歯科用語集
2025年10月28日

舌痛症

「舌痛症」とは?歯科用語の解説と症例を紹介

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定義・語源

舌痛症(ぜつつうしょう)は、舌に痛みや不快感を伴う症状であり、明確な器質的原因が見当たらない場合に診断される。語源は「舌」と「痛み」に由来し、主に舌の表面に生じる痛みを指す。舌痛症は、口腔内の神経系の異常や心理的要因が関与することが多く、特に女性に多く見られる傾向がある。症状は、焼けるような痛みや、刺すような感覚、乾燥感など多岐にわたる。舌痛症は、他の疾患と同時に発症することもあるため、正確な診断が求められる。


臨床における位置づけ・判断基準

臨床において舌痛症は、口腔内の痛みを訴える患者に対して、まずは器質的な疾患(例:口内炎、舌癌など)を除外することが重要である。診断基準としては、舌の外観が正常であり、他の病因が否定されることが求められる。舌痛症は、慢性的な痛みを伴うため、患者の生活の質に大きな影響を及ぼすことがある。治療には、痛みの緩和を目的とした薬物療法や、心理的なアプローチが含まれることが多い。

関連用語・類義語との違い

舌痛症に関連する用語としては、口腔内の痛みを指す「口腔痛」や、舌の異常感覚を示す「舌異常感」がある。口腔痛は、舌以外の部位にも痛みが及ぶ可能性があるため、舌痛症とは異なる。舌異常感は、痛みを伴わない場合もあり、舌痛症の症状の一部として現れることがある。これらの用語は、舌痛症の理解を深めるために重要であり、臨床現場での適切な診断と治療に役立つ。

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舌機能の理解と臨床での重要性。歯科医師・歯科衛生士が知っておくべき症例と処置のポイント

舌機能の理解と臨床での重要性。歯科医師・歯科衛生士が知っておくべき症例と処置のポイント

舌機能の定義とその重要性舌機能とは、舌が持つ様々な役割を指し、主に味覚、嚥下、発音、そして口腔内の清掃に関与している。舌は食物を口腔内で操作し、咀嚼を助ける重要な器官である。舌の機能が正常であることは、食事の摂取やコミュニケーションにおいて不可欠であり、歯科臨床においてもその評価は重要である。特に、舌の動きや形状、感覚に異常がある場合、口腔内の健康に影響を及ぼす可能性があるため、歯科医師や歯科衛生士はその理解を深める必要がある。舌機能の評価方法と診断舌機能の評価は、視診、触診、そして機能的なテストを通じて行われる。視診では、舌の形状、色、表面の状態を観察し、異常がないかを確認する。触診では、舌の動きや感覚を評価し、正常な運動範囲を確認することが重要である。また、嚥下や発音のテストを行うことで、舌の機能的な側面を評価することができる。これらの診査を通じて、舌機能に関連する症状や疾患を特定し、適切な処置や術式を選択するための判断材料とすることができる。舌機能に関連する症状とその処置舌機能に関連する症状には、舌痛症、舌の動きの制限、味覚異常などがある。舌痛症は、舌の表面に痛みを伴う状態であり、原因としては口腔内の感染や炎症、あるいはストレスが考えられる。これに対する処置としては、抗炎症薬の投与や、口腔内の衛生管理が挙げられる。また、舌の動きの制限は、舌小帯の短縮や神経障害によって引き起こされることがあり、場合によっては手術が必要となることもある。これらの症状に対する適切な処置を行うことで、患者の生活の質を向上させることができる。舌機能の改善に向けた術式と手順舌機能の改善には、リハビリテーションや手術が考えられる。リハビリテーションでは、舌の運動を促進するためのエクササイズが推奨される。具体的には、舌を上下左右に動かす練習や、舌を口の中で回す運動などが効果的である。また、舌小帯の短縮が原因である場合、舌小帯切除術が選択されることがある。この手術は、舌の可動域を広げるために行われ、術後のリハビリテーションと併せて行うことで、舌機能の改善が期待できる。舌機能に関する注意点とデメリット舌機能の評価や処置においては、いくつかの注意点が存在する。まず、舌の異常を見逃さないためには、定期的な口腔内のチェックが重要である。また、舌小帯切除術などの手術を行う際には、術後の合併症や再発のリスクを考慮する必要がある。さらに、リハビリテーションにおいては、患者の協力が不可欠であり、適切な指導が求められる。これらの点を踏まえ、舌機能に関する処置を行う際には、慎重な判断が必要である。舌機能の向上に向けた今後の展望舌機能の向上に向けた研究は進んでおり、今後の展望としては、より効果的なリハビリテーション方法や新しい治療法の開発が期待される。また、舌機能の重要性が広く認識されることで、歯科医療における舌の評価がより重視されるようになることが望ましい。歯科医師や歯科衛生士は、舌機能に関する知識を深め、患者に対して適切な情報提供を行うことで、口腔内の健康を守る役割を果たすことができる。
1D編集部
2024年6月1日
舌痛症の診断と処置。歯科臨床で役立つ症例と術式の判断ポイント

舌痛症の診断と処置。歯科臨床で役立つ症例と術式の判断ポイント

舌痛症とは何か舌痛症は、舌に痛みを伴う症状であり、特に明確な原因が特定できない場合が多い。患者は舌の焼けるような痛みや不快感を訴えることが一般的である。舌痛症は、口腔内の他の疾患と関連することもあるため、適切な診断が求められる。舌痛症の原因としては、口腔内の感染、アレルギー、栄養不足、ストレス、または全身的な疾患が考えられる。歯科医師は、これらの要因を考慮しながら、患者の症状を評価し、適切な処置を行う必要がある。舌痛症の診断方法舌痛症の診断には、詳細な病歴の聴取と身体検査が重要である。患者の症状や生活習慣、既往歴を確認することで、潜在的な原因を特定する手助けとなる。診査の際には、舌の外観や感覚を評価し、他の口腔疾患との鑑別を行う。必要に応じて、血液検査やアレルギー検査を実施し、全身的な疾患の有無を確認することも重要である。診断が確定した後は、適切な処置を計画する。舌痛症の処置と術式舌痛症の処置は、原因に応じて異なる。例えば、栄養不足が原因であれば、ビタミンB群や鉄分の補充が推奨される。また、ストレスが要因の場合、心理的なサポートやリラクゼーション法を提案することが有効である。さらに、局所的な治療として、抗炎症薬や鎮痛薬の処方が行われることもある。これにより、患者の痛みを軽減し、生活の質を向上させることが期待される。舌痛症の治療においては、患者の症状に応じた個別のアプローチが重要である。舌痛症の症例と注意点舌痛症の症例は多様であり、患者ごとに異なる症状が見られる。例えば、ある患者は舌の先端にのみ痛みを訴え、別の患者は舌全体に不快感を感じることがある。これらの症例を通じて、歯科医師は舌痛症の多様性を理解し、適切な診断と処置を行う必要がある。注意点としては、舌痛症が他の疾患の兆候である場合もあるため、慎重な鑑別診断が求められる。特に、口腔癌や全身的な疾患の可能性を考慮し、必要に応じて専門医への紹介を行うことが重要である。舌痛症の治療におけるメリットとデメリット舌痛症の治療には、様々なメリットとデメリットが存在する。メリットとしては、適切な診断と処置により、患者の痛みを軽減し、生活の質を向上させることができる点が挙げられる。また、早期の対応により、他の疾患の進行を防ぐことも期待される。一方で、デメリットとしては、原因が特定できない場合、治療が難航することがある。また、治療に対する患者の期待と実際の結果にギャップが生じることもあり、これが患者の心理的負担となることもある。歯科医師は、これらの点を考慮しながら、患者に対して適切な情報提供を行うことが求められる。舌痛症の予防と管理舌痛症の予防には、口腔内の衛生管理が重要である。定期的な歯科検診やクリーニングを行うことで、口腔内の健康を維持し、舌痛症のリスクを低減することができる。また、栄養バランスの取れた食事やストレス管理も、舌痛症の予防に寄与する。舌痛症が発症した場合の管理には、患者とのコミュニケーションが不可欠である。症状の変化や治療の効果について定期的に確認し、必要に応じて治療方針を見直すことが重要である。歯科医師は、患者に対して適切なサポートを提供し、症状の改善を図ることが求められる。
1D編集部
2024年6月1日
【歯科セミナー】1Dが今月開催する注目のLiveセミナー3選

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皆さんこんにちは、1D編集部です。この記事では、1Dが主催するまもなく開催予定の注目オンラインセミナーを3つ、ご紹介していきます。興味があるセミナーがあれば、ぜひお気軽にお申し込みください。いずれのセミナーも、1Dプレミアム会員であれば無料でお申し込みいただけます。1Dプレミアムの詳細を見る「女性」のための歯科医療女性のライフステージに応じた歯科治療をマスターしよう!「男性と女性とで、歯科的対応は同じで良いのだろうか?」こんな疑問を持ったことはありませんか。女性の身体は女性ホルモンの影響を一生受けながら常に変化しており、口腔疾患にも性差が生じます。例えば、女性の口腔内が大きく変化する"更年期"のこと、どれくらい分かっていますか?「そもそも更年期障害って何?」「更年期に生じる口腔疾患にはどんなものがある?」こうした疑問の中に、女性歯科医学を理解するヒントが隠されています。このセミナーでは、女性のライフステージに応じた歯科治療について、新潟大学の伊藤先生が徹底解説します。妊娠や更年期といったライフステージに応じた歯科的問題点、女性で問題になりやすい、口腔乾燥症・味覚障害・舌痛症・顎関節症などの疾患への対応法や、医科との連携のポイントなど、女性歯科医療を学びたい先生必見の内容となっています。さあ、女性歯科医療をはじめましょう。詳細・お申込みはこちら歯科業界の「未来予測」"歯学部・冬の時代" と言われ、10年あまりが経ちました。「むし歯の洪水」と呼ばれた1970年代に新設され続けた歯学部は、生き残りを賭けた最終戦争時代へと突入しています。特に私立歯学部は2011年の明海大学歯学部を皮切りに「学費値下げ」競争が勃発し、生死をかけて優秀な学生の獲得を競い合っています。今後「勝ち残る歯学部」とは?歯学部の統合や廃合は、起こり得るのでしょうか。起こり得るとしたら、それはいつ・どの大学が最も危険?本セミナーでは、歯学部の入学・卒業に関するファクト、各歯学部の財務・経営状況、歯科医師国家試験の最新データ、歯科医療の需給予測などを踏まえながら、これからの「歯学部」のあり方と未来を徹底考察します。これらのデータ&ファクトを整理した上で、「歯学部格付け」として全国に29個ある歯学部の "消滅可能性" を完全ランキング化。忖度は一切ナシのガチンコ格付けを大公開いたします。講師は、ワンディー株式会社創業者・代表取締役で歯科医師の松岡周吾が担当。1Dプレミアムなら追加料金なし・無料でご視聴いただけます。ぜひプレミアム会員にご登録後、参加エントリーをお願いいたします。詳細・お申込みはこちら眠れなくなるほど面白い「pH」の話近年、唾液の成分と働きが大いに注目され、唾液の重要な作用も続々と発見されています。昨今のコロナ禍でその注目度はますます高まっています。唾液は単なる消化液にとどまらず、風邪やインフルエンザなどの感染症の予防、日本人の死因の上位を占めるがんや脳卒中、肥満や生活習慣病の予防、歯周病や誤嚥性肺炎などの予防、アンチエイジングなどにも深く関わっています。もちろん、う蝕や歯周病への影響も大きく、歯科医療者なら唾液の成分、緩衝能やフッ化物との関係性も理解しておくべきです。また加齢などの要因で、唾液の働きに重要な量や質が低下することはご存知でしょう。そして患者さんそれぞれでも唾液の量や質は千差万別です。身近であり、実はあまり理解できていない「唾液」には、奥深い作用がたくさん隠されています。このセミナーでは、唾液の成分や役割についての"新常識"を、唾液研究の第一人者である槻木教授が徹底解説します。唾液の働きの中でも特に重要な「緩衝能」の正確な知識や、新型コロナウイルス、特にオミクロン株と唾液の関わりなどの最新のトピックにいたるまで完全網羅。唾液のすべてを今、お伝えします。詳細・お申込みはこちら他にもオンラインセミナーを多数開催中1D(ワンディー)では、他にも歯科医療者向けのオンラインセミナーを多数開催しています。開催予定のセミナーの一覧は、下記ボタンから見ることができます。ぜひ1Dでセミナーに参加して、知識アップ・スキルアップをしていきましょう。開催中のセミナーを見てみる
1D編集部
2022年9月4日
【女性特有の歯科疾患】歯科医院における「性差医療」の現状とは?

【女性特有の歯科疾患】歯科医院における「性差医療」の現状とは?

「フェムテック」が2021年新語・流行語大賞にノミネートされるなど、「性差」によるペインやニーズの違い、またそれに伴って生じる市場などが注目を集めている。医療の世界も同様で、生物学的な性差は必ず存在する。それらを考慮した医療を行うことを、「性差医療」と呼ぶ。我が国の性差医療の先駆けである天野恵子氏によると、性差医療は以下のように定義されている。男女比が圧倒的にどちらかに偏っている病態発症率はほぼ同じでも、男女間で臨床的に差をみるもの生理学的・生物学的解明が男性または女性で遅れている病態社会的な男女の地位と健康の関連(ジェンダーを含めた医療)医科の領域において、性差に基づいた医療を提供することを試みるこの性差医療が浸透してきており、例えば2020年には岡山大学病院に女性ヘルスケア外来が設立されるなど、注目が集まっている。その一方で、歯科領域においては男女差を意識して診療を行うことは少ないのが現状ではないだろうか。実際、歯科で男女差がある疾患にはどのようなものがあるのだろうか。本記事では、歯科における性差医療の現状について、詳しく見ていこう。歯科疾患に男女差はあるのか?歯科疾患疾患実態調査から、歯科疾患の男女差を紐解いていこう。なお、令和3年の歯科疾患実態調査が新型コロナウイルス感染症の影響で中止となったことから、現状最新のデータである平成28年の歯科疾患実態調査の結果のうち、男女で差がみられたものを紹介する。まずは、1人平均現在歯数については、多くの年代でやや女性の方が多いという結果となった。女性の方がデンタルフロスや歯間ブラシを使った、歯と歯の間の清掃を行っているものの割合が多いことも報告されており、そうした清掃習慣の違いなども現在歯数に影響している可能性がある。男女差が大きくみられたのが、「顎関節疾患」だ。口を大きく開け閉めしたとき、あごの音がするか、痛みがあるかという質問に「はい」と答えた者の割合が、どちらも全体的に女性において高い傾向を示した。本当に悩ましい「更年期障害」早い人で40歳代前半、遅い人では50歳代後半に閉経を迎え、その周辺の期間は更年期と呼ばれる。更年期においては、ほてり・めまい・気分の落ち込みなど様々な症状がみられ、生活に大きく支障が生じることとなる。松木貴彦著「口腔内における性差(2011)」によると、更年期の不定愁訴の一つとして、口腔の乾燥を訴える患者が少なくないことを指摘している。口腔乾燥症を専門的に診る外来に来院した患者層をみてみると、更年期以降に口腔乾燥症で来院する患者は圧倒的に女性が多いことが分かる。これらが、特に歯科医院において遭遇する可能性の高い、女性特有の疾患だ。今こそ女性歯科医療を学ぼう歯科における性差医療を学ぶ機会が必要と考え、この度1Dではオンラインセミナー「フェムデンタル~女性特有の歯科医療~」を開催する。妊娠や更年期といったライフステージに応じた歯科的問題点や、女性で問題になりやすい口腔乾燥症・味覚障害・舌痛症・顎関節症などの疾患への対応法、さらには医科との連携のポイントなど、女性歯科医療を学ぶにはもってこいの充実の内容となっている。興味のある方は、是非視聴をおすすめしたい。講義詳細を見てみる参考文献1. 厚生労働省, 平成28年歯科疾患実態調査の概要, 20172. 松木貴彦, 口腔内における性差, ファルマシア, 2011
Kasuchan
2022年8月19日
【超解説】非歯原性歯痛のエビデンス【1万字】

【超解説】非歯原性歯痛のエビデンス【1万字】

患者の多くは、歯痛を主訴として歯科医院を訪れる。歯科医師であれば真っ先に歯髄炎や歯周炎を疑うところだが、近年では歯を疼痛の発生源としないにも関わらず歯痛を訴える疾患に脚光が集まってきた。※ 非歯原性歯痛の診断・治療のレクチャーは こちらから詳細を見る非歯原性歯痛とは?非歯原性歯痛とは、歯に原因がないにも関わらず、歯に痛みを感じる疾患である。非歯原性歯痛は、歯痛全体の2.1〜9%を占めると推定され、Nixdorfらのシステマティック・レビューによれば、一般の歯科医院での非歯原性歯痛の発現頻度は5.3%であると推定されている。さらには、年間で68万本の歯が根管に原因のない根管治療をされているという報告もある。歯に原因が見つからないにも関わらず患者が痛みを訴えるため、歯科医師により抜髄や抜歯など効果のない不可逆的な歯科治療が行われることもある。当然抜髄や抜歯を行っても歯痛は継続するため、原因不明の痛みとして困窮している患者や歯科医師が、いまも日本全国に存在しているのだ。口腔顔面痛は、歯学部の教育課程にあまり盛り込まれていなかった経緯があり、臨床上でも見過ごされがちだった領域である。本記事では、日本口腔顔面痛学会『非歯原性歯痛の診療ガイドライン(改訂版)』を下敷きとして、非歯原性歯痛のエビデンスを徹底解説する。非歯原性歯痛の原疾患非歯原性歯痛を誘導しやすい病態としては、「筋・筋膜痛による歯痛」「神経障害性疼痛による歯痛」「神経血管性頭痛による歯痛」「上顎洞疾患による歯痛」「心臓疾患による歯痛」「精神疾患または心理社会的要因による歯痛」「特発性歯痛」などが挙げられる。筋・筋膜痛による歯痛筋・筋膜痛の関連痛として、歯痛が生じることがある。筋・筋膜痛による歯痛は非拍動性の疼くような痛みを特徴とし、歯原性歯痛と比べると痛みの持続時間が長いという特徴がある。筋・筋膜痛による歯痛は筋の酷使による疲労によって生じ、心理的ストレスによって悪化するとされる。筋・筋膜痛による歯痛の最大の特徴は「トリガーポイント」の存在である。トリガーポイントは骨格筋の疲労により形成される易刺激性の圧痛点であり、このトリガーポイントへの刺激によって口腔顔面部に関連痛を生じさせる。具体的には、咬筋や側頭筋、胸鎖乳突筋の触診によるトリガーポイントの5秒間の圧迫により歯痛が再現され、当該の筋への麻酔(トリガーポイントインジェクション)によって疼痛が軽減することが特徴である。筋・筋膜痛による歯痛の原因となる筋は、咬筋が約半数の47%、側頭筋が30%、胸鎖乳突筋が17%の順に多いと報告されている。神経障害性疼痛による歯痛神経生涯生疼痛による歯痛は、「発作性神経障害性疼痛」と「持続性神経障害性疼痛」とに分類される。発作性神経障害性疼痛は「三叉神経痛」に代表されるように、発作的に生じる電撃様疼痛が特徴である。誘発部位への些細な刺激で激烈な痛みが発作的に数秒間生じる。現に、三叉神経痛の患者の多くは歯痛を主訴として最初に歯科医院に来院している。一方の持続性神経障害性疼痛は、灼熱性の痛みが間断なく持続する症状を特徴とする。持続性神経障害性疼痛の発症前に外傷や外科処置などの既往歴があり、多くの場合に知覚鈍麻やアロディニアなどの神経障害性疼痛の特徴を伴っている。神経血管性頭痛による歯痛神経血管性頭痛の患者の多くは、歯痛を主訴として歯科医院を受診している。神経血管性頭痛とは、脳血管の神経原性炎症によって生じる一次性頭痛のことであり、これも歯痛を生じることが多い。片頭痛や三叉神経・自律神経性頭痛が神経血管性頭痛である。片頭痛では、臨床症状として上顎臼歯部の拍動性自発痛が一般的であるが、下顎犬歯に生じたケースもある。また群発頭痛では、上顎大臼歯部の持続性の激痛が15分〜180分間生じるが、突然消失するという臨床症状を持つ。上顎洞疾患による歯痛上顎洞疾患による歯痛は、文字通り上顎洞の疾患が原因で生じる歯痛のことである。急性上顎洞炎による歯痛が最も頻度が高いとされるが、上顎洞がんや真菌感染などの疾患との鑑別診断が必要である。上顎洞炎のうち、18%に歯痛が生じる。歯痛が生じる部位は、上顎洞が解剖学的に近接している上顎の小臼歯〜大臼歯に多い。また、上顎洞がん患者の36%は、病初期に上顎臼歯部の歯痛を訴えるという報告もある。冷水痛、咀嚼時痛が認められ、かみしめにより違和感を生じるほか、鼻症状や発熱などの感冒症状も認める。心臓疾患による歯痛狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患に代表される、心疾患の関連痛として歯痛が生じることもある。虚血性心疾患の発作時に口腔顔面部に痛みが生じる割合は38%であると明らかにした研究があるが、38%のうちの5.9%は、口腔顔面部の痛みが唯一の症状であった。この場合の関連痛の特徴は、「圧迫痛」や「灼熱痛」である。虚血性心疾患の患者が、歯痛を唯一の主訴として歯科医院に来院する可能性があること、それを見逃してしまうと患者の命に関わる結末になりかねないことを、歯科医師は知っておく必要があるかもしれない。精神疾患または心理社会的要因による歯痛シェイクスピアは、妊娠した妻を持つ夫が歯痛を訴えることがあると書き残した。妊婦の夫は、妻の出産が不安で非歯原性歯痛を訴えることがある。また、うつ病や双極性障害、身体症状症、妄想性障害身体型、パーソナリティ障害によって非歯原性歯痛が生じることも報告されている。心身医学的な歯痛では、病理所見が疼痛部位に存在しない。こうした精神疾患または心理社会的要因による歯痛は、患者の訴える歯痛の部位が解剖学的な整合性を欠くことから推測できることが多い。特発性歯痛(非定型性歯痛を含む)特発性歯痛は、1本以上の歯または抜歯した後の部位に生じる持続性疼痛で、通常の歯科的原因が全く存在しないもの、と定義されている。その病態は現在でも解明されていない部分も多い。非定型性歯痛の病態も未解明の部分が多い。神経障害性疼痛であるとする説や心理的な要因が原因で生じるとする説、中枢性感作によるとする説、脳内の疼痛処理過程の変調で生じるとする説など諸説ある。非定型性歯痛の70〜83%が歯科治療をきっかけに発症するとされ、これらの患者は医療への不信感や怒り、不安などが見られることがある。精神疾患の既往があるケースが多いことを考えても、非定型性歯痛の患者は精神状態や心理社会的な状態を総合的に考える必要がある。非歯原性歯痛はなぜ起こるのか?前章では、非歯原性歯痛のそれぞれの原疾患について解説した。それでは、非歯原性歯痛はどのような原因で生じるのだろうか。非歯原性歯痛の発生機序は、「関連痛」「神経障害による痛み」「器質的異常が認められない慢性疼痛」の3つに分類される。関連痛前章で解説した筋・筋膜痛による歯痛、神経血管性頭痛による歯痛、心臓疾患による歯痛、上顎洞疾患による歯痛が「関連痛」による非歯原性歯痛に含まれる。例えば筋・筋膜痛による歯痛では、疲労が蓄積した筋に形成されたトリガーポイントからの関連痛により生じる。トリガーポイントにトリガーポイントインジェクションを行ったところ歯痛が消失するということも根拠となっている。神経障害による痛み神経障害による痛みは、末梢神経性疼痛と中枢神経性疼痛とに分類され、神経障害性疼痛による歯痛の発生機序とされる。末梢神経性疼痛は、末梢性感作、神経腫、エファプス伝達、交感神経の関与、表現形の変化により生じる。また中枢神経性疼痛は、発芽、ワインドアップ、長期増強、中枢性感作、内因性痛覚抑制機構の失調により生じる。器質的異常が認められない慢性疼痛精神疾患や心理社会的要因によって歯痛が生じているケースなどが、この「器質的異常が認められない慢性疼痛」に含まれる。これらはこれまで原因不明と考えられてきたが、脳科学・神経科学の発展とともに、中枢における神経伝達物質などの生化学的変化や情報処理過程の変調などによるものと解明されつつある。非歯原性歯痛の治療非歯原性歯痛に有効な薬物療法非歯原性歯痛に対する治療法として、薬物療法が挙げられる。原疾患ごとに適用されるべき薬物は異なるため、歯科医院としては適切な診療科を患者に選択させることも重要である。筋・筋膜痛による歯痛に対しては、鑑別診断目的を含めてトリガーポイントインジェクションが有効である。他にもNSAIDs(イブプロフェン)、低用量のアミトリプチリン、アセトアミノフェン、トラマドール塩酸塩/アセトアミノフェン配合錠、混合ビタミンB群、ジクロフェナクナトリウム、塩酸チザニジン、リン酸コデイン、ベンゾジアゼピン、漢方などが有効であったとする報告があるが、いずれもエビデンスレベルが十分なものは少ない。その他の原疾患に対する薬物療法に関しても、原疾患ごとに有効な薬物が異なり、その有効性をそれぞれで評価する必要がある。非歯原性歯痛に理学療法は有効?非歯原性歯痛に対する治療として、理学療法は有効だろうか。結論から言えば、非歯原性歯痛に対する理学療法の科学的なエビデンスは十分ではない。筋・筋膜痛による歯痛にはストレッチやマッサージ、ホットウォーターバスなどの理学療法の有効性が報告されているが、いずれの研究もエビデンスレベルは高くない。理学療法は可逆的で侵襲が少ない治療法であり、多くの疾患に対して経験的に有用であると評価されているため、今後の研究が待たれるところである。非歯原性歯痛に抜髄・抜歯は有効か?非歯原性歯痛に対して抜髄や抜歯といった不可逆的的な処置は無効である。なぜなら、歯に原因が無いからである。非歯原性歯痛に対して抜髄や抜歯を行っても疼痛が改善されなかったケースや、むしろ増悪したケースが多数報告されている。同様に、咬合調整や義歯調整などの治療も効果は無いため、非歯原性歯痛では不必要な可能性のある歯科治療を行うべきではない。非歯原性歯痛にスプリント療法は有効か?非歯原性歯痛のうち、筋・筋膜痛による歯痛に関しては、スプリントによる一時的な疼痛軽減が期待できる。しかし、その他の原疾患に対してスプリント療法を行うことには理論的な根拠は無い。非歯原性歯痛の実際の臨床では原因が特定できていない場合が多く、スプリント療法などの可逆的な治療法を「とりあえず」で選択してしまいがちである。しかしいずれの病態の非歯原性歯痛に対しても、スプリント療法のエビデンスは十分とは言えない。非歯原性歯痛の予防非歯原性歯痛の予防法は、現在のところ研究されていないと言ってもよいほどに文献が少ない。例えば筋・筋膜痛による歯痛には生活習慣の改善が治療として行われるため、予防法としても有効なようだ。今後非歯原性歯痛の認知拡大に伴って予防法に関する研究も進んでいくだろう。今後さらなるエビデンスが求められる日本口腔顔面痛学会『非歯原性歯痛の診療ガイドライン』は、2011年に初めて発行された。2019年に大幅な改定が行われ、一般臨床家にも徐々に周知されてきている。冒頭で述べたように、非歯原性歯痛は出現度の低い疾患ではない。非歯原性歯痛が原因で歯痛を訴える患者に対して不可逆的な侵襲が行われないためにも、今後さらなるエビデンスの充実や、歯科医療者に対する情報の提供は必要不可欠である。非歯原性歯痛の診断・治療のプラクティス強い痛みを訴える患者に対し、原因が特定できないまま抜髄や抜歯をしてしまったこと、ないでしょうか。抜髄・抜歯に至らなかったとしても、投薬のみで経過観察していませんか?その歯、非歯原性歯痛だったかもしれません。単に非歯原性歯痛といっても、その原因やメカニズムは多様です。筋・筋膜痛、三叉神経痛、群発頭痛。どれも患者は「歯の痛み」を訴えて受診します。中には歯髄炎の症状と酷似しても、X線画像では異常が認められず、結果として中枢性の疼痛ということもあります。これら”非歯原性”の歯痛に対して、正しく診断し適切な治療ができなければ、なかなか治らない病に患者は不安を感じてしまうでしょう。オーバートリートメントを防ぐためにも、正しい知識を身につけ非歯原性歯痛に対応できるスキルを身につけましょう。セミナー詳細を見てみる参考文献一般社団法人 日本口腔顔面痛学会『非歯原性歯痛の診療ガイドライン 改訂版』2019.坂本 英治, 石井 健太郎, 江崎 加奈子, 塚本 真規, 横山 武志.【口腔顔面領域の慢性痛の診断と治療】 非歯原性歯痛の診断と治療. ペインクリニック. 36(7): 907-917, 2015. Nixdorf D, Moana-Filho E. 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1D編集部
2021年5月12日

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