アライナー矯正の光と闇。クリンチェックに隠された「欠陥」とは?
歯科医療者になると、無意識に人の口元を見がちになる。テレビや動画で芸能人を見ると「あ、この人クラウンだ」とか考えてしまうだろう。最近では「あ、この人矯正してる」という感想が多くなったんじゃないだろうか。もっと言えば「アタッチメント*ついてる」「この人もアライナーやってんだ」なんて具合になっている気がする。目に見えて勢いが止まらないアライナー矯正、歯科医療者なら賛否分かれる色々な意見を耳にしていると思う。今回はその問題点の方に焦点を当てて、素人が手を出してミスる以外に、アライナー側にも落ち度があるという見解を紹介する。なお1Dでは、10月にアライナー矯正のベーシック臨床に特化いたオンラインコースを開講する。興味のある先生は、ぜひ下記ボタンよりコース詳細をご覧いただきたい。コース詳細を見るアライナーの特徴と問題点ご存知の通りアライナーはマウスピース型の装置なので、歯冠を覆って移動させる。この構造によって出てきてしまう問題が「同じ変位量でも歯冠形態によって矯正力に差が生じる」ところだ。例えば歯の形が富士山型でアンダーカットがないとアライナーが外れやすく力が逃げる。逆に壺型でアンダーカットが大きければより強く力がかかり、同じ歯列にあれば矯正力が安定しない。またアタッチメントやアライナー自体の形状はメーカー各社で試行錯誤してオリジナルの形にしているが、力学的な効果に関する検証結果あ公表されていない。これらの形状は矯正力に大きく関わると考えられているので、やってみなきゃわからない状態も問題とされている。おまかせクリンチェックの落とし穴アライナーの醍醐味といえばクリンチェック*(STLデータを用いたソフトウェア上でのシミュレーション)で、自分で細かく計測したり診断したりセットアップしなくてもいいシステムだ。この便利な機能に甘んじて、出された計画通り動いてキレイに並ぶと勘違いしてしまうことが”失敗症例”を生み出している。一見再現性が高そうなシミュレーションには、落とし穴が隠されている。歯根の形状・位置、歯軸の傾きは考慮されない口腔内スキャナーを使用したとしても、歯根の形状や位置はわからず、正確な歯軸は再現できない。特に抜歯症例で大きな誤差が生じやすく、欠損部に思ったより動いてしまい気づいたら開咬になっていることが多々ある。CBCTを使って歯根まで含むシミュレーションをしたとしても、移動時の力学特性は反映されてないため、歯体移動しているように見えて傾斜移動しかしていないことがほとんどだ。歯周組織の状態も無視歯根の話と同様に、歯槽骨の状態や皮質骨の厚さ、代謝活性など歯周組織の状態についても全く反映されない。そのためクリンチェック上では可能でも実際には骨が無い位置まで移動する計画になってしまうこともある。患者は言うことを聞かないクリンチェックは患者が指定された装着時間、適切なフィットを維持して正しいステップを踏んだ想定で表示される。生身の人間がその精度を保つのはほぼ不可能なので、どこかで歪みが生じる。つまり最初のクリンチェックを鵜呑みにし修正を加えることなく進めていくと、ズレが徐々に大きくなり最終的に想定されていたゴールからかけ離れていく。すべては術者の腕次第クリンチェックには欠陥とも言うべき、現状未達の部分がある。しかしクリンチェックが悪いのではなく、大した矯正の知識も備えず理論値として出されたシミュレーションを手放しで利用する術者に問題があるだろう。矯正専門医がその点を理解しクリンチェックを細かく修正した上で、しっかりモニタリングをしながら進めていくにも、ほぼどこかでアライナーの修正や追加が必要になるという。この徹底ぶりでようやくゴールできるのがアライナーということを忘れてはいけない。いくらテクノロジーが進化したとしても、生き物を扱う以上は完璧なマネジメントは不可能で、だからこそ歯科医師の腕が試されている。アライナーのベーシックオンラインコース誕生1Dでは、2022年10月からアライナー矯正のベーシックに特化したオンラインコース(講座タイトル:<全5回>GPのための「神」アライナー講座)を開講します。全5回にわたり、Invisalignダイヤモンドプロバイダー・日本矯正歯科学会専門医/認定医の岩田直晃先生はアライナー矯正の基礎知識から実際の治療のポイント、個別の症例相談まで、ゼロから丁寧にレクチャーします。アライナーを習得したいと考えているGPの先生方は、ぜひ参加をご検討ください。コース詳細を見る*Invisalign®︎が使用する用語が一般的に広く認知されているため、アライナーにおけるブラケットの役割をするものとして「アタッチメント」、コンピューター・シミュレーションとして「クリンチェック」を用いている。参考文献槇 宏太郎, 他, アライナー矯正の光と影, 特集 矯正歯科材料・装置 : アップデート, 日本歯科理工学会 編 41 (1), 1-6, 2022-01