歯科用語集
2025年10月28日

抜去歯

「抜去歯」とは?歯科用語の解説と症例を紹介

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定義・語源

抜去歯とは、歯科治療において、病気や外傷、または治療の必要性に応じて、口腔内から取り除かれる歯のことを指す。語源は「抜去」という言葉から来ており、「抜く」と「去る」という意味が組み合わさっている。抜去歯は、主に虫歯や歯周病、歯の破折などの理由で抜歯されることが多い。分類としては、完全に抜去される「完全抜去歯」と、部分的に残存する「部分抜去歯」が存在する。これらの歯は、治療後の口腔内の健康状態や機能に大きな影響を与えるため、適切な判断が求められる。


臨床における位置づけ・判断基準

臨床において抜去歯は、患者の口腔内の健康を維持するための重要な選択肢である。抜去の判断基準には、歯の保存可能性、患者の全身状態、治療の必要性などが含まれる。具体的には、歯周病の進行度や虫歯の深刻度、歯の支持組織の状態を評価し、抜去が最も適切な治療法であるかどうかを判断する。さらに、抜去後の補綴治療やインプラント治療の計画も考慮されるべきであり、患者に対して十分な説明と同意を得ることが重要である。

関連用語・類義語との違い

抜去歯に関連する用語としては、「抜歯」「抜根」がある。抜歯は、歯を完全に取り除く行為を指し、抜去歯はその結果としての歯を示す。一方、抜根は、歯の根だけを取り除くことを意味し、歯冠部分は残る場合が多い。これらの用語は、治療の目的や方法によって異なるため、正確な理解が求められる。また、抜去歯は、患者の口腔内の健康状態に直接影響を与えるため、適切な治療計画の一環として位置づけられる。

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ラバーダム防湿は、根管治療だから、コンポジットレジン修復だから、と処置に合わせて付けるもの。そう考えている歯科医師は多いのではないだろうか。1Dの「25分間」ミニセミナー「ラバーダム防湿――残根にどうやってクランプかけるの?」で、マイクロスコープを使った診療を中心にしている講師が投げかけるのは、逆向きの問いだ。「ラバーダムは、いつ外せるのか」。講師の答えは、治療で露出した象牙質を、外す前に守っておくこと。その根拠として講師が持ち出すのは、エナメル質と象牙質の成り立ちの違いである。本稿では、ラバーダムの歴史とメリットから、処置別の防湿の問題点、外すタイミングの考え方までを、スライドで確認できた内容を中心に、講師の主張・経験と編集部の解釈を分けて整理する。なお、タイトルにある残根へのクランプのかけ方は、この前半部分には出てこない。100年以上前の器具を、いまも使い続けている講師はまず、ラバーダム防湿に使う器具がクランプ、シート、パンチ、フォーセップス、フレームと非常にシンプルで、そのコンセプトは100年以上前にできあがったものだと話す。ラバーダムは一般に1864年、米国のバーナム(S. C. Barnum)が紹介したとされる。講師は、外科で清潔・不潔の概念が確立されていくのと同じ時代に、歯科ではすでに防湿のコンセプトが生まれていたと位置づける。その後の歩みについて、講師は次のように整理する。1900年代前半には吸引装置の発達で簡易防湿が主流になり、後半にはラバーダムの使用と根管治療や修復の成績との関係が指摘されるようになった。それでも使う歯科医師は多くなかったが、新型コロナウイルス感染症の流行で世界中の歯科医師が注目し、2020年代にはゴールドスタンダードの処置として位置づけられるようになった、というのが講師の見方だ。一方で講師は、ラバーダム防湿は教科書で簡単に触れられる程度で、体系的に学ぶ機会が少なく、エビデンスもまだ整理の途中にある分野だとも断っている。メリットは4つ。接着への影響を示す臨床研究もスライドでは、ラバーダム防湿のメリットが患者側と術者側に分けて示される。患者側は「治療時の安全確保」と「湿度、術野汚染のコントロール」、術者側は「術野の明示、術式の合理化」と感染対策だ。安全確保の例として講師が挙げるのは、ファイルの誤飲・誤嚥の症例報告で、ラバーダムをしていない状態で事故が起きれば責任は重くなると言う。感染対策については、ラバーダムが感染性のエアロゾルを大きく減らすという報告を紹介しているが、編集部は示された数値の原典を確認できていないため、本稿では数値を載せない。術野汚染のコントロールでは、講師は自身の経験を語る。以前は一部の処置をラバーダムなしで行い、セメンテーションのときだけラバーダムをしていた時期があった。当時の写真を振り返ると、レジンが剥がれたような状態がいくつも見つかったという。自分では止血も防湿もしたつもりだったが、後から見返すとそうではなかった、と講師は振り返る。そのうえでスライドに示されるのが、2022年にJournal of Esthetic and Restorative Dentistryに掲載された口腔内での臨床研究(Falachoら)だ。被験者の口腔内に装着したスプリントに抜去歯を固定し、ラバーダムの有無でエナメル質への接着強さを比べたもので、要旨によれば、接着システムにかかわらずラバーダムを使った群で接着強さが高かった。講師はこの研究を、ラバーダム防湿の必要性を裏付けるものとして紹介している。ただし、エナメル質への接着強さを測った研究であり、修復物の長期成績を直接示したものではない点は押さえておきたい。簡易防湿と湿度の関係については、1Dの過去記事「コンポジットレジン修復にラバーダム防湿は必要か?」も参考になる。「処置別」の防湿では、処置と処置のあいだが抜け落ちる講師が「これまでのラバーダム防湿」と呼ぶのは、処置ごとに付けるやり方だ。スライドには根管治療、直接修復、間接修復の写真が並び、講師自身も以前は、今日は根管治療だから、今日は修復だからラバーダムをしよう、と処置別に考えていたという。この考え方の最大の問題として講師が挙げるのは、処置と処置のあいだに連続性がなく、治療中だけきれいな環境になっていることだ。新型コロナウイルス感染症を経て、講師の診療は、ラバーダム防湿下で連続的に治療を進める形に変わったという。講師は、一度マイクロスコープで治療すると裸眼には戻りにくいのと同じで、ラバーダムのある環境を一度経験すると、ラバーダムなしの治療が汚く感じると話す。複数の処置をまとめて行うときには効率もよいと感じているが、日本の保険制度のもとではまとめて治療するのが難しい場面があることにも触れている。こうした経験を踏まえて講師が掲げるキーワードが、「防湿で何を守るべきか」と「防湿の質」の二つだ。外す基準は、象牙質が外界にさらされたままかどうか講師は、クラウンを外してやり直す症例を示しながら、いつラバーダムを外せるのかを問う。考えるべきは、治療した部位がこの先の汚染と、それに続く感染に耐えられる状態かどうかだと講師は言う。歯冠修復を終えてレジンで保護した部位と、これから根管治療に入る部位とでは、外してよいかの答えも外し方も違ってくる。この判断の手がかりとして、講師は歯を発生学的に見ることを勧める。スライドでは「Enamel/Ectoderm」「Dentin/Mesoderm」と示される。講師によれば、エナメル質は皮膚や爪と同じく外胚葉由来で、外界とのバリアの役割を持つため、それ自体を保護する必要性はあまり高くない。エナメル質内で処置を行うラミネートベニアが長期で安定した成績を出していることも、講師はその例に挙げる。一方、象牙質は外界に単独でさらされることを前提とした組織ではなく、外からの刺激への抵抗力も強くない。だから、治療で象牙質が露出したときは、ラバーダム防湿下でできるだけ汚染を避け、外す前に何らかの方法で保護しておく必要がある、というのが講師の結論だ。編集部から一点補足しておく。現在の発生学では、象牙質をつくる象牙芽細胞は神経堤に由来する外胚葉性間葉から生じるとされ、「中胚葉」という表記は簡略化した言い方といえる。講師の論点は、外界とのバリアとして働く組織か、内部環境を担う組織かという対比にあると読むのがよいだろう。象牙質を守る手段としての即時象牙質シーリング(IDS)では、露出した象牙質をどう守るのか。講師が挙げるのは、レジンコーティング、あるいは即時象牙質シーリング(Immediate Dentin Sealing、IDS)と呼ばれる方法だ。講師は日本で生まれた手法として紹介し、1990年代から基礎研究や臨床研究が報告されてきたと話す。形成した直後の新鮮な象牙質をレジンで覆うことで、象牙質をコンタミネーションから守ると同時に、マイクロリーケージを抑え、接着を有利にするという考え方だ。スライドには、IDSの利点として、新鮮な切削象牙質が象牙質接着に理想的な被着面であること、ボンディング材を先に硬化させることで接着強さが向上すること、応力の少ない状態で象牙質接着ができあがること、プロビジョナルの期間に細菌の漏洩や知覚過敏から象牙質を守ることの4点が英語で並ぶ。この方法を体系的にまとめたMagneの総説(J Esthet Restor Dent 2005)の要旨でも、形成直後の象牙質にボンディング材を塗布・硬化させてから印象を採ることが推奨され、接着強さの向上、ギャップの減少、細菌の漏洩と知覚過敏の軽減が挙げられている。講師は、IDSは長期の臨床研究の結果を待っている段階だとしつつ、ゴールドスタンダードになる日は近いとし、象牙質を露出させたままにしないためには、ほぼすべての過程でIDSが必要だと考えていると述べる。ここは講師個人の臨床判断であり、すべての症例に同じ手順が当てはまるとは限らない。それでも、「どの処置だから付けるか」ではなく「外したあとに象牙質が守られているか」でラバーダムの付け外しを考える視点は、日常の防湿を見直すきっかけになりそうだ。本稿で扱わないことタイトルにある残根へのクランプのかけ方、クランプやウェッジの選び方などの具体的な手技は、この前半部分には含まれていない。講師の自己紹介や医院の設計の話、エアロゾルの減少率などの数値、自動字幕で聞き取りが不確かだった処置名や文献名も載せていない。ファイル誤飲の症例報告とIDSが日本で生まれたという経緯は、編集部では原典を確認できていないため、講師の紹介として記すにとどめた。元動画を見る【ラバーダム防湿】残根にどうやってクランプかけるの?(2024年3月8日公開)このミニセミナーはセミナーの前半部分です。続きは1Dプレミアムで視聴できます。
1D編集部
2026年10月24日
抜去歯の処置と術式。歯科臨床で役立つ症例と診断のポイント

抜去歯の処置と術式。歯科臨床で役立つ症例と診断のポイント

抜去歯の定義とその必要性抜去歯とは、歯科治療において歯を抜くことを指す。主な理由としては、う蝕の進行、歯周病、外傷、歯の位置異常などが挙げられる。抜去は、歯の保存が不可能な場合や、他の歯や口腔全体の健康を守るために必要な処置である。抜去歯の判断には、診査や診断が不可欠であり、患者の全身状態や口腔内の状況を考慮する必要がある。特に、抜去後の治癒過程や、必要に応じた補綴治療の計画も重要な要素である。抜去歯の術式と手順抜去歯の術式は、抜去する歯の状態や位置によって異なる。一般的な手順としては、まず局所麻酔を行い、患者の痛みを軽減する。その後、歯周組織を剥離し、歯を固定している靭帯を切断する。最後に、歯を慎重に抜き取る。特に、埋伏歯や多根歯の場合は、より複雑な術式が必要となることがある。これらのケースでは、歯を分割して抜去することや、外科的アプローチが求められることもある。術後の管理も重要で、感染予防や痛みのコントロールが必要である。抜去歯の症例と臨床的考察抜去歯に関する症例は多岐にわたる。例えば、重度の歯周病により歯が動揺している場合や、う蝕が進行し歯冠が崩壊している場合などがある。これらの症例では、抜去後の補綴治療やインプラント治療を考慮する必要がある。また、外傷による歯の破損や、矯正治療に伴う抜歯も一般的な症例である。これらのケースでは、患者の年齢や治療の目的に応じた適切な判断が求められる。抜去歯のメリットとデメリット抜去歯のメリットには、感染の拡大を防ぐことや、歯周病の進行を抑えることが挙げられる。また、抜去後に適切な補綴治療を行うことで、機能的な回復が期待できる。一方、デメリットとしては、抜去による痛みや腫れ、さらには心理的な影響が考えられる。特に、抜去後の治癒過程においては、感染や出血のリスクがあるため、注意深い管理が必要である。抜去歯に関する注意点とコツ抜去歯を行う際の注意点としては、患者の全身状態や既往歴を十分に確認することが重要である。また、術後のフォローアップも欠かせない。特に、感染の兆候や痛みの程度を観察し、必要に応じて適切な処置を行うことが求められる。コツとしては、抜去の際に歯を慎重に扱い、周囲の組織を傷つけないようにすることが挙げられる。また、術後の指導においては、患者に対して適切なケア方法を説明し、理解を促すことが重要である。まとめ抜去歯は、歯科臨床において避けて通れない処置であり、適切な判断と技術が求められる。症例に応じた術式の選択や、術後の管理が成功の鍵となる。歯科医師・歯科衛生士は、これらの知識を深め、患者に対して最良の治療を提供することが求められる。
1D編集部
2024年6月1日
【ぶっちゃけレビュー】ユニシェードフローを使ってみた結果

【ぶっちゃけレビュー】ユニシェードフローを使ってみた結果

2022年7月21日に松風から発売されたユニバーサルシェードのコンポジットレジン「ユニシェードフロー」。ペーストタイプは昨年2月に発売されており、今回フロアブルタイプが追加された。試供品が筆者バイト先の歯科医院にたまたまあったので、発売から2ヶ月以上経っており需要は少ないと思うが個人的な興味のままレビューしてみたい。2年前にはトクヤマデンタルが「オムニクロマ®︎」を発売し、ユニバーサルシェード市場が盛り上がって来たのかもしれない。その時は稚拙ながらかなり早い段階でレビューできていたので、比較材料として読んでいただきたい。【関連記事】>シェードのないCR「オムニクロマ®︎」使ってみてわかった衝撃の実力はちなみに、前回も今回も商品のPRではなく、一銭ももらっていない。そのため個人的な意見でネガティブなことも言っているが、結構真面目に紹介しているので全然案件にしていただいても構わないと思う。お金ください。「ユニシェード」の仕組みおそらくユニバーサルシェードを実現するために「高透光性」であることが必要とされる。そして歯冠修復材料として強度を保つために、フィラーの量は減らせない。そうなってくると自然と極小のフィラーをたくさん使う、効率を考えて形状は球体に、というロジックが考えやすい。おそらく「オムニクロマ®︎」とほぼ同じ仕組みで実現しているのだろうが、別にマネでもパクリでもなく物理的な構造上そういうものなのだろう。球状のナノフィラーを用いることで訪れるメリットの一つが「表面の滑沢性」だ。砕いて説明すれば「ちっちゃいし丸いのでボコボコしづらい」ということで、未重合層を除去するだけで滑沢だし、研磨も短時間で済むらしい。イメージ図にある「S-PRGフィラー」というのが松風独自の技術で、フッ化物イオンを含む6種類のイオンが徐放される特殊なフィラーだ。抗プラーク付着性だったりエナメル質の脱灰を抑制したり報告されている。松風はこの「S-PRGフィラー」が高透光性かつ吸収した光を拡散する性質があり、ユニバーサルシェード化する説明している。“忖度しない”レビュー開始前回との比較になるが、公式発表のシェードサンプルがこちら。この画像で分かる通り「ユニシェード」は光照射前後で色調の変化がないことを特徴として挙げている。なので全て充填・硬化後のモックが用意されている。実際に使ってみた感覚でいうと、確かにそこまで変化しなかったと思う。前回同様、抜去歯(大臼歯・小臼歯)をそれぞれⅠ・Ⅱ級窩洞に形成し充填前後を記録、撮影は松風のアイスペシャルC-IVを使用した。ちなみにアイスペシャルは非常に簡単でいい感じに写真が撮れる。案件お待ちしております。比較対象のコンポジットレジンには、バイト先で普段使用している同社従来品の「ビューティフィル フロー プラス X」を用い、今回はある程度シェードテイクしたという想定でA2を選択した。まずは大臼歯から。形成も写真の撮り方も下手くそで申し訳ないが、記録として一応載せておく。全くう蝕のない歯だが小窩裂溝う蝕と仮定しⅠ級窩洞を形成。そして充填後が以下の通り。ぱっと見の感想は「白い」といった感じ。元々の歯牙が滅菌済みでもありかなり白いこともあるが、A2がだいぶクリーム色に見えるほどユニシェードは白く感じた。周辺歯質との調和という点では(従来品に比べ)ユニシェードに軍配といったところだ。ただオムニクロマ®️と比較して特筆した差があるとは思えなかった。どちらも透明度が高く、シェードはかなり明るいのが現段階での印象だ。続いて小臼歯もやってみる。小臼歯は左右でⅡ級窩洞を形成し検証。「直接修復なら外開きの窩洞にする必要ないだろ」というごもっともな意見も聞こえてきそうだがあくまで検証なので多めにみてほしい。形成した後に遊離エナメルがあったりした方が面白そうと気づいたが後の祭りだし、形成中に一部ボロッとチッピングしたこともあったと言い訳しておく。充填後はこう。やはりユニシェードの明るさが目立つ。そして気持ち程度だがオムニクロマ®︎に比べグラデーションに劣るというか、中心部と辺縁隆線の色の違いがややフラットに見えた。側面観がこちら。隣接面が見えることは臨床的にほぼないので問題になることはないが、従来CRとあまり変わらない結果になった。境界はしっかり見え、周辺歯質との調和もそこそこといったところだ。操作性がアドバンテージにここまで色調の点で評価してきたが、実際に使ってみて感じたのは操作のしやすさだ。オムニクロマ®︎はペーストでもやや流動性が高く、少しモタつくとのっぺりしてしまう印象だった。実はオムニクロマ®︎のフローも手元にあり、口腔内でも使用したことがあるがハイフローとまではいかないもののかなり流れやすかった。その点ユニシェードはゼロフロータイプのため、付形性は非常に良い。フロアブルレジンでもストレスなく咬頭を作ることができた。また特徴にもあった「表面の滑沢性」は写真からも見てとれると思う。実際驚いたのは研磨せず放置して1週間後にふと見てみるとユニシェードは光沢感を増していた。カタログにもコンポマスターで15秒研磨すればいいとあったが、そのポテンシャルが見えた。ただコンポマスターの研磨性能が高すぎるだけな気もする。気になるコストパフォーマンスはユニシェードフローの標準価格は2.2gで3,200円、対するオムニクロマフローは3gで4,800円とコスパ対決ではユニシェードが優位な結果に。従来品が2,800円なのを考えるとやはり少々高級品ではあるが、利益率は上がっている。全国の歯科医師が保険診療でどこまで審美的にこだわっているか疑問であり、ある程度の質を保つという意味であればこれ1本あれば十分だと思う。逆にとことんこだわるならば各種シェードを用意しておく必要がある。審美性をどこまで重視するかの価値観で変わってくるが、一般診療所レベルでは高コスパ商品だろう。今がユニバーサルシェードの黎明期トクヤマデンタル、松風に限らず、ジーシーやクラレノリタケからもユニバーサルシェードのコンポジットレジンは発売されている。各社の持ち味を活かして切磋琢磨している、いわば黎明期だろう。正直なところ筆者の個人的な価値観で、まだ「これ1本」とまではいかない。実際に口腔内で使用もしてみているが、明るさが目立つため症例を選んでいる。現状シェードの暗い歯には使う勇気がない。当然世の中の全ての製品を試したわけではないので偉そうなことは言えない。機会があれば入手してテストしたいところなので、今度院長にお願いしてみる。この技術が進歩していけば、誰が使っても、どんな歯に対しても適した”ユニバーサル”の名の如く標準化された材料になる。近い将来、シェードが無くなっていることを期待したい。参考文献「ビューティフィル ユニシェード フロー 製品紹介ページ」, 株式会社松風(URL)
ユースケ イシカワ
2022年10月10日
【医療安全】歯科医療にとって「エラー」とはなにか?

【医療安全】歯科医療にとって「エラー」とはなにか?

歯科医療にとってエラーとはなにか。いかにしてエラーをマネジメントするべきか。本稿では、術者の臨床手技への成熟度によるエラーの分類をはじめ、なぜ歯科医療においてエラーが起きやすいのか、また歯科医院の現場でエラーを事故につなげない仕組みについて解説をしていく。1Dでは9月1日(木)に『歯科医院における死亡事故ケーススタディ』セミナーを開催する。歯科医院における実際の死亡ケースを題材に、医療安全に関して法歯学者・佐藤慶太先生が解説する。1Dプレミアムなら無料である。ぜひご参加いただきたい。セミナーの詳細を見るスリップ・ラプス・ミステイクエラーについて触れる前に、まず「安全」とはなにかを確認しよう。JIS規格において安全は、「許容不可能なリスクがないこと」と定義されている。これが国際的な安全の定義だ。医療の世界でもそれ以外でも、「絶対的な安全」は存在しない。すべてのリスクを無くすことは不可能であり、存在する安全とは「許容できないリスクが存在しない」状態だけだ。一方でエラーとはReasonによって「計画された精神的または身体的な一連の行為が意図した結果を達成できなかったもので、その失敗が何らかの偶然の作用には起因しない場合」と定義されている。Reasonはエラーを定義した上で分類しており(Reasonのエラー分類)、スリップ・ラプス・ミステイクで構成される。それぞれ原因が別であるため、対策法も異なる。スリップは、「計画が正しかったが実行で失敗した」エラーである。ラプスも「計画は正しいがそれ自体を忘れてしまった」もの、ミステイクは「実行は正しかったが計画が誤っていた」エラーのことを指す。佐久間(2022)より改変研修医とベテランではエラーの原因が違うReasonのエラー分類の他にも、術者の臨床手技への成熟度によってもエラーを分類することができる。直感的にも分かりやすいと思うが、研修歯科医が起こすエラーとベテラン歯科医が起こすエラーとでは、その原因や性質が大きく異なっている。まずは下図をご覧いただきたい。下図は、成熟度の異なった3人の狙撃手が的をめがけて5発の銃弾を打った時の着弾パターンである。研修歯科医が起こすエラーは「ランダムエラー」、ベテラン歯科医が起こすエラーは「散発的エラー」や「系統的エラー」に分類される。以下で詳しく説明しよう。佐久間(2022)より改変研修歯科医が起こすエラーは「ランダムエラー」が多い。スキルが不足しているため的の中心を射ることはできず、ランダムに違う着弾点に打ってしまう。まぐれで中心を射ることもあるが、あくまで偶然である。統計用語で言えば標準偏差が大きい状態だ。ランダムエラーを繰り返す研修歯科医には、シンプルに教育・訓練が何より有効である。エラーをしたからといって、当事者を処罰することはナンセンスだ。教育・訓練を重ねることで精度は上がっていく。一方、ベテラン歯科医が起こすエラーは「散発的エラー」であることが多い。スキルが熟達しているため高い精度で的の中心を射ることができるが、時に大きく外れることがある。散発的エラーは熟練者であっても一定の確率で発生するエラーで、教育・訓練では防ぐことはできない。「人は誰でも間違える」ため、エラーを医療事故につなげない仕組みの構築が対応策である。ランダムエラーと同様に、散発的エラーの場合も当事者の処罰には意味がない。最後に「系統的エラー」とは、先ほどの図で言えば銃の照準器がそもそもズレている場合などに起こる。標準偏差は小さいが、銃側の問題で平均値が大きくズレている状態といえる。系統的エラーは、ズレの原因を究明しその対策を講じることで防ぐことができる。なぜ歯科医療ではエラーが起きやすい?歯科医療では、医科領域と比べてエラーが起きる原因に特殊性がある。歯科医療におけるエラーの特殊性を知ることは、エラーをマネジメントする上でも必要になってくる。患者や治療部位の特殊性歯は、他の臓器と比べて数が多い。医科領域では滅多に部位間違いは生じないが、歯科ではその確率が大きく上がる。また、治療部位である口腔が上気道の一部であり、コットンロールや嘔吐、抜去歯による気道閉塞のリスクがあることも特殊である。診療上の特殊性歯は硬組織であり、その切削は不可逆的である。一度失えば基本的には元に戻らないという性質は、歯科医療におけるエラーの重みを特殊なものにしているといえるだろう。また、硬組織を切削するため治療器具が鋭利なことが多く、観血処置も多いため感染のリスクが高いことも特殊である。さらに、歯科医療は日常生活の中で行われており、治療後は自宅や職場に戻ったりするため、治療後に経過を見ることは現実的に難しいことも、医科領域と比較した場合の特殊なポイントである。エラーをマネジメントする方法とは?歯科医院においても、ヒューマンエラーを極力少なくし、エラーが生じても医療事故につなげない仕組みの構築が求められている。その手法は「エラーマネジメント」と呼ばれ、歯科医師は知っておいて損はない。ダブルチェックダブルチェックはご存知の通り、2人体制でチェックをすることである。歯科医師Aおよび歯科医師Bが100回に1回エラーをするとしたら、この2人でダブルチェクをするとエラーの頻度は「1/100 × 1/100 = 1/10,000」と10,000回に1回まで低減される。しかし「A先生が見たから大丈夫だろう」という気持ちがあると、チェック機能は形骸化する。特にトリプルチェック(3人体制でのチェック)になると、3人が互いに手抜きをし、逆にエラーが起きる可能性が上がるため行ってはならない。チェックリスト法チェックリストを用意し、そのリストにチェックを入れながら作業をしていくことで、漏れを防ぐ方法である。シンプルだが、記憶に頼らずチェックできるため推奨されている。フェイルセーフフェイルセーフとは、誤った操作や誤動作が生じた際に常に安全に制御する設計方法のことである。アースなしにペダルを押しても通電しない設計の電気メスなどが医療における例である。日常生活で言えば、転倒したら自動で消灯するストーブなどがフェイスセーフである。フールプルーフフールプルーフとは、誤った操作ができないようにシステム側を設計しておく手法である。直訳すると「バカに耐える」である。麻酔ガスの誤接続を防止するピンインデックスシステムが代表例として挙げられやすい。日常生活では、着座しなければ作動しない温水便座などがフールプルーフである。医療事故のセミナーが開催決定!1Dでは9月1日(木)に『歯科医院における死亡事故ケーススタディ』セミナーを開催する。歯科医院における実際の死亡ケースを題材に、医療安全に関して法歯学者・佐藤慶太先生が解説する。1Dプレミアムなら無料である。ぜひご参加いただきたい。セミナーの詳細を見る参考文献佐久間 泰司『歯科医療の安全を考える』日歯麻誌, 2022.経済産業大臣:日本工業規格 Z 8051:2015(ISO/IEX Guide 51:2014)Reason J:Human Error, Cambridge University Press, UK, 1990, 13. 邦訳:ジェイムスリーズン著, 十亀 洋訳:ヒューマン・エラー, 海文堂, 東京, 2014, 17.Gawade A:The Checklist Manifesto:How To Get things Right, Profile Books, UK, 2009, 18.
1D編集部
2022年7月27日
シェードのないCR「オムニクロマ®︎」使ってみてわかった衝撃の実力は

シェードのないCR「オムニクロマ®︎」使ってみてわかった衝撃の実力は

その話題性からか、生産の都合で発売延期となっていたシェード選択不要なコンポジットレジン「オムニクロマ®︎」が11月24日、満を辞して解禁された。”シェードのない世界へ”というコピーとともに発表された画期的なCRは、歯科医療者の注目を一身に集め、皆の想像力を掻き立てている。筆者もその一人で、運よく入手できたこともあり早速テストしてみることにした。本記事では従来のCRと比較し、忖度なくその実力を吟味していこうと思う。シェードのないCR「オムニクロマ®︎」とは?それ自体が周囲の色に同化することで、シェードという概念をなくしたコンポジットレジン「オムニクロマ®︎」はトクヤマデンタルが開発し2019年に北米市場で先行導入、すでに北米でのシェアは約3%に上る。国内では2020年8月に保険収載され、10月に販売開始予定であったが生産の都合上11月にずれ込んだが、今後10億円の売り上げを見込んでいるそうだ。「どんな色でもこれ1本で色が合う」と言われてもにわか信じがたいが、確かにそれが実現するのであれば歯科医院はシェードごとに大量の在庫を抱える必要がなくなるし、どんなに色調選択のセンスに欠けていても患者を満足させるCR修復ができる。売れないわけがない。適合するシェードもA1からD4と謳っており、ホワイトニングにも追随して変化するらしくもはや無敵だ。本製品以外のCRは需要がなくなってしまうだろう。そのメカニズムのヒントは「構造色」にあると解説している。構造色とは、昆虫ではモルフォチョウや玉虫、鳥ではクジャク、(中略) これらの生物が持つ鮮やかな色は、構造色と呼ばれる発色の仕組みを持っています。 色素による吸収の色ではなく、光の波長程度の微細な構造が、干渉や散乱などの光学現象を起こして着色しています。(東京理科大学 吉岡研究室)難解であるがつまり、そのもの自体に着色しているのではなく反射によって何らかの色に見えている、ということだ。ここに目をつけたトクヤマはフィラーの構造を見直し、構造色の原理をCRに取り込むことに成功した。実は新しいCRの開発中に失敗作として生まれたそうで、よくある成功物語みたいで感心する。一般的なCRは様々な形のフィラーで構成されているが、オムニクロマ®︎は260nmの均一な球状フィラーが含有されている。これにより窩洞の色調に同化するそうだ。ちなみにオムニクロマ®︎の由来は、Omni-(ラテン語で「すべての」「あらゆる」の意)とChroma(色相と彩度を含んだ色の意)の組み合わせだそうだ。今回はレビュー記事なので、より細かい技術仕様に関しては割愛させていただく。その実力やいかにまず、発表資料からみていただきたい。これはそれぞれシェードの異なる人工歯にオムニクロマ®︎を充填したサンプルだ。少し画像が荒いが硬化後は全く見分けがつかないほど同化している。前セクションで解説は省いていたが、モノマーがポリマーになることで屈曲率が変化し、硬化後に歯質の色調と同化するように設計されている。これが天然歯でも再現できるのか。今回は手持ちの抜去歯を用いてテストしてみた。撮影には松風のアイスペシャルC-IVを使用した。従来のCRと比較するため、第一小臼歯の抜去歯を1歯2窩洞に形成しそれぞれ充填する。今回は近遠心にⅡ級窩洞を形成した。まず従来のCR(ペーストタイプ、シェードA3)を充填したものがこちら。しっかりとシェードテイクを行いCRを選択することが望ましいが、今回はあえて一般的に使用頻度が高いA3を用いることとした。在庫管理的にシェードが限られている歯科医院も少なくないはずだ。次にオムニクロマ®︎を充填したものがこちらだ。いかがだろうか。正直、驚くほどの同化度ではないだろう。しかし、しっかりと周囲に同化していて、特に咬頭付近と辺縁隆線に色調の差が出ていることがわかる。隣接面観はどうだろうか。こちらははっきりと差が出ている。研磨を施していいないので表面は粗造だが、オムニクロマ®︎の同化度は高い。実際肉眼で見ると、オムニクロマ®︎は少し明るく感じ、透明度が高いためエナメル質の再現には優れていると感じた。しかしこれ1本で全て解決!とまではいかなそうで、今回のテストでは必要十分を満たしているレベルだと結論づけたい。言ってしまえば筆者レベルの臨床スキルで、保険診療が中心のDrならばこれ1本あれば十分かもしれない。やや流動性の高い操作感実際に充填操作を行ってみて感じたのはやや流動性が高いという点だ。個人の好みになるところでもあるが、チクソトロピー特性が高いというか、細かめに光硬化させないと形態付与が困難だった。逆に言えばフローが高いので辺縁の適合などは比較的容易に得られるのかもしれない。器具離れは良く、硬化速度も緩やかなので操作時間にも余裕があり全体的な充填操作としては扱いやすいと感じた。コストパフォーマンスは?使用した従来のCRは4g希望価格2,700円のもので、対してオムニクロマ®︎は同じ4gで3,900円と1,200円高価になる。正確な使用量は測れないが仮にシリンジ1本で100回充填できるとすると、その差は12円だ。単純窩洞における光重合型レジン(歯科充填用材料Ⅰ)の診療報酬は110円なので先ほどの仮定でオムニクロマ®︎を使用すれば1窩洞あたり71円の利益、従来のものであれば83円に利益となる。この差をどうとるかは個人の価値観によるが、シェード別にシリンジを数本用意しなくてはならないと考えればコストパフォーマンスに優れた製品だと言えよう。新技術と言うこともあり従来製品よりは高価だが、そこまで気にならない範囲の価格設定なのではないだろうか。使いどころで効果が発揮されるどんなものでもそうだが、使いどころを考えることで最大限の魅力が引き出されるはずだ。このオムニクロマ®︎も、症例とスキルによって別物になると感じた。オムニクロマ®︎には「ブロッカー」というオペークレジンのようなものも展開されており、前歯の切縁(Ⅲ,Ⅳ級窩洞)や金属色の遮蔽に用いると審美性がより向上すると使用を推奨している。製品自体の透明度が非常に高く、接着面の色調が大きく影響するメカニズムのためブロッカーの使用は効果的だと予想できた。補足的にブロッカーを使用してテストも行ってみた。条件は大臼歯のⅠ級窩洞で、ブロッカー有り、無しでの比較だ。微妙な差ではあるが、ブロッカーを使用した方が辺縁のグラデーションが滑らかに見える。そしてどちらも周囲の色調には見事に同化しており、ぱっと見では修復済み歯だとは気づかないだろう。使用した抜去歯のように明るいシェードの歯に対しては非常に審美的な修復が可能になると考えられる。また今回はテストできなかったが、切縁の修復に対して大きな期待ができそうだ。透明度が高いため天然歯エナメル特有の透け感が再現できる可能性が高い。機会があれば今後掲載したいと思う。本格展開後に真価が問われる技術の評価は実際に活用されてからが本番だ。一般の歯科医師たちが使用し、患者がその施術を受け、予後がどうなっていくかに注目したい。メカニズムから考えればCRは変色していかないし、歯自体が変色してもそれに追随する形で適合していくはずだ。耐摩耗性や強度ももちろん検証されているだろうが、実際の口腔内でどうなっていくのかが重要であり、シェアが拡大してからその真価が問われるだろう。個人的には大きな期待を持ってウォッチしていきたいと考えている。歯科セミナーなら「1D(ワンディー)」で!日本最大級の歯科医療メディア「1D」では、診療に役立つオンラインセミナーを多数開催中。もっと知りたい臨床トピックから超ニッチな学術トピックまで、参加したいセミナーが見つかります。下記ボタンから、開催中のセミナーを見てみましょう!開催セミナーを見てみる参考文献株式会社トクヤマデンタル「オムニクロマ®︎特設サイト」<URL>株式会社トクヤマデンタル「オムニクロマ®︎クリニカルガイド」[PDF]株式会社トクヤマデンタル「オムニクロマ®︎パンフレット」株式会社トクヤマニュースリリース, 2020年9月29日「歯科充填用コンポジットレジン「オムニクロマ®」待望の日本上市」<URL>株式会社トクヤマ「トクヤマCSR報告書」[PDF]東京理科大学理工学部物理学科吉岡研究室「生物の構造色」<URL>
ユースケ イシカワ
2020年11月29日

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