今さら聞けない「ペースメーカー患者の歯科治療」
歯科医療者のみなさんは、ペースメーカーの実態をどこまでご存知だろうか。ペースメーカー植え込み患者は、毎年約4万人増えており、装着者数は約40万人にのぼる(日本不整脈デバイス工業会調べ)。またその患者の9割は65歳以上、平均年齢は74歳と多くの高齢者がペースメーカーを使用している(日本メドトロニック調べ)。この超高齢化社会の日本において、ペースメーカーの需要はますます増え、歯科医院でもペースメーカー植え込み患者の来院数は今後も増えていくだろう。そこで今回は、意外と知られていない「歯科治療におけるペースメーカー植え込み患者に対する禁忌の医療機器・避けるべき医療機器」についてまとめたいと思う。ペースメーカーとは?ペースメーカーは房室ブロックや洞不全症候群、徐脈性心房細動など徐脈性不整脈に対する治療であるペーシング治療に用いられる。ペースメーカーは徐脈が発生した時や身体の状況に対しより多くの拍動が必要になった時に心臓の拍動を管理するものだ。ペースメーカーは主に電子回路と電池で動いており、小さなコンピュータとなっている。そして外部からの電波でペースメーカーの本体と交信できる、プログラマという装置があり、記録やモニタリングすることができる。ペースメーカーの多くは左鎖骨下に植え込まれており、その他、右鎖骨下や腹部に植え込まれていることもある。歯科治療におけるペースメーカーペースメーカーは体外からの電磁波や磁力の影響を受けた時、1秒ごとに心臓を拍動させる「固定モード」に切り替えることができる。固定モードの時、患者の身体状態と関係なく拍動するため、患者は動機を感じることが多い。ここで患者のペースメーカーに影響を与えないため、歯科治療において避けるべき医療機器、使用できない医療機器をご紹介する。【問題なく使用できる医療機器】エンジン、タービン、電動ブラシ、音波ブラシ、X線、デンタルユニット【電源部を患者から話せば使用できる医療機器】レーザーメス、可視光線照射器【できるだけ使用を避けるべき医療機器】ルートキャナルメーター、パルプテスター【使用が禁忌な歯科治療機器】超音波スケーラー、高周波メス【避けるべき一般的医療機器】CT、MRI、電気メス、低周波治療器ペースメーカー患者に使用できるものも使用できないものも一般の歯科治療で特に区別されることなくよく使用されるため、なかなか判別がつきにくいかもしれない。患者が動悸や不快を感じないように、以上の使える医療機器、使えない医療機器をチェックしておこう。高周波メスや超音波スケーラーの添付文書や教科書では、ペースメーカー植え込み患者に対して使用禁忌とされているが、治療時の機器とペースメーカーの距離があることによって漏洩電磁界測定値が実際にペースメーカーに影響を与えないレベルになるという意見の歯科医も一定数いるようだ。歯科治療における注意ポイントペースメーカー患者の歯科治療をする前に、注意するべきポイントをしっかりと押さえておこう。1. 患者のペースメーカー手帳をチェックするペースメーカー手帳には、植え込み時期や病院、機種、刺激方法などが記されている。2. 患者のお薬手帳をチェックするペースメーカー患者で、抗血小板薬や抗凝固薬を服用している患者は減っているが、他の心疾患で服用している患者がいるため確認しておく。抗血栓薬を服用していたら、抗血栓薬に対する歯科治療の注意点を押さえておこう(前記事「抜歯時に抗血栓薬は休薬するべきか?」参照)。 3. 動悸を感じたらすぐに医療機器の使用を中止する患者の動悸が続くか、意識の低下があるか、脈拍数を確認し、症状の回復が見られない場合は、かかりつけ医に搬送する。ペースメーカー患者は今後も増えていく今回は意外と知られていない、ペースメーカー植え込み患者に実は使えない医療機器、使える医療機器をまとめてみた。 ペースメーカー植え込み患者が来院する可能性はますます増えていくので、歯科医療者としてしっかりとペースメーカー植え込み患者に対する注意点を確認し、適切な歯科治療を行おう。歯科セミナーなら「1D(ワンディー)」で!日本最大級の歯科医療メディア「1D」では、診療に役立つオンラインセミナーを多数開催中。もっと知りたい臨床トピックから超ニッチな学術トピックまで、参加したいセミナーが見つかります。下記ボタンから、開催中のセミナーを見てみましょう!開催セミナーを見てみる参照文献『病気をもった患者の歯科治療ー医科から歯科へのアドバイスー 改定第4版』,長崎県保険医協会,2017『ペースメーカーのはなし 第3版』,一般社団法人 日本不整脈デバイス工業会,2018『心臓ペースメーカー、MRI対応型が主流に』,産経ニュース,2016