントなどの優れた材料の開発がある。抜髄法歯内療法において無菌的処置は何よりも重要である。ラバーダム防湿により、口腔内の常在菌による根管系汚染のリスクは最小限となるが、コロナ禍でもラバーダム防湿と唾液の吸引によりエアロゾル酸性を最小化することが示されている。アクセス窩洞形成は、解剖学的知識とレントゲン写真、歯の萌出方向などから総合的に推測し、セメントーエナメル境あたりを思い描いて行うといい。その高さでは、歯髄腔は歯の外形と相似形をしており、セメントーエナメル境は一定であるため、再現性のある指標である。この他にも、抜髄における各ステップについて、基礎的知識に基づいた詳細な説明がなされている。自分の手技や考え方に不安がある方や、もう一度体系だった歯内療法の考え方を学びたい方には必見の内容になっている。臨床に役立つセミナーなら1Dプレミアムこの他にも、1Dではさまざまな臨床・学術セミナーを配信中である。配信中のラインナップや1Dプレミアムの詳細は、下記ボタンからご覧いただきたい。1Dプレミアムでセミナーを視聴する
1D編集部
2023年8月3日
【1D的セミナーログ】あなたの知らない「打診痛」の世界。

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先日、1Dでは奥羽大学歯学部教授 高橋慶壮先生をお招きし、『どこよりも詳しいロジカル思考の臨床推論 あなたの知らない 打診痛の世界』と題したWebセミナーを行った。当日は多くの歯科医師の方々が参加し、質問も多く盛況となった。本記事では、そのセミナーの内容をかいつまんで解説する。「痛み」とは?痛みとは何だろうか。生理的な機序としての痛みとは、Aδ神経線維およびC線維によって脳にシグナルとして伝達されるものである。臨床的な考え方としての痛みは、その痛みがどの診断につながるのかということを考えるヒントである。しかし痛みは、診断する上で非常に難しいものである。なぜなら痛みとは「主観的で種類が豊富で明確な病態がわかっていないもの」であるからだ。「歯痛」は、冷水痛・温水痛・放散痛・夜間痛・自発痛・咬合痛などに細分類され、病態を推測する際のヒントを提供してくれる。一方「打診痛」の有無は検査項目の1つであり、さまざまな病態によって引き起こされるため、患歯を特定する手技としては有用であるものの、原因が特定できるわけではない。画像検査、歯周検査および臨床推論を組み合わせて確定診断することで、適切な治療が可能になる。打診痛がある状態においては、どのような病態を想像すれば良いのだろうか。打診痛から何を考える?それは大きく5つに分けられると考えられている。根尖性歯周炎や不可逆性歯髄炎などの歯内疾患根尖孔の破壊や穿孔やFCによる神経障害などによる医原病歯根破折や歯周炎の急発副鼻腔炎(上顎臼歯部の場合)不定愁訴を含むその他の疾患このように、打診痛から推測される病態は複数存在する。また、垂直打診と水平打診とでは再現される病態が異なるように考えられているが、実際には明確な区別は難しい。正しい打診痛の方法とは?正しい打診痛の検査方法があまり知られてないように思う。正しい打診痛の検査方法は、大きく以下の3つのポイントが存在する。患歯から槌打しない患歯に隣接する数歯を均等に軽く槌打し、痛みの比較から歯根膜の炎症度合いを比較評価する明確な違いがなければ経過観察したり対合歯を検査したりする打診痛単独での有病率は36%で、感度は38%であるため、他の検査と併用して疾患を絞り込む必要がある。診断の重要性鑑別診断する習慣を持つ必要がある。原因が不確実なまま漠然と処置を進めると、誤診に基づく医原病を引き起こすかもしれない。間違った治療を繰り返せば、歯科医師と患者双方ともに時間とお金を無駄にしてしまうだけでなく、良い結果が得られず、最悪、医療トラブルになりかねない。鑑別診断が困難な場合、患者に状況を説明し、経過観察 (wait and see) を考慮することをセミナーを通して学んだ。過剰診療の結果、患者に不利益が生じないように配慮することが必要である。
高橋 慶壮
2022年7月9日
【超解説】非歯原性歯痛のエビデンス【1万字】

【超解説】非歯原性歯痛のエビデンス【1万字】

患者の多くは、歯痛を主訴として歯科医院を訪れる。歯科医師であれば真っ先に歯髄炎や歯周炎を疑うところだが、近年では歯を疼痛の発生源としないにも関わらず歯痛を訴える疾患に脚光が集まってきた。※ 非歯原性歯痛の診断・治療のレクチャーは こちらから詳細を見る非歯原性歯痛とは?非歯原性歯痛とは、歯に原因がないにも関わらず、歯に痛みを感じる疾患である。非歯原性歯痛は、歯痛全体の2.1〜9%を占めると推定され、Nixdorfらのシステマティック・レビューによれば、一般の歯科医院での非歯原性歯痛の発現頻度は5.3%であると推定されている。さらには、年間で68万本の歯が根管に原因のない根管治療をされているという報告もある。歯に原因が見つからないにも関わらず患者が痛みを訴えるため、歯科医師により抜髄や抜歯など効果のない不可逆的な歯科治療が行われることもある。当然抜髄や抜歯を行っても歯痛は継続するため、原因不明の痛みとして困窮している患者や歯科医師が、いまも日本全国に存在しているのだ。口腔顔面痛は、歯学部の教育課程にあまり盛り込まれていなかった経緯があり、臨床上でも見過ごされがちだった領域である。本記事では、日本口腔顔面痛学会『非歯原性歯痛の診療ガイドライン(改訂版)』を下敷きとして、非歯原性歯痛のエビデンスを徹底解説する。非歯原性歯痛の原疾患非歯原性歯痛を誘導しやすい病態としては、「筋・筋膜痛による歯痛」「神経障害性疼痛による歯痛」「神経血管性頭痛による歯痛」「上顎洞疾患による歯痛」「心臓疾患による歯痛」「精神疾患または心理社会的要因による歯痛」「特発性歯痛」などが挙げられる。筋・筋膜痛による歯痛筋・筋膜痛の関連痛として、歯痛が生じることがある。筋・筋膜痛による歯痛は非拍動性の疼くような痛みを特徴とし、歯原性歯痛と比べると痛みの持続時間が長いという特徴がある。筋・筋膜痛による歯痛は筋の酷使による疲労によって生じ、心理的ストレスによって悪化するとされる。筋・筋膜痛による歯痛の最大の特徴は「トリガーポイント」の存在である。トリガーポイントは骨格筋の疲労により形成される易刺激性の圧痛点であり、このトリガーポイントへの刺激によって口腔顔面部に関連痛を生じさせる。具体的には、咬筋や側頭筋、胸鎖乳突筋の触診によるトリガーポイントの5秒間の圧迫により歯痛が再現され、当該の筋への麻酔(トリガーポイントインジェクション)によって疼痛が軽減することが特徴である。筋・筋膜痛による歯痛の原因となる筋は、咬筋が約半数の47%、側頭筋が30%、胸鎖乳突筋が17%の順に多いと報告されている。神経障害性疼痛による歯痛神経生涯生疼痛による歯痛は、「発作性神経障害性疼痛」と「持続性神経障害性疼痛」とに分類される。発作性神経障害性疼痛は「三叉神経痛」に代表されるように、発作的に生じる電撃様疼痛が特徴である。誘発部位への些細な刺激で激烈な痛みが発作的に数秒間生じる。現に、三叉神経痛の患者の多くは歯痛を主訴として最初に歯科医院に来院している。一方の持続性神経障害性疼痛は、灼熱性の痛みが間断なく持続する症状を特徴とする。持続性神経障害性疼痛の発症前に外傷や外科処置などの既往歴があり、多くの場合に知覚鈍麻やアロディニアなどの神経障害性疼痛の特徴を伴っている。神経血管性頭痛による歯痛神経血管性頭痛の患者の多くは、歯痛を主訴として歯科医院を受診している。神経血管性頭痛とは、脳血管の神経原性炎症によって生じる一次性頭痛のことであり、これも歯痛を生じることが多い。片頭痛や三叉神経・自律神経性頭痛が神経血管性頭痛である。片頭痛では、臨床症状として上顎臼歯部の拍動性自発痛が一般的であるが、下顎犬歯に生じたケースもある。また群発頭痛では、上顎大臼歯部の持続性の激痛が15分〜180分間生じるが、突然消失するという臨床症状を持つ。上顎洞疾患による歯痛上顎洞疾患による歯痛は、文字通り上顎洞の疾患が原因で生じる歯痛のことである。急性上顎洞炎による歯痛が最も頻度が高いとされるが、上顎洞がんや真菌感染などの疾患との鑑別診断が必要である。上顎洞炎のうち、18%に歯痛が生じる。歯痛が生じる部位は、上顎洞が解剖学的に近接している上顎の小臼歯〜大臼歯に多い。また、上顎洞がん患者の36%は、病初期に上顎臼歯部の歯痛を訴えるという報告もある。冷水痛、咀嚼時痛が認められ、かみしめにより違和感を生じるほか、鼻症状や発熱などの感冒症状も認める。心臓疾患による歯痛狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患に代表される、心疾患の関連痛として歯痛が生じることもある。虚血性心疾患の発作時に口腔顔面部に痛みが生じる割合は38%であると明らかにした研究があるが、38%のうちの5.9%は、口腔顔面部の痛みが唯一の症状であった。この場合の関連痛の特徴は、「圧迫痛」や「灼熱痛」である。虚血性心疾患の患者が、歯痛を唯一の主訴として歯科医院に来院する可能性があること、それを見逃してしまうと患者の命に関わる結末になりかねないことを、歯科医師は知っておく必要があるかもしれない。精神疾患または心理社会的要因による歯痛シェイクスピアは、妊娠した妻を持つ夫が歯痛を訴えることがあると書き残した。妊婦の夫は、妻の出産が不安で非歯原性歯痛を訴えることがある。また、うつ病や双極性障害、身体症状症、妄想性障害身体型、パーソナリティ障害によって非歯原性歯痛が生じることも報告されている。心身医学的な歯痛では、病理所見が疼痛部位に存在しない。こうした精神疾患または心理社会的要因による歯痛は、患者の訴える歯痛の部位が解剖学的な整合性を欠くことから推測できることが多い。特発性歯痛(非定型性歯痛を含む)特発性歯痛は、1本以上の歯または抜歯した後の部位に生じる持続性疼痛で、通常の歯科的原因が全く存在しないもの、と定義されている。その病態は現在でも解明されていない部分も多い。非定型性歯痛の病態も未解明の部分が多い。神経障害性疼痛であるとする説や心理的な要因が原因で生じるとする説、中枢性感作によるとする説、脳内の疼痛処理過程の変調で生じるとする説など諸説ある。非定型性歯痛の70〜83%が歯科治療をきっかけに発症するとされ、これらの患者は医療への不信感や怒り、不安などが見られることがある。精神疾患の既往があるケースが多いことを考えても、非定型性歯痛の患者は精神状態や心理社会的な状態を総合的に考える必要がある。非歯原性歯痛はなぜ起こるのか?前章では、非歯原性歯痛のそれぞれの原疾患について解説した。それでは、非歯原性歯痛はどのような原因で生じるのだろうか。非歯原性歯痛の発生機序は、「関連痛」「神経障害による痛み」「器質的異常が認められない慢性疼痛」の3つに分類される。関連痛前章で解説した筋・筋膜痛による歯痛、神経血管性頭痛による歯痛、心臓疾患による歯痛、上顎洞疾患による歯痛が「関連痛」による非歯原性歯痛に含まれる。例えば筋・筋膜痛による歯痛では、疲労が蓄積した筋に形成されたトリガーポイントからの関連痛により生じる。トリガーポイントにトリガーポイントインジェクションを行ったところ歯痛が消失するということも根拠となっている。神経障害による痛み神経障害による痛みは、末梢神経性疼痛と中枢神経性疼痛とに分類され、神経障害性疼痛による歯痛の発生機序とされる。末梢神経性疼痛は、末梢性感作、神経腫、エファプス伝達、交感神経の関与、表現形の変化により生じる。また中枢神経性疼痛は、発芽、ワインドアップ、長期増強、中枢性感作、内因性痛覚抑制機構の失調により生じる。器質的異常が認められない慢性疼痛精神疾患や心理社会的要因によって歯痛が生じているケースなどが、この「器質的異常が認められない慢性疼痛」に含まれる。これらはこれまで原因不明と考えられてきたが、脳科学・神経科学の発展とともに、中枢における神経伝達物質などの生化学的変化や情報処理過程の変調などによるものと解明されつつある。非歯原性歯痛の治療非歯原性歯痛に有効な薬物療法非歯原性歯痛に対する治療法として、薬物療法が挙げられる。原疾患ごとに適用されるべき薬物は異なるため、歯科医院としては適切な診療科を患者に選択させることも重要である。筋・筋膜痛による歯痛に対しては、鑑別診断目的を含めてトリガーポイントインジェクションが有効である。他にもNSAIDs(イブプロフェン)、低用量のアミトリプチリン、アセトアミノフェン、トラマドール塩酸塩/アセトアミノフェン配合錠、混合ビタミンB群、ジクロフェナクナトリウム、塩酸チザニジン、リン酸コデイン、ベンゾジアゼピン、漢方などが有効であったとする報告があるが、いずれもエビデンスレベルが十分なものは少ない。その他の原疾患に対する薬物療法に関しても、原疾患ごとに有効な薬物が異なり、その有効性をそれぞれで評価する必要がある。非歯原性歯痛に理学療法は有効?非歯原性歯痛に対する治療として、理学療法は有効だろうか。結論から言えば、非歯原性歯痛に対する理学療法の科学的なエビデンスは十分ではない。筋・筋膜痛による歯痛にはストレッチやマッサージ、ホットウォーターバスなどの理学療法の有効性が報告されているが、いずれの研究もエビデンスレベルは高くない。理学療法は可逆的で侵襲が少ない治療法であり、多くの疾患に対して経験的に有用であると評価されているため、今後の研究が待たれるところである。非歯原性歯痛に抜髄・抜歯は有効か?非歯原性歯痛に対して抜髄や抜歯といった不可逆的的な処置は無効である。なぜなら、歯に原因が無いからである。非歯原性歯痛に対して抜髄や抜歯を行っても疼痛が改善されなかったケースや、むしろ増悪したケースが多数報告されている。同様に、咬合調整や義歯調整などの治療も効果は無いため、非歯原性歯痛では不必要な可能性のある歯科治療を行うべきではない。非歯原性歯痛にスプリント療法は有効か?非歯原性歯痛のうち、筋・筋膜痛による歯痛に関しては、スプリントによる一時的な疼痛軽減が期待できる。しかし、その他の原疾患に対してスプリント療法を行うことには理論的な根拠は無い。非歯原性歯痛の実際の臨床では原因が特定できていない場合が多く、スプリント療法などの可逆的な治療法を「とりあえず」で選択してしまいがちである。しかしいずれの病態の非歯原性歯痛に対しても、スプリント療法のエビデンスは十分とは言えない。非歯原性歯痛の予防非歯原性歯痛の予防法は、現在のところ研究されていないと言ってもよいほどに文献が少ない。例えば筋・筋膜痛による歯痛には生活習慣の改善が治療として行われるため、予防法としても有効なようだ。今後非歯原性歯痛の認知拡大に伴って予防法に関する研究も進んでいくだろう。今後さらなるエビデンスが求められる日本口腔顔面痛学会『非歯原性歯痛の診療ガイドライン』は、2011年に初めて発行された。2019年に大幅な改定が行われ、一般臨床家にも徐々に周知されてきている。冒頭で述べたように、非歯原性歯痛は出現度の低い疾患ではない。非歯原性歯痛が原因で歯痛を訴える患者に対して不可逆的な侵襲が行われないためにも、今後さらなるエビデンスの充実や、歯科医療者に対する情報の提供は必要不可欠である。非歯原性歯痛の診断・治療のプラクティス強い痛みを訴える患者に対し、原因が特定できないまま抜髄や抜歯をしてしまったこと、ないでしょうか。抜髄・抜歯に至らなかったとしても、投薬のみで経過観察していませんか?その歯、非歯原性歯痛だったかもしれません。単に非歯原性歯痛といっても、その原因やメカニズムは多様です。筋・筋膜痛、三叉神経痛、群発頭痛。どれも患者は「歯の痛み」を訴えて受診します。中には歯髄炎の症状と酷似しても、X線画像では異常が認められず、結果として中枢性の疼痛ということもあります。これら”非歯原性”の歯痛に対して、正しく診断し適切な治療ができなければ、なかなか治らない病に患者は不安を感じてしまうでしょう。オーバートリートメントを防ぐためにも、正しい知識を身につけ非歯原性歯痛に対応できるスキルを身につけましょう。セミナー詳細を見てみる参考文献一般社団法人 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1D編集部
2021年5月12日
伝令だけじゃ意味がない。「伝書鳩歯科衛生士」になっていませんか?

伝令だけじゃ意味がない。「伝書鳩歯科衛生士」になっていませんか?

歯科衛生士が患者さんの問診をとることは多々あるが、歯科医師に報告するとき“ただの伝書鳩衛生士”になっていないだろうか。つまり、患者さんが「左上が痛い」といったら、そのまま「左上が痛い」とドクターに報告するような人のことである。症状→病名→原因を考えられおらず、ただスクリーニングするだけの歯科衛生士が多い現状だ。本来であれば、「どの歯のどの部分が痛いのか?」や「冷水痛はあっても温熱痛はないか?」など自分のなかでスクリーニングしていく必要がある。それができていないと、小学生でもできるただの伝言ゲーム。むしろ、勝手に変換され、間違った方向へ伝えていることもある。これなら直接、患者さんから話を伺ったほうが間違いも少なく、早い。歯科衛生士である自分を介しているのであれば、患者さんの言葉を上手く噛み砕いて、しっかりと歯科医師に伝える必要がある。なぜ、ただの伝令になってしまうのか歯科衛生士は“診断”ができないので最終決定は歯科医師に委ねることになる。だからこそ歯科医師に任せきりになっており、自分の頭で考えてない人が多い。ただの伝令になってしまう原因として、下記のことが挙げられる。① 知識がない② 深掘りしていない③ 患者の訴えの中から必要な情報を汲み取れない④ 余計な情報に左右される【① 知識がない】例えば、患者さんの訴える「痛み」には種類がある。鈍い痛みなのか、鋭い痛みなのか、自発痛があるのか、ないのかなどだ。何をしたときにどんな痛みがあるのかで検査方法や診断が変わってくる。しかし、それを探っていくには“知識”がないといけない。どんな病気があり、それがどんな症状がでるのか。それを診断するために何の検査が必要なのか。診断はできないが、準備はできる。歯科医師がしたい検査をするためにはどんなときに何をするのか知っておく必要がある。先回りして準備ができるとスムーズに診療を進めることができる。【② 深掘りしていない】また、知識を持ってもそれを患者さんから深掘りできていないと意味がない。いつから、どんなとき、どこが、どのような症状があるのかなどは患者さんから話を伺って深掘りしておこう。【③ 患者の意図を汲み取れてない】また、言葉とは難しいもので人によってニュアンスが違うことがある。患者さんによっては上手く言葉にできてない場合がある。曖昧な表現のまま話を進めると間違って変換してしまうこともあるので、いくつか言葉を変えて訊いてみる必要がある。もし「ズキンと痛い」と言われたら、「鋭い痛みですか?」「どれぐらい持続しますか?」などだ。【④ 余計な情報に左右される】患者さんの言ったことをそのまま伝えると余計な情報が多くなってしまうこともある。自分なりに噛み砕いてまとめ、できる限りシンプルに伝えよう。ただの報告にならない“できる歯科衛生士”のひと工夫ただの報告にならないポイントは3つある。① 5W1Hなど工夫して情報を得る② 報告するときは4構成にして伝える③ 引き出しを増やす【① 5W1Hなど工夫して情報を得る】まず1つ目は5W1Hを意識することだ。5W1Hとは、下記のことである。When いつWhat なにがWhere どこがWhy なぜ(Who 誰が)How どのようにいつ起こったのか、なにが起こっているのか、どこがそうなっているのか、なぜそうなったのか、誰がなっているのか、どのような状態なのか。最低限これさえ患者さんから訊ければただの報告で終わることは少ない。質問には2つのタイプがあり、1つが「はい」「いいえ」などで答えられる閉ざされた質問。もう1つが、考えながら自由に答えられる開かれた質問だ。状況や患者さんの性格によって使い分けよう。問診票があっても年月が経てば変わることも多いので、全身疾患や服薬についてももう一度伺っておくと良いだろう。【② 報告するときは4構成にまとめる】次に歯科医師に報告するときの構成は4つにまとめること。タイトル:患者の主訴状態(検査をする、検査の準備をする)自分の考え判断を求めるいきなり話し始めても何の話かわからなければ聞いているほうはとても疲れてしまう。はじめにタイトルを決めて伝えよう。このときのタイトルは「患者の主訴」である。そして5W1Hで聞いた結果、具体的にどんな状態なのか。検査をするなりして自分の考えをまとめ、最後は判断を仰ぐ言葉でまとめると話がコンパクトになり、わかりやすくなる。患者さんが言っていることは何が原因なのか一度自分のなかで仮設を立てるのは大切である。人任せにしていないで自分の頭で考える癖をつけておくと歯科医師から指示を受けたときの動きが変わってくる。自分でもできる検査であれば済ませておき、歯科医師しかできない検査であれば準備をしておく。検査には視診、触診、打診、電気診、レントゲンなど様々なものがある。資料はあればあるほど正確な診断ができるため、予測を立てて進められることをやっておこう。そしてその結果を元に自分なりの考えをまとめ、最後は歯科医師の判断を仰ぐのがベストである。【③ 引き出しを増やす】最後に、こういったことをするためには教科書に載っている知識はもちろんであるが、臨床現場では同じようにいかないこともある。臨床現場で求められる知識も学んでいく必要があるのだ。日頃から歯科医師の言動をチェックしておき、どんなときに何をするのか先読みして考えるようにしておこう。引き出しを増やした分だけ仕事ができるようになる。ただ言われたことだけやる歯科衛生士にはなってはいけない。歯科医師の右腕となり、国家資格であるプロ意識をもとう。歯科セミナーなら「1D(ワンディー)」で!日本最大級の歯科医療メディア「1D」では、診療に役立つオンラインセミナーを多数開催中。もっと知りたい臨床トピックから超ニッチな学術トピックまで、参加したいセミナーが見つかります。下記ボタンから、開催中のセミナーを見てみましょう!開催セミナーを見てみる
本吉 ひとみ
2020年5月30日

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