歯科用語集
2025年10月28日

阻害薬

「阻害薬」とは?歯科用語の解説と症例を紹介

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定義・語源

阻害薬とは、生理学的または生化学的なプロセスを抑制する薬剤を指す。語源は「阻害」と「薬」に由来し、特定の酵素や受容体の働きを妨げることから名付けられた。歯科においては、主に感染症の治療や疼痛管理に用いられることが多い。具体的には、抗菌薬や抗炎症薬が含まれ、これらは細菌の増殖を抑制したり、炎症を軽減する役割を果たす。阻害薬はその作用機序により、選択的阻害薬や非選択的阻害薬に分類されることもある。


臨床における位置づけ・判断基準

臨床において阻害薬は、特に感染症や炎症の管理において重要な役割を果たす。歯科医師は、患者の症状や病歴を考慮し、適切な阻害薬を選択する必要がある。例えば、根管治療においては、感染を抑えるために抗菌薬が処方されることが一般的である。また、疼痛管理においては、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が使用されることが多い。判断基準としては、患者のアレルギー歴や併用薬、病状の重篤度などが考慮される。

関連用語・類義語との違い

阻害薬に関連する用語としては、抗菌薬、抗炎症薬、鎮痛薬などが挙げられる。これらはそれぞれ異なる作用機序を持ち、使用目的も異なる。例えば、抗菌薬は細菌の増殖を抑えることを目的とし、抗炎症薬は炎症を軽減することを目的とする。一方、鎮痛薬は疼痛を緩和するために用いられる。阻害薬はこれらの薬剤の中に含まれることが多く、特定の作用を持つ薬剤を指すため、使用時にはその違いを理解しておくことが重要である。

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降圧薬の歯科臨床における役割と注意点。処置や症例に基づく実践的ガイド

降圧薬の歯科臨床における役割と注意点。処置や症例に基づく実践的ガイド

降圧薬の定義とその重要性降圧薬とは、高血圧を治療するために使用される薬剤である。これらの薬剤は、血圧を低下させることにより、心血管系の疾患リスクを軽減する役割を果たす。歯科臨床においては、降圧薬を服用している患者が多く、これらの薬剤の影響を理解することは、診断や処置において重要である。特に、降圧薬の種類や作用機序を把握することで、患者の安全を確保し、適切な治療計画を立てることが可能となる。降圧薬の種類とその作用機序降圧薬には、主にACE阻害薬、ARBs、カルシウム拮抗薬、利尿薬などがある。ACE阻害薬は、アンジオテンシン変換酵素を阻害し、血管を拡張させることで血圧を下げる。ARBsは、アンジオテンシンIIの受容体をブロックし、同様の効果を持つ。カルシウム拮抗薬は、心筋や血管平滑筋のカルシウムの流入を抑制し、心拍数を減少させる。利尿薬は、腎臓でのナトリウムと水の再吸収を抑制し、血液量を減少させる。これらの作用機序を理解することで、患者の症状や治療方針を適切に判断することができる。降圧薬使用患者の歯科診療における注意点降圧薬を使用している患者に対する歯科診療では、いくつかの注意点が存在する。まず、降圧薬の服用による口腔内の副作用、特に口渇や味覚異常が見られることがある。これにより、患者の口腔衛生状態が悪化する可能性があるため、定期的な口腔ケアの指導が重要である。また、降圧薬の中には、出血傾向を高めるものもあるため、抜歯や外科的処置を行う際には、患者の服用薬を確認し、必要に応じて処置のタイミングを調整することが求められる。降圧薬と歯科処置の関係性降圧薬を服用している患者に対する歯科処置は、特に抜歯やインプラント治療において慎重に行う必要がある。これらの処置では、出血のリスクが高まるため、事前に患者の血圧を測定し、安定した状態で処置を行うことが望ましい。また、術後の管理においても、降圧薬の影響を考慮し、適切な止血処置やアフターケアを行うことが重要である。降圧薬使用患者の症例と実践的アプローチ実際の症例を通じて、降圧薬を使用している患者に対するアプローチを考察する。例えば、高血圧の患者が歯科治療を受ける際、事前に血圧を測定し、安定していることを確認する。抜歯を行う場合、出血のリスクを考慮し、局所麻酔の選択や止血方法を工夫することが求められる。また、術後のフォローアップにおいては、患者の血圧管理や口腔衛生指導を行い、再発防止に努めることが重要である。降圧薬の導入におけるメリットとデメリット降圧薬の導入には、患者の血圧を効果的に管理できるというメリットがある。一方で、薬剤による副作用や相互作用のリスクも考慮しなければならない。特に、歯科治療においては、降圧薬の種類によっては出血傾向が高まることがあるため、慎重な判断が求められる。患者の全身状態を把握し、適切な治療計画を立てることが、歯科医師としての責務である。
1D編集部
2024年6月1日
阻害薬の臨床応用と歯科治療における重要性:処置・症例・術式の判断ポイント

阻害薬の臨床応用と歯科治療における重要性:処置・症例・術式の判断ポイント

阻害薬の定義とその役割阻害薬とは、特定の生理的または生化学的過程を抑制する薬剤であり、歯科領域においても多くの応用がある。例えば、局所麻酔薬や抗生物質の一部は、痛みや感染を抑えるために使用される。これらの薬剤は、歯科治療において患者の快適さを向上させるために重要な役割を果たしている。阻害薬の使用にあたっては、適切な診断と判断が求められる。特に、患者の既往歴やアレルギー反応を考慮することが重要である。これにより、治療の安全性を確保し、効果的な処置を行うことが可能となる。阻害薬の種類とその使い方阻害薬には、局所麻酔薬、抗生物質、抗炎症薬などが含まれる。局所麻酔薬は、歯科治療において痛みを軽減するために使用され、特に抜歯や根管治療において重要である。抗生物質は、感染症の予防や治療に用いられ、特にインプラント治療や外科的処置においてその効果が期待される。抗炎症薬は、術後の腫れや痛みを軽減するために使用され、患者の回復を促進する。これらの薬剤の選択には、患者の症状や治療内容に応じた判断が必要であり、適切な使用が求められる。阻害薬の処置におけるメリットとデメリット阻害薬を使用することには多くのメリットがある。例えば、局所麻酔薬を使用することで、患者の痛みを軽減し、治療のストレスを軽減することができる。また、抗生物質の使用により、感染症のリスクを低減することが可能である。しかし、阻害薬にはデメリットも存在する。副作用やアレルギー反応のリスクがあるため、患者の状態を十分に把握した上で使用する必要がある。また、過剰な使用は耐性菌の発生を招く可能性があるため、注意が必要である。臨床における阻害薬の判断ポイント阻害薬を使用する際には、いくつかの判断ポイントが存在する。まず、患者の既往歴やアレルギー歴を確認することが重要である。次に、治療内容に応じた適切な薬剤の選択が求められる。さらに、薬剤の投与量や投与方法についても慎重に考慮する必要がある。特に、局所麻酔薬の場合は、投与部位や患者の体重に応じた適切な量を選定することが求められる。これらの判断を通じて、より安全で効果的な治療を提供することが可能となる。症例に基づく阻害薬の応用具体的な症例を通じて、阻害薬の応用を考えることが重要である。例えば、抜歯後の感染予防として抗生物質を使用した症例では、適切なタイミングでの投与が感染の発生を防ぎ、患者の回復を促進した。また、根管治療において局所麻酔薬を使用した症例では、患者の痛みを軽減し、治療の成功率を向上させることができた。このように、実際の症例を通じて阻害薬の効果を確認することは、臨床における重要な視点である。阻害薬の導入における注意点阻害薬を新たに導入する際には、いくつかの注意点がある。まず、薬剤の効果や副作用について十分な知識を持つことが求められる。また、患者に対する説明責任も重要であり、治療に伴うリスクや期待される効果について明確に伝える必要がある。さらに、薬剤の管理や保管方法についても注意が必要であり、適切な環境での保管が求められる。これにより、薬剤の効果を最大限に引き出すことが可能となる。まとめ:阻害薬の重要性と今後の展望阻害薬は、歯科治療において重要な役割を果たしており、適切な使用が求められる。患者の快適さを向上させるためには、阻害薬の効果やリスクを理解し、適切な判断を行うことが不可欠である。今後も、最新の研究やガイドラインに基づいた情報をもとに、阻害薬の使用方法を見直し、より安全で効果的な治療を提供していくことが求められる。
1D編集部
2024年6月1日
東北大、P.g.菌が血管修復を妨げるメカニズムを解明

東北大、P.g.菌が血管修復を妨げるメカニズムを解明

歯周病の病態には、複数の歯周病原細菌が関わっている。なかでも、Porphyromonas gingivalis(P. gingivalis)は歯周病の発症に最も深く関わるキーストーン病原体として着目されている。東北大学の多田浩之講師らの研究チームは、P. gingivalisが血管の修復を妨げる仕組みを明らかにした。歯周病患者におけるP. gingivalisには、plasminogen activator inhibitor-1(PAI-1)というタンパク質を分解する作用がある。PAI-1は血管の修復を担う血管内皮細胞の細胞移動に関わるため、これが分解されてしまうことによって、血管の修復が阻害されるという仕組みだ。P. gingivalisをヒトの血管内皮細胞に感染させると、PAI-1の産出量が著しく減少したことから、本研究の成果につながった。本研究によって、アルツハイマー型認知症や心血管疾患など、血管の異常が関わる全身疾患に関する研究が前進することが期待される。ペリオアカデミーを開催1Dでは、12月21日から歯周病のトップランナーの講師陣によるオンライン研修コース『ペリオアカデミー』を開講する。全11回、最先端の歯周病臨床を知ることができる。ペリオを学びたい歯科医師の先生方は、ぜひ参加をご検討いただきたい。コースの詳細を見てみるP. gingivalisが血管の修復を阻害する本研究について、より詳しく見ていこう。P. gingivalisは、タンパク質分解酵素であるジンジパインを分泌し、ヒトの免疫に関わるタンパク質を壊し、殺菌されないよう抵抗している。また、ジンジパインはアルツハイマー型認知症の悪化に寄与することも、近年の研究によって明らかにされている。歯周病では、歯周組織が慢性的な炎症に陥理、歯周ポケットのなかで血管が破れ、出血する。P. gingivalisは自身の増殖のために鉄を必要とする細菌で、ジンジパインにより赤血球を破壊しヘモグロビンからヘム鉄を摂取する。歯周ポケットの出血は、P. gingivalisの増殖にはうってつけの環境となる。血管の内側は血管内皮細胞で裏打ちされており、出血を生じると血管内皮細胞は破れた穴を埋めるように移動し、血管を修復する。この移動に、PAI-1タンパク質が必要であるが、これがP. gingivalisによって分解されてしまう、という機序だ。研究の方法と詳細のメカニズムP. gingivalisをヒトの血管内皮細胞に感染させると、PAI-1の産出量が著しく減少した。しかし、人為的にジンジパインを欠損させたP. gingivalisを感染させても、PAI-1の産出量は減少しなかったという。さらに、P. gingivalisから精製したジンジパインでPAI-1を処理すると、PAI-1が複数の断片に分解されることが確認された。このことから、P. gingivalisから分泌されたジンジパインはPAI-1をタンパク分解していることが明らかになった。血管内皮細胞の創傷は、細胞の移動により24時間程度でほぼ閉鎖される。しかし、血管内皮細胞をPAI-1阻害薬やPAI-1受容体であるLRP1拮抗薬で処理すると、24時間経過後も創傷はほとんど閉鎖されなくなる。そこで、血管内皮細胞にP. gingivalisを感染させると、血管内皮細胞の創傷治癒は遅くなった。それに対して、ジンジパインを失活させたP. gingivalisでは、血管内皮細胞の創傷治癒は遅くならなかった。血管内皮細胞に精製ジンジパインを添加すると創傷治癒は遅くなったことから、ジンジパインによりPAI-1が分解され、その結果として血管内皮細胞の創傷治癒が妨げられることが明らかになったのである。歯周病 × ヘルスケアにさらに注目が集まる血管の修復が遅れると、歯周病の場合、歯周ポケットの出血が持続する。その結果、P. gingivalisはさらに増殖し、歯周病は悪化の一途をたどる。また、P. gingivalisが破れた血管から体内に侵入することで、アルツハイマー型認知症や心血管疾患など血管の異常が関わる全身疾患を悪化させる可能性も考えられる、と研究チームは指摘している。本研究は、先月25日に学術誌Journal of Innate Immunityのオンライン速報版に掲載されている。ペリオを深く学びたいなら!冒頭で触れたように、1Dでは12月21日から「ペリオアカデミー」を開講する。歯周組織・歯周病の基礎から診査診断、基本治療〜外科〜メインテナンスの流れに沿って、歯周治療の全てを網羅し徹底的に学ぶことができる。総勢6名、プロフェッショナルの講師陣が全11回にわたってレクチャー。希望者は講師から症例のフィードバックが受けられる。ぜひご参加いただきたい。講義詳細を見てみる参考文献Porphyromonas gingivalis Gingipains-Mediated Degradation of Plasminogen Activator Inhibitor-1 Leads to Delayed Wound Healing Responses in Human Endothelial cells, Li-Ting Song, Hiroyuki Tada, Takashi Nishioka, Eiji Nemoto, Takahisa Imamura, Jan Potempa, Chang-Yi Li, Kenji Matsushita, Shunji Sugawara, Journal of Innate Immunity, 2021.11.歯周病菌が血管の修復を妨げる仕組みを発見 -歯周病菌は血管内皮細胞の創傷治癒を遅延させる-, 東北大学プレスリリース, 2021年12月9日.
1D編集部
2021年12月12日
【超解説】非歯原性歯痛のエビデンス【1万字】

【超解説】非歯原性歯痛のエビデンス【1万字】

患者の多くは、歯痛を主訴として歯科医院を訪れる。歯科医師であれば真っ先に歯髄炎や歯周炎を疑うところだが、近年では歯を疼痛の発生源としないにも関わらず歯痛を訴える疾患に脚光が集まってきた。※ 非歯原性歯痛の診断・治療のレクチャーは こちらから詳細を見る非歯原性歯痛とは?非歯原性歯痛とは、歯に原因がないにも関わらず、歯に痛みを感じる疾患である。非歯原性歯痛は、歯痛全体の2.1〜9%を占めると推定され、Nixdorfらのシステマティック・レビューによれば、一般の歯科医院での非歯原性歯痛の発現頻度は5.3%であると推定されている。さらには、年間で68万本の歯が根管に原因のない根管治療をされているという報告もある。歯に原因が見つからないにも関わらず患者が痛みを訴えるため、歯科医師により抜髄や抜歯など効果のない不可逆的な歯科治療が行われることもある。当然抜髄や抜歯を行っても歯痛は継続するため、原因不明の痛みとして困窮している患者や歯科医師が、いまも日本全国に存在しているのだ。口腔顔面痛は、歯学部の教育課程にあまり盛り込まれていなかった経緯があり、臨床上でも見過ごされがちだった領域である。本記事では、日本口腔顔面痛学会『非歯原性歯痛の診療ガイドライン(改訂版)』を下敷きとして、非歯原性歯痛のエビデンスを徹底解説する。非歯原性歯痛の原疾患非歯原性歯痛を誘導しやすい病態としては、「筋・筋膜痛による歯痛」「神経障害性疼痛による歯痛」「神経血管性頭痛による歯痛」「上顎洞疾患による歯痛」「心臓疾患による歯痛」「精神疾患または心理社会的要因による歯痛」「特発性歯痛」などが挙げられる。筋・筋膜痛による歯痛筋・筋膜痛の関連痛として、歯痛が生じることがある。筋・筋膜痛による歯痛は非拍動性の疼くような痛みを特徴とし、歯原性歯痛と比べると痛みの持続時間が長いという特徴がある。筋・筋膜痛による歯痛は筋の酷使による疲労によって生じ、心理的ストレスによって悪化するとされる。筋・筋膜痛による歯痛の最大の特徴は「トリガーポイント」の存在である。トリガーポイントは骨格筋の疲労により形成される易刺激性の圧痛点であり、このトリガーポイントへの刺激によって口腔顔面部に関連痛を生じさせる。具体的には、咬筋や側頭筋、胸鎖乳突筋の触診によるトリガーポイントの5秒間の圧迫により歯痛が再現され、当該の筋への麻酔(トリガーポイントインジェクション)によって疼痛が軽減することが特徴である。筋・筋膜痛による歯痛の原因となる筋は、咬筋が約半数の47%、側頭筋が30%、胸鎖乳突筋が17%の順に多いと報告されている。神経障害性疼痛による歯痛神経生涯生疼痛による歯痛は、「発作性神経障害性疼痛」と「持続性神経障害性疼痛」とに分類される。発作性神経障害性疼痛は「三叉神経痛」に代表されるように、発作的に生じる電撃様疼痛が特徴である。誘発部位への些細な刺激で激烈な痛みが発作的に数秒間生じる。現に、三叉神経痛の患者の多くは歯痛を主訴として最初に歯科医院に来院している。一方の持続性神経障害性疼痛は、灼熱性の痛みが間断なく持続する症状を特徴とする。持続性神経障害性疼痛の発症前に外傷や外科処置などの既往歴があり、多くの場合に知覚鈍麻やアロディニアなどの神経障害性疼痛の特徴を伴っている。神経血管性頭痛による歯痛神経血管性頭痛の患者の多くは、歯痛を主訴として歯科医院を受診している。神経血管性頭痛とは、脳血管の神経原性炎症によって生じる一次性頭痛のことであり、これも歯痛を生じることが多い。片頭痛や三叉神経・自律神経性頭痛が神経血管性頭痛である。片頭痛では、臨床症状として上顎臼歯部の拍動性自発痛が一般的であるが、下顎犬歯に生じたケースもある。また群発頭痛では、上顎大臼歯部の持続性の激痛が15分〜180分間生じるが、突然消失するという臨床症状を持つ。上顎洞疾患による歯痛上顎洞疾患による歯痛は、文字通り上顎洞の疾患が原因で生じる歯痛のことである。急性上顎洞炎による歯痛が最も頻度が高いとされるが、上顎洞がんや真菌感染などの疾患との鑑別診断が必要である。上顎洞炎のうち、18%に歯痛が生じる。歯痛が生じる部位は、上顎洞が解剖学的に近接している上顎の小臼歯〜大臼歯に多い。また、上顎洞がん患者の36%は、病初期に上顎臼歯部の歯痛を訴えるという報告もある。冷水痛、咀嚼時痛が認められ、かみしめにより違和感を生じるほか、鼻症状や発熱などの感冒症状も認める。心臓疾患による歯痛狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患に代表される、心疾患の関連痛として歯痛が生じることもある。虚血性心疾患の発作時に口腔顔面部に痛みが生じる割合は38%であると明らかにした研究があるが、38%のうちの5.9%は、口腔顔面部の痛みが唯一の症状であった。この場合の関連痛の特徴は、「圧迫痛」や「灼熱痛」である。虚血性心疾患の患者が、歯痛を唯一の主訴として歯科医院に来院する可能性があること、それを見逃してしまうと患者の命に関わる結末になりかねないことを、歯科医師は知っておく必要があるかもしれない。精神疾患または心理社会的要因による歯痛シェイクスピアは、妊娠した妻を持つ夫が歯痛を訴えることがあると書き残した。妊婦の夫は、妻の出産が不安で非歯原性歯痛を訴えることがある。また、うつ病や双極性障害、身体症状症、妄想性障害身体型、パーソナリティ障害によって非歯原性歯痛が生じることも報告されている。心身医学的な歯痛では、病理所見が疼痛部位に存在しない。こうした精神疾患または心理社会的要因による歯痛は、患者の訴える歯痛の部位が解剖学的な整合性を欠くことから推測できることが多い。特発性歯痛(非定型性歯痛を含む)特発性歯痛は、1本以上の歯または抜歯した後の部位に生じる持続性疼痛で、通常の歯科的原因が全く存在しないもの、と定義されている。その病態は現在でも解明されていない部分も多い。非定型性歯痛の病態も未解明の部分が多い。神経障害性疼痛であるとする説や心理的な要因が原因で生じるとする説、中枢性感作によるとする説、脳内の疼痛処理過程の変調で生じるとする説など諸説ある。非定型性歯痛の70〜83%が歯科治療をきっかけに発症するとされ、これらの患者は医療への不信感や怒り、不安などが見られることがある。精神疾患の既往があるケースが多いことを考えても、非定型性歯痛の患者は精神状態や心理社会的な状態を総合的に考える必要がある。非歯原性歯痛はなぜ起こるのか?前章では、非歯原性歯痛のそれぞれの原疾患について解説した。それでは、非歯原性歯痛はどのような原因で生じるのだろうか。非歯原性歯痛の発生機序は、「関連痛」「神経障害による痛み」「器質的異常が認められない慢性疼痛」の3つに分類される。関連痛前章で解説した筋・筋膜痛による歯痛、神経血管性頭痛による歯痛、心臓疾患による歯痛、上顎洞疾患による歯痛が「関連痛」による非歯原性歯痛に含まれる。例えば筋・筋膜痛による歯痛では、疲労が蓄積した筋に形成されたトリガーポイントからの関連痛により生じる。トリガーポイントにトリガーポイントインジェクションを行ったところ歯痛が消失するということも根拠となっている。神経障害による痛み神経障害による痛みは、末梢神経性疼痛と中枢神経性疼痛とに分類され、神経障害性疼痛による歯痛の発生機序とされる。末梢神経性疼痛は、末梢性感作、神経腫、エファプス伝達、交感神経の関与、表現形の変化により生じる。また中枢神経性疼痛は、発芽、ワインドアップ、長期増強、中枢性感作、内因性痛覚抑制機構の失調により生じる。器質的異常が認められない慢性疼痛精神疾患や心理社会的要因によって歯痛が生じているケースなどが、この「器質的異常が認められない慢性疼痛」に含まれる。これらはこれまで原因不明と考えられてきたが、脳科学・神経科学の発展とともに、中枢における神経伝達物質などの生化学的変化や情報処理過程の変調などによるものと解明されつつある。非歯原性歯痛の治療非歯原性歯痛に有効な薬物療法非歯原性歯痛に対する治療法として、薬物療法が挙げられる。原疾患ごとに適用されるべき薬物は異なるため、歯科医院としては適切な診療科を患者に選択させることも重要である。筋・筋膜痛による歯痛に対しては、鑑別診断目的を含めてトリガーポイントインジェクションが有効である。他にもNSAIDs(イブプロフェン)、低用量のアミトリプチリン、アセトアミノフェン、トラマドール塩酸塩/アセトアミノフェン配合錠、混合ビタミンB群、ジクロフェナクナトリウム、塩酸チザニジン、リン酸コデイン、ベンゾジアゼピン、漢方などが有効であったとする報告があるが、いずれもエビデンスレベルが十分なものは少ない。その他の原疾患に対する薬物療法に関しても、原疾患ごとに有効な薬物が異なり、その有効性をそれぞれで評価する必要がある。非歯原性歯痛に理学療法は有効?非歯原性歯痛に対する治療として、理学療法は有効だろうか。結論から言えば、非歯原性歯痛に対する理学療法の科学的なエビデンスは十分ではない。筋・筋膜痛による歯痛にはストレッチやマッサージ、ホットウォーターバスなどの理学療法の有効性が報告されているが、いずれの研究もエビデンスレベルは高くない。理学療法は可逆的で侵襲が少ない治療法であり、多くの疾患に対して経験的に有用であると評価されているため、今後の研究が待たれるところである。非歯原性歯痛に抜髄・抜歯は有効か?非歯原性歯痛に対して抜髄や抜歯といった不可逆的的な処置は無効である。なぜなら、歯に原因が無いからである。非歯原性歯痛に対して抜髄や抜歯を行っても疼痛が改善されなかったケースや、むしろ増悪したケースが多数報告されている。同様に、咬合調整や義歯調整などの治療も効果は無いため、非歯原性歯痛では不必要な可能性のある歯科治療を行うべきではない。非歯原性歯痛にスプリント療法は有効か?非歯原性歯痛のうち、筋・筋膜痛による歯痛に関しては、スプリントによる一時的な疼痛軽減が期待できる。しかし、その他の原疾患に対してスプリント療法を行うことには理論的な根拠は無い。非歯原性歯痛の実際の臨床では原因が特定できていない場合が多く、スプリント療法などの可逆的な治療法を「とりあえず」で選択してしまいがちである。しかしいずれの病態の非歯原性歯痛に対しても、スプリント療法のエビデンスは十分とは言えない。非歯原性歯痛の予防非歯原性歯痛の予防法は、現在のところ研究されていないと言ってもよいほどに文献が少ない。例えば筋・筋膜痛による歯痛には生活習慣の改善が治療として行われるため、予防法としても有効なようだ。今後非歯原性歯痛の認知拡大に伴って予防法に関する研究も進んでいくだろう。今後さらなるエビデンスが求められる日本口腔顔面痛学会『非歯原性歯痛の診療ガイドライン』は、2011年に初めて発行された。2019年に大幅な改定が行われ、一般臨床家にも徐々に周知されてきている。冒頭で述べたように、非歯原性歯痛は出現度の低い疾患ではない。非歯原性歯痛が原因で歯痛を訴える患者に対して不可逆的な侵襲が行われないためにも、今後さらなるエビデンスの充実や、歯科医療者に対する情報の提供は必要不可欠である。非歯原性歯痛の診断・治療のプラクティス強い痛みを訴える患者に対し、原因が特定できないまま抜髄や抜歯をしてしまったこと、ないでしょうか。抜髄・抜歯に至らなかったとしても、投薬のみで経過観察していませんか?その歯、非歯原性歯痛だったかもしれません。単に非歯原性歯痛といっても、その原因やメカニズムは多様です。筋・筋膜痛、三叉神経痛、群発頭痛。どれも患者は「歯の痛み」を訴えて受診します。中には歯髄炎の症状と酷似しても、X線画像では異常が認められず、結果として中枢性の疼痛ということもあります。これら”非歯原性”の歯痛に対して、正しく診断し適切な治療ができなければ、なかなか治らない病に患者は不安を感じてしまうでしょう。オーバートリートメントを防ぐためにも、正しい知識を身につけ非歯原性歯痛に対応できるスキルを身につけましょう。セミナー詳細を見てみる参考文献一般社団法人 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1D編集部
2021年5月12日
根尖性歯周炎による骨破壊のメカニズム、解明される

根尖性歯周炎による骨破壊のメカニズム、解明される

根尖性歯周炎は、う蝕を原因とする細菌感染により顎骨破壊を引き起こす。これは、歯科医療者にとってみれば周知の事実である。なぜ根尖性歯周炎で顎骨破壊が起こるのか、実はそのメカニズムはよくわかっていなかった。しかし、2021年1月に東北大学、新潟大学、神奈川歯科大学の研究チームがこの疑問に答えを出した。根尖性歯周炎に罹患しているモデル動物で実験したところ、ケモカインであるCXCL9がマクロファージを活性化し、破骨細胞を活性化する炎症性サイトカインを分泌することで、顎骨の破壊が促進されることを発見したのである。また、CXCL9の阻害薬であるCXCR3拮抗薬の投与で、根尖性歯周炎による顎骨破壊の抑制ができることを明らかにした。これにより、CXCR3拮抗薬を投与することで、顎骨破壊を抑える新たな治療法が確立される可能性が出てきた。この方法が確立されれば、これまで抜歯が適用されていた根尖性歯周炎を保存できる確率も高くなるだろう。 根尖性歯周炎は抜歯の原因のうち21%を占めており、関連する治療費を含めると年間で約220億円もの医療費がこの病気の対応に費やされている。さらに、整形外科領域の骨破壊を伴う疾患への応用も期待されている。今後の研究の進歩に、引き続き注目していきたい。歯科セミナーなら、1D(ワンディー)で!歯科医療者向けのオンラインセミナーを多数開催中!「知識を増やしたい」「スキルアップしたい」歯科医師・歯科衛生士の皆様におすすめです。まずは近日中に開催のセミナー一覧を見てみませんか?セミナー一覧をみる参考文献むし歯による顎骨破壊の原因を解明 ー抗ケモカイン療法による顎骨破壊の抑制ー, 東北大学 プレスリリース・研究成果, <URL>, 2021年2月12日閲覧Hasegawa, T., Suresh, V. V., Yahata, Y., Nakano, M., Suzuki, S., Suzuki, S., ... & Saito, M. (2021). Inhibition of the CXCL9-CXCR3 axis suppresses the progression of experimental apical periodontitis by blocking macrophage migration and activation. Scientific reports, 11(1), 1-15. 
宇梶 淳平
2021年2月14日

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