矯正治療の期間短縮へ。歯槽骨に「微小の穴」で歯の移動が早くなる
矯正治療には、長い年月がかかる。矯正治療中は、患者はQOLの低下は避けられない。歯科医療者側にとっても、患者側にとっても、矯正治療の治療期間の短縮は大きな課題であった。近年では矯正治療の材料が改良されることによる治療期間短縮への努力がなされているが、さらなる治療期間の短縮のためには、生体側をコントロールすることが必要である。東北大学大学院歯学研究科(顎口腔矯正学分野)の研究チームは、「歯槽骨に微小の穴を開ける」という方法により、歯の移動を早めることができることを見出した。この成果により、歯の移動を加速させ矯正治療の期間短縮への可能性が開かれたと言える。本研究の成果は、2022年3月10日にInternational Journal of Molecular Sciencesに掲載されている。マウスによる実験で歯の移動促進を確認炎症を誘発するサイトカインのひとつであるTNF-αは、矯正治療における歯の移動時に破骨細胞を誘導し、歯の移動を促進している。今回の研究において、研究チームはこの現象に着目した。マウスによる実験で、上顎左側第一大臼歯の近心および口蓋側の歯槽骨に、直径0.5mmのスチールバーでMicro-Osteoperforationsを行い、同歯の近心移動を12日間行った。その結果、マウスの矯正学的な歯の移動モデルの歯槽骨に微小な穴を開けることで、歯の移動が促進されることが発見されたという。歯の移動が加速する機序は?その機序としては、炎症性サイトカインであるTNF-αが増加し、増加したTNF-αは破骨細胞を増加させ、骨吸収が増加することで歯の移動が促進される、というものである。さらに研究チームは、骨髄移植を利用して破骨細胞前駆細胞はドナー由来、骨芽細胞などの間質系細胞はレシピエント由来の野生型マウスとTNFレセプター遺伝子欠損マウスのキメラマウスを作成し、TNF-αが間質系細胞のRANKL(破骨細胞の形成に必須のサイトカイン)の発現を増加させ、破骨細胞の形成を増加させることにより、歯の移動が促進されることも見出したという。生体側でコントロールできる変数の発見今回の研究により、Micro-Osteoperforationsは歯の移動を加速させ、矯正治療の治療期間短縮に寄与することが示唆された。実臨床に活かされるのはまだ先になりそうだが、矯正治療の材料側だけでなく生体側でも治療期間短縮に寄与する変数が発見されたことは、非常に大きな成果と言えるだろう。参考文献 Ria Kinjo, Hideki Kitaura, Saika Ogawa, Fumitoshi Ohori, Takahiro Noguchi, Aseel Marahleh, Yasuhiko Nara, Adya Pramusita, Jinghan Ma, Kayoko Kanou and Itaru Mizoguchi, Micro-Osteoperforations induce TNF-α expression and accelerate orthodontictooth movement via TNF-α-responsive stromal cells, International Journal of Molecular Sciences, DOI: 10.3390/ijms23062968, 2022.03.10.