
歯科衛生士が患者さんの問診をとることは多々あるが、歯科医師に報告するとき“ただの伝書鳩衛生士”になっていないだろうか。
つまり、患者さんが「左上が痛い」といったら、そのまま「左上が痛い」とドクターに報告するような人のことである。
症状→病名→原因を考えられおらず、ただスクリーニングするだけの歯科衛生士が多い現状だ。本来であれば、「どの歯のどの部分が痛いのか?」や「冷水痛はあっても温熱痛はないか?」など自分のなかでスクリーニングしていく必要がある。
それができていないと、小学生でもできるただの伝言ゲーム。むしろ、勝手に変換され、間違った方向へ伝えていることもある。これなら直接、患者さんから話を伺ったほうが間違いも少なく、早い。
歯科衛生士である自分を介しているのであれば、患者さんの言葉を上手く噛み砕いて、しっかりと歯科医師に伝える必要がある。
歯科衛生士は“診断”ができないので最終決定は歯科医師に委ねることになる。だからこそ歯科医師に任せきりになっており、自分の頭で考えてない人が多い。
ただの伝令になってしまう原因として、下記のことが挙げられる。
① 知識がない
② 深掘りしていない
③ 患者の訴えの中から必要な情報を汲み取れない
④ 余計な情報に左右される
【① 知識がない】
例えば、患者さんの訴える「痛み」には種類がある。鈍い痛みなのか、鋭い痛みなのか、自発痛があるのか、ないのかなどだ。何をしたときにどんな痛みがあるのかで検査方法や診断が変わってくる。しかし、それを探っていくには“知識”がないといけない。
どんな病気があり、それがどんな症状がでるのか。それを診断するために何の検査が必要なのか。
診断はできないが、準備はできる。歯科医師がしたい検査をするためにはどんなときに何をするのか知っておく必要がある。先回りして準備ができるとスムーズに診療を進めることができる。
【② 深掘りしていない】
また、知識を持ってもそれを患者さんから深掘りできていないと意味がない。いつから、どんなとき、どこが、どのような症状があるのかなどは患者さんから話を伺って深掘りしておこう。
【③ 患者の意図を汲み取れてない】
また、言葉とは難しいもので人によってニュアンスが違うことがある。患者さんによっては上手く言葉にできてない場合がある。曖昧な表現のまま話を進めると間違って変換してしまうこともあるので、いくつか言葉を変えて訊いてみる必要がある。もし「ズキンと痛い」と言われたら、「鋭い痛みですか?」「どれぐらい持続しますか?」などだ。
【④ 余計な情報に左右される】
患者さんの言ったことをそのまま伝えると余計な情報が多くなってしまうこともある。自分なりに噛み砕いてまとめ、できる限りシンプルに伝えよう。
ただの報告にならない“できる歯科衛生士”のひと工夫
① 5W1Hなど工夫して情報を得る
② 報告するときは4構成にして伝える
③ 引き出しを増やす
【① 5W1Hなど工夫して情報を得る】
まず1つ目は5W1Hを意識することだ。5W1Hとは、下記のことである。
When いつ
What なにが
Where どこが
Why なぜ
(Who 誰が)
How どのように
いつ起こったのか、なにが起こっているのか、どこがそうなっているのか、なぜそうなったのか、誰がなっているのか、どのような状態なのか。最低限これさえ患者さんから訊ければただの報告で終わることは少ない。
質問には2つのタイプがあり、1つが「はい」「いいえ」などで答えられる閉ざされた質問。もう1つが、考えながら自由に答えられる開かれた質問だ。状況や患者さんの性格によって使い分けよう。
問診票があっても年月が経てば変わることも多いので、全身疾患や服薬についてももう一度伺っておくと良いだろう。
【② 報告するときは4構成にまとめる】
次に歯科医師に報告するときの構成は4つにまとめること。
タイトル:患者の主訴
状態(検査をする、検査の準備をする)
自分の考え
判断を求める
いきなり話し始めても何の話かわからなければ聞いているほうはとても疲れてしまう。はじめにタイトルを決めて伝えよう。このときのタイトルは「患者の主訴」である。そして5W1Hで聞いた結果、具体的にどんな状態なのか。検査をするなりして自分の考えをまとめ、最後は判断を仰ぐ言葉でまとめると話がコンパクトになり、わかりやすくなる。
患者さんが言っていることは何が原因なのか一度自分のなかで仮設を立てるのは大切である。人任せにしていないで自分の頭で考える癖をつけておくと歯科医師から指示を受けたときの動きが変わってくる。
自分でもできる検査であれば済ませておき、歯科医師しかできない検査であれば準備をしておく。検査には視診、触診、打診、電気診、レントゲンなど様々なものがある。資料はあればあるほど正確な診断ができるため、予測を立てて進められることをやっておこう。
そしてその結果を元に自分なりの考えをまとめ、最後は歯科医師の判断を仰ぐのがベストである。
【③ 引き出しを増やす】
最後に、こういったことをするためには教科書に載っている知識はもちろんであるが、臨床現場では同じようにいかないこともある。臨床現場で求められる知識も学んでいく必要があるのだ。日頃から歯科医師の言動をチェックしておき、どんなときに何をするのか先読みして考えるようにしておこう。引き出しを増やした分だけ仕事ができるようになる。
ただ言われたことだけやる歯科衛生士にはなってはいけない。歯科医師の右腕となり、国家資格であるプロ意識をもとう。
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