フッ化物でインプラントは腐食する?インプラント患者へのフッ化物応用

文・構成:本吉 ひとみ | 投稿日: 2020年02月23日
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天然歯とインプラントが混在している患者にフッ化物入りのものを使用するかどうか悩むことはないだろうか。フッ化物の効果はみなさんもご存知の通りである。しかし、インプラントで使用されているチタンはフッ化物で腐食する可能性があることが示唆されている。

インプラントのチタン腐食のリスクを回避するのか、天然歯の保護を優先するのかは難しい問題である。そこで今回は【インプラントが入っている患者にフッ化物を使用してもいいのかどうか】を検討していく。

フッ化物が天然歯に与える影響は大きい

現在わが国で行われているフッ化物を用いたう蝕予防法にはフッ化物歯面塗布法、フッ化物洗口法およびフッ化物配合歯磨剤の利用があげられる。

フッ化物配合歯磨剤は家庭や職場でのセルフケアによるう蝕予防手段として、欧米の先進諸国では1970~1980年代にかけて急速に普及し、小児う蝕の急激な減少をもたらしたことで高く評価されている。

フッ化物がむし歯予防に有効な理由は大きく分けて3つある。
①歯質の強化
②再石灰化の促進 
③酸の産生を抑える 

欧米各国でのフッ化物配合歯磨剤市場占有率(シェア)は90%以上で、それらの国々でのう蝕減少への貢献度はきわめて高いといえる。フッ化物を利用することによってむし歯を効果的に減らすことが可能である。

以上のことを考えると、フッ化物を利用して天然歯へのリスクを軽減させたいところである。

フッ化物によるチタンインプラント腐食の可能性

ペーストに配合されている成分が中性の市販ペースト(フッ素濃度:400~980ppm,pH=6.8~7.4)ではチタンを腐食しないが、フッ素濃度9000ppm,pH=3.7およびフッ素濃度900 ppm,pH =4.0はチタンを腐食することが示されている。

酸性度(pH)の低いフッ化物混入ペーストはチタンの耐食性に悪影響を及ぼすことが明らかとなっているため、PMTC用ペーストをチタン製修復物に使用するにあたってはこの点に注意する必要がある。

・フッ化物によるチタンインプラント腐食
不良なプラークコントロールにともない、インプラント周囲に繁殖した細菌が酸を産生し、インプラント周囲のpHが低下、水素イオンが多い状況になる。

このような状況で高濃度フッ化物を使用すると、フッ素イオンが遊離し、口腔内の水素イオンと結合する。するとチタン腐食性の高いフッ化水素酸が生成される。

口腔内ではフッ素濃度が低くなるが、高濃度フッ化物は要注意

しかしながら、口腔内においては、唾液によって中和・希釈されることにより、残留フッ素濃度はかなり下がり、プラーク中においてはわずか2ppm以下へと減少するとも報告されている。

臨床の現場においてはそこまで過敏に反応する必要はないものと考えられる。

フッ化物が天然歯に対して良好な影響を与えることは明らかであるが、9000ppm以上の高濃度フッ化物歯面塗布剤では、唾液による希釈や中和を経たとしても、チタン表面に対して影響を与える可能性は否定できない。

リスクを考えて選択する必要がある

以上のことから、インプラントが入っている患者にはフッ化物の使用を注意深く選択していかなければならない。

もし、天然歯とインプラントが混在したカリエスリスクが高い患者なのだとしたら、インプラント部にワセリンを塗布して保護するなど対応する。

フッ素濃度が低いものだとしても、高齢者や薬物による口腔乾燥症など唾液の分泌量が少ない患者には要注意である。状況に応じて、どこにリスクをとるのか考えていく必要がある。

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参考文献

1.『う蝕予防の実際 フッ化物局所応用実施マニュアル』日本口腔衛生学会フッ化物応用委員会 編.2017
2.『歯科衛生士のためのペリオ・インプラント重要12キーワード ベスト240論文』岩野 義弘,他.2017
3.『フッ化物入りペーストがチタンの耐食性に与える影響』日口腔インプラント会誌,木村英一郎.2014
4.『フッ化物歯面塗布法に関する研究 ―塗布要領の再検討 第II報 ―*』西田 晃子,他.1994
5.『フッ素存在下での生体用チタンおよびチタン合金の腐食』中川 雅晴.2004
6.『Influence of fluoride content and pH on corrosion and tribocorrosion behaviour of Ti13Nb13Zr alloy in oral environment』I.GolvanoaI.et al.2015
7.『Fluoride in plaque following use of dentifrices containing sodium monofluorophosphate.』Duckworth RM1,et al.1989 
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