歯科用語集
2025年10月28日

法歯学

「法歯学」とは?歯科用語の解説と症例を紹介

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定義・語源

法歯学とは、法的な観点から歯科に関連する問題を扱う学問分野である。具体的には、歯科医療における法的責任、歯科医師の倫理、法的手続きに関する知識を含む。語源は「法」と「歯学」の合成語であり、法律と歯科の交差点に位置する学問である。法歯学は、歯科医師や歯科衛生士が法律を理解し、適切に対応するための基盤を提供する。これにより、臨床現場でのトラブルを未然に防ぐことが可能となる。


臨床における位置づけ・判断基準

法歯学は、臨床現場において非常に重要な位置を占めている。歯科医師や歯科衛生士は、患者との関係において法的な責任を負うため、法歯学の知識は不可欠である。判断基準としては、患者の同意、治療の適正性、医療過誤の防止などが挙げられる。これらの基準を理解し、遵守することで、医療提供者は患者に対して安全で信頼性の高いサービスを提供できる。また、法的トラブルに巻き込まれないための予防策としても機能する。

関連用語・類義語との違い

法歯学に関連する用語には、医療法、歯科医師法、医療過誤などがある。医療法は医療全般に関する法律であり、歯科医師法は歯科医師に特化した法律である。これに対し、法歯学はこれらの法律を歯科の文脈で解釈し、実践に活かす学問である。また、医療過誤は法的責任の一部を構成するが、法歯学はその予防策や対応策を包括的に学ぶものである。これにより、歯科医療の質を向上させることが期待される。

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関連ニュース

法歯学の基礎と臨床応用。歯科医師・歯科衛生士が知っておくべき症例と処置のポイント

法歯学の基礎と臨床応用。歯科医師・歯科衛生士が知っておくべき症例と処置のポイント

法歯学とは何か法歯学は、法的な観点から歯科医療を理解し、歯科に関連する法的問題を解決するための学問である。具体的には、歯科医師の倫理、患者の権利、医療過誤、法的責任などが含まれる。法歯学を学ぶことで、歯科医師や歯科衛生士は、臨床現場での判断や処置において、法的なリスクを軽減することができる。法歯学の重要性は、医療の質を向上させるだけでなく、患者との信頼関係を築く上でも欠かせない要素である。特に、医療過誤やトラブルを未然に防ぐためには、法的知識が不可欠である。法歯学における主要な処置と術式法歯学に関連する処置や術式には、患者の同意を得るためのインフォームドコンセント、医療記録の管理、そして医療過誤に対するリスクマネジメントが含まれる。これらは、患者の権利を尊重し、医療の質を保つために重要である。例えば、インフォームドコンセントは、患者が治療内容やリスクを理解した上で同意することを意味する。このプロセスを適切に行うことで、患者との信頼関係を深め、後のトラブルを防ぐことができる。また、医療記録の適切な管理は、法的な証拠としても重要であり、万が一の際に備えるために必要不可欠である。法歯学における症例と診断の重要性法歯学では、具体的な症例を通じて法的問題を理解することが重要である。例えば、患者が治療後に不満を持った場合、その原因が医療過誤であるかどうかを判断するためには、詳細な診断と症例の分析が必要である。また、法歯学における症例研究は、医療の質を向上させるための貴重な情報源となる。具体的な症例を通じて、どのような処置が適切であったのか、またはどのような判断が誤りであったのかを学ぶことで、今後の臨床に役立てることができる。法歯学の導入における注意点法歯学を臨床に導入する際には、いくつかの注意点がある。まず、法的知識は常に更新されるため、最新の情報を常に把握しておく必要がある。また、法歯学の知識を実際の診療にどのように活かすかを考えることも重要である。さらに、法的な問題に直面した際には、専門家の意見を仰ぐことが推奨される。特に、医療過誤やトラブルが発生した場合には、適切な法的アドバイスを受けることで、リスクを最小限に抑えることができる。法歯学のメリットとデメリット法歯学を学ぶことには多くのメリットがある。まず、法的知識を持つことで、医療過誤のリスクを減少させることができる。また、患者との信頼関係を築くためにも、法的な観点からの理解は重要である。一方で、法歯学を学ぶことにはデメリットも存在する。例えば、法的な問題に対する過剰な警戒心が、治療の進行を妨げることがある。したがって、法歯学の知識を持つことは重要であるが、それをどのように臨床に活かすかが鍵となる。法歯学の今後の展望法歯学は、今後ますます重要性を増す分野である。医療の進展とともに、法的な問題も複雑化しているため、歯科医師や歯科衛生士は、常に最新の情報を学び続ける必要がある。また、法歯学の教育が充実することで、次世代の歯科医療従事者がより良い医療を提供できるようになることが期待される。法歯学を通じて、患者の権利を守り、より安全な医療環境を築くことが求められている。
1D編集部
2024年6月1日
エアスケーラーチップの誤飲も。歯科治療中の異物誤飲ケースを見る

エアスケーラーチップの誤飲も。歯科治療中の異物誤飲ケースを見る

前回の記事では、医療事故が起きた際の患者心理と適切な謝罪に関して取り上げた。今回の記事では「歯科治療中に異物を誤飲・誤嚥した事例」について取り上げていきたい。1Dでは9月1日(木)に『歯科医院における死亡事故ケーススタディ』セミナーを開催する。歯科医院における実際の死亡ケースを題材に、医療安全に関して法歯学者・佐藤慶太先生が解説する。1Dプレミアムなら無料である。ぜひご参加いただきたい。セミナーの詳細を見る<前回の記事>【医療安全】医療事故が起きた際の患者心理と「謝罪」の効用歯科治療中に異物を誤飲・誤嚥した事例医療事故情報として報告された歯科治療中に発生した事例を過去に遡って検索し、事例の概要を整理した報告書の分析対象期間(2016年7月~9月)に、歯石除去中にエアスケーラーのチップが破損し、チップの先端を患者が誤飲した事例が1件報告された。スケーラーのチップを誤飲する例はやや珍しいが、歯科治療中に患者が異物を誤飲・誤嚥した事例は少なくない。実際、医療事故情報収集等事業が2011年〜2016年に受けた報告全155件のうち30件が誤飲・誤嚥だった。なぜその事故が起きたのか、要因と背景をみながら今後防ぐにはどうしたらいいか考える。誤飲・誤嚥した異物報告された異物は以下の表の通り。誤飲・誤嚥した異物の多くは金属であり、エックス線画像で確認できるもので、胃で最も多く発見されている。事故発生を受けて実施した検査はまずX線画像、その後必要に応じてCT撮影を追加することが多い。1件だけCT撮影のみ行った事例があり、治療中に患者が根管治療用器具を誤飲したことに歯科医師が気付かず診察を終了、患者は治療当日夕方より腹痛を自覚し、翌日救急外来を受診した際にCT撮影し発見された。また多くの事例で患者への影響・障害はなく、処置としては内視鏡による摘出が多く、次に自然排出が可能と判断され経過観察となっている。異物を誤飲・誤嚥することになった背景と要因誤飲・誤嚥の要因はほとんどが「把持・装着していたものの落下」である。物としては試適中のメタルコアや補綴(修復)物、固定用のワイヤー、除去中の補綴(修復)物が多く報告されている。なぜその事故は起こったか、報告書でまとめられた考えられる背景・要因をいくつか紹介する。患者の状態の把握に関すること高齢者の反応の鈍さなどの特性の理解が不足していた患者の嚥下機能障害等の把握が不十分であった上記のようにアセスメントの不足と配慮の部分で事故につながったと考えられる。治療部位の状態・判断に関すること固定源の歯牙や金属が予想以上に脆い状態であった破折の危険性を過小評価したすぐに顔を横に向けることが必要であった金属冠の咬合調整で何度も問題なく出し入れができていたため、最後の調整で注意力が散漫になった脱離するかもしれない、滑落するかもしれないといった予測的な注意不足が要因にあることもある。使用した歯科用医療機器や歯科材料に関すること必要以上に多く使用した経年劣化を考慮する必要があった治療時間の短縮のため、破損しやすい種類のバーを使用した形成用バーを下に向けて空回しして、外れないことを確認しなかったいずれもアクシデントとはいえ、ちょっとした不注意や緩慢から発生したことが疑われる。事故防止と改善策国家試験レベルの基本事項だが、咽頭部に異物が入った場合は「速やかに患者の顔を横に傾ける」ことを忘れてはいけない。そして異物の所在・位置を確認し、可能であれば適切かつ慎重に口腔外に取り出す。また処置の前に術者がそのリスクを意識して一挙一動確認を徹底することや、患者に対し事前に起こりうる可能性を説明、口腔内に落下した場合は吐き出してもらうよう指示するなど、未然に防ぐ環境作りもすべきだろう。事例が発生した医療機関の改善策では、誤飲・誤嚥の予防対策として座位で治療を行うことやガーゼやラバーダムで口腔内を覆うことなどが挙げられている。物理的に誤飲・誤嚥を防ぐ状況を作り出すことも有用な対策になる。治療時は可能な限り予防対策を講ずることや、患者が誤飲・誤嚥した際には速やかに対応できるようにすることが求められている。医療事故のセミナーが開催決定!1Dでは9月1日(木)に『歯科医院における死亡事故ケーススタディ』セミナーを開催する。歯科医院における実際の死亡ケースを題材に、医療安全に関して法歯学者・佐藤慶太先生が解説する。1Dプレミアムなら無料である。ぜひご参加いただきたい。セミナーの詳細を見る参考文献公益財団法人日本医療機能評価機構『歯科治療中に異物を誤飲・誤嚥した事例』医療事故情報収集等事業第47回報告書, Ⅲ-2【2】, 2016佐久間 泰司『歯科医療の安全を考える』日歯麻誌, 2022.山崎 祥光『医事紛争と謝罪 第3回 謝罪が訴訟に及ぼす影響』医療安全, 2007.和田 仁孝, 中西 淑美『医療メディエーションーコンフリクト・マネジメントのナラティヴ・アプローチ』シーニュ, 2011.
1D編集部
2022年8月30日
【医療安全】医療事故が起きた際の患者心理と「謝罪」の効用

【医療安全】医療事故が起きた際の患者心理と「謝罪」の効用

前回の記事では、歯科医療の現場におけるエラーの種類やそのマネジメント手法に関して取り上げた。今回の記事では「コンフリクト・マネジメント」、すなわち歯科医療事故における紛争の管理について取り上げていきたい。1Dでは9月1日(木)に『歯科医院における死亡事故ケーススタディ』セミナーを開催する。歯科医院における実際の死亡ケースを題材に、医療安全に関して法歯学者・佐藤慶太先生が解説する。1Dプレミアムなら無料である。ぜひご参加いただきたい。セミナーの詳細を見る<前回の記事>【医療安全】歯科医療にとって「エラー」とはなにか?医療事故が起きたときの患者心理医療事故が起きた時に、患者心理は下記のような変遷を辿るとされている。健康被害による心理ダメージから回復したい(第一段階)なぜこうなったか、真相を知りたい/誠意ある説明が欲しい(第二段階)謝罪をしてほしい(第三段階)2度と同じ被害がないように、再発防止をしてほしい(第四段階)金銭で慰籍されたい/医療者を懲らしめたい(第五段階)一部の例外はあるものの、原則的に患者は最初から損害賠償を請求してきたりはしない。心理ダメージからの回復と、誠意のある対応を望んでいることが多いのである。損害賠償の請求まで至ったケースは、上に示した第一段階〜第四段階での対応や説明のまずさが原因であることが多い。医事紛争は「すれ違い」から生まれる1999年は、医療安全元年と呼ばれる。1月に横浜市立大学附属病院で患者取り違え事故が発生したのを皮切りに、2月の都立広尾病院での消毒薬誤投与事故、7月には杏林大学病院での割り箸事故など、のちに刑事事件に発展した医療事故が立て続けに起こり、社会的にも医療安全に注目が集まった。こうした医療裁判の事例において、患者遺族は「裁判で真実を知りたい」と異口同音に口にする。一方で医療者側からすれば、患者に対して診療情報を開示し何度も説明を行なっている、という認識であることが多い。実は多くの医事紛争は、こうしたすれ違いから生まれている。裏を返せば、医事紛争は患者や遺族が求めるレベルで医療者が説明や対応を行うことで解決できることが多くある。苦情対応をきちんと行なっている病院では、年間賠償額が半額程度になるというデータもある。誠意のある説明をし、きちんと謝罪をして再発防止に努めることが、コンフリクト・マネジメントにとっては重要なのである。適切な謝罪の「効用」は大きい謝罪には、「共感表明の謝罪」と「責任承認の謝罪」の2種類がある。共感表明の謝罪とは、患者に共感して気持ちを和ませるタイプの謝罪であり、責任承認の謝罪とは、医療者自身の非を認めるタイプの謝罪である。共感表明の謝罪は、不利益を被った患者に対する自然な共感的感情から表明されるもので、過失や責任と直接結びつくような意味合いは持たない。したがって歯科医療現場において、この謝罪を躊躇する必要はない。一方で責任承認の謝罪は、他の証拠と合わせて過失判断の資料とされる可能性があり、患者の金銭的補償に結びつくため、言っておけばよいというものではない。もちろん責任承認の謝罪であっても過失が明らかな場合には、これをためらうべきではない。現実問題として、謝罪の効用は大きい。謝罪をすべき状況で謝罪を拒否すると、患者は不信感を抱き、その後の医事紛争が激化しやすくなる。適切なタイミングで適切な謝罪をすることが、医師患者間の信頼関係を取り戻す第一歩となるのである。医療事故のセミナーが開催決定!1Dでは9月1日(木)に『歯科医院における死亡事故ケーススタディ』セミナーを開催する。歯科医院における実際の死亡ケースを題材に、医療安全に関して法歯学者・佐藤慶太先生が解説する。1Dプレミアムなら無料である。ぜひご参加いただきたい。セミナーの詳細を見る参考文献佐久間 泰司『歯科医療の安全を考える』日歯麻誌, 2022.山崎 祥光『医事紛争と謝罪 第3回 謝罪が訴訟に及ぼす影響』医療安全, 2007.和田 仁孝, 中西 淑美『医療メディエーションーコンフリクト・マネジメントのナラティヴ・アプローチ』シーニュ, 2011.
1D編集部
2022年8月23日
アスピリン喘息による死亡。歯科医師の責任が問われた事例と問われなかった事例

アスピリン喘息による死亡。歯科医師の責任が問われた事例と問われなかった事例

歯医者から帰ってテレビ見ていたら、苦しくなって……平成2年3月のある日の午後2時半、福岡県のある歯科医院で左上の智歯抜歯が行われた。抜歯後には、ロキソニン(鎮痛抗炎症剤)、レクトーゼ(消炎酵素剤)、ケフレックス(抗菌薬)が処方され、患者はそれを服用した。患者は家に帰りしばらくはテレビを見ていたが、同日午後3時半ころ、喘息の発作を起こし始めたので、発作を鎮静させるための吸入を二回行った。しかし、発作はおさまらず、顔色が赤黒くなり始め、下腹部を両手で押さえながらトイレに駆け込み、しばらくして同所で意識を失い、「ドン」という音とともに転倒した。患者の妻は歯科医師に対して、すぐに連れて行くので見てくれと頼んだが、緊急を要するので近所の呼吸器専門の医師に往診を依頼した。呼吸器専門の医師が到着したときには、患者はうつ伏せで倒れており、顔面はチアノーゼを呈し、心臓は停止していた。心臓マッサージを施したが蘇生はしなかった。同日5時半、患者は死亡したと判断された。問診書には書いてあった患者は予診録にはきちんと喘息の既往を書いていた。「あなたの体質は?」の項については「特異体質 ぜんそく」に、「使えない薬は?」の項については「ピリン系薬剤」に各々丸印をつけ、さらに「今までにかかった病気は?」の項については「ぜんそく」と自ら記入した。予診録を見た被告は、患者に対して喘息の状態を問診したところ、患者は、自分には喘息の持病があり、ピリン系の薬剤で喘息の発作が起こる旨答えた。それにも関わらず、歯科医師はアスピリン喘息の概念、ロキソニンがアスピリン喘息を惹起すること及びロキソニンをアスピリン喘息又はその既往歴のある患者に投与してはいけないことについては全く知らなかった。それ故に、アスピリン喘息で患者は死亡してしまったのだ。当時の裁判所は担当した歯科医師がアスピリン喘息を知らなかったことについてこのように結論づけている。アスピリン喘息は、呼吸器やアレルギー疾患の専門医の間では既に昭和55年ころから注目されるようになっていたものであり、また、本件事故当時、ロキソニンの使用説明書や医学文献にアスピリン喘息についての記載があったことからすると、歯科医師であっても、アスピリン喘息に関する知識を修得することは容易であったと認めざるをえないばかりでなく、前記医師の業務の特殊性及び薬剤が人体に与える副作用等の危険性に鑑みれば、右認定のアスピリン喘息に関する知識が福岡市内の開業歯科医師の間では一般的に定着するに至っていたとはいえないなどの事情は被告に課せられていた研鑽義務を何ら軽減するものではないことは明らかである。投与における注意義務を怠って 漫然とロキソニンを投与したとして、歯科医師の不法行為責任が認められ担当歯科医師は約2000万円の損害賠償を命ぜられた。同じアスピリン喘息の死亡ケースで、歯科医師の責任が問われなかった事例先の事例とは反対に、歯科で処方された薬物をきっかけにアスピリン喘息により患者が死亡した事例でも、歯科医師の責任問われなかった場合もある。群馬県のとある歯科医院で平成10年同じ様に、歯科医師が処方した薬物がトリガーとなり発症したアスピリン喘息で死亡したケースの裁判の判決はこうであった。男性は非ステロイド性抗炎症薬の投与によって誘発される気管支喘息(ぜんそく)「アスピリン喘息」を患っている可能性があった。患者への解熱鎮痛薬ロキソニンの投与は禁じられているが、同診療所で治療後、処方されたロキソニンなどを服用。間もなく心肺停止状態になり21日後に死亡した。 判決で裁判長は、(1)男性はそれまでアスピリン喘息と診断されたことがない(2)以前、非ステロイド性抗炎症薬を処方され服用したと思われるが異常はなかったことから、ロキソニン投与によって重い発作を引き起こすことは予見できなかったとして、担当医師の過失を認めず、男性の死亡との因果関係も認められないと判断した。つまり、きちんと問診を取ること、予診録にしっかり記録すること、そして必要である医学的知識をきちんと学ぶことが歯科医師として求められていることであることがここから分かる。歯科医院における死亡事故セミナー開催歯科医院における死亡事故をケースから学ぶオンラインセミナーが開催決定。講師は法歯学者の佐藤慶太先生(鶴見大学歯学部教授)。興味がある方は、ぜひご参加ください。セミナーの詳細を見てみる参考文献福岡地方裁判所 平成2年(ワ)2216号 判決, 大判例, <URL>, 2020年8月23日閲覧前橋地裁平成24年8月31日判決,アスピリン喘息の可能性ある患者のロキソニン服用後死亡事案で請求棄却報道, 弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ, <URL>, 2020年8月15日閲覧後藤隆志, & 一戸達也. (2012). 気管支喘息を有する患者に対する歯科治療時の注意点を教えてください.
宇梶 淳平
2022年8月13日
【医療安全】歯科医療にとって「エラー」とはなにか?

【医療安全】歯科医療にとって「エラー」とはなにか?

歯科医療にとってエラーとはなにか。いかにしてエラーをマネジメントするべきか。本稿では、術者の臨床手技への成熟度によるエラーの分類をはじめ、なぜ歯科医療においてエラーが起きやすいのか、また歯科医院の現場でエラーを事故につなげない仕組みについて解説をしていく。1Dでは9月1日(木)に『歯科医院における死亡事故ケーススタディ』セミナーを開催する。歯科医院における実際の死亡ケースを題材に、医療安全に関して法歯学者・佐藤慶太先生が解説する。1Dプレミアムなら無料である。ぜひご参加いただきたい。セミナーの詳細を見るスリップ・ラプス・ミステイクエラーについて触れる前に、まず「安全」とはなにかを確認しよう。JIS規格において安全は、「許容不可能なリスクがないこと」と定義されている。これが国際的な安全の定義だ。医療の世界でもそれ以外でも、「絶対的な安全」は存在しない。すべてのリスクを無くすことは不可能であり、存在する安全とは「許容できないリスクが存在しない」状態だけだ。一方でエラーとはReasonによって「計画された精神的または身体的な一連の行為が意図した結果を達成できなかったもので、その失敗が何らかの偶然の作用には起因しない場合」と定義されている。Reasonはエラーを定義した上で分類しており(Reasonのエラー分類)、スリップ・ラプス・ミステイクで構成される。それぞれ原因が別であるため、対策法も異なる。スリップは、「計画が正しかったが実行で失敗した」エラーである。ラプスも「計画は正しいがそれ自体を忘れてしまった」もの、ミステイクは「実行は正しかったが計画が誤っていた」エラーのことを指す。佐久間(2022)より改変研修医とベテランではエラーの原因が違うReasonのエラー分類の他にも、術者の臨床手技への成熟度によってもエラーを分類することができる。直感的にも分かりやすいと思うが、研修歯科医が起こすエラーとベテラン歯科医が起こすエラーとでは、その原因や性質が大きく異なっている。まずは下図をご覧いただきたい。下図は、成熟度の異なった3人の狙撃手が的をめがけて5発の銃弾を打った時の着弾パターンである。研修歯科医が起こすエラーは「ランダムエラー」、ベテラン歯科医が起こすエラーは「散発的エラー」や「系統的エラー」に分類される。以下で詳しく説明しよう。佐久間(2022)より改変研修歯科医が起こすエラーは「ランダムエラー」が多い。スキルが不足しているため的の中心を射ることはできず、ランダムに違う着弾点に打ってしまう。まぐれで中心を射ることもあるが、あくまで偶然である。統計用語で言えば標準偏差が大きい状態だ。ランダムエラーを繰り返す研修歯科医には、シンプルに教育・訓練が何より有効である。エラーをしたからといって、当事者を処罰することはナンセンスだ。教育・訓練を重ねることで精度は上がっていく。一方、ベテラン歯科医が起こすエラーは「散発的エラー」であることが多い。スキルが熟達しているため高い精度で的の中心を射ることができるが、時に大きく外れることがある。散発的エラーは熟練者であっても一定の確率で発生するエラーで、教育・訓練では防ぐことはできない。「人は誰でも間違える」ため、エラーを医療事故につなげない仕組みの構築が対応策である。ランダムエラーと同様に、散発的エラーの場合も当事者の処罰には意味がない。最後に「系統的エラー」とは、先ほどの図で言えば銃の照準器がそもそもズレている場合などに起こる。標準偏差は小さいが、銃側の問題で平均値が大きくズレている状態といえる。系統的エラーは、ズレの原因を究明しその対策を講じることで防ぐことができる。なぜ歯科医療ではエラーが起きやすい?歯科医療では、医科領域と比べてエラーが起きる原因に特殊性がある。歯科医療におけるエラーの特殊性を知ることは、エラーをマネジメントする上でも必要になってくる。患者や治療部位の特殊性歯は、他の臓器と比べて数が多い。医科領域では滅多に部位間違いは生じないが、歯科ではその確率が大きく上がる。また、治療部位である口腔が上気道の一部であり、コットンロールや嘔吐、抜去歯による気道閉塞のリスクがあることも特殊である。診療上の特殊性歯は硬組織であり、その切削は不可逆的である。一度失えば基本的には元に戻らないという性質は、歯科医療におけるエラーの重みを特殊なものにしているといえるだろう。また、硬組織を切削するため治療器具が鋭利なことが多く、観血処置も多いため感染のリスクが高いことも特殊である。さらに、歯科医療は日常生活の中で行われており、治療後は自宅や職場に戻ったりするため、治療後に経過を見ることは現実的に難しいことも、医科領域と比較した場合の特殊なポイントである。エラーをマネジメントする方法とは?歯科医院においても、ヒューマンエラーを極力少なくし、エラーが生じても医療事故につなげない仕組みの構築が求められている。その手法は「エラーマネジメント」と呼ばれ、歯科医師は知っておいて損はない。ダブルチェックダブルチェックはご存知の通り、2人体制でチェックをすることである。歯科医師Aおよび歯科医師Bが100回に1回エラーをするとしたら、この2人でダブルチェクをするとエラーの頻度は「1/100 × 1/100 = 1/10,000」と10,000回に1回まで低減される。しかし「A先生が見たから大丈夫だろう」という気持ちがあると、チェック機能は形骸化する。特にトリプルチェック(3人体制でのチェック)になると、3人が互いに手抜きをし、逆にエラーが起きる可能性が上がるため行ってはならない。チェックリスト法チェックリストを用意し、そのリストにチェックを入れながら作業をしていくことで、漏れを防ぐ方法である。シンプルだが、記憶に頼らずチェックできるため推奨されている。フェイルセーフフェイルセーフとは、誤った操作や誤動作が生じた際に常に安全に制御する設計方法のことである。アースなしにペダルを押しても通電しない設計の電気メスなどが医療における例である。日常生活で言えば、転倒したら自動で消灯するストーブなどがフェイスセーフである。フールプルーフフールプルーフとは、誤った操作ができないようにシステム側を設計しておく手法である。直訳すると「バカに耐える」である。麻酔ガスの誤接続を防止するピンインデックスシステムが代表例として挙げられやすい。日常生活では、着座しなければ作動しない温水便座などがフールプルーフである。医療事故のセミナーが開催決定!1Dでは9月1日(木)に『歯科医院における死亡事故ケーススタディ』セミナーを開催する。歯科医院における実際の死亡ケースを題材に、医療安全に関して法歯学者・佐藤慶太先生が解説する。1Dプレミアムなら無料である。ぜひご参加いただきたい。セミナーの詳細を見る参考文献佐久間 泰司『歯科医療の安全を考える』日歯麻誌, 2022.経済産業大臣:日本工業規格 Z 8051:2015(ISO/IEX Guide 51:2014)Reason J:Human Error, Cambridge University Press, UK, 1990, 13. 邦訳:ジェイムスリーズン著, 十亀 洋訳:ヒューマン・エラー, 海文堂, 東京, 2014, 17.Gawade A:The Checklist Manifesto:How To Get things Right, Profile Books, UK, 2009, 18.
1D編集部
2022年7月27日

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レジン修復 (238)

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