歯科用語集
2025年10月28日

アセトアミノフェン

「アセトアミノフェン」とは?歯科用語の解説と症例を紹介

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定義・語源

アセトアミノフェンは、非オピオイド系鎮痛薬であり、痛みを和らげる効果を持つ。化学的には、パラアミノフェノールの誘導体であり、英語では「Acetaminophen」と呼ばれる。日本では、一般的に「パラセタモール」とも称される。アセトアミノフェンは、主に頭痛や筋肉痛、関節痛、風邪やインフルエンザによる発熱の緩和に用いられる。薬理作用としては、脳内のプロスタグランジン合成を抑制することにより、鎮痛・解熱作用を発揮する。


臨床における位置づけ・判断基準

アセトアミノフェンは、歯科領域においても広く使用されている。特に、歯科治療後の痛み管理においては、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)と並んで第一選択薬とされることが多い。アセトアミノフェンは、胃腸への負担が少なく、出血リスクも低いため、特に高齢者や消化器疾患を有する患者に対して推奨される。使用にあたっては、肝機能障害の有無や、他の薬剤との相互作用を考慮する必要がある。

関連用語・類義語との違い

アセトアミノフェンは、パラセタモールやアセトアミノフェンと呼ばれることがあるが、これらは同一の化合物を指す。対照的に、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)やオピオイド系鎮痛薬とは異なる作用機序を持つため、使用目的や副作用が異なる。NSAIDsは抗炎症作用を有するため、炎症を伴う痛みに対して効果的であるが、アセトアミノフェンは主に鎮痛・解熱に特化している。これらの違いを理解し、適切な薬剤選択を行うことが臨床において重要である。

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アスピリン喘息と歯科治療における注意点。歯科医師・歯科衛生士が知っておくべき症例と処置のポイント

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アスピリン喘息の定義と症状アスピリン喘息は、アスピリンや非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)に対する過敏反応として発症する喘息の一種である。主な症状には、喘鳴、呼吸困難、咳嗽、胸部圧迫感などが含まれる。これらの症状は、アスピリン摂取後に急激に現れることが多く、特に喘息の既往歴がある患者においては注意が必要である。アスピリン喘息は、アスピリンに対するIgE非依存性の反応であり、特に成人に多く見られる。患者の中には、アスピリン以外のNSAIDsにも反応することがあるため、歯科治療においては、これらの薬剤の使用に慎重になる必要がある。アスピリン喘息患者における歯科治療の注意点アスピリン喘息を有する患者に対しては、歯科治療を行う際にいくつかの注意点が存在する。まず、アスピリンやNSAIDsを含む薬剤の使用を避けることが重要である。これにより、喘息発作を引き起こすリスクを低減できる。また、局所麻酔薬の選択にも注意が必要である。エピネフリンを含む麻酔薬は、喘息の悪化を引き起こす可能性があるため、使用を控えるか、慎重に判断する必要がある。さらに、治療中に患者の呼吸状態を常にモニタリングし、異常があれば直ちに対応できる体制を整えておくことが求められる。アスピリン喘息患者の診断と評価アスピリン喘息の診断は、主に患者の病歴と症状に基づいて行われる。喘息の既往歴やアスピリン摂取後の反応について詳細に聴取することが重要である。診断を確定するためには、アスピリン負荷試験が有効であるが、これは専門医の指導のもとで行うべきである。歯科医師は、患者の喘息の重症度やコントロール状態を把握し、治療計画を立てる際にこれらの情報を考慮する必要がある。アスピリン喘息患者への処置と術式の選択アスピリン喘息患者に対する処置や術式の選択は、患者の状態に応じて慎重に行うべきである。例えば、歯科治療においては、痛み管理のためにアセトアミノフェンを使用することが推奨される。また、手術を行う場合には、全身麻酔を避け、局所麻酔を選択することが望ましい。さらに、術後の管理においても、喘息の発作を防ぐために、適切なフォローアップを行うことが重要である。アスピリン喘息患者の治療におけるメリットとデメリットアスピリン喘息患者に対する歯科治療には、いくつかのメリットとデメリットが存在する。メリットとしては、適切な処置を行うことで、患者の口腔健康を改善し、全身の健康状態を向上させることができる点が挙げられる。一方、デメリットとしては、アスピリンやNSAIDsの使用が制限されるため、痛み管理が難しくなることがある。また、喘息発作のリスクが高まるため、治療中の注意が必要である。アスピリン喘息患者への歯科治療のコツと手順アスピリン喘息患者への歯科治療を行う際のコツとしては、まず患者とのコミュニケーションを密にし、彼らの不安を軽減することが重要である。治療前に、患者の喘息の状態やアレルギー歴を確認し、必要に応じて医師と連携を図ることが求められる。治療手順としては、まずは痛み管理を行い、その後、必要な処置を実施する。治療中は、患者の呼吸状態を常に観察し、異常があれば直ちに対応できるように備えておくことが大切である。
1D編集部
2024年6月1日
アセトアミノフェンの使用と歯科臨床における処置・症例の考察

アセトアミノフェンの使用と歯科臨床における処置・症例の考察

アセトアミノフェンの定義とその役割アセトアミノフェンは、鎮痛剤および解熱剤として広く使用される薬剤である。歯科臨床においては、特に術後の疼痛管理や、歯科疾患に伴う痛みの緩和に役立つ。アセトアミノフェンは、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)とは異なり、消化管への負担が少ないため、特に高齢者や消化器疾患を有する患者に対しても安全に使用できる。アセトアミノフェンの処置における使い方アセトアミノフェンは、歯科処置後の疼痛管理において重要な役割を果たす。一般的には、抜歯や根管治療後の痛みを軽減するために使用される。推奨される用量は成人の場合、1回500mgから1000mgであり、必要に応じて4〜6時間ごとに服用可能である。ただし、1日の最大用量は4000mgを超えないように注意が必要である。アセトアミノフェンのメリットとデメリットアセトアミノフェンの主なメリットは、消化管への負担が少なく、出血リスクが低い点である。また、抗炎症作用はないものの、鎮痛効果は高く、術後の痛みを効果的に軽減する。デメリットとしては、過剰摂取による肝障害のリスクがあるため、特に肝疾患を有する患者には慎重な使用が求められる。アセトアミノフェン使用時の注意点アセトアミノフェンを使用する際には、患者の既往歴や併用薬を確認することが重要である。特に、肝疾患やアルコール摂取の多い患者には注意が必要であり、適切な用量を守ることが求められる。また、他の鎮痛薬との併用についても、相互作用を考慮しながら判断する必要がある。アセトアミノフェンを用いた症例の考察実際の症例において、アセトアミノフェンを使用した患者の疼痛管理が成功した例が多く報告されている。例えば、下顎智歯抜歯後の患者に対して、アセトアミノフェンを用いた結果、術後の痛みが軽減され、患者の満足度が向上した。このように、アセトアミノフェンは歯科臨床において有効な選択肢となる。アセトアミノフェンの導入と今後の展望アセトアミノフェンは、歯科臨床において広く使用されているが、今後もその有効性や安全性に関する研究が進むことが期待される。新たな治療法や併用療法の開発により、より効果的な疼痛管理が可能となるだろう。歯科医師や歯科衛生士は、最新の情報を常にアップデートし、患者に最適な治療を提供することが求められる。
1D編集部
2024年6月1日
鎮痛の臨床応用と歯科における処置・術式の判断ポイント

鎮痛の臨床応用と歯科における処置・術式の判断ポイント

鎮痛の定義と重要性鎮痛とは、痛みを和らげるための処置や薬剤の使用を指す。歯科においては、患者の痛みを軽減することが治療の重要な要素であり、特に抜歯や根管治療などの侵襲的な処置においては、適切な鎮痛管理が求められる。痛みの軽減は、患者の心理的な負担を軽減し、治療への協力を得やすくするため、歯科医師や歯科衛生士にとって必須のスキルである。鎮痛の種類とその使い方鎮痛には主に非オピオイド鎮痛薬、オピオイド鎮痛薬、局所麻酔薬の3種類がある。非オピオイド鎮痛薬は、アセトアミノフェンやNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)が含まれ、軽度から中等度の痛みに効果的である。オピオイド鎮痛薬は、強い痛みを伴う処置に使用されるが、依存症のリスクがあるため、慎重な判断が必要である。局所麻酔薬は、特定の部位に直接作用し、即効性があるため、歯科治療において広く用いられる。鎮痛処置の手順と注意点鎮痛処置を行う際には、まず患者の痛みの程度を評価し、適切な鎮痛薬を選択することが重要である。処置前に患者に対して鎮痛薬の効果や副作用について説明し、同意を得ることも忘れてはならない。また、局所麻酔を行う場合は、注射部位の選定や麻酔薬の濃度、投与量に注意が必要である。特に、アレルギー歴や既往歴を確認し、適切な判断を行うことが求められる。鎮痛のメリットとデメリット鎮痛の主なメリットは、患者の痛みを軽減し、治療のストレスを減少させることである。これにより、患者の治療への協力が得やすくなり、治療の成功率が向上する。一方で、デメリットとしては、鎮痛薬の副作用やアレルギー反応のリスクが挙げられる。特にオピオイド鎮痛薬は、依存症のリスクがあるため、使用には慎重な判断が必要である。症例に基づく鎮痛の判断ポイント鎮痛の判断は、症例ごとに異なる。例えば、抜歯後の痛みには、非オピオイド鎮痛薬が効果的であることが多いが、根管治療後の痛みにはオピオイド鎮痛薬が必要な場合もある。患者の年齢、性別、既往歴、痛みの程度を考慮し、適切な鎮痛処置を選択することが重要である。また、患者のフィードバックを基に、鎮痛薬の種類や投与量を調整することも必要である。最新の研究と鎮痛管理の進展最近の研究では、鎮痛管理における新しいアプローチが提案されている。例えば、複数の鎮痛薬を組み合わせることで、相乗効果を得る方法や、非薬物療法(冷却療法やリラクゼーション法)を併用することで、鎮痛効果を高める試みが行われている。これらの新しいアプローチは、患者の痛みの管理において重要な役割を果たす可能性がある。まとめ鎮痛は、歯科治療において患者の痛みを軽減するための重要な処置である。適切な鎮痛薬の選択や処置の手順、注意点を理解し、症例に応じた判断を行うことが求められる。最新の研究を踏まえた鎮痛管理の進展にも注目し、より良い治療を提供するためのスキルを磨くことが重要である。
1D編集部
2024年6月1日
【速報】新型コロナ”第7波”の影響でカロナールが出荷調整へ

【速報】新型コロナ”第7波”の影響でカロナールが出荷調整へ

新型コロナウイルス感染症の、いわゆる「第7波」で感染者数が過去最高に上り医療現場が逼迫している中、あゆみ製薬株式会社は同社製品の解熱鎮痛剤「カロナール」の出荷調整を行うと発表した。同社は「第7波」の影響により安定供給に支障をきたすため、一時的な限定出荷を行うと医療機関向けに通知、出荷調整に向けて厚生労働省と協議に入ったとのことだ。カロナール錠200、300、500 出荷調整のお知らせ謹啓 時下ますますご盛栄のことと心よりお慶び申し上げます。平素は弊社並びに弊社製品に、格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。 さて、カロナール錠200、300、500の規格につきまして、新型コロナウイルス感染症「第7波」の影響により、想定を大幅に超える需要が継続しております。感染症の動向を予測することが困難な上、この状況が継続すれば、安定供給に支障を来たすことが判明いたしました。 つきましては当面の間、欠品及び在庫偏在を回避するため特約店舗様に対して出荷数割当運用を実施させていただきます。 医療関係者の皆様には、多大なるご迷惑をおかけすることになり、心よりお詫び申し上げます。 出荷調整を速やかに解除できるよう、安定供給体制の確保と市場の安定化に向けて努力を尽くしてまいります。何卒ご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。(あゆみ製薬医療機関向け通知より引用)なお出荷調整期間は7月27日より開始、終了は未定となっている。また新規の注文ができなくなるのではなく、医療機関の要望から一定割合を差し引いて納入する対応となるようである。「カロナール」のほか、株式会社三和化学研究所『アセトアミノフェンDS40%/小児用20%「三和」』も限定出荷が通知され、他社製品も同様の対応が迫られる見込みだ。参考文献日刊薬業, あゆみ製薬、「カロナール錠」限定出荷へ コロナ感染拡大で生産追い付かず、厚労省と協議, 2022.7.28(URL)株式会社三和化学研究所, アセトアミノフェンDS40%/小児用20%「三和」限定出荷のご案内(PDF)
1D編集部
2022年7月28日
【超解説】非歯原性歯痛のエビデンス【1万字】

【超解説】非歯原性歯痛のエビデンス【1万字】

患者の多くは、歯痛を主訴として歯科医院を訪れる。歯科医師であれば真っ先に歯髄炎や歯周炎を疑うところだが、近年では歯を疼痛の発生源としないにも関わらず歯痛を訴える疾患に脚光が集まってきた。※ 非歯原性歯痛の診断・治療のレクチャーは こちらから詳細を見る非歯原性歯痛とは?非歯原性歯痛とは、歯に原因がないにも関わらず、歯に痛みを感じる疾患である。非歯原性歯痛は、歯痛全体の2.1〜9%を占めると推定され、Nixdorfらのシステマティック・レビューによれば、一般の歯科医院での非歯原性歯痛の発現頻度は5.3%であると推定されている。さらには、年間で68万本の歯が根管に原因のない根管治療をされているという報告もある。歯に原因が見つからないにも関わらず患者が痛みを訴えるため、歯科医師により抜髄や抜歯など効果のない不可逆的な歯科治療が行われることもある。当然抜髄や抜歯を行っても歯痛は継続するため、原因不明の痛みとして困窮している患者や歯科医師が、いまも日本全国に存在しているのだ。口腔顔面痛は、歯学部の教育課程にあまり盛り込まれていなかった経緯があり、臨床上でも見過ごされがちだった領域である。本記事では、日本口腔顔面痛学会『非歯原性歯痛の診療ガイドライン(改訂版)』を下敷きとして、非歯原性歯痛のエビデンスを徹底解説する。非歯原性歯痛の原疾患非歯原性歯痛を誘導しやすい病態としては、「筋・筋膜痛による歯痛」「神経障害性疼痛による歯痛」「神経血管性頭痛による歯痛」「上顎洞疾患による歯痛」「心臓疾患による歯痛」「精神疾患または心理社会的要因による歯痛」「特発性歯痛」などが挙げられる。筋・筋膜痛による歯痛筋・筋膜痛の関連痛として、歯痛が生じることがある。筋・筋膜痛による歯痛は非拍動性の疼くような痛みを特徴とし、歯原性歯痛と比べると痛みの持続時間が長いという特徴がある。筋・筋膜痛による歯痛は筋の酷使による疲労によって生じ、心理的ストレスによって悪化するとされる。筋・筋膜痛による歯痛の最大の特徴は「トリガーポイント」の存在である。トリガーポイントは骨格筋の疲労により形成される易刺激性の圧痛点であり、このトリガーポイントへの刺激によって口腔顔面部に関連痛を生じさせる。具体的には、咬筋や側頭筋、胸鎖乳突筋の触診によるトリガーポイントの5秒間の圧迫により歯痛が再現され、当該の筋への麻酔(トリガーポイントインジェクション)によって疼痛が軽減することが特徴である。筋・筋膜痛による歯痛の原因となる筋は、咬筋が約半数の47%、側頭筋が30%、胸鎖乳突筋が17%の順に多いと報告されている。神経障害性疼痛による歯痛神経生涯生疼痛による歯痛は、「発作性神経障害性疼痛」と「持続性神経障害性疼痛」とに分類される。発作性神経障害性疼痛は「三叉神経痛」に代表されるように、発作的に生じる電撃様疼痛が特徴である。誘発部位への些細な刺激で激烈な痛みが発作的に数秒間生じる。現に、三叉神経痛の患者の多くは歯痛を主訴として最初に歯科医院に来院している。一方の持続性神経障害性疼痛は、灼熱性の痛みが間断なく持続する症状を特徴とする。持続性神経障害性疼痛の発症前に外傷や外科処置などの既往歴があり、多くの場合に知覚鈍麻やアロディニアなどの神経障害性疼痛の特徴を伴っている。神経血管性頭痛による歯痛神経血管性頭痛の患者の多くは、歯痛を主訴として歯科医院を受診している。神経血管性頭痛とは、脳血管の神経原性炎症によって生じる一次性頭痛のことであり、これも歯痛を生じることが多い。片頭痛や三叉神経・自律神経性頭痛が神経血管性頭痛である。片頭痛では、臨床症状として上顎臼歯部の拍動性自発痛が一般的であるが、下顎犬歯に生じたケースもある。また群発頭痛では、上顎大臼歯部の持続性の激痛が15分〜180分間生じるが、突然消失するという臨床症状を持つ。上顎洞疾患による歯痛上顎洞疾患による歯痛は、文字通り上顎洞の疾患が原因で生じる歯痛のことである。急性上顎洞炎による歯痛が最も頻度が高いとされるが、上顎洞がんや真菌感染などの疾患との鑑別診断が必要である。上顎洞炎のうち、18%に歯痛が生じる。歯痛が生じる部位は、上顎洞が解剖学的に近接している上顎の小臼歯〜大臼歯に多い。また、上顎洞がん患者の36%は、病初期に上顎臼歯部の歯痛を訴えるという報告もある。冷水痛、咀嚼時痛が認められ、かみしめにより違和感を生じるほか、鼻症状や発熱などの感冒症状も認める。心臓疾患による歯痛狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患に代表される、心疾患の関連痛として歯痛が生じることもある。虚血性心疾患の発作時に口腔顔面部に痛みが生じる割合は38%であると明らかにした研究があるが、38%のうちの5.9%は、口腔顔面部の痛みが唯一の症状であった。この場合の関連痛の特徴は、「圧迫痛」や「灼熱痛」である。虚血性心疾患の患者が、歯痛を唯一の主訴として歯科医院に来院する可能性があること、それを見逃してしまうと患者の命に関わる結末になりかねないことを、歯科医師は知っておく必要があるかもしれない。精神疾患または心理社会的要因による歯痛シェイクスピアは、妊娠した妻を持つ夫が歯痛を訴えることがあると書き残した。妊婦の夫は、妻の出産が不安で非歯原性歯痛を訴えることがある。また、うつ病や双極性障害、身体症状症、妄想性障害身体型、パーソナリティ障害によって非歯原性歯痛が生じることも報告されている。心身医学的な歯痛では、病理所見が疼痛部位に存在しない。こうした精神疾患または心理社会的要因による歯痛は、患者の訴える歯痛の部位が解剖学的な整合性を欠くことから推測できることが多い。特発性歯痛(非定型性歯痛を含む)特発性歯痛は、1本以上の歯または抜歯した後の部位に生じる持続性疼痛で、通常の歯科的原因が全く存在しないもの、と定義されている。その病態は現在でも解明されていない部分も多い。非定型性歯痛の病態も未解明の部分が多い。神経障害性疼痛であるとする説や心理的な要因が原因で生じるとする説、中枢性感作によるとする説、脳内の疼痛処理過程の変調で生じるとする説など諸説ある。非定型性歯痛の70〜83%が歯科治療をきっかけに発症するとされ、これらの患者は医療への不信感や怒り、不安などが見られることがある。精神疾患の既往があるケースが多いことを考えても、非定型性歯痛の患者は精神状態や心理社会的な状態を総合的に考える必要がある。非歯原性歯痛はなぜ起こるのか?前章では、非歯原性歯痛のそれぞれの原疾患について解説した。それでは、非歯原性歯痛はどのような原因で生じるのだろうか。非歯原性歯痛の発生機序は、「関連痛」「神経障害による痛み」「器質的異常が認められない慢性疼痛」の3つに分類される。関連痛前章で解説した筋・筋膜痛による歯痛、神経血管性頭痛による歯痛、心臓疾患による歯痛、上顎洞疾患による歯痛が「関連痛」による非歯原性歯痛に含まれる。例えば筋・筋膜痛による歯痛では、疲労が蓄積した筋に形成されたトリガーポイントからの関連痛により生じる。トリガーポイントにトリガーポイントインジェクションを行ったところ歯痛が消失するということも根拠となっている。神経障害による痛み神経障害による痛みは、末梢神経性疼痛と中枢神経性疼痛とに分類され、神経障害性疼痛による歯痛の発生機序とされる。末梢神経性疼痛は、末梢性感作、神経腫、エファプス伝達、交感神経の関与、表現形の変化により生じる。また中枢神経性疼痛は、発芽、ワインドアップ、長期増強、中枢性感作、内因性痛覚抑制機構の失調により生じる。器質的異常が認められない慢性疼痛精神疾患や心理社会的要因によって歯痛が生じているケースなどが、この「器質的異常が認められない慢性疼痛」に含まれる。これらはこれまで原因不明と考えられてきたが、脳科学・神経科学の発展とともに、中枢における神経伝達物質などの生化学的変化や情報処理過程の変調などによるものと解明されつつある。非歯原性歯痛の治療非歯原性歯痛に有効な薬物療法非歯原性歯痛に対する治療法として、薬物療法が挙げられる。原疾患ごとに適用されるべき薬物は異なるため、歯科医院としては適切な診療科を患者に選択させることも重要である。筋・筋膜痛による歯痛に対しては、鑑別診断目的を含めてトリガーポイントインジェクションが有効である。他にもNSAIDs(イブプロフェン)、低用量のアミトリプチリン、アセトアミノフェン、トラマドール塩酸塩/アセトアミノフェン配合錠、混合ビタミンB群、ジクロフェナクナトリウム、塩酸チザニジン、リン酸コデイン、ベンゾジアゼピン、漢方などが有効であったとする報告があるが、いずれもエビデンスレベルが十分なものは少ない。その他の原疾患に対する薬物療法に関しても、原疾患ごとに有効な薬物が異なり、その有効性をそれぞれで評価する必要がある。非歯原性歯痛に理学療法は有効?非歯原性歯痛に対する治療として、理学療法は有効だろうか。結論から言えば、非歯原性歯痛に対する理学療法の科学的なエビデンスは十分ではない。筋・筋膜痛による歯痛にはストレッチやマッサージ、ホットウォーターバスなどの理学療法の有効性が報告されているが、いずれの研究もエビデンスレベルは高くない。理学療法は可逆的で侵襲が少ない治療法であり、多くの疾患に対して経験的に有用であると評価されているため、今後の研究が待たれるところである。非歯原性歯痛に抜髄・抜歯は有効か?非歯原性歯痛に対して抜髄や抜歯といった不可逆的的な処置は無効である。なぜなら、歯に原因が無いからである。非歯原性歯痛に対して抜髄や抜歯を行っても疼痛が改善されなかったケースや、むしろ増悪したケースが多数報告されている。同様に、咬合調整や義歯調整などの治療も効果は無いため、非歯原性歯痛では不必要な可能性のある歯科治療を行うべきではない。非歯原性歯痛にスプリント療法は有効か?非歯原性歯痛のうち、筋・筋膜痛による歯痛に関しては、スプリントによる一時的な疼痛軽減が期待できる。しかし、その他の原疾患に対してスプリント療法を行うことには理論的な根拠は無い。非歯原性歯痛の実際の臨床では原因が特定できていない場合が多く、スプリント療法などの可逆的な治療法を「とりあえず」で選択してしまいがちである。しかしいずれの病態の非歯原性歯痛に対しても、スプリント療法のエビデンスは十分とは言えない。非歯原性歯痛の予防非歯原性歯痛の予防法は、現在のところ研究されていないと言ってもよいほどに文献が少ない。例えば筋・筋膜痛による歯痛には生活習慣の改善が治療として行われるため、予防法としても有効なようだ。今後非歯原性歯痛の認知拡大に伴って予防法に関する研究も進んでいくだろう。今後さらなるエビデンスが求められる日本口腔顔面痛学会『非歯原性歯痛の診療ガイドライン』は、2011年に初めて発行された。2019年に大幅な改定が行われ、一般臨床家にも徐々に周知されてきている。冒頭で述べたように、非歯原性歯痛は出現度の低い疾患ではない。非歯原性歯痛が原因で歯痛を訴える患者に対して不可逆的な侵襲が行われないためにも、今後さらなるエビデンスの充実や、歯科医療者に対する情報の提供は必要不可欠である。非歯原性歯痛の診断・治療のプラクティス強い痛みを訴える患者に対し、原因が特定できないまま抜髄や抜歯をしてしまったこと、ないでしょうか。抜髄・抜歯に至らなかったとしても、投薬のみで経過観察していませんか?その歯、非歯原性歯痛だったかもしれません。単に非歯原性歯痛といっても、その原因やメカニズムは多様です。筋・筋膜痛、三叉神経痛、群発頭痛。どれも患者は「歯の痛み」を訴えて受診します。中には歯髄炎の症状と酷似しても、X線画像では異常が認められず、結果として中枢性の疼痛ということもあります。これら”非歯原性”の歯痛に対して、正しく診断し適切な治療ができなければ、なかなか治らない病に患者は不安を感じてしまうでしょう。オーバートリートメントを防ぐためにも、正しい知識を身につけ非歯原性歯痛に対応できるスキルを身につけましょう。セミナー詳細を見てみる参考文献一般社団法人 日本口腔顔面痛学会『非歯原性歯痛の診療ガイドライン 改訂版』2019.坂本 英治, 石井 健太郎, 江崎 加奈子, 塚本 真規, 横山 武志.【口腔顔面領域の慢性痛の診断と治療】 非歯原性歯痛の診断と治療. ペインクリニック. 36(7): 907-917, 2015. Nixdorf D, Moana-Filho E. 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1D編集部
2021年5月12日

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