【ミニセミナーを覗く】「レジンは冷やしておけば安心」と思っていませんか?――講師が保管に選んだのはワインセラー
冷蔵庫から出したばかりのボンドを、そのまま歯面に塗っていないだろうか。1Dの「25分間」ミニセミナー「コンポジットレジン修復を完全攻略するために必要な知識」で、講師がスライドに映したのは、接着材とコンポジットレジンの添付文書だった。編集部でスライドの接着材の添付文書の原典を確認したところ、「2〜8℃の冷蔵庫で保管」「冷蔵庫から取り出した後、室温で15分以上経過してから使用すること」と書かれていた。冷やしておくことと、冷えたまま使うことは別の話だ。本稿では、スライドと自動字幕で確認できた範囲で、材料の保管から8つの適応症例、8つのステップまでを、講師の主張・経験と編集部の解釈を分けて整理する。冷蔵庫から出した直後の材料は、本来の状態ではない講師はまず、接着修復に関わる材料は保管される温度が非常に重要だと話す。スライドには、講師が自費診療で使うコンポジットレジンの添付文書が映り、保管方法として高温・多湿・直射日光を避けること、使用方法として冷蔵庫から取り出した直後はペーストが幾分硬くなっているので一定の温度で一定時間置いてから使うことが示される(このレジンの数値は、編集部で添付文書の原典を確認できていないため載せない)。講師の説明によれば、冷たい場所で保管したほうが劣化は防げる。しかし出した直後に使うと、温度が低いためにペーストの性状が本来のものと違ってしまう。さらに講師は、温度が低いとコンポジットレジンの重合率も上がりにくいと述べる。フロアブルレジンにもほぼ同じ注意が書かれており、接着材も同様だという。スライドに映った接着材について、編集部でPMDA(医薬品医療機器総合機構)に掲載された添付文書を確認した。保管は「2〜8℃の冷蔵庫」、直射日光やデンタルライトなどの強い光が当たる場所に置かないこと、そして冷蔵庫から取り出した後は室温で15分以上たってから使うこと。理由として、室温に戻る前に使うと採取時に必要以上に液が落ちたり、使用時に液が湧き出したりすることがある、と書かれている。冷えたまま使うと、量も扱いも狂いうる、ということだ。保管場所を「つくる」という発想講師は、自院の控室の一角にワインセラーを置き、その中にコンポジットレジン修復の関連材料を保管していると紹介する。スライドの写真には、棚に並んだ接着関連の材料が写っている。冷蔵庫か常温かの二択ではなく、材料のための保管環境を院内に用意しておく、という考え方だ。講師は、修復に関わる材料を大切に扱うには保管環境が重要なので、そのためのスペースを十分にとっていると話す。ただし、保管の温度は材料ごとに違う。前の章で見たとおり、スライドに映った接着材の添付文書は2〜8℃の冷蔵保管を求めている。編集部が別途確認した、ある歯科充填用コンポジットレジンの添付文書では、保管は2〜25℃の暗所とされ、冷蔵した場合は必ず室温に戻してから採取するよう書かれていた。編集部の解釈としては、ワインセラーという道具そのものより、「材料ごとの添付文書を読み、その条件に合わせて置き場所と使う前の待ち時間を決める」ことが講師の話の中心だろう。講師のワインセラーの設定温度や価格は、本稿では扱わない。メンテナンスの合間に見つかる、小さなう蝕講師がこの分野に力を入れるようになったきっかけとして語るのは、大学院時代の経験だ。かつてはエナメル質が失われた部分に、保持形態を付けて金属の修復物をはめ込み、歯にあまり接着しないセメントで留める治療が主流だった。いまは接着材とコンポジットレジンの性能が上がり、健康な歯を傷めずに、失われた部分を人工のエナメル質のように接着で補える時代になった、と講師は言う。講師の診療所は、メンテナンスを診療の中心に据えている。スライドに示された自院の患者実態調査では、検査・クリーニングから歯周病治療・予防・メンテナンスへと歯科衛生士の担当で進む患者(Group A)が55%、途中でコンポジットレジン修復や根管治療など小規模な治療を挟んでメンテナンスに戻る患者(Group B)が28%、矯正・インプラント・義歯などの治療を経てメンテナンスに戻る患者(Group C)が17%だった。講師は、メンテナンスの合間に見つかったう蝕を、できるだけ削らずに小さい範囲のうちにコンポジットレジンで修復していくスタイルだと説明する。これは講師の医院の数字であり、一般的な割合を示すものではない。8つの症例と、比べる相手講師が自院でコンポジットレジン修復の適応として挙げるのは8つのケースだ。スライドでは、臼歯部1級修復(う蝕治療)、臼歯部2級修復(う蝕治療)、臼歯部2級修復(審美改善)、前歯部4級修復・破折歯への修復、離開歯列への修復、ダイレクトベニア修復、ダイレクトクラウン修復、ダイレクトブリッジ修復が並ぶ。ダイレクトクラウンは残根の上からコンポジットレジンの直接修復だけで歯冠の形を作り直す症例、ダイレクトブリッジは主に前歯部で歯が欠損したときの回復手段だと講師は説明する。講師によれば、ケース1・2は保険診療の範囲で行う直接修復で、患者への説明が特に難しくなることはない。一方、ケース3以降を自費診療の選択肢として示すときは、他の治療法との比較が避けられない。メタルインレーからのやり替えならポーセレンインレーなどの間接修復、ベニアなら間接法のラミネートベニア、欠損に対するダイレクトブリッジならインプラントや通常のブリッジ、義歯が比較の相手になる、と講師は整理する。前歯部では、規模の大きい修復でも歯質への接着に信頼がおけるので、直接修復で対応できるものが最近は多くなっているというのが講師の考えだ。8つのステップと、削らない場面の前準備修復の流れは、修復前準備、窩洞形成、修復補助、接着操作、積層充填、光照射、形態修正・研磨、維持管理・補修の8ステップとしてスライドにまとめられる。修復補助には防湿、歯肉排除、止血、隔壁の設置などが入る。講師は、接着操作でも積層充填でも各段階で光を当てるので、一連の流れの中で光照射の重要性は大きいと話す。最後の維持管理では、修復物が壊れないよう患者に協力してもらう必要があるとして、ナイトガードの装着や清掃指導を挙げ、破損に備えて充填時のシリコーンガイドを保管しておくこと、補修用の接着操作の準備をしておくことにも触れる。修復前準備で講師が強調するのは、削らない場面だ。くさび状欠損のしみる症状を抑えるためにレジンを充填する場合のように、ダイヤモンドポイントで表面を削る必要がないときは、プラークや着色、バイオフィルムをしっかり除去しなければならない。スライドの症例では、頬側面全体に着色があった歯を、パウダー式の歯面清掃器で清掃し、エナメル質へのセレクティブエッチング、接着操作の後にフロアブルレジンを充填している。講師は、隣接面にかかるような部位ではパウダー式が有効だと考えている。充填用のシリコーンガイドの作り方もスライドで示される。パテタイプのシリコーン印象材のベースとキャタリストを等量とり(上顎前歯用で直径1.5cm程度)、素手かニトリル・プラスチックの手袋で混和し、混和開始から1分ほどで上顎前歯の口蓋側に圧接、硬化まで3分程度は押さえて保持し、細部が再現されているかを確認する。講師は、浮き上がらないよう指で圧をかけ続けることに気を配っていると話す。本稿で扱わないこと講師の名前と医院名、材料・器材の商品名と価格、接着材の銘柄ごとの使用頻度、一般的な冷蔵庫やワインセラーの温度は扱っていない。講師が自費診療で使うコンポジットレジンの保管・使用温度の数値は、添付文書の原典を確認できていないため載せていない。自動字幕で聞き取りが不確かだった用語も採っていない。各ケースの症例解説、ステップごとの器材の使い分け、患者への説明の仕方は、YouTubeで公開されている前半部分には含まれていない。本稿は講義内容の整理であり、個々の材料の取り扱いは、それぞれの添付文書に従ってほしい。元動画を見るコンポジットレジン修復を完全攻略するために必要な知識(2024年3月21日公開)このミニセミナーはセミナーの前半部分です。続きは1Dプレミアムで視聴できます。