歯科用語集
2025年10月28日

モノリシック

「モノリシック」とは?歯科用語の解説と症例を紹介

PICK UP
【便利】歯科用語をイッパツ変換できるユーザー辞書を無料配布
【速報】令和8年度診療報酬改定の骨子判明:歯科はプラス0.31%、物価高・賃上げへの「二段構え」の支援策が柱に

定義・語源

モノリシックとは、単一の材料または構造から成ることを指す用語である。語源はギリシャ語の「monolithos」で、「mono」は「一つ」、「lithos」は「石」を意味する。歯科においては、モノリシックな材料は、特にセラミックや樹脂などの一体成形された修復物を指すことが多い。これにより、強度や耐久性が向上し、臨床での使用が増加している。モノリシックな修復物は、特にインプラントやクラウン、ブリッジなどで利用される。


臨床における位置づけ・判断基準

モノリシックな修復物は、臨床現場において非常に重要な役割を果たす。特に、強度や耐久性が求められる部位において、モノリシックな材料は適切な選択肢となる。判断基準としては、患者の咬合状態や歯の位置、修復物の大きさなどが挙げられる。また、保険点数においても、モノリシックな修復物は一定の評価を受けており、適切な保険請求が可能である。これにより、経済的な負担を軽減しつつ、質の高い治療を提供することができる。


関連用語・類義語との違い

モノリシックに関連する用語としては、「ポリシリック」や「コンポジット」がある。ポリシリックは複数の材料から成る構造を指し、強度や柔軟性を持たせることが可能である。一方、コンポジットは異なる材料を組み合わせて作られる修復物であり、審美性や機能性を重視する場合に選択されることが多い。モノリシックな修復物は、これらの用語と比較して、単一材料の特性を最大限に活かすことができるため、特定の臨床条件において優れた選択肢となる。


1Dプレミアム
1Dプレミアム

関連ニュース

モノリシック歯科補綴物の臨床応用とそのメリット・デメリット

モノリシック歯科補綴物の臨床応用とそのメリット・デメリット

モノリシック補綴物の定義と特徴モノリシック補綴物とは、単一の材料から成る補綴物を指し、特にセラミックやレジンなどが用いられることが多い。これにより、補綴物の強度や耐久性が向上し、臨床での使用が広がっている。モノリシック構造は、従来の多層構造に比べて製作が簡便で、短期間での導入が可能である。また、モノリシック補綴物は、色調の均一性が保たれやすく、審美性に優れているため、前歯部の補綴においても高い評価を得ている。これらの特徴から、モノリシック補綴物は、特に臨床での適用が増加している。モノリシック補綴物の処置と術式モノリシック補綴物の処置には、まず適切な診断が必要である。患者の口腔内の状態を診査し、補綴物の適応を判断する。次に、印象採得や咬合採得を行い、補綴物の設計を行う。製作過程では、CAD/CAM技術を用いることが一般的であり、これにより高精度な補綴物が短時間で作成可能である。術式としては、歯冠の形成や接着技術が重要であり、適切な接着剤の選択が補綴物の長期的な安定性に寄与する。モノリシック補綴物の症例と臨床での判断ポイントモノリシック補綴物は、特に前歯部の審美的な修復や、後歯部の機能的な修復において多くの症例で使用されている。症例によっては、歯根破折や重度のう蝕に対する治療としても適応される。臨床での判断ポイントとしては、患者の咬合状態や歯周組織の健康状態、さらには患者の審美的要求を考慮することが重要である。また、モノリシック補綴物のメリットとしては、製作の迅速性や強度の高さが挙げられるが、デメリットとしては、破損時の修復が難しい点がある。モノリシック補綴物のメリットとデメリットモノリシック補綴物のメリットには、強度が高く、破損しにくいことが挙げられる。また、製作が迅速であるため、患者にとっても負担が少ない。さらに、色調の均一性が高いため、審美性にも優れている。一方で、デメリットとしては、万が一破損した場合の修復が難しいことや、特定の条件下での適応が限られることがある。これらの点を考慮し、臨床での適用を慎重に判断する必要がある。モノリシック補綴物の導入における注意点モノリシック補綴物を導入する際には、いくつかの注意点が存在する。まず、患者の口腔内の状態を十分に評価し、適応症例を選定することが重要である。また、補綴物の設計や製作過程において、CAD/CAM技術の正確な操作が求められる。さらに、接着技術や材料選択においても慎重な判断が必要であり、これにより補綴物の長期的な安定性が確保される。臨床での成功を収めるためには、これらのポイントをしっかりと押さえておくことが求められる。
1D編集部
2024年6月1日
歯科医師の3割しか知らない、ジルコニアインプラントの話

歯科医師の3割しか知らない、ジルコニアインプラントの話

前回は“細かすぎて伝わらないジルコニア”と題して、急速に普及している歯冠修復材料としてのジルコニアの材料学的性質について解説した。モノリシックによる審美修復で使用されているジルコニアは、高透光性ジルコニアと呼ばれるものであったが、元々歯科用ジルコニアとして承認されたのは100%正方晶ジルコニア(Y-TZP)である。このY-TZPは、単独で歯冠修復に用いる機会は少なくなったが、その高靭性=壊れづらい性質から、現在諸外国においてインプラント体(フィクスチャー)の代替材料として注目されていることをご存知だろうか。今回の記事では、このジルコニアインプラントの現状とオッセオインテグレーションについて解説する。ジルコニアは、チタンに代わる次世代のメタルフリーインプラントとしてゴールデンスタンダードになるのか。ジルコニアの強さやその他の性質については、まず前回の記事をご参照いただきたいと思う。生体材料としてのジルコニア実は、ジルコニアはチタンやハイドロキシアパタイトと同様の生体不活性材料として分類されており(表1)、最近の歯科医師国家試験にも既出している。というのも、ジルコニアは医療用生体材料として1990年台から人工股関節の骨頭に応用されてきた材料であり、現在でも日本の京セラを中心として販売展開されている。ジルコニアが歯科用インプラント体材料として注目され、研究され始めたのは2000年頃からだ。まず商品としてジルコニアインプラント発売に頭角を現したのが、スイスのZ-Systems社である。ジルコニアインプラントを最初に商品化したかどうかは定かではないが、日本に初めてジルコニアインプラントを紹介したメーカーだと思われる。現在では欧州を中心として10社以上あるいはそれ以上のメーカーがジルコニアインプラントの開発、販売を行っている(表2)。 2015年頃には、世界のインプラントで最も多くのシェアを誇るストローマン社からPURE Ceramicという商品名でジルコニアインプラントが発売された(図1)。日本のメーカーではジルコニアインプラントは発売されておらず、薬器法にて承認もされていない。ちなみに日本のストローマンで発売されているRoxolidというインプラントはジルコニアではなく、金属のジルコニウムとチタンの合金であるため、ジルコニアインプラントとは全く関係ない。話を戻すが噂によると、企業としては今後全てのインプラント体のラインナップをチタンからこのジルコニアにシフトしていきたい、と又聞したことがある。また、隣国の韓国では、ジルコニアインプラントがチタンインプラントのシェアをすでに上回っていると現地の歯科医師から聞いたことがある。韓国では国としてベンチャー企業に対するスタート支援が充実しており、独自に開発されたジルコニアインプラントを売る企業が多く存在するそうだ。強調するが、これらはあくまで私が伝え聞いたことであるので話半分で受け取っていただきたいのだが、少なくとも日本は諸外国と比べてジルコニアへのメタルフリー化が遅れているということは断言していいだろう。しかし驚くべきことにジルコニアの原料となる粉末は全て日本の東ソー社で製造されている。つまりジルコニア製の海外製品は全て逆輸入という形で我々の仕事の糧になっているというわけだ。現在、インプラント材料自体もほとんど輸入に頼っている状態の中、ジルコニアインプラントについても、是非自国生産を見据えての製品開発が望まれるところである。ジルコニアインプラントの魅力ジルコニアの材料学的な性質については前回説明の通りであるが、まずはなんと言っても機械的性質が強く、従来のセラミックスよりも数倍以上の高い曲げ強度と靭性を併せ持つことが最大の強みであると考えている。純チタン製のインプラントは、意外に強度が弱く、しばしば破折症例に遭遇することも少なくない。筆者もすれ違い咬合を臨床のテーマにおいてきた関係で数例に出くわしたことがある。機械的強度が高いチタン合金製のインプラントも発売されているが、臨床現場では骨・生体適合性の観点から純チタン製インプラントの方が多く採用されているのが現状であると思われる。対して、ジルコニアは破折に強く、さらに白色であるので歯肉を透けメタルカラーが露出せず、審美的なメタルフリーインプラントとして期待されているのである。メタルフリー化は、現在の歯科界の方向性にも合致しており、金属アレルギーの心配もない。チタンはアレルギーを起こさない、と認識されていると思うが、これは不動態被膜由来の優れた耐食性により極めてアレルギー発生のリスクが低いということであって、論文上ではチタンアレルギーの発生や、それによるオッセオインテグレーション喪失を報告したエビデンスも存在する。実は、チタンアレルギーを検査する試薬が存在しないため、実際にはチタンアレルギーは起こらないとは言い切れないのである。一方、ジルコニアは化学的には疎水性であり、一部ではプラーク付着がチタンより少ないと報告されている。これについても真逆の結論を導き出している報告もあり不明な点は多いところではあるが、アバットメントとして応用され始めた理由もこの低プラーク付着によるところが大きいと考えられる。すなわちジルコニアはインプラント材料としても、インプラント周囲炎を予防できるのではないかと期待されているのである。ジルコニアはオッセオインテグレーションするのか?チタンがチタンインプラントである理由は、言うまでもなく、唯一オッセオインテグレーションを起こす材料であるからである。ではジルコニアインプラントはどうなのかというと、結論から言えば“未だ不明”というのが科学的見地からの現状である。文献検索を行うと、この数年間に限っては、ジルコニアインプラントではチタン同様またはオッセインテグレーション類似の骨反応が認められるという報告が多い。製品化が先行している現状であるので、その結果には多くのバイアスが存在する可能性があると筆者は考えている。チタンよりも骨適合性に劣るとした報告も少なからずあり、どの文献においてもエビデンス量の少なさからまだ結論を導くには早いと議論されている。また、チタンインプラント同様、ジルコニアそのものの化学組成がオッセオインテグレーションに影響しているということに加えて、インプラントの表面性状および形状が依存している可能性が高いとも考えられている。ご存知の通り、チタンインプラントの表面はSLA処理や陽極酸化処理などが施されており、これがオッセオインテグレーション獲得の上で不可欠であることは周知の事実である。一方、ジルコニアでは自身の機械的性質が高いがゆえ、表面加工が難しい。現在、研究レベルで様々な表面加工と骨形成の関係についての検討が行われており、筆者もこのジルコニアの表面改質法について今まさに研究を行っているところである。筆者の所属する研究グループでは、超薄膜アパタイトコーティングやレーザー加工といった方法でより確実な骨適合性を得るためのジルコニアインプラントの表面改質を行っている。最近では歯肉などの軟組織がジルコニアと接着する可能性があることを見出した(1-3)。これはインプラント周囲炎を防ぐための手段として大変有効であると考えている。このように筆者自身もジルコニアインプラントの是非を慎重に問いつつも、インプラント材料としてのジルコニアの魅力に大いに可能性を感じている。ジルコニアはゴールデンスタンダードになるか?さて、ここまでの話をまとめると、ジルコニアはオッセオインテグレーションを起こす可能性があると期待できるが、まだまだ臨床応用されて日が浅く不明な点が多い、という結論に至る。その他の課題も多い。例えば、硬すぎるがゆえの顎骨への応力集中による影響の懸念がある。また、金属と違い展性・延性がないためネジや境目のコントロールが困難であり、2ピースインプラントも一部では発売され始めているようだが、不安が残るという点。まさにコロナ禍のワクチン開発と同じような段階にあると考えて良いかもしれない。繰り返すが、ジルコニアインプラントは日本では薬器法上、未承認である。インターネット検索を行うと臨床応用例や治療紹介が少なからず散見されるが、あくまで所定の手続きを取った上で個人輸入・自己責任で臨床応用しているという段階である。もし臨床応用をご検討されている先生がいるとしたら、適切な手筈を取った上で必ず患者さんと相談、確実な同意を得てから使用していただきたいと思う。言うまでもなく日本は、諸外国の中においてトップクラスの医療安全水準を誇っている。海外では、エビデンスがままならないまま企業発信でジルコニアインプラントが臨床応用され始めているが、今後日本で承認され、インプラント材料のゴールデンスタンダードになり得るどうかは、我々の基礎および臨床研究によるエビデンスの蓄積が急務であると考えている。最後までお読みいただき有り難うございました、皆様の日々の臨床に少しでも役立てていただける情報であったならば幸いです。歯科セミナーなら「1D(ワンディー)」で!日本最大級の歯科医療メディア「1D」では、診療に役立つオンラインセミナーを多数開催中。もっと知りたい臨床トピックから超ニッチな学術トピックまで、参加したいセミナーが見つかります。下記ボタンから、開催中のセミナーを見てみましょう!開催セミナーを見てみる参考文献Hirota M et al. Bone responses to zirconia implants with a thin carbonate-containing hydroxyapatite coating using a molecular precursor method. J Biomed Mater ResPart B Appl Biomater 2014: 102B: 1277-1288.Hirota M et al. Cortical bone response toward nanosecond-pulsed laser-treated zirconia implant surfaces. Dent Mater J 2019; 38: 444-451.Iinuma Y et al. Surrounding tissue response to surface-treated zirconia implants. Materials 2019;13: 30.
廣田 正嗣
2021年1月10日
細かすぎて伝わらない、ジルコニアの材料学

細かすぎて伝わらない、ジルコニアの材料学

自費診療における歯冠修復材料といえば、e-maxかジルコニアの二択ではないだろうか。かつての長石系陶材やそれらを前装に用いたいわゆるメタボンは、もはや時代錯誤の代物となった。金属を鋳造するようにリチウム2ケイ酸ガラスをプレスして製作するプレスセラミックス、俗称IPS e.max press ®︎(以下、e.max、ivoclar vivadent社)は、高い審美性と強度から10年程前から急速に需要を高めたが、現在ではさらに高い強度を有すジルコニアが主役の座を奪ったと言っても過言ではない。しかしながら、ジルコニアといっても他のセラミックスと何が違うのか?どうして強度が高いのか?と疑問をお持ちの方も少なくないのではないだろうか。とりあえずジルコニアを勧めるのではなく、材料の基本的性質を熟知した上で有意義に臨床応用してほしいと思い、筆者は本記事のオファーを受けた。読者の方にはいささか基本事項ばかりで恐縮ではあるが、“細かすぎて伝わらない、ジルコニアの材料学" と題して、ジルコニアの材料学的性質を解説、私なりに考察したので、今一度確認のつもりでご拝読頂きたいと思う。ジルコニアはZrではないジルコニア(ZrO2)は原子番号40の金属であるジルコニウム(Zr)と酸素との化合物であり、セラミックスすなわち陶材などと同じ無機材料である。例えばアルミニウム(Al)とアルミナ(Al2O3)がそうであるように、ZrとZrO2は元素的には同じでも、化合物としての性質は全く別物である。ジルコニア(Zr)と書かれているのをよく見かけるが、決してそうではないので是非表記にも注意してほしい。ジルコニウムは元素の周期表を見るとわかるがTi元素の真下に位置し、金属としては性質が似ており生体適合性も良好である。この金属のジルコニウムは言うまでもなく金属色を呈すが、酸化物のジルコニアは白色あるいは結晶構造(原子の並び方)により透明である。ジルコニアの特徴は機械的強度が非常に高く、耐摩耗性にも優れるという点であり、金属材料や硬組織の代替材料として歯科材料学者が夢見てきた白い金属 “ホワイトメタル” とも称される。医療用としては1990年代から人工股関節の骨頭として応用されており、実は歴史のある材料である。ジルコニアの生体適合性は非常に良い。アレルギーはもちろんなく、材料表面にプラークが付着しづらいという報告もありインプラントアバットメントをはじめ、近年欧米ではフィクスチャーとしても臨床応用が始まっている。歯科用ジルコニアは部分安定化ジルコニアここからはアカデミックな内容になるが、なるべく端的にわかりやすく解説したい。ジルコニアは存在する温度によって結晶構造が変化する(図1)。結晶構造が斜めに傾いている単斜晶、直方体の正方晶、立方体の立方晶の3パターンである。ジルコニアのCADCAMブロックを作る場合、原料の粉末から成型し焼成を行う際に温度変化が起こるので結晶構造の変化(相転移という)を伴う。この相転移の際に約4.6%の体積収縮あるいは膨張が起こる。この変化が、材料を破壊せず繰り返し焼成し生産、歯の形に成形するのに厄介だった。歯科用に使用するためには結晶構造を安定化する必要があったわけである。そこで登場するのがイットリウム(Y)やセリウム(Ce)などといった安定化元素である。ジルコニアは室温では歯科で使うには弱い単斜晶の状態であるが、安定化元素の酸化物を部分的に添加すると、室温でも強い正方晶あるいは立方晶の形で安定に存在させることができる。これが部分安定化ジルコニアと呼ばれるもので、歯科用のジルコニアはこの部分安定化ジルコニアのことであり、最初に本邦で認可が下りたのはイットリア添加型正方晶部分安定化ジルコニア(Y-TZP,従来型ジルコニア)である。Y-TZPの他の種類として、イットリアの代わりにセリアをアルミナと複合化させて配合させたCe-TZPがKZR-CAD NANOZR®︎(ナノジルコニア)と称して現在もYAMAKIN(株)から販売されている(当初はPanasonicから販売)。ジルコニアはなぜ強いか100%正方晶で安定化させたジルコニア(TZP)はブリッジのコア等の強度が必要とされる部位に使用されてきたアルミナ陶材よりもはるかに硬く、曲げ強さはセラミックスでありながら1200~1500 MPaと金属材料に匹敵し、約350 MPaであるe.maxを大きく上回る。さらに、破壊靭性値についてもアルミナ陶材の2〜5倍程度あり、破壊しづらい(表)。ジルコニアがこのような優れた機械的性質を有す主たる理由は“応力誘起相変態”と呼ばれるジルコニア特有の現象に起因する(図2)。ジルコニアでは応力が付与され亀裂が生じると、その周囲の結晶構造が正方晶から単斜晶に変化する。前述したようにこの相転移に伴い体積が膨張するため亀裂の隙間を埋める結果となる(図3)。すなわち、ジルコニア自体が結晶構造の変化によって亀裂の進展を防ぎ、従来のセラミックスにはない高靭性を発揮するのである。このように物理的生物学的に過酷な環境である口腔内に適した新材料として高強度ジルコニアが脚光を浴びることとなった。しかしながら、従来型TZPは多結晶体であり光を散乱、屈折させるため陶材に比べ透明性が低いことが問題であり、モノリシック(一つの材料で構成する単層の歯冠修復物)では臼歯部にしか使用できなかった。よって、審美領域に使用する際はジルコニアをコアやフレームに用い、その上からレイヤリングあるいはe.maxをプレスした装置が使用されることが多かった。当時、ジルコニアとレイヤリングした材料の弾性係数の差などによって、コアのジルコニア自体は強いものの上物のチップなどが問題とされ、結局モノリシックe.maxの方が壊れないとの見解も多くあった。審美修復で使用されている自費ジルコニアの正体100%立方晶で安定化させたジルコニア(CZP: キュービックジルコニア)は、いわゆる透明な人工ダイヤモンドのことだ。CZPの曲げ強さは300MPa以下とY-TZPより低く、単独では歯科用には使われていない。近年、100%正方晶ジルコニアの問題点である白すぎる色調を解決するために、この透明性の高いCZPを配合させモノリシックでも審美修復に使用できる高透光性ジルコニアが開発され様々なシェードが用意されるようになった。CZPの配合によって機械的性質は低下するが、それでも600MPa以上で従来型ジルコニアより弱いものの、e.maxを凌ぎ必要な強度は担保されている、という形だ。つまりここまでをまとめると、現在我々が歯科医院で提供しているジルコニアとは、相転移による破壊を防ぐためにイットリアなどの安定化元素を部分的に配合させ安定させた結晶構造を持つ正方晶部分安定化ジルコニアに立方晶部分安定化ジルコニアを一部に混ぜたもの(臼歯部用にCZPを含まないものもある)=高透光性ジルコニアなのである。材料学者が思うジルコニアレストレーションの臨床的考察筆者は、現在材料学に没頭する前には大学院を含めて補綴学を専攻していた。臨床経験としては若輩であり大変恐縮であるが、基礎研究の傍ら歯科臨床に従事している一歯科医師としてジルコニアレストレーションの臨床応用について少し考察してみたいと思う。まずは高い強度が与えうる影響について考えてみたい。前述したように商品によってCZPの配合量が異なるため症例や適応歯によって材料の使い分けが必要である。とりわけ臼歯部に用いた場合、その硬さによって対合歯や顎関節への影響を考慮しなければならない。咬合と顎位の関係はナソロジーで議論されてきたように非常に複雑で普遍的なことは言えないが、ジルコニアが顎咬合系に与える影響で一つ言えそうなことは、良い意味でも悪い意味でも周囲組織と裏腹に摩耗などの変化が極めて起こりづらいということである。つまり残存歯や咬合高径の変化によって、咬合の支柱になり得る反面、経年的に外傷性咬合の引き金ともなり得るかもしれない。この諸刃の刃とも言える材料の周囲の変化をよく見極めるためにもジルコニア装着者の長期のメインテナンスは必須事項であろう。対合歯の摩耗に関しては、仕上げ研磨をラボレベルでしっかり行っていれば問題ないという考え方が主流であるが、調整後また再研磨させるのも手間であるし、口腔内での調整が困難である。また接着に関して言えば、ジルコニア表面にはMDPが効果的であると報告されているが、既存の材料と比べると材料学的に接着力は十分とは言えないだろう。ジルコニアは我が国におけるメタルフリー化へのプロセスにも合致しており大変注目を浴びている。近年の目覚しいジルコニアの普及は,体積変化を正確に計算して加工ができるCADCAMとデジタル技術発展の恩恵に他ならない。歯科界の風潮を考えるとこの先20年、ジルコニアは歯冠修復材料の主役になっていくだろう。私自身、ジルコニアレストレーションには肯定的でも批判的でもない。白いのに金属に匹敵するぐらい丈夫な材料は他にはないし、患者の希望と相まって予知性のある補綴治療が可能と予測されたならジルコニアレストレーションも躊躇しない。しかしながら、ジルコニアは歯科材料としては日が浅い材料であり長期予後に科学的に不明な点があることを忘れてはならない。セラミックスである以上、脆性的で金属材料に比較するとたわまないため、十分にその特性に注意し臨床応用しなければならないと考えている。すべての材料に共通して言えるが、大切なことは常に新しい情報をアップデートし、ネガティブな側面を無視せずに症例を選ぶことであると私は考えている。歯科セミナーなら「1D(ワンディー)」で!日本最大級の歯科医療メディア「1D」では、診療に役立つオンラインセミナーを多数開催中。もっと知りたい臨床トピックから超ニッチな学術トピックまで、参加したいセミナーが見つかります。下記ボタンから、開催中のセミナーを見てみましょう!開催セミナーを見てみる
廣田 正嗣
2020年7月4日

関連用語

レジン修復 (238)

PICK UP
【便利】歯科用語をイッパツ変換できるユーザー辞書を無料配布
【速報】令和8年度診療報酬改定の骨子判明:歯科はプラス0.31%、物価高・賃上げへの「二段構え」の支援策が柱に
1D SNS
掲載情報について

1D(ワンディー)は、歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士向けの情報が集まる、日本最大級の専門メディアです。

トップレベルの臨床家・研究者からオンラインで学べる「歯科セミナー」や、臨床・経営・ライフスタイルの最新情報が収集できる「歯科ニュース」など、多彩な歯科医療コンテンツを配信しています。

本サイトは、歯科医療関係者(歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士・歯科助手・歯科学生等)を対象に、歯科医療の臨床・研究・経営等に関する情報を集約したものです。歯科医療関係者以外の一般の方に対する情報提供を目的としたものではないことをご了承ください。

また、本サイトで提供する情報について細心の注意を払っておりますが、内容の正確性・完全性・有用性等に関して保証するものではありません。詳細は利用規約をご覧ください。

SNS
1D - 歯科医師/歯科技師/歯科衛生士のセミナー視聴サービスなら
© 2026 1D inc.