「人が多い街だから患者も来る」で、物件を決めていませんか?――立地の不利は、周りとの違いで埋まることがある
駅から近く、人通りも多い。テナント資料を眺めながら、ここなら患者は来るだろうと考える。開業物件を探していると、人の多さは何よりもの安心材料に見えます。1Dの開業物件をめぐる対談は、その安心を早々に崩します。人がいることと、その人たちが自院に通う患者になることは別だというのです。そして話は、物件そのものの条件より、周りの医院と何を変えられるかへ向かっていきます。動画の冒頭には「競争戦略の本質とは『違い』」というタイトルが掲げられています。開業してしまえば後の祭りだ、という言葉も出てきます。契約を決める前に何を確かめるのか。動画の失敗事例と、条件が不利でも成り立った医院の話から整理します。人はいるのに、通う患者がいない街がある対談が最初に挙げるのは、ビジネス街の難しさです。出演者は創業地である神田や秋葉原を例に、歩いている人の多くが観光客である場合や、忙しい会社員は昼の時間帯に歯科医院へ来られない場合を挙げます。秋葉原の昭和通り沿いの路面店でもあまり意味がない、銀座のみゆき通りのような場所でも同じだ、と続きます。人はいくらでもいる。けれども顧客になる対象がいないから難しくなる。これが、この場面で示される整理です。賃料が高いという話ではなく、通える範囲に住む人や、通える時間帯に動ける人がどれだけいるかという別の条件を見ている点が重要です。動画では、ユニットが十数台ある大きな医院が赤字になり、買い手を探している例も紹介されます。法人が買ったものの立て直せず、再び売りに出されたという話です。規模の大きさは、立地の条件を上書きしませんでした。「何階か」ではなく、「1階か、それ以外か」物件の条件として具体的に語られるのが、階数です。出演者は、2階より1階のほうが目に入る確率が上がるのは当たり前だとしたうえで、逆に2階も3階も4階も、それ以降も変わらないと言います。だから階数は「何階にするか」ではなく、「1階か、それ以外か」で考える。通りがかりの人流を取りにいくのかどうかを決める、最初の分岐点だという整理です。人流という点ではショッピングモールが強く、時間に余裕のある人がそのまま入ってこられることが利点として挙げられます。ただしこれは、保険診療で多くの患者を診る形を前提にした話として語られています。自院がどの診療を主軸にするかで、人流の価値は変わります。階数の話は、良し悪しの順位ではなく、何を取りにいく物件なのかを先に決めるための問いです。同じビルの2階と4階が、同じ曜日に休んでいた対談の中心は、ここから差別化へ移ります。出演者は、以前に分院長を務めた医院の話をします。東京のベッドタウンにある駅の周辺で、住宅の賃料が安く、独り暮らしの若い人が比較的多い地域だったといいます。夜まで開けておけば、仕事終わりに寄ってもらえる。新患はコンスタントにいたと振り返ります。そのうえで理由として挙げられるのが、開業した当時の院長の判断です。終わる時間を1時間長くし、周りがみんな木曜に休んでいたので、そこを開けた。結果として、周りがやっていないときにやっている歯科医院になり、仕事帰りの人が来られるようになった、という経験談です。対照的な例も出てきます。同じビルの2階と4階が、どちらも歯科医院。しかし診療時間も休診日もまったく同じで、これでは食い合うだけだ、と語られます。歯科医師会の集まりが木曜にあるから、うちも木曜に休む——そのまま周りに合わせることへの指摘です。同質化したら終わりだ、という言葉がここで出ます。これらは出演者の経験と見解であり、診療時間を延ばせば新患が増えるという効果を示したデータではありません。それでも、立地や物件が不利でも違いをつくれば成り立つ場合があるという論点は、物件探しの前提を変えます。物件の条件を見る前に、周りとの違いを言葉にする動画は、まったく縁もゆかりもない土地でやるのは相当にリスクが高いとも指摘します。地方で成り立つ戦略を東京の真ん中でそのまま試せば失敗する。勘所が分からない土地なら、商圏調査を扱う開業コンサルに依頼するのが大事だ、という話です。そこから自院の準備に置き換えるなら、候補物件を比べる前に、周りの医院の診療時間と休診日を書き出してみることです。そのうえで、自分がどこをずらせるかを考える。ずらせないなら、その物件で何を強みにするのかを別に用意する。これは動画の問題提起を踏まえた編集部の整理です。診療時間を延ばすことも、休診日をずらすことも、スタッフの働き方に直結します。違いをつくるという話を、負担を増やす話とすり替えないための検討は、別に必要です。人の多さは、物件を選ぶ材料のひとつでしかありません。その街に通う患者がいるか。1階か、それ以外か。そして周りと何を変えられるか。契約書に印を押す前に答えておきたいのは、この三つです。本記事は1D公式YouTubeの対談を要約・再構成したものです。見出しは逐語引用ではありません。具体的な準備方法は、動画の論点をもとに編集部が整理しました。元動画を見る(2025年12月11日公開)