歯科用語集
2025年10月28日

弾性係数

「弾性係数」とは?歯科用語の解説と症例を紹介

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定義・語源

弾性係数とは、材料が外力を受けた際に変形する度合いを示す物理的な指標である。特に、歯科においては、歯科材料の弾性特性を評価するために用いられる。弾性係数は、応力(外力)とひずみ(変形)の比率として定義され、一般的にはヤング率、せん断弾性係数、体積弾性係数などに分類される。これらの値は、材料の特性を理解する上で重要であり、歯科治療における材料選定や設計に影響を与える。


臨床における位置づけ・判断基準

臨床において弾性係数は、特に歯科補綴物や矯正装置の設計において重要な役割を果たす。例えば、歯科用セラミックや樹脂材料の弾性係数を考慮することで、補綴物の耐久性や適合性を評価できる。弾性係数が高い材料は、外力に対して変形しにくく、長期間の使用に耐えることが期待されるため、臨床判断の基準として利用される。また、患者の咬合力や歯の動きに応じた材料選定も、弾性係数に基づいて行われることが多い。


関連用語・類義語との違い

弾性係数に関連する用語としては、ヤング率、せん断弾性係数、体積弾性係数がある。ヤング率は、引張りや圧縮に対する弾性を示す指標であり、せん断弾性係数は、材料がせん断応力を受けた際の変形特性を示す。これらの用語は、弾性係数の具体的な種類を示すものであり、材料の特性をより詳細に理解するために重要である。弾性係数は、これらの指標を総合的に考慮することで、歯科材料の選定や治療計画に役立つ。


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弾性係数の理解と歯科臨床における応用。材料選定や処置に役立つ知識と判断ポイント

弾性係数の理解と歯科臨床における応用。材料選定や処置に役立つ知識と判断ポイント

弾性係数とは何か弾性係数は、材料の変形に対する抵抗力を示す重要な物理的特性である。具体的には、材料に加わる応力(力)に対するひずみ(変形)の比率を表す。歯科においては、特に補綴材料や歯科用インプラントの選定において、弾性係数は重要な指標となる。例えば、歯科用セラミックや樹脂材料の弾性係数を理解することで、臨床における適切な材料選定が可能となり、患者に対する処置の質を向上させることができる。弾性係数の測定方法とその意義弾性係数の測定は、材料の特性を理解するために不可欠である。一般的な測定方法には、引張試験や圧縮試験がある。これらの試験を通じて得られるデータは、材料の選定や使用方法に直接影響を与える。特に、歯科用材料の選定においては、弾性係数が高い材料は、強度が高く、変形しにくい特性を持つため、長期間の使用に耐えることが期待できる。一方で、弾性係数が低い材料は、柔軟性があり、適応性が高い場合が多い。これらの特性を理解することで、適切な処置や術式の選択が可能となる。弾性係数と歯科材料の選定歯科臨床において、弾性係数は材料選定の重要な要素である。例えば、歯科用セラミックやコンポジットレジン、金属材料など、各材料の弾性係数は異なる。セラミック材料は一般的に弾性係数が高く、強度が求められる補綴物に適している。一方、コンポジットレジンは弾性係数が低く、柔軟性があるため、歯の自然な動きに適応しやすい。これらの特性を考慮することで、患者に最適な材料を選定し、処置の成功率を高めることができる。弾性係数の臨床的なメリットとデメリット弾性係数を考慮することで、臨床における多くのメリットが得られる。例えば、適切な材料を選定することで、補綴物の耐久性や機能性が向上し、患者の満足度を高めることができる。しかし、弾性係数が高すぎる材料を選定すると、逆に歯に過度な負担をかける可能性があるため、注意が必要である。適切なバランスを考慮し、患者の状態に応じた材料選定を行うことが重要である。弾性係数を考慮した診断と判断ポイント弾性係数を理解することは、診断や判断においても重要である。特に、歯科用材料の選定においては、患者の口腔内の状態や治療方針に応じた材料の特性を考慮する必要がある。例えば、歯周病や咬合異常がある患者には、柔軟性のある材料が適している場合が多い。一方で、強度が求められる場合には、弾性係数の高い材料を選定することが求められる。これにより、治療の成功率を高めることができる。弾性係数の今後の展望と研究動向弾性係数に関する研究は、今後も進展が期待される分野である。新しい材料の開発や、既存材料の改良により、より優れた特性を持つ歯科用材料が登場する可能性がある。また、弾性係数の測定技術の向上により、より正確なデータが得られるようになり、臨床での応用がさらに広がることが期待される。これにより、歯科医師や歯科衛生士は、より高い専門性を持って患者に対応することができるようになるだろう。
1D編集部
2024年6月1日
細かすぎて伝わらない、ジルコニアの材料学

細かすぎて伝わらない、ジルコニアの材料学

自費診療における歯冠修復材料といえば、e-maxかジルコニアの二択ではないだろうか。かつての長石系陶材やそれらを前装に用いたいわゆるメタボンは、もはや時代錯誤の代物となった。金属を鋳造するようにリチウム2ケイ酸ガラスをプレスして製作するプレスセラミックス、俗称IPS e.max press ®︎(以下、e.max、ivoclar vivadent社)は、高い審美性と強度から10年程前から急速に需要を高めたが、現在ではさらに高い強度を有すジルコニアが主役の座を奪ったと言っても過言ではない。しかしながら、ジルコニアといっても他のセラミックスと何が違うのか?どうして強度が高いのか?と疑問をお持ちの方も少なくないのではないだろうか。とりあえずジルコニアを勧めるのではなく、材料の基本的性質を熟知した上で有意義に臨床応用してほしいと思い、筆者は本記事のオファーを受けた。読者の方にはいささか基本事項ばかりで恐縮ではあるが、“細かすぎて伝わらない、ジルコニアの材料学" と題して、ジルコニアの材料学的性質を解説、私なりに考察したので、今一度確認のつもりでご拝読頂きたいと思う。ジルコニアはZrではないジルコニア(ZrO2)は原子番号40の金属であるジルコニウム(Zr)と酸素との化合物であり、セラミックスすなわち陶材などと同じ無機材料である。例えばアルミニウム(Al)とアルミナ(Al2O3)がそうであるように、ZrとZrO2は元素的には同じでも、化合物としての性質は全く別物である。ジルコニア(Zr)と書かれているのをよく見かけるが、決してそうではないので是非表記にも注意してほしい。ジルコニウムは元素の周期表を見るとわかるがTi元素の真下に位置し、金属としては性質が似ており生体適合性も良好である。この金属のジルコニウムは言うまでもなく金属色を呈すが、酸化物のジルコニアは白色あるいは結晶構造(原子の並び方)により透明である。ジルコニアの特徴は機械的強度が非常に高く、耐摩耗性にも優れるという点であり、金属材料や硬組織の代替材料として歯科材料学者が夢見てきた白い金属 “ホワイトメタル” とも称される。医療用としては1990年代から人工股関節の骨頭として応用されており、実は歴史のある材料である。ジルコニアの生体適合性は非常に良い。アレルギーはもちろんなく、材料表面にプラークが付着しづらいという報告もありインプラントアバットメントをはじめ、近年欧米ではフィクスチャーとしても臨床応用が始まっている。歯科用ジルコニアは部分安定化ジルコニアここからはアカデミックな内容になるが、なるべく端的にわかりやすく解説したい。ジルコニアは存在する温度によって結晶構造が変化する(図1)。結晶構造が斜めに傾いている単斜晶、直方体の正方晶、立方体の立方晶の3パターンである。ジルコニアのCADCAMブロックを作る場合、原料の粉末から成型し焼成を行う際に温度変化が起こるので結晶構造の変化(相転移という)を伴う。この相転移の際に約4.6%の体積収縮あるいは膨張が起こる。この変化が、材料を破壊せず繰り返し焼成し生産、歯の形に成形するのに厄介だった。歯科用に使用するためには結晶構造を安定化する必要があったわけである。そこで登場するのがイットリウム(Y)やセリウム(Ce)などといった安定化元素である。ジルコニアは室温では歯科で使うには弱い単斜晶の状態であるが、安定化元素の酸化物を部分的に添加すると、室温でも強い正方晶あるいは立方晶の形で安定に存在させることができる。これが部分安定化ジルコニアと呼ばれるもので、歯科用のジルコニアはこの部分安定化ジルコニアのことであり、最初に本邦で認可が下りたのはイットリア添加型正方晶部分安定化ジルコニア(Y-TZP,従来型ジルコニア)である。Y-TZPの他の種類として、イットリアの代わりにセリアをアルミナと複合化させて配合させたCe-TZPがKZR-CAD NANOZR®︎(ナノジルコニア)と称して現在もYAMAKIN(株)から販売されている(当初はPanasonicから販売)。ジルコニアはなぜ強いか100%正方晶で安定化させたジルコニア(TZP)はブリッジのコア等の強度が必要とされる部位に使用されてきたアルミナ陶材よりもはるかに硬く、曲げ強さはセラミックスでありながら1200~1500 MPaと金属材料に匹敵し、約350 MPaであるe.maxを大きく上回る。さらに、破壊靭性値についてもアルミナ陶材の2〜5倍程度あり、破壊しづらい(表)。ジルコニアがこのような優れた機械的性質を有す主たる理由は“応力誘起相変態”と呼ばれるジルコニア特有の現象に起因する(図2)。ジルコニアでは応力が付与され亀裂が生じると、その周囲の結晶構造が正方晶から単斜晶に変化する。前述したようにこの相転移に伴い体積が膨張するため亀裂の隙間を埋める結果となる(図3)。すなわち、ジルコニア自体が結晶構造の変化によって亀裂の進展を防ぎ、従来のセラミックスにはない高靭性を発揮するのである。このように物理的生物学的に過酷な環境である口腔内に適した新材料として高強度ジルコニアが脚光を浴びることとなった。しかしながら、従来型TZPは多結晶体であり光を散乱、屈折させるため陶材に比べ透明性が低いことが問題であり、モノリシック(一つの材料で構成する単層の歯冠修復物)では臼歯部にしか使用できなかった。よって、審美領域に使用する際はジルコニアをコアやフレームに用い、その上からレイヤリングあるいはe.maxをプレスした装置が使用されることが多かった。当時、ジルコニアとレイヤリングした材料の弾性係数の差などによって、コアのジルコニア自体は強いものの上物のチップなどが問題とされ、結局モノリシックe.maxの方が壊れないとの見解も多くあった。審美修復で使用されている自費ジルコニアの正体100%立方晶で安定化させたジルコニア(CZP: キュービックジルコニア)は、いわゆる透明な人工ダイヤモンドのことだ。CZPの曲げ強さは300MPa以下とY-TZPより低く、単独では歯科用には使われていない。近年、100%正方晶ジルコニアの問題点である白すぎる色調を解決するために、この透明性の高いCZPを配合させモノリシックでも審美修復に使用できる高透光性ジルコニアが開発され様々なシェードが用意されるようになった。CZPの配合によって機械的性質は低下するが、それでも600MPa以上で従来型ジルコニアより弱いものの、e.maxを凌ぎ必要な強度は担保されている、という形だ。つまりここまでをまとめると、現在我々が歯科医院で提供しているジルコニアとは、相転移による破壊を防ぐためにイットリアなどの安定化元素を部分的に配合させ安定させた結晶構造を持つ正方晶部分安定化ジルコニアに立方晶部分安定化ジルコニアを一部に混ぜたもの(臼歯部用にCZPを含まないものもある)=高透光性ジルコニアなのである。材料学者が思うジルコニアレストレーションの臨床的考察筆者は、現在材料学に没頭する前には大学院を含めて補綴学を専攻していた。臨床経験としては若輩であり大変恐縮であるが、基礎研究の傍ら歯科臨床に従事している一歯科医師としてジルコニアレストレーションの臨床応用について少し考察してみたいと思う。まずは高い強度が与えうる影響について考えてみたい。前述したように商品によってCZPの配合量が異なるため症例や適応歯によって材料の使い分けが必要である。とりわけ臼歯部に用いた場合、その硬さによって対合歯や顎関節への影響を考慮しなければならない。咬合と顎位の関係はナソロジーで議論されてきたように非常に複雑で普遍的なことは言えないが、ジルコニアが顎咬合系に与える影響で一つ言えそうなことは、良い意味でも悪い意味でも周囲組織と裏腹に摩耗などの変化が極めて起こりづらいということである。つまり残存歯や咬合高径の変化によって、咬合の支柱になり得る反面、経年的に外傷性咬合の引き金ともなり得るかもしれない。この諸刃の刃とも言える材料の周囲の変化をよく見極めるためにもジルコニア装着者の長期のメインテナンスは必須事項であろう。対合歯の摩耗に関しては、仕上げ研磨をラボレベルでしっかり行っていれば問題ないという考え方が主流であるが、調整後また再研磨させるのも手間であるし、口腔内での調整が困難である。また接着に関して言えば、ジルコニア表面にはMDPが効果的であると報告されているが、既存の材料と比べると材料学的に接着力は十分とは言えないだろう。ジルコニアは我が国におけるメタルフリー化へのプロセスにも合致しており大変注目を浴びている。近年の目覚しいジルコニアの普及は,体積変化を正確に計算して加工ができるCADCAMとデジタル技術発展の恩恵に他ならない。歯科界の風潮を考えるとこの先20年、ジルコニアは歯冠修復材料の主役になっていくだろう。私自身、ジルコニアレストレーションには肯定的でも批判的でもない。白いのに金属に匹敵するぐらい丈夫な材料は他にはないし、患者の希望と相まって予知性のある補綴治療が可能と予測されたならジルコニアレストレーションも躊躇しない。しかしながら、ジルコニアは歯科材料としては日が浅い材料であり長期予後に科学的に不明な点があることを忘れてはならない。セラミックスである以上、脆性的で金属材料に比較するとたわまないため、十分にその特性に注意し臨床応用しなければならないと考えている。すべての材料に共通して言えるが、大切なことは常に新しい情報をアップデートし、ネガティブな側面を無視せずに症例を選ぶことであると私は考えている。歯科セミナーなら「1D(ワンディー)」で!日本最大級の歯科医療メディア「1D」では、診療に役立つオンラインセミナーを多数開催中。もっと知りたい臨床トピックから超ニッチな学術トピックまで、参加したいセミナーが見つかります。下記ボタンから、開催中のセミナーを見てみましょう!開催セミナーを見てみる
廣田 正嗣
2020年7月4日

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