口唇口蓋裂児の精神運動発達は「健常児に追いついていく」ことが明らかに
口唇口蓋裂児の精神運動発達に関する新知見を、東北大学大学院歯学研究科を中心とする研究チームが明らかにした。本研究は2022年2月15日付で学術誌・European Journal of Oral Sciencesに掲載されている。口唇口蓋裂は、最も頻度の高い先天異常のひとつである。しかし、「口唇口蓋裂が小児の成長発育にどのように影響するか」について経時的に追跡した研究はなされておらず、結論が出ていなかった。口唇口蓋裂児では精神運動発達が遅れていた研究チームは、環境省が実施している小児の健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)のデータを用いて、口唇口蓋裂を伴う小児と先天異常を伴わない小児の精神運動発達の比較を行った。エコチル調査は、10万組の親子を対象とした大規模かつ長期にわたる出生コホート調査である。また今回の研究における小児の精神運動発達の評価には、日本語版Ages and Stages Questionnaire 第3版(J-ASQ-3)を用いている。検証結果によれば、対象となった約9.2万名の小児のうち195名に口唇口蓋裂が認められ、話す・聞くといったコミュニケーションや、立つ・歩くなどの粗大運動、手順を考えて行動するなどの問題解決、他人とのやり取りに関する行動などの個人・社会において、口唇口蓋裂を伴う小児が低い点数を示していた。つまり、口唇口蓋裂を伴う小児の発達が遅れていたことが明らかになった。特にコミュニケーションの面において、口唇口蓋裂を伴う小児と先天異常を伴わない小児では、大きな差異が認められた。しかし発達の遅れは成長とともに解消していたしかし、口唇口蓋裂を伴う小児と先天異常を伴わない小児との間におけるコミュニケーションや粗大運動に関する発達の差異は、経時的な成長とともに、少なくなっていく傾向にあったという。つまり、口唇口蓋裂を伴う小児の発達が、先天異常を伴わない小児の発達に追いついていったということだ。解消の背景には歯科治療などの臨床的介入がある?なぜ、口唇口蓋裂を伴う小児の遅れていた発達が、先天異常を伴わない小児のそれに追いついていくのだろうか。それは、口唇口蓋裂児に実施される臨床的介入(外科手術や言語療法、歯科治療など)による効果が考えられると、研究チームは指摘している。ただ、本当に臨床的介入によって口唇口蓋裂児の発達が追いついていったかどうかについては、今回のデータでは確証を持てないため、「今後も更なる見当が必要」である研究チームは語っている。更なる研究の進展が待たれるところだ。参考文献Shinobu Tsuchiya, Masahiro Tsuchiya, Haruki Momma, Jun Aida, Ryoichi Nagatomi, Nobuo Yaegashi, Takahiro Arima, Kaoru Igarashi, Neurodevelopmental trajectories in children with cleft lip and palate: A longitudinal study based on the Japan Environment and Children’s Study, European Journal of Oral Sciences, DOI: 10.1111/eos.12857.東北大学病院 東北大学大学院歯学研究科 エコチル調査宮城ユニットセンター『発達は追いついていく 口唇口蓋裂児の精神運動発達に関する縦断研究』東北大学プレスリリース, 2022年3月15日.