「歯科医療 × オンライン診療」の夜明け:その展望と課題とは?
オンライン診療を行う上で忘れてはならない前提として、①オンライン診療より対面診療の方が診療の質が高いこと②オンライン診療は外来診療や在宅診療に置き換わるものではなく、外来診療や在宅診療と組み合わせて行うものであることが挙げられます。つまり、オンライン診療はあくまで対面診療を補完するものであり、“何でもかんでもオンライン診療にすればいい”というものではありませんし、オンライン診療のみで診療が完結することは稀です。オンライン診療は「予防」との相性が良い近年の歯科医療現場は“削って治す“から“予防”の時代に変化しており、歯科医院では日常的に蝕や歯周病についての情報共有やTBIをはじめとした指導が行われています。これらは全てオンラインで行うことが可能です。自宅でビデオ通話などを通して行うことも可能ですし、自宅でのブラッシング状況をアプリで把握し、歯科医院と連携して評価する(ブラッシング状況の遠隔見守り)システムなどを組み合わせ、UXの向上を図ることも可能です。「歯医者が怖い」もオンライン診療で克服歯科恐怖症患者の多くは、不安や恐怖により歯科受診の機会が少なく、う蝕や歯周病に罹患していても放置される傾向があります。歯科恐怖症患者に対しオンライン診療を行ったところ「自宅でリラックスした状態で相談ができた」「絶対に触られないという安心感から平常心で質問ができた」という回答がありました。歯科治療時の恐怖体験は、歯科医院特有の匂いや音などにより誘発されることがありますが、オンライン診療を応用することで、恐怖心が軽減される可能性があります。さらに、歯科恐怖症は小児期の良好な治療体験によって予防できる可能性があるとされています(*1)。歯科医院に恐怖心を感じる小児の歯科相談などにも応用が可能です。これらは対面診療よりオンライン診療の方が適している事例ですが、そのほかにも通常の外来診療ではわからない家庭での食事風景や生活環境などを把握することも可能です。「対面診療をオンライン診療に切り替える」のではなく、オンライン診療を併用することで、より良い外来診療が可能になります。対面診療に劣らない領域もある口腔顔面痛に対する確立された診断方法や治療法はなく(*2)、痛みは慢性化する傾向にあり治療には長期間を要することが多いです。さらに痛みの長期化に伴う心理的ストレスにより通院が困難になり、また治療に対するモチベーションの維持を含めたマネジメントにはしばしば難渋します。口腔顔面痛治療では精神心理的アプローチとして、認知行動療法や動機付け面接が用いられることがあります(*3)。精神科の外来診療と同様にオンライン診療は有効と考えられます。また、Müllerらは頭痛患者に対し通常の対面診療とオンラインでの診療を比較し、オンライン診療の対面診療に劣らない治療効果を報告しています(*4)。摂食・嚥下リハビリテーションでも活用進む摂食・嚥下リハビリテーションの分野でオンライン診療を応用することができます。通常の訪問歯科診療では、介護施設入居者の食事風景を観察し、食形態や摂食姿勢の指導、嚥下の評価などを行っています。これらの観察や指導はビデオ通話を通してオンラインで観察することが可能です。また、通常口腔ケアは施設スタッフや訪問看護師によって行われる機会が多いですが、介護職員の口腔ケア指導や、現場の心理的負担を軽減させる目的でD to P with Nオンライン診療(※)が行われています。実際の方法としては、歯科の訪問診療前に介護施設のスタッフ(看護師や介護福祉士など)とビデオ通話などを用いて施設の情報を共有することで、訪問前に状況が把握でき診療をスムーズに行うことができます。夜間に急患対応をするケースでは、オンラインで緊急性の有無を判断し、医師が到着するまでの対応を現場スタッフに指示することができます。さらに、現場を訪問してみないとわからなかった急患対応の状況が、オンライン診療を用いることで肉眼的に状況把握でき、必要機材や治療法を現場に到着する前に選択したり、施設側に対応をお願いすることもできます。(※Doctor,Dentist to Patients with Nurse : 患者が看護師といる場合のオンライン診療)オンライン診療の課題とは?介護施設や在宅におけるオンライン診療は便利ですが課題もあります。例えば、介護施設や在宅で訪問看護師や介護福祉士と直接口腔内を観察しながらの口腔ケアや、状況に合わせてアドバイスをすることは容易ですが、オンラインでの情報共有には限界があります。対面でのコミュニケーションに比べてビデオ通話での指導が困難である原因として、ビデオ通話に慣れていないスタッフが多いことや、ビデオ通話では医師がどこを見ているのか、どこを映して欲しいのかがわかりづらいことがあげられます。対面での口腔ケア指導では、口腔内をライトで照らしながら、また局所を指差し確認しながら一緒に観察できますが、オンラインではよりわかりやすい円滑なコミュニケーションや画像が不可欠です。オンライン診療のための口腔用カメラやビデオ通話アプリなども開発され、医師が観察したい部位にオンラインで印が付けられたり、補助的にテキストを入力することでコミュニケーションを円滑にし、誤解を生まないように工夫することが必要です。歯科セミナーなら「1D(ワンディー)」で!日本最大級の歯科医療メディア「1D」では、診療に役立つオンラインセミナーを多数開催中。もっと知りたい臨床トピックから超ニッチな学術トピックまで、参加したいセミナーが見つかります。下記ボタンから、開催中のセミナーを見てみましょう!開催セミナーを見てみる参考文献Domoto,P et al. Result of a dentalfear surveyin Japan: implicationsfor dentalpublic health in Asia, CommunityDent. Oral Epidemiol., 16: 199-201, 1988. Naganawa T et al. Influence of topical application of capsaicin, menthol and local anesthetics on intraoral somatosensory sensitivity in healthy subjects: temporal and spatial aspects. Exp Brain Res. Apr;233(4):1189-99,2015.Naganawa T et al. Effect of motivational interviewing on medication non-adherence for patients with chronic intraoral pain. Journal of Oral and Maxillofacial Surgery, Medicine and Pathology. 28(2)165-169,2016.Müller KI et al. Telemedicine in the management of non-acute headaches: A prospective, open-labelled non-inferiority, randomised clinical trial. Cephalalgia. Aug;37(9):855-863,2017.Yoneyama T et al. Oral care and pneumonia. Oral Care Working Group. Lancet. Aug 7;354(9177):515, 1999.
Takuya Naganawa
2020年7月14日