歯科用語集
2025年10月28日

クエン酸

「クエン酸」とは?歯科用語の解説と症例を紹介

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定義・語源

クエン酸とは、化学式C6H8O7で表される有機酸であり、主に柑橘類に含まれる成分である。クエン酸は、1860年代にフリードリッヒ・オスカー・ギーゼルによって発見され、その名はラテン語の「citrus(柑橘)」に由来する。食品業界では酸味料や保存料として広く利用されており、医療分野でもその抗菌作用やpH調整剤としての特性が注目されている。歯科においては、特に歯のエナメル質に対する影響が重要視される。


臨床における位置づけ・判断基準

クエン酸は、歯科臨床においては主に口腔内のpHバランスに影響を与える要素として位置づけられる。酸性の飲食物が歯に与える影響は大きく、特にクエン酸を含む飲料はエナメル質の脱灰を促進する可能性があるため、患者への指導が必要である。判断基準としては、クエン酸を含む食品や飲料の摂取頻度、摂取後の口腔ケアの実施状況が挙げられる。これに基づき、患者のリスク評価を行い、適切な予防策を講じることが求められる。

関連用語・類義語との違い

クエン酸に関連する用語としては、リンゴ酸や乳酸が挙げられる。リンゴ酸は主にリンゴに含まれる有機酸であり、酸味を持つが、クエン酸とは異なる化学構造を持つ。また、乳酸は主に筋肉の代謝過程で生成される酸であり、口腔内での影響はクエン酸とは異なる。これらの有機酸は、いずれも口腔内のpHに影響を与えるが、それぞれの特性や影響の程度は異なるため、歯科医師はこれらの違いを理解し、患者に対する指導に活かす必要がある。

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成人の約30%が罹患していると推計される「知覚過敏」データで見る知覚過敏知覚過敏は日常臨床においてもよく見られる症状ですが、実際に3人に1人が知覚過敏症状を経験しており1,2、若年者*に至っては5人に2人が経験しています。3*18~35歳また成人の2/3が歯周病に罹患していると言われている現代、歯周病罹患患者のうちで知覚過敏症状を発症しているとされる方は60%以上*とされています。冷たいものや甘いものを口にした際に感じる鋭い痛みは、日常生活において大きなストレスとなるため、歯周病だけでなく知覚過敏症状も現代人の口腔内の悩みとして大きい割合を占めていると言えるでしょう。*Haleon調べ知覚過敏の病理・病態カリエスがなく、しみるという訴えがあるとき「知覚過敏」と一言でまとめてしまいがちですが、その定義はエナメル質が摩耗したり歯肉が退縮することによって象牙細管が露出することで生じる一過性の疼痛で、刺激(主として熱,脱水,擦過,浸透圧,化学的刺激)を加えることにより短く鋭い痛みを発するのが特徴です。知覚過敏が発症するケースは多岐に渡りますが、開口した象牙細管の内部にある組織液がさまざまな刺激により動くことにより、閾値が下がり、鋭敏となった象牙細管内の神経終末や象牙芽細胞が興奮し痛みが生じるという動水力学説が一般的に考えられています。Hys症状改善方法の違い知覚過敏の発生機序から考えて、症状改善方法として3つの方法が考えられます。1つめは結晶物を析出させたり、レジン系やグラスアイオノマーセメント系の材料で行う「象牙細管の封鎖」です。次に、グルタールアルデヒドとハイドロキシエチルメタクリレート(HEMA)などを主成分とする各種製品やレーザーなどにより「タンパク質を凝固させることにより細管内組織液が動かないようにする」方法があります。この2つが主にオフィスケアで用いられている方法です。3つめの方法である「知覚鈍麻(閾値上昇)」に関しては、硝酸カリウムを主として有効成分とする製品が知られています。オフィスケア用の製品もありますが、そのほとんどが歯磨剤としてセルフケア用に使用されており、予防も含め、ホームケアとして有効成分が含まれた歯磨剤を普段から使用することによって適切な効果を発揮していきます。市場に溢れる知覚過敏症状の抑制効果を謳った各種材料は、いずれも上記のどれかが(複数の場合もあり)採用されています。参考資料1.Addy M. Int Dent J 2002; 52:367–375.2.Ipsos Claimed Penetration Omnibus. January, 2015.3.West NX et al. J Dent 2013; 41:841–851.知覚過敏には患者さんのセルフケア習慣化も重要なぜセルフケアが重要なのか?適切な診断のもと、知覚過敏症状に対する正しい原因除去を行うことができればほとんどの症状は治まりますが、現実には処置後も続く患者の訴えに困ることもあるかもしれません。そのようなときには、繰り返し同じ知覚過敏症状を抑制する製品を使用したり、異なる製品を用いるしか方法はないのでしょうか?実は、知覚過敏症状を抑制するためには効果的な順番があり、その順序を守らないと望ましい効果が得られないのです。まずは「知覚鈍麻」させた後に「凝固」させ、それから「象牙細管の封鎖」を行うというプロセスで行うのが望ましいでしょう。凝固や象牙細管の封鎖に関する処置を行なった後に知覚鈍麻を行なっても、効果は十分に期待できず、治らない症状に対して次の手がなくなり困ることになるかもしれません。そのため、患者さんの日々のセルフケアによる知覚過敏に対するアプローチも重要になってくるのです。セルフケアの原則は「歯磨き」知覚過敏の主な原因のひとつとしてプラークコントロールの不良が挙げられますが、プラークの付着は象牙細管の開口に関わるため適切なセルフケアによるプラークコントロールは知覚過敏症状抑制の原則となります。また、軽度の知覚過敏症状であれば、酸性食品、飲料の摂取を控えて適切なプラークコントロールを行えば自然に治癒する場合もあり、予防も兼ねて知覚過敏ケア効果のある歯磨剤を使用して歯磨きを行うことが知覚過敏に対する基本的な対処法として考えられます。知覚過敏ケアの定番『シュミテクト』『シュミテクト』は、知覚過敏の症状を予防するための歯磨剤で、海外では『Sensodyne(センソダイン)』と呼ばれ、世界中で高く評価されています。知覚過敏用の歯磨剤の市場規模が拡大する中、『シュミテクト』は特に注目されるブランドであり、2024年1月時点で、18年間連続で売上を伸ばし、市場をリードしています。*歯がしみるのを防ぐ「硝酸カリウム」や、歯肉の炎症を抑える「グリチルリチン酸モノアンモニウム」、う蝕予防に役立つ「高濃度フッ素1,450ppm」も含まれており、知覚過敏症状だけでなく、歯周病、口臭、ホワイトニング、う蝕といった多様なオーラルケアニーズにも対応しています。*インテージSRI+ハミガキ市場2023年5月~2024年4月累計販売金額シェア(「シュミテクト」シリーズ計)『シュミテクト』研究員にインタビュー『シュミテクト』の歴史と『シュミテクトプラチナプロテクト EX』の開発秘話今回は、Haleonジャパン株式会社のオフィスに実際に伺い、研究開発担当の中谷 遼太朗氏に、『シュミテクト』の歴史と、新商品の『シュミテクトプラチナプロテクトEX』の開発秘話についてお伺いしました。Haleonジャパン株式会社 研究開発担当 中谷 遼太朗氏── まずは、シュミテクトの歴史について教えていただけますか?はい、シュミテクトの歴史は非常に長いです。まず、1961年にアメリカとイギリスで『Sensodyne original』として誕生しました。その後、1980年に、硝酸カリウムを含む初の歯磨剤『Sensodyne F』が登場し、臨床的に知覚過敏症状抑制効果が証明され、画期的な製品として大きな注目を集めました。1992年には、日本で初めて硝酸カリウムを配合した『シュミテクト』が発売され、それ以来、多くの方に愛用されています。さらに進化を続け、2024年3月には『シュミテクトプラチナプロテクトEX』が新たに発売されました。── 新製品『シュミテクトプラチナプロテクトEX』の開発に至った背景をお聞かせください。ワンディー株式会社 編集部・高橋 佳奈これまでのシュミテクト製品は、知覚過敏症状に対する有効成分として硝酸カリウムを主に配合していました。従来の製品でも十分に効果を発揮していましたが、より広範囲のユーザーに効果を届けたいという思いから、今回の『シュミテクトプラチナプロテクトEX』では新たに、有効成分の乳酸アルミニウムを加えました。これにより、より幅広いニーズに応えることができる、さらに効果的なケアを実現する製品が完成したと考えています。『シュミテクトプラチナプロテクトEX』の特徴とエビデンス── 『シュミテクトプラチナプロテクトEX』の主な特徴について教えていただけますか?先ほどもお伝えしたのですが、『シュミテクトプラチナプロテクトEX』は、硝酸カリウムと乳酸アルミニウムという2つの有効成分を配合しています。硝酸カリウムは歯髄神経の過敏性を鎮めることで、内側からの知覚過敏症状を軽減します。一方、乳酸アルミニウムは露出した象牙細管の穴を塞ぎ、唾液中のリン酸イオンと結びついてリン酸アルミニウムとして結晶化し、外側からの刺激を防ぎます。Haleonジャパン株式会社 メディカルアンドサイエンスアフェアーズ オーラルヘルス研究員 金山 昌氏このダブルの効果により、「鈍麻」と「封鎖」の両面から知覚過敏にアプローチします。さらに、寝ている間が知覚過敏ケアに有効な時間であることに着目し、こちらの『プラチナ プロテクトEX 集中ナイトケア』を開発しました。就寝前に使用していただくことで、長時間有効成分が歯にとどまり、象牙細管をしっかり封鎖し、外からの刺激を防ぎます。この他にも、歯周病予防のために、抗炎症作用を持つ「グリチルリチン酸モノアンモニウム(MAG)」、う蝕予防として「高濃度フッ素」が含まれており、知覚過敏の症状を防ぐだけでなく、歯周病やう蝕予防にも効果的なケアが行えます。── 『集中ナイトケア』の効果を示すエビデンスはありますか?ナイトケア製品は、象牙細管の封鎖効果が8時間後に2倍以上増加することが研究データで確認されています。このデータは、ナイトケアとして就寝前に使用することで、長時間にわたり知覚過敏をケアできることを示しています。さらに、これだけではなく、当製品は耐酸性の効果も持ち合わせています。酸性のクエン酸溶液を用いた実験では、封鎖物が流されず、酸に対して強い保護層が形成されることが証明されました。── 製品の信頼性については、どのような点が重視されていますか?当社では「信頼されるサイエンス」を理念に掲げ、科学的根拠に基づいた製品開発を行っています。法律で義務付けられていないことでも、品質保証のために社内の厳しい基準を設けています。たとえば、私たちの歯磨剤は全て、品質保証期間を通じて、フッ素がう蝕予防に有効な形(遊離フッ素)として製品に存在することを担保しています。また、新たに配合した乳酸アルミニウムは酸性の成分ですが、歯磨剤のpHをを中性に保ちながら有効成分の効果を最大限に発揮できるように設計されています。これは高度な技術であり、成分同士の相互作用を考慮しつつ効果を保つためのバランスを取ることが求められます。このような徹底した品質管理と研究開発の取り組みが、実際に製品を使用したお客様から「効果を実感した」「知覚過敏症状が改善した」といった評価を得ることにつながっていると考えています。Haleonヘルスパートナーに登録する3つのメリット!Haleonヘルスパートナー(旧:GSKヘルスパートナー)ではオーラルヘルス、特にセルフケアに関する知識を深めるためのコンテンツや、歯科医療従事者の日々の臨床をサポートする情報を提供するプラットフォームです。著名な講師が登壇。臨床に役立つ情報をウェブ講演会で無料配信!象牙質知覚過敏症、歯周病、義歯安定剤や義歯洗浄剤、口腔内装具用洗浄剤に関するウェブ講演会を無料でご視聴いただけます。過去のウェブ講演ダイジェスト 動画もご覧いただけます。 患者さん用無料サンプルでセルフケアを習慣化!診療がスムーズに患者さんのセルフケア習慣化をサポートするための患者さん用製品サンプルをご依頼いただけます。歯磨剤(シュミテクト・カムテクト)や義歯安定剤、義歯・口腔内装具用洗浄剤などインターネットから簡単に患者さん用サンプルをオーダーいただけます。日々の臨床にお役立てください。製品情報と患者さん用資材ダウンロード製品情報や、セルフケアの指導に活用していただける患者さん用資材をダウンロードいただけます。ぜひ、こちらよりアカウント登録をして申し込んでみてはどうでしょうか。無料で登録する
1D編集部
2024年9月27日
クエン酸の歯科臨床における利用法とそのメリット・デメリット

クエン酸の歯科臨床における利用法とそのメリット・デメリット

クエン酸の定義とその役割クエン酸は、柑橘類に多く含まれる有機酸であり、食品添加物や医療分野でも広く利用されている。歯科においては、主に口腔内のpH調整や抗菌作用が期待される。特に、歯周病やう蝕の予防において、クエン酸の効果が注目されている。クエン酸の処置における利用方法クエン酸は、歯科治療においてさまざまな処置に利用される。例えば、歯石除去後の口腔内のpHを調整するために使用されることがある。また、クエン酸を含む洗口液は、口腔内の細菌数を減少させる効果があるため、歯周病患者に対する補助的な治療としても有効である。クエン酸の術式における具体的な手順クエン酸を用いた術式は、主に洗口液としての使用が一般的である。具体的な手順としては、クエン酸を適切な濃度に希釈し、患者に口腔内で数分間保持させる。その後、うがいを行い、口腔内の清浄を図る。この際、患者の口腔内の状態に応じて、使用する濃度や頻度を調整することが重要である。クエン酸の使用におけるメリットとデメリットクエン酸の使用にはいくつかのメリットがある。まず、抗菌作用により口腔内の細菌数を減少させることができる点が挙げられる。また、pHを調整することで、歯のエナメル質の保護にも寄与する。しかし、デメリットとしては、過剰な使用が歯のエナメル質に悪影響を及ぼす可能性があるため、使用量や頻度には注意が必要である。クエン酸の使用における注意点クエン酸を使用する際には、いくつかの注意点がある。まず、患者の口腔内の状態を十分に診査し、適切な使用方法を選定することが重要である。また、クエン酸の濃度や使用頻度を誤ると、歯のエナメル質にダメージを与える可能性があるため、慎重に取り扱う必要がある。クエン酸の臨床症例とその効果クエン酸を用いた臨床症例としては、歯周病患者に対する補助的な治療が挙げられる。実際の症例では、クエン酸を含む洗口液を使用した患者において、口腔内の細菌数が有意に減少したとの報告がある。このように、クエン酸は臨床において有用なツールとなる可能性がある。今後のクエン酸の研究と展望クエン酸の歯科における利用は、今後さらに研究が進むことが期待される。特に、クエン酸の新たな応用方法や、他の治療法との併用効果についての研究が進むことで、より効果的な歯科治療が実現する可能性がある。
1D編集部
2024年6月1日
クエン酸処理の臨床応用とその手順。歯科医師・歯科衛生士が知っておくべき症例とメリット

クエン酸処理の臨床応用とその手順。歯科医師・歯科衛生士が知っておくべき症例とメリット

クエン酸処理の定義とその重要性クエン酸処理とは、歯科において特にエナメル質や象牙質の表面を酸性のクエン酸溶液で処理する技術である。この処置は、歯の表面を清掃し、微細な汚れやバイオフィルムを除去することを目的としている。クエン酸は、歯科用のエナメル質の脱灰を促進し、再石灰化を助ける特性を持つため、特にう蝕予防や歯のホワイトニングにおいて重要な役割を果たす。この処置は、歯科衛生士が行うことが多く、患者の口腔内環境を改善するための一環として位置づけられている。クエン酸処理を適切に行うことで、歯の健康を維持し、治療の効果を高めることが可能である。クエン酸処理の手順と注意点クエン酸処理の手順は、以下のように進めることが一般的である。まず、患者の口腔内を十分に観察し、必要に応じて診査を行う。次に、クエン酸溶液を用意し、適切な濃度に調整する。通常、1%から5%の濃度が使用される。処理を行う際は、歯の表面にクエン酸を均一に塗布し、数分間放置する。その後、十分に水で洗浄し、残留物を除去することが重要である。クエン酸処理は、エナメル質や象牙質に対して行うため、過度の処理は脱灰を引き起こす可能性があるため注意が必要である。また、患者に対して処置後の注意点を説明し、適切な口腔ケアを促すことも重要である。クエン酸処理のメリットとデメリットクエン酸処理のメリットは多岐にわたる。まず、エナメル質の表面を滑らかにし、バイオフィルムの形成を抑制することで、う蝕のリスクを低下させることができる。また、ホワイトニング効果も期待できるため、美容的な観点からも有用である。さらに、クエン酸処理は比較的簡便で、短時間で実施可能なため、患者への負担も少ない。一方で、デメリットとしては、過度の使用がエナメル質の脱灰を引き起こすリスクがあることが挙げられる。また、特定の患者においては、クエン酸に対するアレルギー反応が出る可能性もあるため、事前の確認が必要である。これらの点を考慮し、適切な判断を行うことが求められる。クエン酸処理の症例と臨床での応用クエン酸処理は、特にう蝕のリスクが高い患者や、歯の色素沈着が気になる患者に対して有効である。例えば、矯正治療を受けている患者においては、ブラケット周囲のプラークコントロールが難しいため、クエン酸処理を行うことで、エナメル質の健康を維持することができる。また、ホワイトニングを希望する患者に対しても、クエン酸処理を行うことで、歯の表面を整え、ホワイトニング剤の効果を高めることが可能である。これらの症例において、クエン酸処理は非常に有用な手段となるため、歯科医師や歯科衛生士はその適切な使用法を理解し、臨床に応用することが求められる。クエン酸処理の今後の展望クエン酸処理は、今後ますます注目される技術である。特に、歯科における予防的アプローチが重視される中で、クエン酸の特性を活かした新たな処置法や応用が期待される。研究が進むことで、より安全で効果的な使用法が確立されることが望まれる。また、患者のニーズに応じた個別化された治療法の一環として、クエン酸処理を取り入れることが、歯科医療の質を向上させる鍵となるであろう。歯科医師や歯科衛生士は、最新の研究やガイドラインを常に把握し、臨床に活かすことが求められる。
1D編集部
2024年6月1日
歯周組織再生治療の今・未来

歯周組織再生治療の今・未来

これまで有効な治療法が無かった疾患の治療が可能になるなど、失われた組織を取り戻す「再生医療」が脚光を浴びている。歯科医療も例外ではなく、特に歯周治療分野では盛んに再生医療の日常臨床への応用がされつつある。歯周治療における再生治療の実際や今後の展望について、本記事では解説する。歯周組織再生治療の歴史的経緯歯周炎の進行により、歯周組織は破壊されていく。近代歯科医学が創始されてから、破壊された歯周組織を再生しようと、多くの研究者が挑戦を続けてきた。1976年、Melcherはある仮説を提唱した。「歯根膜由来細胞が歯周外科手術後の歯根面に増殖した場合に、歯周組織の再生が起こる」という理論だ。そのおよそ5年後、Melcherの仮説をベースとしたNymanらが、遮蔽膜を用いた歯周組織の再生治療を編み出し、初めて新付着を獲得することに成功した。この術式は、組織再生誘導(Guided Tissue Regeneration; GTR)法と呼ばれ、今日の臨床応用につながっている。現在臨床応用されている歯周組織再生治療日常臨床で行われている歯周組織再生治療には、骨移植術、GTR法、エナメルマトリックスデリバティブ(EMD)の3つが挙げられる。それぞれの術式について、簡単に解説を行っていこう。欠損部に骨を充填する「骨移植術」骨移植術は、歯槽骨の欠損部に骨移植材を充填することにより歯周組織の再生を図る術式である。骨移植材には自家骨、他家骨、異種骨、人工骨といった種類がある。ゴールドスタンダードとして用いられるのは自家骨であるが、侵襲性や採取部位に課題を残している。米国においては、他家骨である脱灰凍結乾燥骨(DFDBA)が普及しているが、感染症や倫理的観点から日本では認可されていない。異種骨としてはウシ焼成骨が使用されている。また、ハイドロキシアパタイトや三リン酸カルシウムに代表される人工骨も臨床で用いられている。根面処理とエナメルマトリックスデリバティブStahlらは、クエン酸やテトラサイクリンで歯根面を脱灰させ、象牙質のコラーゲン線維を露出させることで、周囲組織の間葉系細胞のセメント芽細胞への分化を促進し、セメント質を再生する方法を提案した。この方法は動物実験では効果を上げたが、臨床研究では結果を出せていない。また、歯根面をEDTAで脱灰させ、そこにEMDを適用する方法をHeijlらやhammarstormらが提案した。このアイデアをスウェーデンのBiora社がEmdogain®として製品化し、日本においてもエムドゲイン® ゲルとして臨床利用可能である。まだまだ課題の多い「GTR法」GTR法は、歯槽骨の欠損部に遮蔽膜を設置することで、歯根膜由来細胞だけを選択的に誘導し、歯周組織を再生するという発想だ。臨床での難易度や複雑な骨欠損への応用などの課題を残しているが、適応症を的確に選択すれば予知性を持った結果が得られる。GTR法により再生した歯周組織は、セメント質の構造や歯根膜のコラーゲン線の走行が正常とは異なっているという報告もある。Araujoらはこれについて「GTRはGuided Tissue Repairの略なのでは」と指摘をしている。歯周治療は大きく変わっていく歯周組織再生治療は、歯周治療の臨床レベルを押し上げるポテンシャルを秘めている。現在は歯周組織の再生量や適応症の狭さなどの課題が山積しているが、それらを解決していくことにより、歯周治療は大きく変わっていくことだろう。歯科セミナーなら「1D(ワンディー)」で!日本最大級の歯科医療メディア「1D」では、診療に役立つオンラインセミナーを多数開催中。もっと知りたい臨床トピックから超ニッチな学術トピックまで、参加したいセミナーが見つかります。下記ボタンから、開催中のセミナーを見てみましょう!開催セミナーを見てみる参考文献Melcher AH.On the repair potential of periodontal tissues.J Periodontol.1976;47:256-60Nyman S,Lindhe J,Karring T and Rylander H.New attachment following surgical treatment of human periodontal disease.J Clin Periodontol.1982;9:290-6.Parashis A, Andronikaki-Faldami A, Tsiklakis K. Clinical and radiographic comparison of three regenerative procedures in the treatment of intrabony defects. Int J Periodont Rest Dent. 2004;24:81-90.Stahl S,Slavkin HC,Yamada L and Levine S.Speculations about gingival repair.J Periodontol.1972;61:395-402.特定非営利活動法人 日本歯周病学会『歯周病患者における再生治療のガイドライン』2012.
1D編集部
2019年11月8日

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