歯科用語集
2025年10月28日

顎位

「顎位」とは?歯科用語の解説と症例を紹介

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定義・語源

顎位とは、上下の顎の位置関係を指し、特に咬合における顎の位置を示す用語である。顎位は、咬合の安定性や機能に大きな影響を与えるため、歯科臨床において重要な概念である。語源は「顎」と「位置」の合成語であり、顎の位置を明確にすることから来ている。顎位は、通常、静的顎位(安静時の顎の位置)と動的顎位(咀嚼時の顎の位置)に分類される。これにより、患者の咬合状態や顎関節の機能を評価する際の基準となる。


臨床における位置づけ・判断基準

臨床において顎位は、咬合治療や矯正治療の計画において重要な役割を果たす。顎位の評価は、患者の咬合状態を把握するための基本的なステップであり、顎関節症や歯列不正の診断にも寄与する。判断基準としては、顎の静的および動的な位置、顎関節の可動域、咬合力の分布などが挙げられる。これらの情報を基に、適切な治療方針を決定することが求められる。顎位の測定には、セファロメトリーや咬合スキャナーなどの技術が用いられることが多い。


関連用語・類義語との違い

顎位に関連する用語には、咬合、顎関節、顎運動などがある。咬合は、上下の歯が接触する状態を指し、顎位はその位置関係を示すため、密接に関連している。顎関節は、顎の動きを制御する関節であり、顎位の変化が顎関節に影響を与えることがある。また、顎運動は、顎が動く際の動作を指し、顎位の変化に伴う動きが含まれる。これらの用語は、顎位の理解を深めるために重要であり、臨床現場での適切な判断に役立つ。


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顎位の理解と臨床応用。歯科医師・歯科衛生士が知っておくべき症例と診断ポイント

顎位の理解と臨床応用。歯科医師・歯科衛生士が知っておくべき症例と診断ポイント

顎位の定義と重要性顎位とは、上下の顎が相対的にどのような位置にあるかを示す概念であり、歯科臨床においては非常に重要な要素である。顎位は、咬合や顎関節の機能に直接影響を及ぼすため、正確な診断と適切な処置が求められる。顎位の評価は、歯科医師や歯科衛生士が患者の口腔内の健康を維持するための基本的な手順であり、特に矯正治療や義歯製作においては欠かせない要素となる。顎位の測定方法と手順顎位を正確に測定するためには、いくつかの方法が存在する。一般的な測定方法には、顎位記録用のワックスやシリコンを用いた物理的な記録、またはデジタル技術を用いた3Dスキャニングがある。これらの手法は、患者の顎の動きや咬合状態を把握するために必要であり、適切な術式を選択するための基礎データを提供する。特に、デジタル技術を用いることで、より精密な顎位の記録が可能となり、診断の精度が向上する。顎位に関連する症状とその診断顎位の異常は、さまざまな症状を引き起こす可能性がある。例えば、顎関節症や咬合不全、さらには頭痛や顎の痛みなどが挙げられる。これらの症状は、顎位の不正確さから生じることが多く、診断には詳細な診査が必要である。特に、顎位の異常が疑われる場合は、患者の症状を詳細に聴取し、必要に応じて画像診断を行うことが重要である。顎位の改善に向けた処置と術式顎位の改善には、さまざまな処置や術式が存在する。例えば、矯正治療や咬合調整、さらには義歯の再製作などが挙げられる。これらの処置は、患者の顎位を正常化し、咬合の安定を図るために行われる。特に、矯正治療においては、顎位の改善が治療の成功に直結するため、慎重な判断が求められる。顎位に関する注意点とデメリット顎位の評価や改善には、いくつかの注意点が存在する。まず、顎位の測定や処置には時間とコストがかかるため、患者とのコミュニケーションが重要である。また、顎位の改善が必ずしも全ての症例において効果的であるとは限らないため、適切な判断が求められる。特に、顎位の異常が他の疾患に起因する場合、単独の処置では改善が見込めないこともあるため、総合的なアプローチが必要である。顎位の臨床応用と今後の展望顎位の理解は、歯科医療においてますます重要な要素となっている。特に、デジタル技術の進化により、顎位の評価や処置がより精密かつ効率的に行えるようになってきている。今後は、顎位に関する研究が進むことで、より効果的な治療法や診断法が確立されることが期待される。歯科医師や歯科衛生士は、最新の情報を常にアップデートし、患者に最適な治療を提供するための努力が求められる。
1D編集部
2024年6月1日
咬合採得、義歯修理、訪問義歯診療。補綴治療に関するセミナー3選

咬合採得、義歯修理、訪問義歯診療。補綴治療に関するセミナー3選

皆さんこんにちは、1D編集部です。この記事では、1Dが主催するまもなく開催予定の注目オンラインセミナーを3つ、ご紹介していきます。興味があるセミナーがあれば、ぜひお気軽にお申し込みください。いずれのセミナーも、1Dプレミアム会員であれば無料でお申し込みいただけます。1Dプレミアムの詳細を見る義歯臨床の総本山、"咬合採得"を攻略する「義歯治療で一番難しいステップは何か」。おそらく多くの先生が、「咬合採得」と答えるのではないでしょうか。特に残存歯による咬合支持が失われている場合、術者が顎位を決定する必要があり、難易度が一気に高まります。「何か複雑な装置とか用意しないといけないの?」「咬合高径・水平的顎位をどのように決定すればいいの?」「咬合床の調整の手順とコツは?」。咬合採得にまつわるこうした疑問、まとめて解消いたします。このセミナーでは、義歯臨床の中でも特に難しい咬合採得に焦点を当て、適切な垂直的・水平的顎間関係を決定するための理論的根拠や、ろう堤が付与された咬合床の調整のコツなどについて、総義歯治療のエキスパートである松丸悠一先生に徹底的に解説していただきます。咬合採得を攻略して、義歯治療への苦手意識を吹き飛ばしましょう。詳細・お申込みはこちら15分で終わる、二度と壊れない義歯修理のコツ日常臨床において高頻度で遭遇する、義歯修理。義歯の破損には多くのバリエーションがあり、対応に困った経験のある先生も多いでしょう。「何度修理しても、義歯床が同じところで割れる…」「クラスプの破損の修理のポイントは?」「人工歯が脱離した!どう修理する?」。義歯修理にまつわるこれらの疑問、実は"接着"が解決の鍵を握っています。このセミナーでは、義歯の破損の種類と原因から、実際に修理を行う上で重要な接着の理論と手技のコツなどについて、義歯臨床のプロフェッショナルである福岡歯科大学の川口先生にレクチャーしていただきます。義歯修理への対策は、これでバッチリです。詳細・お申込みはこちらなんとなくでは乗り切れない「ハードモード」義歯臨床「カンタンな症例なら義歯作れるけど、ちょっと難しくなるともう無理!」こんな悩みありませんか?フラビーガムがある症例の印象採得や、高度に顎堤吸収した症例の義歯の外形線の設定など、いわゆる「難症例」に苦戦する先生は多いでしょう。さらに訪問診療などの場面では、限られた時間と器材で何とか義歯治療をしなければならないことも多くあるはず。こうした、"なんとなく"では乗り切れない難しい症例・シチュエーションにおける打開策を学んで、あなたの義歯治療の対応力を向上させませんか?このセミナーでは、フラビーガム・シングルデンチャー・すれ違い咬合などの難症例や、時間と器材が限られた難しいシチュエーションなどの義歯臨床のポイントを、九州大学の鮎川先生に丁寧に解説していただきます。義歯に自信がつく120分です。ぜひご参加ください!詳細・お申込みはこちら他にもオンラインセミナーを多数開催中1D(ワンディー)では、他にも歯科医療者向けのオンラインセミナーを多数開催しています。開催予定のセミナーの一覧は、下記ボタンから見ることができます。ぜひ1Dでセミナーに参加して、知識アップ・スキルアップをしていきましょう。開催中のセミナーを見てみる
1D編集部
2022年9月19日
【1D的セミナーログ】顎関節症スプリントの考え方・作り方・使い方

【1D的セミナーログ】顎関節症スプリントの考え方・作り方・使い方

先日、1Dでは顎関節症学会専門医・指導医である島田淳先生をお招きし、『90分でだいたい身につく 顎関節症のスプリント療法 知っておきたい 考え方・作り方・使い方』と題したWebセミナーを行った。当日は多くの歯科医師の方々が参加し、質問も多く盛況となった。本記事では、そのセミナーの内容をかいつまんで解説する。正しいスプリントとは何か?顎関節症治療というと、『スプリント』を装着するというイメージがある。しかし漫然と装着されたスプリントは、咬合性外傷を引き起こしたり顎関節症を悪化させてしまったりする場合があると言われている。その一方でスプリントをどのように作製し、調整することが有効なのかをきちんと理解できている方は少ないのではないだろうか。本セミナーではその方法論に迫った。 そもそも、顎関節症とは?顎関節や咀嚼筋の疼痛、開口雑音、開口障害あるいは顎運動異常を主要症候とする障害の包括的診断名である。言い換えると、顎関節症は咀嚼筋と顎関節の問題であり、運動器の機能障害ということである。治療としては慢性腰痛に近く、負担軽減と機能回復である。しかし顎関節は他の運動器とは異なり、上下歯列が第三の関節として働く点と左右の下顎頭が共同で働き回転と滑走運動が可能な多軸関節である点に特殊性がある。スプリント療法のポイント歯列咬合面を被覆する暫間的可撤性の口腔内装置であり、顎関節症の診断と治療に用いられる。その種類として、下記2つが挙げられる。①スタビライゼーションスプリント(均等な咬合を与えることにより顎関節、咀嚼筋の負担を軽減する目的のスプリント)②リポジショニングスプリント(下顎を前方位に偏位させ、顎関節、咀嚼筋の負担を軽減する目的のスプリント)このなかでスプリント療法は顎関節症治療として有効性を認められているが、他の治療法よりも有用性が優位であるという結果は出ていない。その理由としては、下記が挙げられる。▶︎“痛み”は患者の主観であり評価が難しい 治療効果は、真の治療効果+自然経過+プラセボ+ホーソン効果(患者自身が一生懸命治ろうと努力すること)が合わさったものであり、スプリント療法の、真の治療効果を評価することは難しい▶︎スプリントの規格化が難しい▶︎術者および患者の個人差が大きい他の治療法と異なる点としては、睡眠時ブラキシズムなどによる睡眠時の咀嚼筋、顎関節内の負荷軽減(コントロール)ができるといわれている点である。これらのことからスプリント療法は状況に応じてリポジショニングスプリントを用いるなど力のコントロールを考える必要がある。そしてスプリント装着による関節や咬合の不可逆性変化などの害を及ぼさないように注意することが重要である。スプリント療法はしばしば非可逆性で、不適切な装着で患者さんが一生苦しむことさえあるのだ。では、どのようにスプリント療法を導入していけば良いのだろうか。スプリントはこう作る!実際にスプリントを導入する際の基本型は、「スタビライゼーションスプリント」である。  以下に4つの注意点を示す。【顎位】基本的に中心位を用いるが、顎関節、咀嚼筋の状態によっては、運動療法、徒手的顎関節授動術を行うなどして、顎関節、咀嚼筋をリラックスさせた顎位を考える必要がある。【咬合】顎関節症に用いる場合には、顎位を考えた上で、対合歯との接触は左右小臼歯ならびに大臼歯を均等に接触させる。顎関節症においては、急なガイドを与えると返って顎関節に負荷をかけることもあるため最初はフラットな状態に調整し、症状により力の方向をコントロールするため犬歯誘導やリポジショニングスプリントを検討する。【調整】調整する時の姿勢は、座位でも水平位でも良いが、咀嚼筋や顎関節の状態を考え、症状と下顎位の変化に対応し咬合面に即時重合レジンを用いて、口腔内で咬合させ削合調整を行う。その際、必要があれば調整前に、口を大きく開けさせて関節の可動域を広げたり、徒手的顎関節授動術で顎関節、咀嚼筋のストレッチを併用する事も考える。【作製方法】熱可塑性プレートを用いる場合が一般的であるが、どのような材料を用いる場合も歯列との適合と即時重合レジンなど添加し、咀嚼筋と顎関節の状態に合った適切な咬合接触を付与することが重要である。一般的には、症状が消退した後には、スプリントが顎関節や口腔内に及ぼす影響を考慮し、徐々に装着時間を減らしていくのであるが、睡眠時ブラキシズムが強い場合、スプリントなしでは起床時の顎関節症症状が強い場合などは、就寝時での使用に限定し長期に用いる場合もある。ただし長期的に使用する場合は、定期的に咀嚼筋、顎関節の状態、スプリントの適合状態、咬合状態を確認し、必要があれば調整することが必要である。まとめこのようにスプリント療法は様々な点に配慮しながら導入する必要のある治療である。スプリント療法の基本は咀嚼筋、顎関節の保護、負荷軽減であり、機能回復のためにプロフェッショナルケアとセルフケアとしての運動療法を交えながら力のコントロールを考え、上手くスプリントを用いることが重要である。
島田 淳
2022年6月11日
【1D的セミナーログ】効果を実感する、咬合調整のオキテとは?

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先日、1Dでは外川正先生をお招きし、『効果を実感する咬合調整のオキテ 〜天然歯を中心に学ぶ咬合診査と正しい調整部位〜』と題したWebセミナーを行った。当日は多くの歯科医師の方々が参加し、質問も多く盛況となった。本記事では、そのセミナーの内容をかいつまんで解説する。セミナーは今からでも視聴できるため、関心がある方はぜひご視聴いただきたい。講義動画をご視聴いただき質問がある方は、外川先生にご対応いただける。講義動画(120分)を視聴する顎関節症と咬合病の関わりまず、TMD(顎関節症)と咬合病の関わりについての説明があった。TMDとは、顎関節とその周囲にさまざまな症状を引き起こす病気の総称で、「心因性のもの」と「咬合病」とに大別されるとした。その上で、歯科医師の立場で積極的に治療介入するべきなのは、不正咬合により生じた咬合病である、と強調された。それでは、実際に咬合病に対してどのようなアプローチしていけばよいのだろうか。理想的な咬合状態とは?咬合病に適切にアプローチするためには、咬合分析が欠かせない。咬合分析とは、咀嚼器官に障害を及ぼす不正咬合を見つけ出すために、患者さんの咬合状態を調べることである、と定義されている。現在、理想的な咬合とは「不正咬合がない状態」であると考えられている。そのため、いかに不正咬合を見つけるかが重要なポイントになってくる。不正咬合は「形態的不正咬合」と「機能的不正咬合」とに分類され、前者は矯正的治療介入が必要となり、後者は今回のテーマとなっている。具体的には、機能的不正咬合は以下の4つの分類される。中心位の咬合干渉下顎側方位平衡側の咬合干渉下顎側方作業側の咬合干渉下顎前方位の咬合干渉Dawsonの咬合理論Dawsonは、咬合理論のなかで「中心位」を最も重要なテーマとしている。正確な中心位を決定することが、咬合治療に最も必要とされる技術である、という考え方だ。中心位の採得法は「バイラテラルマニュピュレーション」が最も高く評価されており、臨床でも使用されている。バイラテラルマニュピュレーションは、患者さんの顎位を中心位に誘導し、すべての歯において顎位を保持する安定した位置にあることを確認した上で、上下の歯を軽く接触させ、側方運動時・前方運動時と診査していき干渉をきたしている部分を診査していく方法である。咬合調整のコツDawsonの咬合調整の原則は、下記だ。中心位における咬合干渉の除去は、すべての咬合調整に優先される。咬頭対窩は、窩を削合する機能咬頭対非機能咬頭は、非機能咬頭を削合する機能咬頭対機能咬頭は、咬合高径に変化が及ばない方を選択して削合する切縁対舌面は、舌面を削合する切縁対切縁は、審美性に影響が及ばない方を選択して削合する歯科医師が、百数十年ものあいだ培ってきたこれらの咬合に関する理論を日々の診療に応用していくことで、咬合病の適切な診断や治療に取り組むことができ、より多くの患者さんを幸せにしていくことができるだろう。期間限定でセミナー動画が視聴可能本セミナーの視聴お申込みは下記ボタンから可能である。講義動画をご視聴いただき質問がある方は、外川先生にご対応いただける。臨床における咬合調整をはじめ咬合理論に関心がある先生方は、ぜひご視聴いただきたい。講義動画(120分)を視聴する
1D編集部
2021年12月20日
細かすぎて伝わらない、ジルコニアの材料学

細かすぎて伝わらない、ジルコニアの材料学

自費診療における歯冠修復材料といえば、e-maxかジルコニアの二択ではないだろうか。かつての長石系陶材やそれらを前装に用いたいわゆるメタボンは、もはや時代錯誤の代物となった。金属を鋳造するようにリチウム2ケイ酸ガラスをプレスして製作するプレスセラミックス、俗称IPS e.max press ®︎(以下、e.max、ivoclar vivadent社)は、高い審美性と強度から10年程前から急速に需要を高めたが、現在ではさらに高い強度を有すジルコニアが主役の座を奪ったと言っても過言ではない。しかしながら、ジルコニアといっても他のセラミックスと何が違うのか?どうして強度が高いのか?と疑問をお持ちの方も少なくないのではないだろうか。とりあえずジルコニアを勧めるのではなく、材料の基本的性質を熟知した上で有意義に臨床応用してほしいと思い、筆者は本記事のオファーを受けた。読者の方にはいささか基本事項ばかりで恐縮ではあるが、“細かすぎて伝わらない、ジルコニアの材料学" と題して、ジルコニアの材料学的性質を解説、私なりに考察したので、今一度確認のつもりでご拝読頂きたいと思う。ジルコニアはZrではないジルコニア(ZrO2)は原子番号40の金属であるジルコニウム(Zr)と酸素との化合物であり、セラミックスすなわち陶材などと同じ無機材料である。例えばアルミニウム(Al)とアルミナ(Al2O3)がそうであるように、ZrとZrO2は元素的には同じでも、化合物としての性質は全く別物である。ジルコニア(Zr)と書かれているのをよく見かけるが、決してそうではないので是非表記にも注意してほしい。ジルコニウムは元素の周期表を見るとわかるがTi元素の真下に位置し、金属としては性質が似ており生体適合性も良好である。この金属のジルコニウムは言うまでもなく金属色を呈すが、酸化物のジルコニアは白色あるいは結晶構造(原子の並び方)により透明である。ジルコニアの特徴は機械的強度が非常に高く、耐摩耗性にも優れるという点であり、金属材料や硬組織の代替材料として歯科材料学者が夢見てきた白い金属 “ホワイトメタル” とも称される。医療用としては1990年代から人工股関節の骨頭として応用されており、実は歴史のある材料である。ジルコニアの生体適合性は非常に良い。アレルギーはもちろんなく、材料表面にプラークが付着しづらいという報告もありインプラントアバットメントをはじめ、近年欧米ではフィクスチャーとしても臨床応用が始まっている。歯科用ジルコニアは部分安定化ジルコニアここからはアカデミックな内容になるが、なるべく端的にわかりやすく解説したい。ジルコニアは存在する温度によって結晶構造が変化する(図1)。結晶構造が斜めに傾いている単斜晶、直方体の正方晶、立方体の立方晶の3パターンである。ジルコニアのCADCAMブロックを作る場合、原料の粉末から成型し焼成を行う際に温度変化が起こるので結晶構造の変化(相転移という)を伴う。この相転移の際に約4.6%の体積収縮あるいは膨張が起こる。この変化が、材料を破壊せず繰り返し焼成し生産、歯の形に成形するのに厄介だった。歯科用に使用するためには結晶構造を安定化する必要があったわけである。そこで登場するのがイットリウム(Y)やセリウム(Ce)などといった安定化元素である。ジルコニアは室温では歯科で使うには弱い単斜晶の状態であるが、安定化元素の酸化物を部分的に添加すると、室温でも強い正方晶あるいは立方晶の形で安定に存在させることができる。これが部分安定化ジルコニアと呼ばれるもので、歯科用のジルコニアはこの部分安定化ジルコニアのことであり、最初に本邦で認可が下りたのはイットリア添加型正方晶部分安定化ジルコニア(Y-TZP,従来型ジルコニア)である。Y-TZPの他の種類として、イットリアの代わりにセリアをアルミナと複合化させて配合させたCe-TZPがKZR-CAD NANOZR®︎(ナノジルコニア)と称して現在もYAMAKIN(株)から販売されている(当初はPanasonicから販売)。ジルコニアはなぜ強いか100%正方晶で安定化させたジルコニア(TZP)はブリッジのコア等の強度が必要とされる部位に使用されてきたアルミナ陶材よりもはるかに硬く、曲げ強さはセラミックスでありながら1200~1500 MPaと金属材料に匹敵し、約350 MPaであるe.maxを大きく上回る。さらに、破壊靭性値についてもアルミナ陶材の2〜5倍程度あり、破壊しづらい(表)。ジルコニアがこのような優れた機械的性質を有す主たる理由は“応力誘起相変態”と呼ばれるジルコニア特有の現象に起因する(図2)。ジルコニアでは応力が付与され亀裂が生じると、その周囲の結晶構造が正方晶から単斜晶に変化する。前述したようにこの相転移に伴い体積が膨張するため亀裂の隙間を埋める結果となる(図3)。すなわち、ジルコニア自体が結晶構造の変化によって亀裂の進展を防ぎ、従来のセラミックスにはない高靭性を発揮するのである。このように物理的生物学的に過酷な環境である口腔内に適した新材料として高強度ジルコニアが脚光を浴びることとなった。しかしながら、従来型TZPは多結晶体であり光を散乱、屈折させるため陶材に比べ透明性が低いことが問題であり、モノリシック(一つの材料で構成する単層の歯冠修復物)では臼歯部にしか使用できなかった。よって、審美領域に使用する際はジルコニアをコアやフレームに用い、その上からレイヤリングあるいはe.maxをプレスした装置が使用されることが多かった。当時、ジルコニアとレイヤリングした材料の弾性係数の差などによって、コアのジルコニア自体は強いものの上物のチップなどが問題とされ、結局モノリシックe.maxの方が壊れないとの見解も多くあった。審美修復で使用されている自費ジルコニアの正体100%立方晶で安定化させたジルコニア(CZP: キュービックジルコニア)は、いわゆる透明な人工ダイヤモンドのことだ。CZPの曲げ強さは300MPa以下とY-TZPより低く、単独では歯科用には使われていない。近年、100%正方晶ジルコニアの問題点である白すぎる色調を解決するために、この透明性の高いCZPを配合させモノリシックでも審美修復に使用できる高透光性ジルコニアが開発され様々なシェードが用意されるようになった。CZPの配合によって機械的性質は低下するが、それでも600MPa以上で従来型ジルコニアより弱いものの、e.maxを凌ぎ必要な強度は担保されている、という形だ。つまりここまでをまとめると、現在我々が歯科医院で提供しているジルコニアとは、相転移による破壊を防ぐためにイットリアなどの安定化元素を部分的に配合させ安定させた結晶構造を持つ正方晶部分安定化ジルコニアに立方晶部分安定化ジルコニアを一部に混ぜたもの(臼歯部用にCZPを含まないものもある)=高透光性ジルコニアなのである。材料学者が思うジルコニアレストレーションの臨床的考察筆者は、現在材料学に没頭する前には大学院を含めて補綴学を専攻していた。臨床経験としては若輩であり大変恐縮であるが、基礎研究の傍ら歯科臨床に従事している一歯科医師としてジルコニアレストレーションの臨床応用について少し考察してみたいと思う。まずは高い強度が与えうる影響について考えてみたい。前述したように商品によってCZPの配合量が異なるため症例や適応歯によって材料の使い分けが必要である。とりわけ臼歯部に用いた場合、その硬さによって対合歯や顎関節への影響を考慮しなければならない。咬合と顎位の関係はナソロジーで議論されてきたように非常に複雑で普遍的なことは言えないが、ジルコニアが顎咬合系に与える影響で一つ言えそうなことは、良い意味でも悪い意味でも周囲組織と裏腹に摩耗などの変化が極めて起こりづらいということである。つまり残存歯や咬合高径の変化によって、咬合の支柱になり得る反面、経年的に外傷性咬合の引き金ともなり得るかもしれない。この諸刃の刃とも言える材料の周囲の変化をよく見極めるためにもジルコニア装着者の長期のメインテナンスは必須事項であろう。対合歯の摩耗に関しては、仕上げ研磨をラボレベルでしっかり行っていれば問題ないという考え方が主流であるが、調整後また再研磨させるのも手間であるし、口腔内での調整が困難である。また接着に関して言えば、ジルコニア表面にはMDPが効果的であると報告されているが、既存の材料と比べると材料学的に接着力は十分とは言えないだろう。ジルコニアは我が国におけるメタルフリー化へのプロセスにも合致しており大変注目を浴びている。近年の目覚しいジルコニアの普及は,体積変化を正確に計算して加工ができるCADCAMとデジタル技術発展の恩恵に他ならない。歯科界の風潮を考えるとこの先20年、ジルコニアは歯冠修復材料の主役になっていくだろう。私自身、ジルコニアレストレーションには肯定的でも批判的でもない。白いのに金属に匹敵するぐらい丈夫な材料は他にはないし、患者の希望と相まって予知性のある補綴治療が可能と予測されたならジルコニアレストレーションも躊躇しない。しかしながら、ジルコニアは歯科材料としては日が浅い材料であり長期予後に科学的に不明な点があることを忘れてはならない。セラミックスである以上、脆性的で金属材料に比較するとたわまないため、十分にその特性に注意し臨床応用しなければならないと考えている。すべての材料に共通して言えるが、大切なことは常に新しい情報をアップデートし、ネガティブな側面を無視せずに症例を選ぶことであると私は考えている。歯科セミナーなら「1D(ワンディー)」で!日本最大級の歯科医療メディア「1D」では、診療に役立つオンラインセミナーを多数開催中。もっと知りたい臨床トピックから超ニッチな学術トピックまで、参加したいセミナーが見つかります。下記ボタンから、開催中のセミナーを見てみましょう!開催セミナーを見てみる
廣田 正嗣
2020年7月4日

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レジン修復 (238)

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