歯科用語集
2025年10月28日

外科的歯内療法

「外科的歯内療法」とは?歯科用語の解説と症例を紹介

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定義・語源

外科的歯内療法とは、歯の内部に存在する感染や病変を治療するために、外科的手法を用いる治療法である。主に根管治療が行われるが、根尖切除や歯根端切除などの外科的手技も含まれる。語源は「外科的」と「歯内療法」の組み合わせであり、歯の内部に対する外科的アプローチを示す。治療の目的は、感染を除去し、歯の機能を回復させることである。


臨床における位置づけ・判断基準

外科的歯内療法は、通常の根管治療が困難な場合や、根尖病変が存在する場合に適用される。臨床においては、患者の症状、画像診断結果、感染の程度を基に判断される。特に、根尖病変が大きい場合や、再発が見込まれる場合には、外科的アプローチが推奨される。治療後は、感染の再発を防ぐために、適切なフォローアップが必要である。

関連用語・類義語との違い

外科的歯内療法に関連する用語としては、根管治療、根尖切除、歯根端切除などがある。根管治療は主に非外科的手法で行われるのに対し、外科的歯内療法は外科的手技を伴う点が異なる。また、根尖切除は特定の根尖病変に対する外科的処置であり、外科的歯内療法の一部として位置づけられる。これらの用語の違いを理解することで、適切な治療法を選択することが可能となる。

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外科的歯内療法の実践と臨床での応用。症例と術式の判断ポイント

外科的歯内療法の実践と臨床での応用。症例と術式の判断ポイント

外科的歯内療法の定義と目的外科的歯内療法とは、歯の内部に存在する感染した歯髄や周囲の組織を治療するための手術的アプローチである。この療法は、主に根尖性歯周炎や歯髄炎などの病状に対して行われる。外科的歯内療法の目的は、感染を除去し、歯の機能を回復させることである。これにより、歯を保存し、患者の口腔内の健康を維持することが可能となる。外科的歯内療法の主な処置と術式外科的歯内療法には、いくつかの処置や術式が存在する。代表的なものには、根管治療、根尖切除、再植術などがある。根管治療は、感染した歯髄を除去し、根管を清掃・形成した後に充填する手技である。根尖切除は、根の先端を外科的に切除し、感染を取り除く方法であり、再植術は抜歯した歯を再度植え直す手術である。これらの術式は、症例に応じて選択される。外科的歯内療法の症状と診断外科的歯内療法が必要となる症状には、持続的な歯痛、腫れ、膿の排出、歯の動揺などがある。診断には、患者の症状の聴取、視診、触診、X線検査が重要である。特にX線検査は、根尖病変の有無や歯の状態を確認するための重要な手段であり、診断の精度を高める。外科的歯内療法の手順とコツ外科的歯内療法の手順は、まず患者の状態を評価し、適切な麻酔を行った後、必要な処置を実施する。手術中は、感染の拡大を防ぐために無菌操作が求められる。また、術後の経過観察も重要であり、感染の再発を防ぐために定期的なフォローアップが必要である。手術のコツとしては、適切な器具の選択と、慎重な操作が挙げられる。外科的歯内療法のメリットとデメリット外科的歯内療法のメリットには、歯を保存できる可能性が高いこと、感染の除去が可能であること、患者のQOLを向上させることが挙げられる。一方、デメリットとしては、手術に伴うリスクや合併症、術後の痛みや腫れがあることが考えられる。これらの点を考慮し、患者に対して十分な説明を行うことが重要である。外科的歯内療法の注意点と判断基準外科的歯内療法を行う際の注意点として、患者の全身状態や既往歴を考慮することが挙げられる。また、感染の程度や歯の状態に応じて、治療法を選択する判断が求められる。特に、根尖病変の大きさや歯の保存可能性を評価することが、成功率を高めるための重要なポイントである。外科的歯内療法の導入と今後の展望外科的歯内療法は、歯科臨床において重要な役割を果たしている。今後は、より精密な診断技術や治療法の進展が期待される。特に、マイクロスコープを用いた治療や、再生医療の技術が導入されることで、治療の成功率が向上する可能性がある。歯科医師や歯科衛生士は、最新の知識を常にアップデートし、患者に最適な治療を提供することが求められる。
1D編集部
2024年6月1日
【特集取材】2024年米国歯内療法専門医協会(AAE)年次総会に参加してきました(寺岡 寛先生)

【特集取材】2024年米国歯内療法専門医協会(AAE)年次総会に参加してきました(寺岡 寛先生)

AAEは毎年1回年次総会(annual session)が北米の様々な地域で開催される。今年はカリフォルニア州のロスアンジェルスであった。カリフォルニア州は西海岸に位置し温暖な気候として知られている。日本人にとってはドジャースに入団した大谷翔平選手の本拠地と言うとわかりやすいのかもしれない。私も友人たちとドジャースタジアムに行き試合を見てきた。AAEの年次総会は4月の17日~20日の4日間開催され世界中から多くの歯科医師が訪れる。2016年のサンフランシスコ、2018年のモントリオール(カナダ)以来の3回目の参加となった。4日間を通して多くの魅力的なレクチャーが行われるが、見たいレクチャーが複数同時刻に行われどの公演を見ようかとというジレンマがある。また、隣に座ってレクチャーを聞いているのが世界的に高名な歯内療法医ということさえよくある。携帯電話で専用のアプリがあるのでそこから日程を確認出来、お気に入りのレクチャーを保存できるので日程の確認に非常に便利である。今回、総会への参加と1Dさんに執筆させて頂く機会を得たので体験記として情報を共有したいと思う。因みに筆者は日本で歯内療法専門医として幾つかの医院に出向し診療をしており通常の歯内療法は元より断髄を得意としている。尚、以下に使用している略語を書いておくので参考にして頂けると幸いである。<略語一覧>AAE(アメリカ歯内療法専門医協会)、ESE(ヨーロッパ歯内療法学会)、VPT(生活歯髄温存療法)、NSRCT(非外科的根管治療)、IDPC(間接覆髄法)、DPC(直接覆髄法)、ECR(歯頸部外部吸収)、ICR(侵襲性歯頸部吸収)、TSP(トロントスタディプログラム)、USC(南カリフォルニア大学)、ヒポクロ(次亜塩素酸ナトリウム)木ノ本喜史先生(左から4番目)と現地で集合した友人達と記念撮影(筆者は左から3番目)1日目(4月17日)私は現地には時差の関係で16日に到着したが総会が始まったのが17日なので1日目とする。最初に聞いたレクチャーは「Conundrum of Pulpal Diagnosis Part 1, 2」(歯髄診断の困難性パート1, 2)である。現在、歯髄の診断名は実際の臨床の状態を正しく反映していないと議論され、その診断名自体を新しいものに改善すべきという意見もある。ヨーロッパ歯内療法学会会長のDr. H. F. Duncanは出血や痛みへの過敏さは診断に有用ではなく、より歯髄への深い理解が重要であると述べた。意外に感じたのが歯髄をマイクロスコープ下で直視することに関しても否定的であった。私見では日本のDr.泉英之が提唱しているエアーでの歯髄が根管壁から離れると、その歯髄は保存不可能な歯髄であるといった所見や歯髄の正常を拡大下で確認することは非常に重要な因子であると思っている。Dr. Kenneth. M. Hargreavesは世界的に使用されている歯内療法の教科書Pathway’s of the pulpの編集者であるが今後はバイオマーカー、特にMMP-9による歯髄の診断が役に立つだろうと結論づけた。理由はバイオマーカーを使用することはパーソナライズし、術者の主観性を排除することにより信頼性が向上する検査法になり得るからである。最後のスピーカーのDr. Claudia Brizuelaは可逆性歯髄炎と不可逆性歯髄炎の診断にはFGF, IL-6, IL-1α, TIMP-1が有効かもしれないとした。しかしながらこれらはラボレベルでは有用であるかもしれないが、それをチェアサイドで使用できるようにすることが今後の重要な課題であると筆者は思う。続いてDr. Adham. A. AzimのThrough & Through Lesions Explained(スルーアンドスルー病変の解説)である。Dr. Azimは筆者と同い年(39歳)であるが、過去にバッファロー大学で歯内療法科の大学院生を統括するディレクターを行っており、現在はパシフィック大学の准教授という非常に才能に優れている先生である。筆者は2018年の総会で1度レクチャーを受けている。その時は逆根管治療(歯根端切除)でXP-Endoを使用した清掃を行うという新しく革新的な事を行う先生だな、と感銘を受けたことを思い出す。今回のタイトルのスルーアンドスルーというのは病変が大きく頬側骨、口蓋側の骨共に吸収している状態である。この状態で通常の逆根管治療を行った場合、瘢痕による治癒が得られるかもしれないが線維性結合組織による瘢痕治癒となるため、将来的にインプラントが必要になった場合に骨がなく埋入ができなかったり、新たに骨造成が必要であったりと問題となる。そのため出来るだけ逆根管治療時に骨による治癒が望まれるためタイトルとして決めたとのことだった。この理由に関しては筆者も同意見であるため今回のレクチャーを受講した。この病態を理解するためにはまず病変のステージを分類することが重要で、そのステージにより処置法が異なる。因みにDr. Azimは6月1日から行われる日本歯科顕微鏡学会の年次総会で後述するDr. Shanon Patel, Jerry Linと共に招聘されている。その時には今回のタイトルでハンズオンに参加する予定となっているので、その予習が今回でき今から非常に楽しみである。より臨床的に今回の分類とステージ別の処置法を理解できることだろう。レクチャー後に友人と質問をしにいった。2日目(4月18日)Dr. Shanon PatelのManagement of External Cervical Resorption (Surgical vsNon-Surgical:侵襲性歯頸部吸収への対応(外科的 vs 非外科的))であった。Dr. PatelはCBCTの歯内療法領域での使用で高名な先生である。本邦でも著書が日本語訳されて市販されている。侵襲性歯頸部吸収はICR(Invasive Cervical Resorption)とも呼ばれ、しばしばう蝕と間違われることがある。本病態に関し古くからHeithersayの分類が使用されてきたが同演者らによる、より細かく分類された新基準がヨーロッパ歯内療法学会(ESE)から発表されている。X線撮影をした際に偶然見つかることが約半数。原因は様々であるが不正咬合、矯正治療や管楽器奏者に多いとされている。近年ではネコに特有なウィルスがヒトに感染し原因になり得ることも言われている。以前と比較して症例数は増えてきていることを指摘し、悪い意味で過小評価をされていると言及していた。我々が思っているよりも実際には多くのケースが見過ごさられているだろうという意味である。また診断については従来のエックス線検査のみでは限界があるため、CBCTで検査を行うことの重要性も語られた。主題に関してどのような場合には外科的・非外科的に処置するのか、実際の症例を用いて説明され非常に理解しやすかった。余談ではあるが私自身、ECRで悩んでいる症例があるので6月に来日された際にはまた記録を元に相談させて下さい、とお願いをしておいた。セルフィーを一緒にしてもらったが慣れておらず画像がブレてしまった。続いてControversies in VPT:IPC vs DPC vs Pulpotomy Part 1,2(歯髄温存療法における論争:間接覆髄法 vs 直接覆髄法 vs 断髄パート1, 2)である。スピーカーはDr. Stephene Simon, Ashraf Fauad, Nasrin Taha, Domenico Ricucciの各レクチャーとディスカッションであった。今更ではあるがVPTとはVital Pulp Therapy(歯髄温存療法)の略であり、覆髄法と断髄法が含まれる。このセッションの各スピーカーはVPTに非常に精通した歯内療法医と言える。このセッションを含む本年のVPTに関わるセッションは10と非常に多かった。以前からVPTへの注目は大変に上昇していたが、本年で最高潮となったことだろう。因みにVPTに関するAAE総会でのレクチャーは私が調べた限りでは2016年0、17年0、18年1、19年3、20年1、21年5、22年?、23年4、24年10である。最初のスピーカーはDr. Tahaでヨルダン大学の教授で、現在ではコンセンサスになりつつある不可逆性歯髄炎における断髄の高い成功率を報告した。発表当初(現在も?)はかなりの反対意見があったものの、現在では2021年にAAEが発表した断髄のガイドラインにも記載の通り受け入れられつつあるように思う。このパートでは非特異的う蝕除去は特異的う蝕除去よりも成功率が高く、露髄をしたとしても断髄や抜髄を行えば予知性の高い治療となるとのことであった。これはESEが推奨をしている、いわゆるステップワイズエキスカベーションよりも断髄・抜髄のほうが予知性が高い処置であると私は解釈をしている。続いてDr. Fauadは各個人の炎症性ケミカルメディエーターを用いて歯髄炎が鑑別できるかもしれないとの展望を示した。その上でVPTのみならず、各個人に対するパーソナライズドされた歯内療法が必要ではないかと提唱していた。一般的なVPTの予後に関する因子として写真にあるように、カリエスの深さ、宿主の炎症反応、無菌的処置、覆髄材、症状をあげていた。その中でも興味深かったのが歯髄壊死を起こし根尖性歯周炎(+)の患者で疼痛を感じない歯髄炎、いわゆるPainless Pulpitisが生じていたのは40%であった報告(Michaelson and Holland IEJ 2002)を引用していた。頻度はここまで多くないにしても臨床家であれば歯冠崩壊している患者さんに、今までの痛みのヒストリーを聞いた際に別にそんなに痛くなかったと答える患者に1度は遭遇したことがあるのではないだろうか。3番手のスピーカーはDr. Ricucciである。Dr. Ricucciに関してはここで改めて解説をする必要がないほどの高名な臨床家である。彼の非常に美しい切片像は歯内療法のみならず歯科会に大きな影響をもたらしたことは疑いようがない。彼の今回の主張は写真の通り非常に明確で、彼の臨床結果やその切片を用いて説明したうえで特異的う蝕除去は推奨されないということであった。ここで興味深いのがDr. Ricucciはイタリア人であるので立場的にはESEに近いはずであるが、彼の主張のスタンスはAAEのポジションステートメントと近似している。筆者は彼のFacebookグループをフォローしており、上記のような主張が来るだろうと予想していたので驚きはなかったが、臨床・組織像を交えたレクチャーには説得力があると改めて感じた。このセッションの最後のスピーカーDr. Simonのことは事前に存じ上げなかったが、彼の20年に渡る経験に基づくレクチャーを聞いてVPTに対して現在最も考え方が近いと感じた。そう感じたのが歯髄温存に関して歯髄の炎症よりも感染の除去が重要であるというところである。Dr. Bergenholtzはサルを用いた動物実験の研究結果として「歯髄炎が中等度から重症であったとしてもその原因(細菌を含む感染源)が除去できれば治癒する」と1984年に述べており、筆者はこの研究結果は臨床に即していると感じる。このBergenholtzに関しては何も言及していなかったので質問したかったが、時間的にその余裕はなかったので残念である。3日目(4月19日)3日目は午前のセッションのみの参加となった。タイトルはSurgical Retreatment vs.Non-surgical Retreatment Outcomes(Point-Counterpoint:外科的歯内療法 vs 非外科的治療の成功率)である。演者は前述のDr. Adham Azimと日本の誇るDr. Yoshiこと寺内吉継先生である。Dr. Yoshiは破折編除去で世界的にその名を知られており、今回の総会でも毎日ハンズオンコースを行い超人気である。彼の考案した破折編除去の販売を行うSAYA DENTのブースに立ち寄った時、スタッフの方と中東系の先生が話していたのでその中に混ざってみたが、その先生はDr .Yoshiのファンであった。そのハンズオンに参加するためだけにAAEに入会したとのことである。Dr. Yoshiはそれだけではなく、Pathway’s of the pulpの偶発症のパートを執筆したり他にも教科書のパートの執筆を任されたりと日本人として過去になし得ないような事をしている。これだけ世界中にファンがいるのも納得である。話を本題に戻すが、最初にDr. Yoshiがレクチャーを行った。彼は筆者も3期に卒業したDr. Shimon Friedman率いるTSP(トロントスタディプログラム)を運営し通訳をしている関係上、トロント大学をはじめとする教授陣の講義を毎年みておりその影響が伺えた。痛みとは何か、から始まり近年におけるNSRCT(Non-Surgical Root Canal Treatment:非外科的根管治療)と外科的歯内療法の統計処理を行った成功率の比較、その上で外科的歯内療法前に非外科的根管治療を行われたものの方が長期の成功率は高いという結果であった(Huang JOE 2020)。本研究では咬合をサンプル数は少ないものの、咬合があったものでは治癒が悪かったとも報告しており、写真はDr. Yoshiの症例をそれを示したものである。また私の好きな論文の1つである、外科的歯内療法が失敗した歯に非外科的根管治療を行った場合の成功率(84.82%)を報告した研究(Appel IEJ 2023)も引用されていた。一方のDr. Azimは非外科的根管治療が失敗した場合のその原因を列挙し、それが再根管治療では改善できない際に外科的歯内療法により歯を保存するのが良いと説明した。因みにその改善できない場合というのが1根管内の除去困難なバイオフィルム、2根尖孔外感染、3真性嚢胞、4アクチノマイセス菌の感染、5処置上のエラーである。誤解のないように付記しておくとこれら全て術前には分かりようがない場合もあり得る。言い換えると、外科的な処置を行い初めて分かる場合もあり、外科的歯内療法の術前には分からない場合もある。他方で非外科的根管治療がなぜ失敗するのかも考察をしており、その原因は1外科処置上のエラー、2破折である。彼のこのレクチャーにおける結論としては、再根管治療が失敗に終わり抜歯をしなければならない場合に外科的歯内療法が適応となる。場合によっては外科的歯内療法の方が歯質保全という意味で保存的になり得るということである。両者の結論としては非外科的根管治療も外科的歯内療法も必要である、という至極真っ当な意見である。本公演後にDr. YoshiがDr. Jean-Yves Cochetと一緒にいたので話しかけさせてもらった。Dr. Cochetは医科と歯科の免許を持つダブルドクターであり医科の方では耳鼻科、歯科では歯内療法というユニークな経歴の持ち主である。耳鼻科が専門であるため上顎洞のアプローチはお手の物で歯根端切除時にも躊躇なく上顎洞を触るとのことであった。既に何度か日本でハンズオンをやられているが、受講ができなかったのでぜひ来年は来て下さいと両名に交渉をしておいた。3日目はここまでで午前が終了し、午後からは名門のUSC(University of SouthernCalifornia南カリフォルニア大学)のクリニック見学をさせて頂いた。AAEのセッションとは外れるので、最後のプライベートをまとめた項に記載するので、もしご興味がある方がいらっしゃったら見て頂けると幸いである。4日目(20日最終日)最終日は参加人数もだいぶ少なくなったものの、まだまだ魅力的なレクチャーが残っている。日本人に限らず早めに帰った方もいれば、観光を楽しむ方もいれば、私のような人間もいて様々である。この日の最初はDR. Marga ReeのLessons Learned in 45 Years of Endodontics(45年の歯内療法の経験から私が学んだこと)である。この手のタイトルでは抽象的な内容で昔の歴史的な事が語られるかと思われるかもしれない。だがDr. Reeは非常に革新的な歯内療法専門医であり視点が異なる。彼女の凄いところは常に新しいことにチャレンジを行い、術式に様々に工夫を行うことである。例としてはDr. 月星光博が考案した方法だと記憶しているが、意図的再植時に歯を回転させソケット側とドナー歯側の歯根膜の分布を変え、喪失した歯根膜を回復させるという方法である。また彼女の結論としては長く経過を見ればみるほど歯根破折をみる機会が多くなる。破折を回避するためには歯質を可及的に温存する必要があり、そういった治療法をすべきということだ。念の為に上記の写真の彼女の処置に関する推奨の日本語訳を付記しておく。・歯内療法の診断を確立する・プローブの値を確認する(歯根破折との関連)・補綴物を除去しクラックの進展を再確認する・必要があるなら歯内療法を行い、歯冠部歯質を可及的に温存する・クラックを有する歯は全口頭被覆を行い、側方運動の干渉や過度な咬合は避ける・クラックがある場合には患者に予知性が下がるかもしれないことを助言しておく続いてDr. WitherspoonとDr. Benjamin BarborkaのVital Pulp Therapy in Clinical Practice(VPTの臨床)である。Dr. Witherspoonは2018年の総会でもVPTのレビューをレクチャーで行っていたので、6年間でどう変化をしたのかが楽しみであった。一方のスピーカーが少し話したらスピーカーが入れ替わるといった、1人のスピーカーが話し続ける通常のセッションとは異なる進行であった。両者の連携が非常によくスムースな進行であった。ワシントンでの保険データを利用したものでVPTが行われた割合は、全歯内療法処置のうち20%であり、1%程度が歯内療法専門医により行われた。VPTの占める割合はこれくらいかと思うが(私も全処置のうちVPTが30%程度)、殆どのVPTは一般歯科医師により行われているとのことであった。断髄に関しては止血時に生食を使用するかヒポクロを使用するかという論争がある。日本では生食を使用する先生が多いように昨今は感じるが、私はヒポクロを使用する。理由としては詳しくは割愛するが、使用に際して欠点がほぼないからである。本公演でも研究論文ベースでレビューされその有用性が強調されていた。覆髄材ではMTAと水酸化カルシウムが比較され、長期経過の成功率ではMTA71%、水酸化カルシウム59%とMTAに軍配が上がるようである。Dr. Witherspoonは以前より保存可能な歯髄をViable Pulp、不可能な歯髄をNon-Viable pulpと呼称している。私はSavable, Non-Savableと呼んでいるがほぼ同一である。根管治療との成功率の比較では両者に有意差はなく、術後に疼痛発生に関しては断髄の方が少ない傾向にある。また幾つかの論文においてはVPTは根管治療と比較し準備する道具も少なく容易でテクニックセンシティブではないとしているが、彼らは否定的で筆者も同意である。両者も非特異的う蝕除去と特異的う蝕除去についてもレビューをしていたが、5年予後という期間では成功率に有意差はなかったようである。しかしながらDr. Ricucciが指摘したように、また2024に発表されたレビュー(Fraser J, Evid Based Dent 2024)では深いカリエスに対しては推奨されていないとのことである(写真赤線部)。本会最後に受講をしたのがDr. Ronald Ordinola-ZapataのPresent Status ofIntracanal Medicaments(現在の根管貼薬の立ち位置)であった。現在、アメリカでコストなどの問題から1回法が多いと聞く。再根管治療でも1回法が殆どであるという歯内療法専門医の意見も聞くことがある。筆者の知る限りでは現在、再根管治療の1回法の成功率を前向きに調査したものは1論文である。また研究対象歯は前歯のみであることからエビデンスレベルは不足しているものの研究結果では有意差はない。それでは複数回法で用いる根管貼薬は全くをもって不要なものなのだろうか。そんな疑問を払拭してくれるレクチャーであった。病変が大きく排膿が止まらず複数回法にせざるを得ない場合や、年齢による治癒遅延が見込まれる場合には貼薬を行うべきであるということを研究論文から引用していた。筆者の私見では全ての症例に適応するにはまだエビデンスは少ないが、1回法治療は歯種で制限されるものではなく、解剖などの他の制限される因子がなければ行って差し支えないと考えている。実際に根尖性歯周炎を有する大臼歯を1回法で行った症例も良好に治癒している。しかしながら、複数回法で行う症例も多いので貼薬を筆者にとっても必要なものである。以上が私のAAEの体験記である。LosAngeles滞在記以下は私の趣味というか仕事以外の記録である。成田空港からLos Angelesまでは直行便があり、行きは追い風の影響か10時間で帰りは向かい風で11時間30分であった。行きはWi-Fiが使えずプレゼンも進まず苦労をした記憶がある。帰りはWi-Fiにアクセスでき本執筆を行っていたのであまり苦労した記憶がない。気候は温暖で雨が少なくドライであるが今の時期の気温は意外なことに日本の方が高い。寒くも暖かくもないという感じであった。時差は日本が16時間進んでいるため時差ボケで眠れず苦労をした。18時ころでも写真のような明るさなので日はとても長い。まず今回の訪米で感じるのがほぼ全てものがめちゃくちゃ高いということである。異次元の円安ということもあるが米国では1人前の量が日本人には多い。大食漢の私でも多いと感じるレベルである。そして味付けは店のグレードにもよるだろうが非常にシンプルで、この味でその値段!?と驚くことはよくある。私はあまり食べ歩かなかったが、写真のようなブランチでも4000円以上した。ワッフル状のパンケーキにシロップ、フライドチキンが2つとソフトクリームのような見た目で決してソフトクリームではないものがついたものである。ソフトクリームよりも何かもっと脂っぽいものであった。そのため私はWhole foods marketというスーパー(日本で言う成城石井なので少しお高い)のデリをよく買ってホテルで食べていた。基本何でも高いがなぜか水が1ガロン(3.5リットル)で1.3$と激安なのが謎である。下のようにコストコのような見た目である。滞在したホテルはMillennium Biltmore Hotel。由緒あるホテルらしく、よく言えば伝統的ではある。しかしながらリノベーションが行われていないようで50年前にタイムスリップしたような内装ではある。私はあまり気にならないタイプなので気に入ってはいた。ここからが今回の旅の第二の目的であるUSCへの訪問である。ディレクターの先生との連絡がうまく行っておらず若干入れ違いのようになったのだが結局、大学院クリニックの見学と21日に大学内の1室で行われた卒業生パーティにも参加をさせてもらえた。卒業生パーティの方は残念ながらカメラの電池がなくなりまた、携帯電話を紛失したため写真が取れなかったが見学時には写真をとれたので幾つか載せたい。卒業生パーティの方は予めディレクターから時間あるなら来なよ、と言って貰えていたが面識がないので顔を合わせても自分が連絡してきた歯科医師とはわかるはずがない。そのため最後のセッションで座長をされていたのでレクチャー後に話しかけた。私はその前日に拾ったUberの中に携帯電話を置き忘れるという有り得ないようなミスをして交通手段がなかったのだが、残っていた卒業生の先生もパーティに参加されるようで一緒に送っていただいた。パーティでは当然、9割5分が面識のない先生(写真で見たことのある高名な先生は沢山おられたが)達ばかりであったがとても優しく受け入れて頂けた。USCは米国でもトップクラスの学費の高さでも有名であるが、歯内療法科を卒業された先生はやっぱりUSCが一番いい!と仰られていた。暗くなるとUSC周辺やダウンタウン周辺は危険であるため、まだ日があるうちにおいとまをした。交通手段がないのにどうホテルまで帰ったかと言うと、偶然知ったのだが大学からダウンタウンまで無料のバスが出ていて、唯一持っていたタブレットと大学内のWi-Fiで情報を探し無事乗れた。バス停が分かりづらかったが、いかにもアメリカの白人のおっちゃんって方に尋ねたらとても親切に教えてくれた。バスが来て自分が乗るまでちゃんと確認してくれてたので非常にいいおっちゃんである。今回、他国で携帯を失くし現在日本でも切符をいちいち買わなくてはならないという煩雑さもあるが、総じて楽しかった。私は23日まで滞在をしていたが、正直帰る際になったら現地に残りたいとさえ感じた。ここからは海外に行かれる方への注意喚起だが、日本で携帯電話に依存していればいるほど海外で亡くした際には非常に苦労をする。パンデミックのせいかバスの支払いも現金やクレジットカードで直接読み込むという支払い方法は不可で、クレジットカードで予めウェブ経由で購入しておくか、携帯でアプリをダウンロードして支払うか(私のタブレットはGoogle Playが入っているはずだがなぜかアプリをダウンロードできず、この方法を使用できなかった)、しか方法がなかった。 また、日本で使用している各種サイト、銀行やYahoo!にすらログインする際には、普段と違う環境でアクセスすると最近は2段階認証ということで携帯電話にSMSが送られ認証しなければサイトにすら入れない(Yahoo Mailが使用できない)。上記のようにタブレットの使用にもかなりの制限があったが、今回持っていかなかったら無事に日本には帰ってこられなかっただろう。そのため、海外に行かれる方にはPC・携帯のみではなく最低更にもう1つ連絡手段を持ったほうがいい。ベストは携帯電話の2台持ちだろう。もしくはiPadにすることをおすすめする。他には詐欺もある。4日目にスーツを着て昼食を食べに行く際には黒人の2人組に話しかけられ「このカメラで俺等の写真を撮ってくれ」と言われた。この時点で既に怪しいわけだが、これはよくある無理やり何かを買わせる詐欺(?)である。まずはその写真を取らせて、片方が「この相棒はすごく有名な歌手・ラッパーなんだぜ」といい、頼んでもいないのにCDを出してきて自分でサインをする。その後になぜか私にもペンを私てきてサインをするように言ってくる。私はこの手の詐欺を知っていたので、この時点で「ありがとう、でもいらないよ」と言い立ち去った。そこで私がサインしていたらこのCDを駄目にした、金を払えと言ってきただろう。親切心に漬け込んだ詐欺もあるので注意が必要だ。ロスアンジェルスは基本、夜は単独行動は危険なのでそれに比べると日本は超安全というのを実感する。あと食べ物が安くて美味しい。さて、夜は更け現在20時になるわけだが、この体験記も書き終えようやく自宅に到着をする。携帯電話を明日からどうするか考えて今日はゆっくり休むこととする。最後まで読んでいただいた先生がどの程度おられるか分からないが、お読みいただいた先生には感謝です。お読み頂きありがとうございました!
寺岡 寛
2024年5月1日
【歯科国試】歯内療法「外科的歯内療法」をマスター!

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今回は、歯内療法学の「外科的歯内療法」について解説していきます。近年の歯科医師国家試験を分析すると、この項目から出題されているものは大きく分けると以下の4つになります。歯根端切除術および逆根管充填の術式切開方法の選択超音波レトロチップについて意図的再植が不適な理由というわけで、これからひとつずつ解説をしていきます。まずは「歯根端切除術および逆根管充填の術式」からです。ここは、この項目の根幹といっても過言ではないほど重要な箇所です。ここができないと「外科的歯内療法」の問題を正解することは厳しいですので、しっかり押さえていきましょう。まずは、過去問を見てみましょう。アイウエを読むと、「根尖切除」と「逆根管充填」とありますので、この2つを併用したときの術式を問う問題であることがわかります。術式は上図のようになります。順番は下記になります。1 歯肉弁の剥離2 肉芽組織の掻爬3 根尖切除4 逆根管充填5 歯肉弁の縫合では、先ほどの問題を振り返ってみると、ア 縫合イ 根尖切除ウ 逆根管充填エ 肉芽組織の掻爬とありますので、エ→イ→ウ→アの順となり、dが正解となります。ここまでが基本です。この術式をしっかり押さえていること。これが最初のステップになります。ではこの術式をもとに出題されやすい4項目を並べてみます。このように術式順に並べてみると、どこが聞かれているのか整理がつくと思います。過去問の傾向を整理してみると術式の細やかな内容を深堀している、という感じですね。では、次の項目の「切開」についてみていきましょう。まずは切開線のおさらいから。以下の3つが基本的な切開線になります。ここが苦手な方も、この3つだけはまず押さえておいてください。特に大事になってくるのは、最初のPartsch法とWassmud法の2つです(実際はこの2つに加え、Ochsenbein-Luebke切開、三角形切開が行われますが、今回はあくまで初歩的な解説ですので割愛させていただきます)。ここの項目に関してはこの2つが分かっていれば正解できることが多いです。というわけでさっそく、過去問を見ていきましょう。この問題は切開線を聞いている問題ではないのですが、左上の写真に注目してください。このときの切開線は先ほどの3つのうちどれにあたるでしょうか?これはWassmund法ですよね。レントゲン写真から逆根管充填は行っていないので、正解はb(歯根尖切除)とe(炎症組織の除去)になります。この問題で注目してほしかったのは、外科的歯内療法の問題のときに出てきた切開線はWassmund法だったということです。これは105回の問題でしたので、もう少し新しい問題を確認してみます。この問題の正解はe(オ)になります。レントゲン写真からかなり大きな根尖病巣であることがわかり、外科的歯内療法が適応となることが読み取れます。そこでどんな切開線が適切かという内容ですが、これはe(オ)のWassmund法が正解であることは、これまでの内容からもすぐに選べます。またc(ウ)はPartch法で一見すると正しいように思えます。しかしここでポイントになってくることは、切開線の位置です。107D-2の写真では切開線が歯肉縁ギリギリまできています。ここがこの選択肢が誤答肢である根拠になります。Partsch法は、「切開線は歯肉縁から5mm離すこと」とされています。ですからこの選択肢は誤答となります。またレントゲン写真から、大きな病巣であることが判明しており、この切開線では骨欠損上に切開線がくることになり不適になります。以上の2つが根拠となり、選択肢cは誤答となります。ここまでで切開線に関しては、いまのところWassmudとPartschが聞かれいることがわかったと思います。ですのでまずはこの2つの切開線を押さえておくことが、この項目では大切になります。116回歯科国試を受験される方へ第116回歯科医師国家試験を受験される方向けの「夏期講習」を8月に開催します。講師には歯科国試予備校・DENTAL YOUTH主宰、キレ味あるわかりやすい講義に定評がある上原秀一先生を起用。講義1コマは人間の集中力の限界を考慮し、40分に設定。会場の座席数の都合で、お申し込みは「先着順」となります。ぜひ、今すぐお申し込みください!講習の詳細を見てみる
ころちゃん 先生
2022年8月2日
一流ドクターの仕事術 #1|伊藤創平

一流ドクターの仕事術 #1|伊藤創平

歯科界のトップを走るドクターに仕事の極意を学ぶ「一流ドクターの仕事術」。今回は、千葉県浦安市で開業しているITO DENTAL OFFICEの伊藤創平先生にインタビューしました。祖母の入れ歯がきっかけで歯科医師にーー歯科医師になり、開業して現在に至るまでの経緯を教えてください。私が歯科医師を志したのは、同居していた祖母が歯科で困っていたからです。祖母は当時なかなか自分に合う歯医者にめぐり合うことができず、神田の歯科医院までわざわざ通っていました。私の高校生時代に進路を決定する際に「祖母が将来通えるために、地元の新浦安で信頼できる確かな技術を持った歯科医院を作りたい」という想いがあり歯学部を受験することになりました。小さい頃からお婆ちゃん子だったことから祖母の姿が私のなかで大きかったですね。そんな想いを持って晴れて歯科医師になったにも関わらず、一度本気でこの仕事を辞めようと思ったことがありました。それは卒業して2年目のことです。上顎前歯部の自費での補綴症例で、患者さんの希望に沿って天然歯を削って、審美的要求にこたえました。患者さんは喜んでくれましたし、当時の院長にも褒められましたが、自分のなかには消すことのできない違和感が残りました。形成、印象の精度は?また咬合調整は適切に行えたのであろうか?商業誌で見る先輩方の症例写真には遠く及ばない処置だと分かっているのに免許を取得し白衣を着ているからか患者さんからはお金をいただき喜ばれる。このギャップに疑問を感じました。また「こんなことをするために歯科医師になったのか?」と自問自答しました。いっそのこと美味しくなかったら潰れてしまうラーメン屋さんやそば屋さん(当時の私のイメージです)の方がフェアで競争原理が健全。「自分の腕」と「地域や金銭の評価」が比例しそうで心が楽かなと思いました。自分なりには妥協せずに治療に当たっていたつもりですが、その治療の質がどのレベルにあるのかは自分の心が一番わかっていました。同業者の目から見ても恥ずかしくない治療をしたいという気持ちがありましたし、患者さんへ迷惑をかけることは歯科医師としての誇りとしてあってはならないと、自分に満足することはなかった毎日でした。そんなタイミングで恩師(東京都中央区ご開業、難波郁雄先生)との出会いがあり、勉強ができる環境を与えてくださいました。そのタイミングから、自分の思っていた歯科医師像に近づけそうだと再起できました。ーー臨床で「これには自信がある」ということはありますか?私の場合、歯内療法の問題を解決することには自信があります。もともと、歯内療法という分野は専門的なトレーニング積むことによって、根管治療と外科的歯内療法を組み合わせるとほぼ問題を解決することができる分野です。今日もちょうど、シンガポールから1年前に行った歯根端切除術の経過観察している患者さんが来院するなど、遠方からの患者さんも少なくありません。診査・診断が最も重要ーー歯内療法を専門にしているんですね。逆に、失敗ってありますか?私が今のように専門になる前の話ですが、今でも戒めとなる思い出があります。開業2年目の頃「とにかく歯髄を残そう!」という考えで処置をしました。しかしながらいまの知識に照らしてみるとその歯髄の状態は不可逆性歯髄炎だったのです。自発痛の既往がありました。そのような歯髄を保存しても痛みは強くなるばかり。結局、その患者さんは転院してしまいました。僕の診査・診断の勉強不足がゆえに患者さんに余計な痛みを与えてしまった、そう思うと今でも申し訳なかったと思います。歯科医院の環境づくりにこだわるーー患者さんのために院内の環境づくりで気をつけていることは何ですか?当院では、患者さんのアポの多くは60分単位で取っています。僕がエンド治療する時は90分を1コマで予約を取る。きちんとした治療をしようとすると、必然的にそれくらいの時間を取らないとできないと私は思っています。自分が患者だったら、15分で回されたくありませんからね。そういうシステムも需要があることは理解していますが、自分の思う診療を妥協せずに提供するには適切な時間を確保することは必要です。またカウンセリングも重要です。初診時も、治療途中も、メインテナンスに移行する時も、カウンセリングを十分に行うことでそれぞれの患者さんの歯科への想いを聴けるだけでなく、患者さんへの治療法の提示や予防を啓蒙することができる。もちろん治療中の患者さんへの配慮にも気をつけています。患者さんが歯科医院を怖がる理由は2つあると思っています。1つは単純に痛み。もう1つは自分が何をされているかわからないことです。前者は麻酔の工夫でなんとか対応するとして、後者に関してはマイクロスコープで見えている映像をリアルタイムでモニターに投影して、患者さん見てもらっています。実際に見ていただくことによって何をされているか分かり、歯科治療に興味を持ってくださることもよくあります。また治療後にその写真をダイジェストでお見せすることによって信頼関係ができると実感しています。ーー医院で働くスタッフに対しては、何かありますか?「委員会活動」には力を入れています。当院の委員会活動はスタッフによる運営によるもので私は報告を受けるのみ。口を出すことはありません。これまではホスピタリティー委員会や5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)委員会、歯周病啓蒙委員会などを立ち上げました。常にスタッフに最大の裁量権を与えるように意識しています。スタッフが出してくれた提案に対して、僕は基本的にNOと言いません。それはスタッフも彼らなりに必死に考えて提案してくれているアイデアを推敲を重ねた上で伝えてくれていると思うからです。「まずやってみる、その後修正する」と行動することになれと楽しさを感じて欲しいと思っています。また人事評価を半年ごとに行っています。スタッフの自己評価と経営側の評価を出し合ってギャップがあれば話し合い、自分で半年間の目標を定性的・定量的の両者で決めてもらっています。それを当院のアクションプランシートに書き込んでもらい、他のスタッフからも何を頑張ろうとしているのかを見えるよう、ロッカーに貼ってもらい全員で共有しています。診療所の求める方向性を我々が示すことによりスタッフは頑張りやすくなると感じています。また経営状況をなるべくガラス張りにすべくカルテやレセコン、予約管理系のシステムはそれぞれデータで管理し、月単位で新患数(紹介あり・なし)、キャンセル率や売上げなどの数字を共有しています。マイクロスコープへの愛と情熱ーー「これがなければ仕事にならない」という機材はありますか?マイクロスコープです。もう手放せないですね(笑)。当院はユニットが6台あるのですが、そのうち4台にマイクロスコープを設置しています。私はドイツの老舗顕微鏡メーカーであるカール・ツァイスのプロエルゴという機種を使っています。6台あるルーペも含め拡大装置はカール・ツァイス社を愛用してます。ーーその他に、院内で気を配っていることを教えてください。院内では明るいBGMを流すようにしています。例えば夏にはハワイアンな曲が流れ、冬にはクリスマス・ソングを、そのほかジャズや話題の映画のサウンドトラックをかけたりもします。患者さんだけでなくスタッフに対しても気持ちの良い空間づくりは考えたいですよね。 またお札でのお釣りは必ず診察でお返しするようにしています。これは開業当時からのこだわりです。こういう取り組みによってスタッフ、業者さん、患者さんの周囲へと輪が広がって歯科は面白い!真摯にやっている!と国民の方々に思ってもらえる業界にしていきたいですね。歯科セミナーなら「1D(ワンディー)」で!日本最大級の歯科医療メディア「1D」では、診療に役立つオンラインセミナーを多数開催中。もっと知りたい臨床トピックから超ニッチな学術トピックまで、参加したいセミナーが見つかります。下記ボタンから、開催中のセミナーを見てみましょう!開催セミナーを見てみる
1D編集部
2019年10月20日

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