歯科治療時の抗菌薬濫用がパーキンソン病を引き起こす
近年、抗菌薬の過剰処方が問題になっている。耐性菌の出現のみならず、副作用まで含めると抗菌薬は薬疹、アナフィラキシーショック、肝障害、難聴、菌交代現象といった多岐にわたる問題がある。この他にも、抗菌薬の過剰投与がパーキンソン病のリスクを上げるという論文が、2019年にヘルシンキ大学の研究を元に発表された。そもそもパーキンソン病とは?まずは、パーキンソン病をおさらいしておこう。パーキンソン病は、振戦(ふるえ)、動作緩慢、筋固縮、姿勢保持障害(転びやすくなる)の4大症状を特徴とする運動障害が主徴の疾患である。主に50歳以上で発症し、社会の高齢化に伴い国内での罹患者は増えている。歯科診療に関わることとしては、嚥下障害や流涎症、デンタルチェアー上でコップでの含嗽がうまく出来ないことや、治療薬レボドパの副作用でオーラルディスキネジア(下顎や舌の不随意運動)などの問題が挙げられる。パーキンソン病の原因は、中脳の黒質ドパミン神経細胞が減少することである。一見すると抗菌薬の過剰投与とは何も関係がないように見えるが、なぜ抗菌薬の過剰投与でパーキンソン病のリスクは上がるのだろうか。抗菌薬服用による「ある変化」がリスクを上げる同研究では、パーキンソン病患者13,976人と、パーキンソン病に罹患していない患者40,697人の過去の経口投与の抗菌薬の購買歴を比較している。すると、抗菌薬の過剰投与があった患者では、投与された10〜15年後にパーキンソン病に罹患するリスクが上がることがわかったのだ。この理由として挙げられるのは、抗菌薬を経口で服用することによる「腸内細菌叢の変化」である。実は、以前から理由は定かではなかったが、パーキンソン病の患者の腸内細菌叢は正常ではないことが知られていた。パーキンソン病自体は筋固縮、姿勢反射障害、動作緩慢といった筋の運動の症状がメインではあるが、実際の原因は腸内細菌叢の変化なのではないかという仮説もこの研究では示唆されている。名古屋大学医学部神経生理研究室によると、パーキンソン病の患者では運動障害が出る動きが悪くなる約20年前から便秘の症状があることや、腸から脳に到達する迷走神経を切除するとパーキンソン病になりにくくなること、潰瘍性大腸炎患者はパーキンソン病になりやすいことや虫垂を切除するとパーキンソン病になりにくくなることといった、様々な腸とパーキンソン病の関係を示唆する研究があることが報告されている。決定的な腸とパーキンソン病の繋がりはまだ見つかっていないようだが、パーキンソン病の大本の原因は腸内細菌叢の変化であるとされる日が近いのかもしれない。# 歯科セミナーなら「1D(ワンディー)」で!日本最大級の歯科医療メディア「1D」では、診療に役立つオンラインセミナーを多数開催中。もっと知りたい臨床トピックから超ニッチな学術トピックまで、参加したいセミナーが見つかります。下記ボタンから、開催中のセミナーを見てみましょう!開催セミナーを見てみる参考文献Researchers link increased use of antibiotics to Parkinson’s disease, Dental Tribune,<URL>,2020年1月15日アクセスMertsalmi, T. H., Pekkonen, E., & Scheperjans, F. (2019). Antibiotic exposure and risk of Parkinson's disease in Finland: A nationwide case‐control study. Movement Disorders.パーキンソン病は腸から始まるのです, 名古屋大学医学部神経生理研究室, <URL>, 2020年1月19日アクセス1D用語集「オーラルディスキネジア」,<URL>