歯科用語集
2025年10月28日

国民皆歯科健診

「国民皆歯科健診」とは?歯科用語の解説と症例を紹介

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定義・語源

国民皆歯科健診とは、全ての国民が定期的に歯科健診を受けることを目的とした制度である。この制度は、国民の口腔健康を促進し、歯科疾患の早期発見・早期治療を図るために設けられた。語源としては、「国民皆保険制度」に基づくものであり、全ての国民が平等に医療サービスを受けられることを目指している。歯科健診は、虫歯や歯周病の予防、口腔内の健康状態の把握に重要な役割を果たす。


臨床における位置づけ・判断基準

臨床において国民皆歯科健診は、歯科医師や歯科衛生士が患者の口腔健康を評価する重要な機会である。健診の判断基準には、患者の年齢、既往歴、生活習慣などが含まれ、これに基づいて適切なアドバイスや治療方針を決定する。特に、定期的な健診を通じて、早期に問題を発見し、適切な介入を行うことが求められる。これにより、患者の健康維持や医療費の削減にも寄与する。

関連用語・類義語との違い

国民皆歯科健診に関連する用語には、「口腔健康診査」や「歯科検診」があるが、これらは微妙に異なる意味を持つ。口腔健康診査は、より広範な口腔内の健康状態を評価するものであり、歯科検診は特に歯に焦点を当てた健診を指す。国民皆歯科健診は、これらの要素を包括し、全ての国民を対象とした制度であるため、より包括的なアプローチが求められる。

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治療計画は、目の前の歯をどう治すかで決まる。若手のうちは、そう考えがちではないだろうか。1Dの「25分間」ミニセミナー「【若手歯科医師】臨床の鬼門、治療計画に対する考え方」で、歯周病の専門医として開業している講師が示すのは、その前に置く物差しだ。患者の人生を、幼少年期(0〜14歳)、青年期(15〜24歳)、壮年期(25〜44歳)、中年期(45〜69歳)、高年期(70歳〜)の5つのライフステージに分け、それぞれの時期に歯科が担う役割から治療を考える。講師はこれを「ライフステージを考慮した戦略的診断」と呼ぶ。本稿では、スライドと自動字幕で確認できた範囲で、この考え方と3つの症例を、講師の主張・経験と編集部の解釈を分けて整理する。「どんな歯科医師になりたいのか」から始まる講師は本題に入る前に、自身が若いころ、師事した先生から「どんな歯科医師になりたいのか」とよく聞かれたと振り返る。そのときはすぐに答えられなかったという。講師がこの問いに出した答えは、「差別化」と「先読み」の2つを考え続けることだった。差別化は専門医資格や技術の習得、先読みは時代の流れや患者のニーズの変化を読んで、歯科医療を組み立てることを指す。講師が歯周病の専門医を目指した理由の1つも、歯を失う原因として歯周病が大きく、歯が多く残る高齢者が増えるほど歯周病のリスクを抱える人も増える、という先読みだったと話す。そのうえで講師が強調するのは、歯科医師の役割は歯を治すことだけではない、という点だ。講師は歯科医師法にもそう書かれていると言う。実際、歯科医師法第1条は、歯科医師は歯科医療と保健指導によって公衆衛生の向上・増進に寄与し、「もつて国民の健康な生活を確保するものとする」と定めている。講師はここから、歯を治すことでその人の生活を豊かにし、健康寿命を延ばすことが歯科医師の役割だと話を進める。なお講師は、日米の歯科医師・歯科衛生士の収入や、日本とドイツのオーラルケアへの支出、残存歯数と医療費の関係なども紹介する。いずれも講師が引用したデータの原典を編集部では確認できていないため、本稿では数字を載せない。5つのライフステージに、それぞれの役割を置く講義の中心になるのが、各ライフステージにおける歯科治療の役割と注意点をまとめたスライドだ。講師が他の先生のスライドを引用・改変したものとして示した内容は、次のとおりである。・幼少年期(0〜14歳):歯列、咬合への早期対策、う蝕予防・青年期(15〜24歳):予防への動機付け、プラークコントロールの徹底・壮年期(25〜44歳):歯周病への早期対応、メインテナンス・中年期(45〜69歳):歯周病への対策(歯周外科治療も視野に)、SPT・高年期(70歳〜):健康寿命の延伸、根面う蝕対策講師によれば、幼少年期と青年期は、後になるほど治療が難しくなるため、この時点でう蝕リスクが高いのか、歯周病のリスクが高いのかといった予後を予測し、環境を変えてあげることが大変重要だという。同じ1本の歯の治療でも、患者がどのステージにいて、この先どんな問題を抱えやすいかで、選ぶべき手が変わる。編集部の言葉で言い換えれば、治療計画を「今の歯」ではなく「その人のこれからの数十年」の側から逆算する考え方である。幼少年期:歯並びの相談を、「読めない要因」と「防げる要因」に分ける講師の医院には、学校の健診で歯並びを指摘された子どもが親に連れられて来ることが多いという。親から「なぜこうなったのか」と聞かれたとき、講師は歯列不正の原因を大きく2つに分けて説明するようにしている。1つは遺伝や顎の発育など、なかなか読めない要因。もう1つは指しゃぶりなどの癖による外的な要因で、こちらは予防していけば良い方向に変わる、と伝える。爪を噛む、うつ伏せで寝る、口を開けたままにする、顎を前に出す癖、口呼吸などがないかを親に確認するという。中でも講師が多いと感じているのが、いわゆる「お口ポカン」、口唇閉鎖不全である。スライドでは、全国の3〜12歳を対象とした調査で31%の子どもに口唇閉鎖不全が疑われたと紹介される。編集部で確認したところ、新潟大学などの研究グループが2021年に Environmental Health and Preventive Medicine 誌に発表した全国規模の調査で、有病率は30.7%と報告されている。講師は、口を開けたままだと口呼吸になり、顔の成長の方向にも影響すると親に説明し、筋機能の訓練と装置を組み合わせて対応していると話す。講師の医院の症例では、6か月から1年ほどで歯列がきれいに整ってきたという。これは講師の経験としての紹介であり、すべての子どもに同じ経過が期待できるわけではない。21歳男性:成功率だけでは、インプラントかブリッジかは決まらない青年期の症例として講師が挙げるのは、21歳の男性だ。7年前に事故で前歯を強打して治療を受け、違和感はあったものの放置していたところ、最近になって強い痛みが出て来院した。深い歯周ポケットがあり、歯根に垂直性の破折が確認できたため、講師は抜歯が必要だと伝えた。抜歯後の選択肢として、講師はブリッジ、インプラント、義歯を挙げ、年齢などから2つに絞り込んだ。ブリッジは生活歯を削ることになる。接着性ブリッジなら削る量は抑えられる。一方、インプラントには、若い患者でいつ導入するかという問題がある。講師は、前歯部は骨が薄く吸収を伴いやすいこと、経験の浅い術者ではインプラントの失敗が増えるという報告があることも挙げる。講師はインプラントの成功率や接着性ブリッジの生存率などの文献値も示しながら比較するが、編集部では原典を確認できていないため、本稿では数値は載せない。注目したいのは、最終的な決め手の並べ方だ。講師が患者に提案したのは「インプラントか接着性ブリッジ」の2案で、判断材料として「インプラント導入時期の遅延」「患者の希望」「健全天然歯の切削の回避」が並ぶ。患者の希望は、歯を削りたくない、できる限り再治療をしたくない、というものだった。最終的な治療プランのスライドには、これに加えて「交通事故による医療費の損害賠償」も置かれ、インプラント治療が選ばれた。講師によれば、埋入から8年が経過した現在も、インプラント周囲組織は安定し、隣の歯も治療の必要なく経過しているという。文献上のリスクと、患者の価値観や費用の条件を同じ表に並べて決める。若手が見落としやすいのは、この後者の側なのかもしれない。44歳男性:歯肉の腫れを、ブラッシング指導だけで追わない壮年期の症例は44歳の男性。1年ほど前から歯肉が腫れ、ブラッシング時の出血が多く、下顎前歯が動揺して噛むと痛む。市販の薬も効かず、前の歯科医院ではブラッシング指導だけだったため来院した。全顎的に骨吸収があり、4mm以上、6mm以上のポケットも多数みられた。講師がここで指摘するのは、この患者が5年前から高血圧で通院し、カルシウム拮抗薬を服用していたことだ。口腔清掃不良や咬合の問題に加えて、服薬が関わっているのではないかと考える。スライドでは「Ca拮抗薬の副作用+炎症の刺激」から歯肉増殖が起こり、それが口腔清掃不良を招いて歯肉炎・歯周炎につながる、という流れが示される。カルシウム拮抗薬(ニフェジピンなど)が薬物性歯肉増殖症を起こしうることは、日本歯周病学会会誌のミニレビュー(松田・水野、2023年)でも取り上げられており、薬剤の作用に加えて歯肉の炎症が歯肉肥厚の原因の1つと考えられている。同レビューは、薬剤の変更は有効だが、血圧がよくコントロールされている薬を変えるのは難しいとも述べている。講師は発症率や男女差の数字も挙げるが、報告によって幅があり、編集部では講師が引いた原典を確認できていないため、本稿では載せない。この症例で講師が伝えたいのは、編集部の読みでは、歯肉の腫れをプラークの問題だけと見て指導を重ねても届かない場合がある、ということだろう。壮年期は「歯周病への早期対応」のステージであり、問診で服薬歴まで拾えるかどうかが、その後の治療計画を左右する。この症例の治療の続きは、前半部分には含まれていない。本稿で扱わないこと講師の経歴や所属する勉強会の紹介、著名人の口腔内の例、国民皆歯科健診の経緯などは本稿では扱っていない。自動字幕で聞き取りが不確かだった分類名や薬剤名、統計の数値も載せていない。症例の経過は講師の医院での経験であり、同じ結果を保証するものではない。元動画を見る【若手歯科医師】臨床の鬼門、治療計画に対する考え方(2024年3月10日公開)このミニセミナーはセミナーの前半部分です。続きは1Dプレミアムで視聴できます。
1D編集部
2026年10月26日
「歯科医師の年収は上がる」を、自分の年収の話として聞いていませんか?――対談が挙げる3つの理由は、確かさの段階が違う

「歯科医師の年収は上がる」を、自分の年収の話として聞いていませんか?――対談が挙げる3つの理由は、確かさの段階が違う

「歯科医師の年収は今後上がっていきます」。1Dの対談動画は、この言い切りから始まる。出演者は110秒の時点で「上がります!」と答え、そこから理由を3つに整理していく。画面の左上にも「歯科医師の年収が上がる3つの理由」という見出しが出て、以後は「歯科医師・診療所の減少」「患者数・歯科医療費は減らない」「歯科医療の市場拡大」と小見出しが切り替わっていく。ただ、この話を自分の手取りの予想として受け取ると読み違える。3つの理由は、同じ強さの根拠で支えられているわけではない。統計で確認できるもの、割り算の結果として出てくるもの、まだ文書の段階にあるもの――性質の違う3つが並んでいる。本記事では、どこまでが確かめられる話で、どこからが見通しなのかを分けて読む。「上がる」と言われているのは、誰の、どの数字か動画が最初に片づけるのは、「上がる」の主語である。出演者は「インフレだからではないですね」(120秒)と断ったうえで、「令和6年度の診療報酬改定で収載されたんですけど」(125秒)「それは勤務医とか歯科衛生士とか歯科助手さんとかの話ですよね」(135秒)と続ける。賃上げを目的に新設された評価料はあるが、それは院長自身の収入の話ではない、という整理だ。ここは一次資料で確かめられる。令和6年度診療報酬改定で新設された歯科外来・在宅ベースアップ評価料について、厚生労働省保険局医療課の説明資料は、賃上げの対象となるのは「主として歯科医療に従事する職員(医師及び歯科医師を除く。)」だと明記している(令和6年度診療報酬改定と賃上げについて)。歯科衛生士・歯科技工士・歯科業務補助者などの賃金を引き上げるための点数であって、開設者である歯科医師は制度上その対象に入らない。制度としてすでに「上がる」仕組みが用意されているのは、スタッフの側である。「歯科医療者の年収は上がっていく」(115秒)という言い方と「自分の年収が上がる」という受け取り方の間には、一段の飛躍がある。動画の3つの理由は、その飛躍を埋めるために置かれた議論だと読むと構造がつかみやすい。一つめ・担い手が減る――確認できる部分と、確認できない部分一つめの理由として画面に出るのは「歯科医師・歯科診療所の減少」(205秒)である。出演者は「『医師・歯科医師・薬剤師統計』という統計があるんですけど」(250秒)と資料名を挙げ、「歯科医師数でいうと2176人とか」(255秒)「だいたい歯科医師の2%ぐらい減ってるんですよ」(260秒)と述べる。この数字は照合できる。厚生労働省の令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計で、歯科医師数は105,267人、前回調査から2,176人・2.0%の減少。平均年齢53.0歳という点も「歯科医師の平均年齢って約53歳とかで」(285秒)という発言と合う(令和4(2022)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況)。さらに、動画公開(2025年8月)より後に出た令和6(2024)年の同統計では、歯科医師数は103,652人、前回比1,615人・1.5%の減少だった(令和6(2024)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況)。減少は続いているが、減り方は前回より緩んでいる。歯科診療所も、動画で語られた「今6万5千件台とかに突入したんですよ」(280秒)という水準をすでに下回り、医療施設動態調査の令和8(2026)年7月末概数で64,975施設である(医療施設動態調査)。「減っている」という向きは、一次資料でも確かめられる。一方、同じ箇所には確認できない話も混ざっている。出演者は「高齢化」と「女性歯科医師の増加」を合わせて「ダブルパンチ」(334秒)と呼び、女性歯科医師は男性と比べて「稼働率がちょっと下がるんですよね」(331秒)と述べる。ここには調査も出典も示されず、性別による働き方の差を前提にした推測になっている。本記事ではこの主張を採らない。統計で確認できるのは頭数の減少までで、「稼働量」がどう動くかは、それ自体が別に検証を要する論点である。二つめ・分母が減っても、分子が減らないなら二つめの小見出しは「患者数・歯科医療費は減らない」(215秒)。人口が減れば患者も減るのだから差し引きゼロではないか――「ニーズ側が減ったらトントンじゃね?」(400秒)という当然の反論に、出演者はこう答える。「人口の減りに対して歯科診療所に訪れる患者数って」「割と一定なんですよね」(410~420秒)。「患者数の絶対数は減るんですけど」(415秒)、「要は一人当たりの平均点が上がっているみたいな」(425秒)状態で、「トータルで考えると」「予算や医療費みたいなところは変わらない」(460~470秒)という見立てである。背景として挙がるのは、歯科医院が「健康な人も来るっていう場所になりつつある」(430秒)という変化だ。治療のためだけでなく、予防や管理のために通う人が増えれば、来院一人当たりの点数は上がる。分子にあたる歯科医療費が横ばいで、分母にあたる担い手が減るなら、「相対的に年収は上がるじゃんって話ですけど」(475秒)という結論になる。割り算そのものは筋が通っている。ただし出てくるのは全体の平均であって、個々の医院の数字ではない。出演者はこのあと「1990年代頭とかぐらいの水準になるんですよ」(485秒)「バブル末期ぐらいの水準になる」(495秒)と時期まで挙げるが、その試算の中身は示されないため、本記事では水準の話は扱わない。自院に引き寄せるなら、問われているのは「患者が何人来たか」ではなく「一人当たりで何をしているか」のほうである。三つめ・市場の拡大は、まだ点数ではなく文書の段階にある三つめの小見出しは「歯科医療の市場拡大」(570秒)。根拠として挙がるのは、「先々月ぐらいに公表された」(565秒)「『経済財政運営と改革の基本方針2025』」(570秒)、いわゆる骨太の方針である。そこに「いわゆる国民皆歯科検診みたいなもの」(580秒)が含まれており、歯周病と全身疾患の関連について「エビデンスが出てきてるってことは明らかじゃないですか」(590秒)と続く。ただし出演者自身が「僕も見てないのでちょっと分からないですけど(笑)」(535秒)と置いているとおり、この三つめは文書を読んだうえでの説明ではなく、報じられた範囲での見通しとして語られている。編集部で確認した範囲では、「経済財政運営と改革の基本方針2025」は令和7年6月13日に閣議決定されており(内閣府)、その歯科関連の記載として日本歯科医師会は「生涯を通じた歯科健診(いわゆる国民皆歯科健診)に向けた具体的な取組の推進」「歯科医師の不足する地域の分析等を含めた適切な配置の検討を含む歯科保健医療提供体制の構築と強化」などを引用している(日本歯科医師会)。方針に位置づけられていること自体は確かめられる。ただし、方針に書かれることと、点数が付くことと、実際に収入が動くことは、それぞれ別の段階である。一つめが統計の話、二つめが割り算の話だったのに対し、三つめはまだ文書の話にとどまる。出演者が「多分しれっとフェードアウトするんじゃないか」(530秒)という可能性にも触れているとおり、ここは確定した話として数えないほうがいい。「上がる」を、待っていい話として読まない動画の結論は、意外と威勢のいいものではない。「現状のパイでどうなるっていうのを予測するんじゃなくて」(645秒)「本当にでっかい施策で変えていく必要もあるぞ」(655秒)。画面には「『時代を作り上げるんだ』という主体的な努力が必要」(650秒)という大きなテロップが出る。市場が広がるかどうかは、担い手が何をするかにかかっている、という着地である。そのうえで出演者は、「小さい虫歯を見つけて削って詰める歯医者がいるので」(665秒)と言いよどみ、「『健康は口から作る』という意識で歯科医療に取り組んでほしい」(685秒)と述べる。行政の側に「歯科医師を抑制しろ」(610秒)という議論があるなかで「担い手もたくさん必要だ」(620秒)と言い返すには、その説明を日々の診療の中身で裏づける必要がある――という順番だ。これは出演者の立場からの主張であり、制度の決定を予測したものではない。タイトルは「【朗報】」で始まるが、中身は朗報の受け取り方の話だった。確かめられるのは、担い手が減っているという統計までである。その先の「だから一人当たりは上がる」は条件つきの割り算で、「市場が広がる」はまだ方針文書の段階にある。来期の計画をこの見通しの上に立てるのは早い。先に見ておきたいのは、全体の平均で起きていると言われる変化が、自院でも起きているかどうかのほうだろう。元動画を見る【朗報】歯科医師の年収は今後上がっていきます(2025年8月7日公開)
1D編集部
2026年10月6日
【速報】令和7年度補正予算で歯科診療所に一律32万円の支援金

【速報】令和7年度補正予算で歯科診療所に一律32万円の支援金

令和7年度補正予算案が11月28日に閣議決定され、医療機関への大規模な支援策が盛り込まれた。1)厚生労働省による今回の予算案では、医療分野における賃上げと物価上昇への対応が重点項目として掲げられている。歯科診療所においても、従事者の処遇改善と物価高騰への対策を目的とした交付金の支給が決定。地域における必要な医療提供体制の維持・確保を図る施策として注目されている。*1)令和7年度補正予算案の主要施策集(厚生労働省)歯科診療所への支援は一律32万円今回の補正予算案の柱となるのが「医療・介護等支援パッケージ」だ。物価高騰や深刻化する人員不足といった医療機関・介護施設の経営課題に対応するため、総額1兆3,649億円という大規模な予算が計上されている。 内訳:医療分野に1兆368億円   介護等の分野に3,281億円医療機関・薬局に対する賃上げと物価上昇への支援には、このうち5,341億円が割り当てられた。この支援策は二つの目的を持っている。一つは医療従事者の処遇改善、もう一つは診療に必要な経費の物価上昇対策である。歯科診療所に対する具体的な支給額は、医科の無床診療所と同水準の1施設あたり合計32.0万円。内訳:賃金分(処遇改善)15.0万円、物価分(物価上昇対策)17.0万円。特筆すべきは、補助率が10分の10、つまり全額補助という形での交付となる点だ。これは医療機関が直面する喫緊の経営課題に迅速に対応し、地域医療の基盤となる提供体制を確保するための重要な措置と位置付けられている。*画像は1)より引用「国民皆歯科健診」に向けたパイロット事業も始動*画像は1)より引用補正予算案では、もう一つ注目すべき施策として、「生涯を通じた歯科健診(いわゆる国民皆歯科健診)パイロット事業」の推進に8.8億円が計上された。この事業は、国民の歯と口腔の健康増進を目指すもので、職域の保険者、事業主、または自治体などが主体となって実施される。具体的には、簡易な口腔スクリーニングを活用した歯科健診と、その結果に基づく受診勧奨を組み合わせた取り組みとなる。実施形態としては、一般健診と併せて行うケースや、特定健診の結果を基に対象者を選定してスクリーニングと受診勧奨を実施するケースなどが想定されており、国民の口腔衛生向上に向けた基盤整備が期待されている。◇今後の動向に注目この補正予算案は、現在開会中の臨時国会での成立を目指している段階である。交付金の具体的な交付時期、申請手続き、必要書類等の詳細については、今後の正式発表を待つ必要がある。歯科診療所の経営にとって重要な支援策となるため、続報を注視していきたい。
1D編集部
2025年12月12日
国民皆歯科健診の意義と実施方法。歯科臨床における診断と処置のポイント

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国民皆歯科健診とは国民皆歯科健診は、全ての国民が定期的に歯科健診を受けることを目的とした制度である。この制度は、口腔の健康を維持し、歯科疾患の早期発見・早期治療を促進するために導入された。健診の内容には、歯の状態のチェックや口腔内の異常の有無を確認する診査が含まれる。この制度の導入により、国民の口腔健康が向上し、結果として全体的な健康状態の改善が期待される。特に、う蝕や歯周病の予防においては、早期の診断と適切な処置が重要であるため、皆歯科健診はその役割を果たすことができる。国民皆歯科健診のメリットとデメリット国民皆歯科健診には多くのメリットがある。まず、定期的な健診により、歯科疾患の早期発見が可能となり、重篤な症状に至る前に適切な処置を行うことができる。また、健診を通じて口腔衛生に対する意識が高まり、自己管理の重要性が認識されるようになる。一方で、デメリットとしては、健診の実施に伴うコストや、受診率の低さが挙げられる。特に、地域によっては歯科医療へのアクセスが限られている場合もあり、全ての国民が平等に健診を受けられる環境が整っているとは言えない。国民皆歯科健診の実施手順国民皆歯科健診の実施手順は、まず対象者の選定から始まる。一般的には、年齢や地域に応じて健診対象者が決定される。その後、健診の案内が行われ、受診者は指定された歯科医院で診査を受ける。診査内容には、口腔内の視診、X線検査、歯周ポケットの測定などが含まれ、必要に応じて追加の検査や処置が行われる。健診後は、結果に基づいて適切なアドバイスや治療計画が提供される。国民皆歯科健診における診断と処置のポイント国民皆歯科健診では、診断と処置が重要な役割を果たす。特に、う蝕や歯周病の診断においては、初期症状を見逃さないことが求められる。歯科医師は、視診や触診を通じて異常を確認し、必要に応じてX線検査を行うことで、より正確な診断を行うことができる。処置に関しては、早期のう蝕に対してはフッ素塗布やシーラントの適用が推奨される。また、歯周病に対しては、スケーリングやルートプレーニングが行われることが一般的である。これらの処置は、患者の口腔健康を維持するために非常に重要である。国民皆歯科健診の今後の展望国民皆歯科健診は、今後ますます重要性を増すと考えられる。特に、高齢化社会においては、口腔健康が全身の健康に与える影響が注目されている。健診制度の充実を図ることで、国民の口腔健康を向上させることが求められる。また、デジタル技術の進展により、遠隔診査やAIを活用した診断支援が期待されている。これにより、より多くの人々が手軽に健診を受けられる環境が整うことが望まれる。
1D編集部
2024年6月1日
【槻木恵一寄稿】唾液検査に「ちょっと待った!」

【槻木恵一寄稿】唾液検査に「ちょっと待った!」

近年、PCR検査をはじめ様々な検査の検体として唾液が用いられるようになった。中でも国民皆歯科健診を控え、歯周病のスクリーニングとして唾液検査が検討されていることは歯科界においても注目が高いだろう。唾液検査は簡便で患者の負担も少なく非常に有益であるが、そのイメージだけが先行し乱雑に応用されることの危険性について専門家たちが警鐘を鳴らしている。今回は特定非営利活動法人日本唾液ケア研究会理事長であり、神奈川歯科大学副学長の槻木恵一先生に特別に寄稿いただいた。唾液検査学は未成熟である唾液を用いた検体検査は、新型コロナウイルスに対するPCR検査の普及で、短期間に大きく国民の認知を得ることができた。これは急激な変化であり、そのプラスの面とマイナスの面を十分考慮しないといけないと考えている。特にプラスの側面としては、唾液検査の認知度の飛躍的な向上であるが、一方でせっかく認知された唾液検査が、マイナスの側面により、後退することがあってはならないと危惧をしている。マイナスの側面とは何だろうか。最大の問題は、唾液検査学という学問が未成熟で確立されていないことである。検査というカテゴリーに属する事項であれば、ヒトを対象としていることから、そこには厳粛な対応が必要であり、裏打ちされた学問に基づかなければ、単なる民間療法の域をでないことになる。そして、国民から唾液検査そのものが怪しいものに映るかもしれない。実際、インターネットで購入できる唾液検査の商品にはクオリティの低いものが登場している。唾液という存在を扱い体系的な教育を行っているのは、歯学部や歯科衛生士の養成課程であり、医師、薬剤師などでは唾液に関する教育はほとんど行われていない。看護師と管理栄養士の国家試験では口腔ケアに関連し唾液が出題されることがあるようなので、何らかの科目で触れているのであろう。これらの教育状況を考慮すると唾液の主たる専門家は、歯科医師と歯科衛生士であることは疑いない。すなわち、唾液検査学をリードするべき使命が歯科医師や歯科衛生士にはあると確信している。本解説では、唾液検査の歴史、世界的動向、唾液検査の問題点などを踏まえて、最後に唾液検査に関する提言を行いたい。歯科医療における唾液検査現在の唾液検査の現状を鑑みると、唾液検査といっても大きく2つに分類できる。歯科系唾液検査とそれ以外である。それ以外に分類される唾液検査が扱う領域は非常に多岐である。ここでは、歯科系の唾液検査以外を臨床唾液検査と称したい。歯科医療における唾液検査の利用目的は、う蝕のリスク診断、歯周病のリスク診断や病勢診断などになる。しかし、これらは本格的な保険導入がされていないことから、主に自費での扱いになり、意外に歯科医療においては唾液検査への関心は薄いのではないだろうか。そのことが、口腔という乾燥を大敵とする臓器において、極めて重要な生理的働きを行う唾液の機能性に注目をしない歯科医療が続いているような気がする。例えば、唾液量を測定するだけでも、口腔の疾患に対するリスク要因を理解でき、う蝕や歯周病の診療にも大いに役立つ情報の筈である。う蝕や歯周病の病変の特徴は、予防が効果的な病変であることである。特にう蝕に対して生体は、免疫機構や再生現象が働かず、すなわち自然治癒がないので、そもそも病気にならないことが最も重要である。その点では、医科で扱う疾患概念とは大きく異なる病変と言える。医科は、やはり治療主体の医療であり、病気を治すことができなければならないが、歯科は、病気にさせない取り組みこそ、病変の特徴から考えて重要な医療としての役割ではないだろうか。そのための検査として唾液の有用性には疑いがない。昨今取りざたされている国民皆歯科健診においては、そのスクリーニング検査として唾液検査が導入される可能性が指摘されている。国民皆歯科健診は、その趣旨に沿い実行されれば、8020運動と同様に成果を上げ、そして国民の健康レベルを底上げできると考えられる。その理由は簡単で、歯科医療が扱う病変はもともと予防が効果的に実行できるからである。そして、唾液検査からはじまる国民皆歯科健診となった場合、唾液検査の歴史上、歯科医療における初めての唾液分野でのブレイクスルーとなることが予想できる。だからこそ成功させたい。医科では3度のブームが到来歯科系の唾液検査について医中誌で調査すると最も古い文献は、1982年の「歯科臨床における口腔環境評価へのアプローチ唾液検査用試験紙(pH,緩衝能,潜血およびグルコースクリアランス)の実用化」という原著論文である。口腔環境評価というタームは、非常に重要で、口腔環境とは唾液そのものである。口腔という臓器は進化の過程で考えると、海中から陸上に上がるにあたり、大きな変化が起こっている。それは、海中では口が乾燥することは無く、水流が常に生じているので汚れることも無い。そのため魚にはう蝕が無い。しかし、陸上に生活の場を変えたことで、口が乾燥する状況が生じ、唾液による100ミクロンの薄い流体で覆われるシステムが備わった。また、口から食べることにより、嚥下や咀嚼に唾液が必要となり大唾液腺が発達してくるし、食べるものの違いで唾液の組成が進化していく。この様に、唾液は口腔の機能維持や感染予防としての機能を発達させてきており、進化の側面から考えると唾液が如何に重要かわかる。しかし、口腔の評価としての唾液を用いた歯科系唾液検査が、話題を呼ぶことは20年来一度もない。一方で、臨床唾液検査では3回の社会を賑わすブームが存在している(図)。唾液ブームの1回目は、約22年前の1999年頃に唾液を用いたストレス測定が大きな話題となった。唾液中のクロモグラニンが精神ストレスと関連することを見出し、トヨタ製の車の乗り心地の評価に使われた。さらに、2007年頃、アミラーゼでもストレスの測定ができることを示し、簡易的に測定できるアミラーゼモニターが開発され、唾液検査において社会実装された初めての機器となった。現在でも販売されている。その他、IgA、コルチゾールなどストレスを測定する唾液マーカーが開発されている。2回目のブームは、2010年頃に唾液からがん診断できることが発見され、マスコミから大きな注目を集めた(後程解説あり)。3回目のブームは、唾液を用いた新型コロナウイルスの検出である。唾液を用いた感染症の診断で保険収載されており、完全な社会実装を短期間で獲得した。これら3つのブームの立役者は、システムエンジニアと医師であり歯科医師ではない。現在でも、唾液の特徴である非侵襲性が注目され唾液検査の開発競争が様々な企業で展開されている。臨床唾液検査の開発と世界的動向唾液は、血液から産生されることから血液中の成分が移行してくる。すなわち血液と唾液は相関性が高いはずである。しかし、相関する成分もある一方、相関性のないことも多い。相関性がある場合も、一般的に血液より唾液の方が100倍から1000倍濃度が低い。すなわち薄まっている。これまで、臨床唾液検査で、非常に成功しているのは、主に感染症の診断である。HIVの唾液による抗体検査は正診率が92%といわれている。この場合の抗体は、感染後に血中に存在する抗HIV抗体であり、血中から移行してきた抗体を検出している。同様の理論で、新型コロナウイルスに対するIgG抗体検査も存在するが、抗体の形成には時間がかかることから、今現在の感染を診断するためにはPCRが用いられてきた。今後も感染症の診断に唾液検査の開発が進むと思われる。また、癌のリスク検査については、メタボローム解析を用いたAIによるリスク判定が社会実装されている。膵臓癌、胃癌、大腸癌などの癌のリスク診断に関しては、論文も非常に多く信頼性が高く、世界をリードする研究として発展している。癌に関する唾液検査は、アメリカUCLAのDevid Wong教授の研究がリードしていたが、現在では日本が最先端を走っている。唾液による診断への応用は、分析技術の進歩により、唾液プロテオーム、トランスクリプトーム、マイクロRNA、メタボローム、およびマイクロバイオームを調査する「唾液オミクス」と呼ばれる新しい時代が開かれており、臨床唾液検査は極めて有望な分野であることは間違いない。唾液検査「最大の難点」唾液検査と血液検査を比較すると、唾液検査の利点は簡便で非侵襲性に採取でき、誰でもできるという事が挙げられる。一方で、欠点もあるのだが、唾液検査の利点ばかりに注目されてきたところに問題があるのではないかと考えている。結論から示すと唾液検査は、血液検査と比較して、基準値の設定が難しい点が最大の難点である。特に単一の出口から唾液が出ればよいが、実際は3大唾液腺からの分泌により混合されてしまう。また唾液が口腔内に放出された瞬間から、空気に触れpHの変動範囲は、血液よりかなり大きい。また、口腔細菌により代謝されることで成分の変動や不純物が大量に含まれてしまう。この様に唾液は、血液のような濃度調整が厳密に行われた液体ではないのである。さらに、採取法によっても成分の変動が生じることが報告されている。この難題に対して、唾液中の成分の濃度をnormalizeする内部標準の開発や、適切な採取条件についてのガイドラインの作成など、唾液を扱う研究者が集まり検討が求められている。唾液学・唾液検査学の学問的確立に向けて唾液の取り扱いの標準化は、今後の唾液検査の開発には非常に重要な要素である。新型コロナウイルスPCR検査で唾液検査が急激に一般化したため、唾液の検査における基盤作りが間に合わない状況にあるため喫緊の課題と認識している。今後、歯科医師・歯科衛生士をはじめとした様々な医療職種や分野を超えて、この問題に加速度をつけて解決に向かう必要がある。特定非営利活動法人日本唾液ケア研究会(理事長:槻木恵一、会員123名)は、唾液を学際的に取り扱い、未成熟の唾液学、唾液検査学の確立を目指し、さらに国民の健康増進を推進する組織として2021年に設立した。唾液におけるプロフェッショナルな組織として、社会に貢献するために活動をはじめたばかりであるが、特に、唾液学・唾液検査学の学問的確立に是非とも貢献したい。最後に、「唾液・唾液検査学の確立」の一環として、「唾液の取り扱い」に関する標準化に向けた取り組みが必要である。多くの皆様とこの問題を共有したく考えている。そこで特定非営利活動法人日本唾液ケア研究会のホームページに意見を求めるサイトを作成した。多くの皆様からご意見をお寄せいただきたい。>>NPO法人日本唾液ケア研究会HPはこちらから第2回日本唾液ケア研究会学術集会が開催2023年11月26日(日)、第2回日本唾液ケア研究会学術集会が神奈川歯科大学横須賀キャンパスで開催される。日本歯科大学菊谷武教授による特別講演や、国民皆歯科健診を取り上げ厚労省から政策的な現状のヒアリング、神奈川歯科大学口腔衛生学分野山本龍生教授を交えた唾液検査に関するシンポジウムが行われる予定だ。オンデマンドでも配信されるため(配信は12月を予定)、ご興味のある方は是非登録してほしい。>>学術集会の詳細はこちらから
槻木 恵一
2023年11月25日

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