一歩間違えば大惨事に…。乳幼児の口腔内から見つかった”異物”たち
乳幼児は好奇心旺盛で、手あたり次第様々なものを手に取っては口腔内に運ぶ習性がある。そのため、乳幼児が身の回りのものを誤飲してしまったり、口腔内を傷付けたりすることがないように、周りの大人は細心の注意を払う必要がある。しかしいくら気を配っていても、目を離した隙に何をしでかすか分からないのが子どもの怖さだ。今回は、乳幼児が身の回りのものを口腔内に運び、口腔内にそのまま残存してしまった 「口腔内組織外異物」の症例についての報告について解説する。歯に挟まっていたのは…あいち小児保健医療総合センター歯科口腔外科の報告によると、開設以来の6年間に受診した、傷害を伴わない「口腔内組織外異物」の症例は4例だったとのこと。早速実際の症例を紹介していこう。7か月の女児のこの症例、右側下顎乳中切歯に何が挟まっているかお分かりになるだろうか?除去した異物の写真がこちら。実は「アイロンビーズ」と呼ばれる、パイプ状のビーズを専用プレートの上で並べて絵柄を作り、アイロンなどの熱で溶かして接着してモチーフを作る玩具が挟まっていた。この症例では、異物の脱落に伴う誤飲・誤嚥の可能性を考慮し、舌側にバキュームを置いたうえ、歯を脱臼させないように注意しながら、探針で引き上げるようして除去された。続いては2歳8か月の男児の症例。歯間部に何かが嵌入していることが分かる。除去された異物の写真は以下の通り。布団カバーのファスナーのいわゆるスライダー部を咬んで遊んでいるうち、歯間に陥入してしまい、本人および母親では除去できず、布団の自重による痛みを訴えたため、スライダー周囲を裁断した上で受診した。このファスナーのスライダー部は、隣在歯に手指を添えたうえで、鉗子にてスライダー部を把持、歯軸の長軸方向へやや回転を加えながら、歯牙脱臼に注意して除去されるに至った。先程のアイロンビーズは何となく歯に挟まりそうだと想像出来た方も多いかもしれないが、まさか布団のファスナーが歯に挟まるとは思いもよらなかった方が多いのではないだろうか。口腔内組織外異物の恐ろしさ「歯に物が挟まっただけでしょ?」こうお考えになる方も多いかもしれない。しかしながら、口腔内組織外異物の発見の遅れや対応の誤りによって、誤飲・誤嚥といった事故へ進展する可能性があったり、長期経過を辿った場合は歯や歯周組織の損傷を引き起こす可能性があり、細心の注意が求められる。また、先程紹介したアイロンビーズが歯に挟まった症例では「異物が挟まっている」と保護者は認識できておらず、歯に何か異変を感じて受診した。このケースのように保護者が異物だと認識が出来ないことは多く、直接事故の場面を目撃していない場合には身に覚えがなく診断に苦慮する症例が多いそうだ。乳幼児の誤飲・誤嚥を防ぐには?ある報告によると、乳幼児の誤飲の多くが家庭内で発生しており、集団保育施設ではほとんど認められなかったそうだ。この理由として集団保育施設では、誤飲の原因となるものを子どもの手が届かない場所に収納・管理することが徹底されているためと考察がなされている。保護者に対して、小児の事故の現状を伝え、誤飲の原因となりうる物を可能な限り子どもの手の届く範囲から排除するよう指導することが、我々歯科医療者の責務となるだろう。参考文献1. 大渕 泰彦ら, 乳幼児における傷害を伴わなかった口腔内組織外異物の4例, 小児口腔外科 21:77-81, 2011