歯科用語集
2025年10月28日

カリエスリスク

「カリエスリスク」とは?歯科用語の解説と症例を紹介

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定義・語源

カリエスリスクとは、歯のう蝕(カリエス)が発生する可能性を示す指標である。カリエスは、口腔内の細菌によって歯の硬組織が破壊される病態を指し、リスクはその発生の危険度を示す。語源は、ラテン語の「caries」に由来し、これは「腐敗」を意味する。カリエスリスクは、患者の口腔内環境や生活習慣、食事内容などを考慮して評価され、特に小児や高齢者において重要な指標となる。


臨床における位置づけ・判断基準

臨床においてカリエスリスクは、患者の口腔健康を維持するための重要な判断基準である。リスク評価は、患者の年齢、歯の状態、唾液の質と量、食生活、口腔衛生状態などを総合的に考慮して行われる。高リスクと判断された患者には、フッ化物の使用や定期的な歯科検診、予防処置が推奨される。これにより、カリエスの発生を未然に防ぐことが可能となる。

関連用語・類義語との違い

カリエスリスクに関連する用語には、カリエス、う蝕、リスク評価などがある。カリエスは実際の病態を指し、う蝕はその進行を示す用語である。一方、リスク評価は、カリエスの発生可能性を予測する手法であり、カリエスリスクはその結果として得られる指標である。これらの用語は相互に関連しているが、それぞれ異なる意味を持つため、正確な理解が求められる。

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関連ニュース

カリエスリスクの評価と管理。歯科臨床で役立つ症例と処置の判断ポイント

カリエスリスクの評価と管理。歯科臨床で役立つ症例と処置の判断ポイント

カリエスリスクの定義と重要性カリエスリスクとは、個々の患者がう蝕(カリエス)を発症する可能性を示す指標である。カリエスは、歯の硬組織が酸によって溶解される病態であり、早期発見と適切な管理が求められる。カリエスリスクの評価は、患者の生活習慣や口腔内環境を考慮し、リスク因子を特定することから始まる。この評価は、予防的処置や治療計画の立案において非常に重要であり、歯科医師や歯科衛生士は、リスクを正確に判断することで、患者に最適なケアを提供できる。特に、リスクが高い患者に対しては、早期介入がカリエスの進行を防ぐための鍵となる。カリエスリスクの評価方法カリエスリスクの評価には、さまざまな方法がある。一般的には、患者の病歴、口腔内の診査、生活習慣の確認が行われる。具体的には、以下の要素が評価される。1. **口腔内の状態**:う蝕の有無、歯石やプラークの蓄積状況。2. **生活習慣**:食生活、特に糖分の摂取頻度や飲食の習慣。3. **唾液の質と量**:唾液の分泌量やpH、緩衝能。4. **過去のう蝕歴**:過去にう蝕を経験したかどうか。これらの情報を基に、患者ごとのリスクを評価し、適切な処置や予防策を講じることが求められる。カリエスリスクに基づく処置と術式カリエスリスクが高い患者に対しては、予防的な処置が重要である。具体的な処置には、フッ化物塗布やシーラントの施術が含まれる。1. **フッ化物塗布**:フッ化物は、歯の再石灰化を促進し、う蝕のリスクを低下させる。特に、リスクが高い患者に対しては、定期的なフッ化物塗布が推奨される。2. **シーラント**:歯の咬合面にシーラントを施すことで、プラークの蓄積を防ぎ、う蝕の発生を抑制する。これらの処置は、患者のカリエスリスクに応じて適切に選択されるべきであり、歯科医師はその判断を行う必要がある。カリエスリスク管理における症例の考察カリエスリスク管理においては、実際の症例を通じて学ぶことが重要である。例えば、ある患者が高頻度で甘い飲料を摂取し、過去にう蝕の経験がある場合、カリエスリスクは高いと判断される。この患者に対しては、フッ化物塗布やシーラントの施術を行い、定期的なフォローアップを実施することで、リスクを低下させることが可能である。また、患者の生活習慣の改善を促すことも重要であり、食生活の見直しや口腔衛生の指導を行うことで、長期的なリスク管理が実現できる。カリエスリスク評価のメリットとデメリットカリエスリスク評価には、いくつかのメリットとデメリットが存在する。**メリット**:1. 早期発見:リスクを評価することで、う蝕の早期発見が可能となる。2. 個別対応:患者ごとのリスクに応じた適切な処置が行える。**デメリット**:1. 評価の主観性:評価者の経験や知識に依存する部分がある。2. リソースの必要性:詳細な評価には時間とリソースが必要となる。これらの点を考慮しながら、カリエスリスク評価を実施することが求められる。カリエスリスク管理における注意点カリエスリスク管理を行う際には、いくつかの注意点がある。まず、患者の生活習慣や口腔内の状態を正確に把握することが重要である。また、リスク評価の結果に基づいて、適切な処置を選択することが求められる。さらに、患者への説明を丁寧に行い、理解を促すことも大切である。患者が自らのリスクを理解し、予防に積極的に取り組むことが、カリエスの予防につながる。
1D編集部
2024年6月1日
スポーツドリンクと経口補水液の違い

スポーツドリンクと経口補水液の違い

初夏から秋にかけては、脱水症から熱中症になる危険性が高まる季節である。梅雨明け前後の暑さのピークで、熱中症の発生リスクが最も高く、重症率も高い。暑くなる前は、真夏よりも低い温度で熱中症が発生する。熱中症の発生については、同じ「気温」でも湿度が高いほど危険度は高く、また、暑熱順化が十分でない時期には、より低い温度で熱中症が発症する。スポーツ活動においては、冬季においても熱中症死亡例があることに留意しなければならない。部活動とカリエスリスク熱中症予防の水分補給と称して、部活動で多量の汗を流す学生が、過剰な量のスポーツドリンクを飲むことも多くなる。気づけば休みごとの定期検診にも来れず、やっと来院できた頃にはカリエスが多発していて本人も保護者も愕然とすることも珍しくない。もちろん、こまめな水分補給は重要であり、ハードなスポーツでなくても、かくれ脱水なども頻繁に起こりうる気象条件のもとでは、補水は積極的にすすめるべきである。しかし、どの程度の発汗で何を飲むべきかについて、歯科医療者として正しい情報を患者に提供できているだろうか。熱中症を恐れるあまりスポーツドリンクを多飲し、過剰な糖分摂取による口腔内の悪化を防ぐため、正しい情報を歯科医院レベルでも伝えていく必要がある。経口補水液は組成が厳格に決められている。経口補水液(Oral Rehydration Solution)は、もともと発展途上国での乳幼児の脱水症の予防や治療目的、特にコレラによる脱水治療のために世界保健機関が開発したものである。点滴のように器具や技術を用いることなく手軽に口から水分や電解質を補給できるため、「飲む点滴」とも言われている。塩分と水分が適切に配合されており、組成は以下のように決められている。小腸では、 Na とブドウ糖は 1:1 で吸収されることから、ORS も同様の組成となる。我が国では経口補水液「 OS-1」(大塚製薬工場)が普及しており、ドラッグストアなどでも通年にわたり見かけることができる。スポーツドリンクの組成は?ORSは、上記のように世界保健機構(WHO)が提供する経口補水療法に基づき、組成が決まっている。一方で、スポーツドリンクには基準があまりない。売れなければ意味がないため、味を優先することが多く、組成については厳格に定められているわけではないのだ。「スポーツによる発汗により体内から失われた水分と電解質を効率よく補給できる」という機能性飲料ではあるが、実際には商品によって味や風味も異なり、補水効果もまちまちである。中にはアミノ酸やビタミンの含有量を強化して売り出しているものもあり、浸透圧が高くなっているものもある。塩味を抑えておいしくするためにNaイオン濃度を低くすると補水効果は下がり、甘くするためにブドウ糖濃度を高くするとカロリーが高くなり、胃・小腸から体内への移動が遅くなる。さらに、浸透圧が高くなるため小腸からの吸収も遅くなる。このようにスポーツドリンクには様々な種類があり、一概に言うことはできないが、ORSと比べるとやはり吸収の速度、効果の確実性という点では劣る。脱水症対策としてスポーツドリンクを飲む場合は、経口補水液に近い組成のものを探すのがいいだろう。経口補水液とスポーツドリンクの1番の違い両者の最大の違いは、塩分と糖分の量である。スポーツドリンクはORSに比べ、塩分が少なく糖分が多い。経口補水液「OS-1」には500ml当たり約1.5gの塩分が含まれているが、ポカリスエットは0.6gと半分以下である。普段スポーツする時など、補水目的で経口補水液を飲んでしまうと塩分の摂りすぎで高血圧などの原因になりかねない。つまり、塩分が多く含まれている経口補水液は、汗を大量にかき、脱水症状になっているときに飲むのが良い。そして、スポーツ飲料は、脱水症状ではない、日常での発汗やスポーツ時の水分補給など、脱水を予防する目的の時に飲むのが最適といえる。何を飲むようにすすめるのか?歯科医師としてこれからの時期に向けて、どのように患者指導を行うべきだろうか。普段の生活における水分補給は、水・お茶で十分であり、電解質・ミネラルは本来なら食事で取るべきである。梅昆布茶や味噌汁などもミネラル、塩分が豊富に含まれており熱中症の予防に有効と考えられる。歯科医師の立場で考えるとスポーツドリンクは体内から失われた水分・電解質の補給には役に立つが、市販の清涼飲料水と同様に、日常生活で頻繁に摂取することはおすすめできない。患者の中には、普段の生活の中で積極的に飲んだり、飲ませなければという誤った認識をしている方も多いため、注意を促す必要がある。しかしながら、その日の食事や家庭環境なども考慮すると、スポーツドリンクを飲むことで熱中症予防になっているケースもあり、一概にスポーツドリンクは飲むなと言うことはできないとも考えられる。歯科医師としては、スポーツドリンクの弊害など、基本的な指導は行いながら、ケースバイケースといった指導をするのが一番ではないだろうか。
482 TSUNAGU
2023年6月1日
虫歯にならない?”シュガーレス”食品のウソ・ホント

虫歯にならない?”シュガーレス”食品のウソ・ホント

近年、健康志向やダイエット志向が広がりを見せ、世の中には低カロリーやカロリーゼロ、シュガーレス、ノンシュガーなどをうたった商品があふれている。歯科で注目すべきはシュガーレスやノンシュガー、無糖、砂糖不使用などの表示であるが、明確な基準を理解できているだろうか。今回は、時代の流れにより基準が制定されてきた背景も交えながら考えていきたい。「ゼロ」表示のルールこのような表示が始まったときは法的には明確な基準はなく、各メーカー独自の判断でなされていたため、消費者の混乱を招く恐れがあった。そこでこれらを統一するため、平成7年、栄養改善法上に「栄養表示基準制度」が設けられた(平成14年の栄養改善法廃止に伴い、現在は健康増進法に移行している)。この規定により、「シュガーレス」「ノンシュガー」「無糖」「糖類ゼロ」などの糖類を含まない旨の表現は、食品100gもしくは飲料100mLに対し、単糖類または二糖類の糖類が0.5g未満であれば表示可能ということになった。糖類とは何を示すのかまず、糖類と糖質との違いについてである。糖類と糖質は言葉では少しの違いであるが、とても大きな違いがある。三大栄養素のひとつである炭水化物は糖質と食物繊維からできている。つまり、「糖質」とは「炭水化物から食物繊維を除いたもの」の総称であり、単糖類(ブドウ糖や果糖など)、二糖類(ショ糖、麦芽糖、乳糖など)、多糖類(オリゴ糖など)、糖アルコールなどがある。そして「糖類」というのは単糖類、二糖類の総称である。単糖類:その名のとおり、最小の単位の糖であり、消化せずにそのまま吸収できる。二糖類:乳糖などは最小単位の糖が2つ結合したもので、ブドウ糖(グルコース)とガラクトースからなる。またショ糖(スクロース)はブドウ糖(グルコース)とフルクトースからなる。糖類以外に含まれる甘味料単糖類、二糖類の糖類が規定の範囲を満たしている場合、何を入れて甘みを出したりしているのだろうか。現在使用されている甘味料は、大別すると、糖質系甘味料と非糖質系甘味料の2種類に分けられる。【糖質系甘味料】単糖類:ブドウ糖、果糖、異性化糖、転化糖二糖類:ショ糖、麦芽糖、乳糖、ラクチュロース、トレハロース、イソマルツロース、トレハルロースオリゴ糖:カップリングシュガー、フラクトオリゴ糖糖アルコール:ソルビトール、マンニトール、マルチトール、キシリトール、エリスリトール、還元水飴化学修飾系:スクラロース【非糖質系甘味料】配糖体系:ステビア、グリチルリチンアミノ酸系:アスパルテーム化学合成系:アセサルフェームK、サッカリンこのなかでオリゴ糖や糖アルコール、スクラロース、非糖質系甘味料には、口の中の細菌に利用されない、あるいはされにくい性質を持つものが多く、う蝕になりにくい機能を挙げたチューインガムやキャンディ、歯磨き剤にも使用されている。特に、糖アルコールの一種であるキシリトールは砂糖と同程度の甘さがあり、他のう蝕を起こす糖で補わずとも十分な甘みをつけられるためよく用いられている。 そのほかの表示「糖類を含まない旨」を示す表示でなくとも、通常よりも糖類を控えた商品も多くあるが、栄養表示基準によると以下のように決まりがある。そして、「甘さひかえめ」などは栄養表示基準にも基準はない。これは、甘さというのは味覚に関する表示であり、栄養表示を目的としたものではないためである。甘さなどは個人によっても異なり、糖類の量を示す指標にはならない。多くの場合は、そのメーカーの通常の製品よりも糖類の添加量を少なくしていることを表しているが、特定の基準はない。「甘さ控えめ」は「糖類控えめ」とは限らず、紛らわしい表現となる。ノンシュガー≠う蝕にならない上記のことより、ノンシュガーやシュガーレスなど糖類を含まない旨の表記があるからといって、カリエスリスクがないわけではない。キシリトール入りと大きく表示されているお菓子でも、商品によってはう蝕を起こすものも含まれているものもある。キシリトールそれ自身にう蝕を起こす能力がないだけであり、う蝕の発生を防ぐ作用があるわけではないため、一概にキシリトールが含まれている商品を患者にすすめてはならない。また、う蝕の誘発性という意味では含有成分からだけでは判断が難しい。成分は同じでも形状によって歯垢 pHへの影響は異なるため、成分表示だけでは「歯に安全」、「う蝕になりにくい」というような判断もできない。このことから歯にとって安全であるかどうかの判定は、成分でなく食品全体としてなされなくてはならない。日本で食品全体としてテストを行っているのは、厚生省が行っている特定保健用食品と、国際組織であるトゥースフレンドリー協会が認定した「歯に信頼マーク」付きの食品だけである。以上のことをよく理解した上で、患者への適切な指導を行っていかねばならない。
482 TSUNAGU
2022年12月27日
セラミック矯正の原罪:もうこれ以上、広めてはいけない

セラミック矯正の原罪:もうこれ以上、広めてはいけない

世間的にも認知されてきた”歯科的処置”であり、コマーシャルに用いる歯科医院も少なくない。美容外科的な分野として広まりつつあるが故に多くの議論を呼んでいる。あえて”処置”としたのは、言うまでもなくこれが”治療”であると認められないからだ。ほとんどの歯科医療従事者は同一の認識を持っていると思う。健全な歯質を切削し半ば強引に歯列を作り上げることで、審美的に求められるカタチを生み出している。再生できない器官に対して無闇な不可逆的処置を施すことは傷害にもなりかねない。この現況を憂いている方も多いのではないだろうか。今回はそのセラミック矯正というオフホワイトな処置について考察していこうと思う。ただ単に悪の所業であり傷害と同義なのであれば法律で禁止されているだろうが、実際に行なっている歯科医院、そしてそれを望んでいる患者がいる。この現実から見える真の問題点はどこにあるのだろうか。セラミック矯正とは?そもそも、セラミック矯正などという医学用語は存在しない。言及している論文もなければ教科書などもない。つまりアカデミックな用語ではなく、一般向けに作られた造語であり、その起源はセラミッククラウンと歯列矯正からきていると考えられる。ご存知だとは思うが、簡潔に処置の概要を説明するとすれば「セラミッククラウンで歯冠の歯軸を変える処置」ということになる。歯科医療従事者が聞けばただの支台歯形成であり補綴物がセラミックという話で、矯正の要素は1つもない。しかし一般的に見れば歯の傾斜が変わって歯列が変化している、つまり歯列矯正に当たるという感覚だろう。この専門家と一般人の間に生じる乖離が「セラミック矯正」という単語を生み出したと言える。歯科矯正分野ではないのにも関わらず、矯正と謳われていることが物議を醸し出していると考えられる。セラミック矯正の繁栄この単語のインパクトは大きい。実にキャッチーであり大衆の目を引くには絶大な効果が得られたであろう。実際に検索してみると約4,020,000件という膨大なウェブサイトが表示され、数多の歯科医院が診療メニューとして紹介している。そしてそのほとんどが有益な情報の紹介というスタンスで、批評的な記事などはあまり目につかない。とてつもない経済効果を生み出すファクターとなり得ているわけだ。検索結果の多くに「最短2回」など短期間で処置が終わるという謳い文句が添えられている。これが消費者に対して最も効果的なアピールポイントとなっているだろう。一般的な歯科矯正はマルチブラケット装置を用い、ワイヤーによる矯正力で歯を移動させることで不正咬合にアプローチしている。急激な歯の移動は当然障害をもたらし不可能に近いので、矯正治療にはおよそ2年ほどの期間を要する。その認識は一定数広まっており「矯正は時間がかかるものだ」と感じているだろう。それに加担して歯科治療というもの自体、何度も通院し長期にわたるというイメージが刷り込まれている。これは治療過程の必然であり、保険診療のルールであり、診療報酬と医院経営のバランスという問題がもたらしたものだ。致し方ないところではあるが消費者からすれば煩雑に変わりなく、歯科への漠然とした不満として存在している。「セラミック矯正」という魔力はその解消策として生まれてしまったのかもしれない。審美的に気になっている歯列を数回の通院、数日間で改善できると言われてしまえば、消費者が飛びつくのも理解できるだろう。ニーズに応える形で結果的に繁栄していったと考えられる。医療行為の定義前述の通り「セラミック矯正」は治療ではない。治療とは怪我や病気に手当することであり、歯軸が傾いていること自体が病気ではない。もちろん歯列不正によって引き起こされる咬合機能障害やカリエスリスクの増加は提言されているが、それに対する治療は歯科矯正が担っている。クラウンブリッジによる補綴はあくまでも欠損に対してそれを補う治療であり、歯を移動させることではない。視点を変えて、医科ではどうだろうか。審美的な要求に対して処置を施す美容整形というものが存在している。「美容整形」も学術用語ではなく、形成外科という分野の通称と言えるだろう。そして形成外科とは組織の異常や変形を形態的に正常にする分野であると定義されている。奇形や障害に対しての形成は治療と容易に判断できるが、形成外科分野では”整容的な不満足”に対してもその範疇と捕らえられているように受け取れる。だとすれば一重瞼がコンプレックスである人が受ける二重形成も立派な医療行為である。つまり元々ある技術を応用し病気でも怪我でもない組織を形成し変化させることが治療として確立している。前歯が突出していることや犬歯が転位していることがコンプレックスであるという主訴に対し、その歯を形成して位置を変えることが本当に”治療”ではないのか、少し考えさせられる。もちろん歯根歯軸と歯冠歯軸が一致していないことで生じる障害は予測でき、歯科矯正が望ましいことや健全歯質の切削を回避することは正しい。しかしQOLというのは人それぞれの価値観で存在し、どこに重点を置くかは個人の自由であろう。短期間で審美的なコンプレックスを解消することがQOLの向上に繋がるのであれば、それは治療になり得るのかもしれない。罪はその名称にある歯科医療従事者であれば直感的に「セラミック矯正」が罪であると考えやすいかもしれない。だがそれがもしセラミッククラウンによる審美的アプローチとして紹介されていれば、論点が変わる可能性がある。そのクラウンがどれだけ精密に作られているか、形成技術は優れているか、歯髄に対して適切なケアが施されているかなどアカデミックな議論になるだろう。クラウンブリッジ補綴は医療行為であり、求められる審美的要件を達成することに問題はない。実際の臨床でも歯を白くしたいという要求に対して同様の治療は日々行われているはずである。あくまでも矯正という単語を用いた名称に問題があるのではないだろうか。無闇に健全歯質を切削することは肯定できないということを重ねて伝えたい。それは修復や補綴でも同じで「セラミック矯正」にだけ特筆することではない。ただその行為が不満を抱える人の気持ちを晴れやかにするものであれば、一概に否定するのではなくより追求し議論を重ねることが必要だと考えている。これは臨床医学だけの話ではなく社会学的な観点からの考察も行われるべきだと感じ、問題提起として執筆した。医療従事者は何よりも患者に寄り添うことが求められていることを忘れてはいけないだろう。歯科セミナーなら「1D(ワンディー)」で!日本最大級の歯科医療メディア「1D」では、診療に役立つオンラインセミナーを多数開催中。もっと知りたい臨床トピックから超ニッチな学術トピックまで、参加したいセミナーが見つかります。下記ボタンから、開催中のセミナーを見てみましょう!開催セミナーを見てみる参考文献日本形成外科学会HP<URL>日本医師会「ヒポクラテスと医の倫理」<URL>
ユースケ イシカワ
2020年5月3日
フッ化物でインプラントは腐食する?インプラント患者へのフッ化物応用

フッ化物でインプラントは腐食する?インプラント患者へのフッ化物応用

天然歯とインプラントが混在している患者にフッ化物入りのものを使用するかどうか悩むことはないだろうか。フッ化物の効果はみなさんもご存知の通りである。しかし、インプラントで使用されているチタンはフッ化物で腐食する可能性があることが示唆されている。インプラントのチタン腐食のリスクを回避するのか、天然歯の保護を優先するのかは難しい問題である。そこで今回は【インプラントが入っている患者にフッ化物を使用してもいいのかどうか】を検討していく。フッ化物が天然歯に与える影響は大きい現在わが国で行われているフッ化物を用いたう蝕予防法にはフッ化物歯面塗布法、フッ化物洗口法およびフッ化物配合歯磨剤の利用があげられる。フッ化物配合歯磨剤は家庭や職場でのセルフケアによるう蝕予防手段として、欧米の先進諸国では1970~1980年代にかけて急速に普及し、小児う蝕の急激な減少をもたらしたことで高く評価されている。フッ化物がむし歯予防に有効な理由は大きく分けて3つある。①歯質の強化②再石灰化の促進 ③酸の産生を抑える 欧米各国でのフッ化物配合歯磨剤市場占有率(シェア)は90%以上で、それらの国々でのう蝕減少への貢献度はきわめて高いといえる。フッ化物を利用することによってむし歯を効果的に減らすことが可能である。以上のことを考えると、フッ化物を利用して天然歯へのリスクを軽減させたいところである。フッ化物によるチタンインプラント腐食の可能性ペーストに配合されている成分が中性の市販ペースト(フッ素濃度:400~980ppm,pH=6.8~7.4)ではチタンを腐食しないが、フッ素濃度9000ppm,pH=3.7およびフッ素濃度900 ppm,pH =4.0はチタンを腐食することが示されている。酸性度(pH)の低いフッ化物混入ペーストはチタンの耐食性に悪影響を及ぼすことが明らかとなっているため、PMTC用ペーストをチタン製修復物に使用するにあたってはこの点に注意する必要がある。・フッ化物によるチタンインプラント腐食不良なプラークコントロールにともない、インプラント周囲に繁殖した細菌が酸を産生し、インプラント周囲のpHが低下、水素イオンが多い状況になる。このような状況で高濃度フッ化物を使用すると、フッ素イオンが遊離し、口腔内の水素イオンと結合する。するとチタン腐食性の高いフッ化水素酸が生成される。口腔内ではフッ素濃度が低くなるが、高濃度フッ化物は要注意しかしながら、口腔内においては、唾液によって中和・希釈されることにより、残留フッ素濃度はかなり下がり、プラーク中においてはわずか2ppm以下へと減少するとも報告されている。臨床の現場においてはそこまで過敏に反応する必要はないものと考えられる。フッ化物が天然歯に対して良好な影響を与えることは明らかであるが、9000ppm以上の高濃度フッ化物歯面塗布剤では、唾液による希釈や中和を経たとしても、チタン表面に対して影響を与える可能性は否定できない。リスクを考えて選択する必要がある以上のことから、インプラントが入っている患者にはフッ化物の使用を注意深く選択していかなければならない。もし、天然歯とインプラントが混在したカリエスリスクが高い患者なのだとしたら、インプラント部にワセリンを塗布して保護するなど対応する。フッ素濃度が低いものだとしても、高齢者や薬物による口腔乾燥症など唾液の分泌量が少ない患者には要注意である。状況に応じて、どこにリスクをとるのか考えていく必要がある。歯科セミナーなら「1D(ワンディー)」で!日本最大級の歯科医療メディア「1D」では、診療に役立つオンラインセミナーを多数開催中。もっと知りたい臨床トピックから超ニッチな学術トピックまで、参加したいセミナーが見つかります。下記ボタンから、開催中のセミナーを見てみましょう!開催セミナーを見てみる参考文献1.『う蝕予防の実際 フッ化物局所応用実施マニュアル』日本口腔衛生学会フッ化物応用委員会 編.20172.『歯科衛生士のためのペリオ・インプラント重要12キーワード ベスト240論文』岩野 義弘,他.20173.『フッ化物入りペーストがチタンの耐食性に与える影響』日口腔インプラント会誌,木村英一郎.20144.『フッ化物歯面塗布法に関する研究 ―塗布要領の再検討 第II報 ―*』西田 晃子,他.19945.『フッ素存在下での生体用チタンおよびチタン合金の腐食』中川 雅晴.20046.『Influence of fluoride content and pH on corrosion and tribocorrosion behaviour of Ti13Nb13Zr alloy in oral environment』I.GolvanoaI.et al.20157.『Fluoride in plaque following use of dentifrices containing sodium monofluorophosphate.』Duckworth RM1,et al.1989 
本吉 ひとみ
2020年2月23日

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レジン修復 (238)

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