「咬合に違和感」患者は "気にしすぎ" ではない可能性 研究結果
福岡歯科大学の研究チームは、「咬合に違和感がある」が主症状のPhantom bite syndrome(PBS)患者において、脳活動パターンの微妙な乱れがあることを明らかにした。研究成果は、Neuropsychiatric Disease and Treatmentに掲載されている。オンラインセミナー「脳科学で解明する、咬合異常感」2021年7月28日水曜日、Phantom Bite Syndrome(咬合異常感症候群)を徹底的に深掘りするオンラインセミナーが開催されます。PBSが気になる方は是非ご参加ください!セミナーに参加するPhantom bite syndromeとは?Phantom bite syndrome(PBS)は、1976年にMarbachにより提唱された概念である。歯科処置を繰り返しても改善しない咬合の違和感と、それに関連した全身の症状を特徴とする。Marbachによって、Phantom bite syndromeの臨床的特徴は以下のように解説されている。歯科治療後に咬合修正を求め続ける幻想的かつ固有な理想咬合像に強く執着断片的な歯科的知識を持っている種々雑多な過去の治療の残骸(丁寧に詰め込まれた歯列模型、金冠やプラスチックの装置、エックス線写真、汚いレジンの暫間義歯、過去の顔写真など)を持参するしばしば、くどくどとした文章で自ら歯の問題を詳細に述べるPhantom bite syndromeの患者は、補綴物や修復物、咬合調整など通常の歯科治療を繰り返すものの解決することはなく、いわゆる「名医」を求めてdental shoppingに陥ってしまうことが多いとされる。下図はPhantom bite syndrome患者の口腔内写真であるが、咬合の調整やレジン修復を繰り返した痕跡が多数見られる。近年、このような患者で咬合感覚に関する中枢神経系の機能異常が生じていることが示唆されてきたが、これまで体型的な研究はなされておらず、脳のどの部分で不調が生じているかについては解明されていなかった。脳の機能異常が原因の可能性研究グループは、放射性同位元素の99mTc-ECDを用いた脳血流single photon emission computed tomography(単一光子放射型コンピュータ断層撮影、SPECT)を行い、Phantom bite syndrome患者に特有な脳活動パターンを調べた。まずは健康な被験者とPhantom bite syndrome患者の脳の様々な部位の血流の状態をSPECTで検査したところ、両者の直接比較では明らかな脳活動パターンの差は認められなかった。しかし、咬合に違和感のある歯の部位によって検討すると、左側に咬合の違和感がある患者では、うつ病を患っていた人が多いことがわかった。さらに、違和感のある歯の位置を右側/左側/両側に分類し、脳活動の状態に差があるかを検討したところ、左右どちらかに歯の違和感が残る患者では、違和感と同側の頭頂葉の活動が反対側よりも多くなっていることが明らかになった。一方、視床では、歯の違和感と反対側の脳活動が、同側よりも増加していることがわかった。つまり、Phantom bite syndrome患者が感じる咬合の違和感には、統合失調症などの精神疾患や口腔セネストパチーのそれとは異なる、微妙な脳の機能異常が潜んでいる可能性があることが考えられる。「利益なき歯科治療」解決の糸口に今回の研究から、Phantom bite syndrome患者においては、歯の部位に応じて脳活動の微妙なアンバランスが生じていることが示唆された。「気にしすぎな患者」「神経質な患者」と思われがちだったPhantom bite syndrome患者は、脳におけるごく僅かな機能異常によって咬合に違和感を感じている可能性が示されたのである。歯科医院を訪れる患者は、「歯を削ったり、補綴物を作り直してくれないと、絶対に症状が改善しない」と思い込んでいる節もある。しかし、咬合の違和感の原因は実は「歯そのもの」よりも「脳でそう感じるエラーが生じている」ためであった可能性がある。本研究を通じて研究グループは、「咬合の違和感の原因を、脳のシステムエラーまで射程を広げて再検討することで、余計に歯を削ったり、義歯を作り直したりといった益の少ない歯科治療の繰り返しやDental shoppingから、患者を救済できる可能性が高まることが期待される」と述べている。オンラインセミナー「脳科学で解明する、咬合異常感」2021年7月28日水曜日、Phantom Bite Syndrome(咬合異常感症候群)を徹底的に深掘りするオンラインセミナーが開催されます。東京医科歯科大学歯科心身医学の豊福明教授に、PBSの病態から患者対応、治療法、最新の知見をレクチャーいただきます。第一人者にライブで質問できるチャンスです!この記事を読んで興味が出た方は是非ご参加ください!セミナーに参加する参考文献1. 福岡歯科大学プレスリリース2. Marbach JJ: Phantom bite syndrome. Am J Psychiatry, 135(4): 476-479, 1978. PubMed PMID: 637145.