歯科用語集
2025年10月28日

老年歯科医学

「老年歯科医学」とは?歯科用語の解説と症例を紹介

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定義・語源

老年歯科医学とは、高齢者の口腔健康を維持・向上させるための専門的な歯科医療の分野である。老年医学と歯科医学が交差する領域であり、高齢者特有の口腔疾患や全身疾患との関連性を考慮した治療が求められる。語源としては、「老年」は高齢者を指し、「歯科医学」は歯や口腔に関する医学を意味する。老年歯科医学は、加齢に伴う生理的変化や疾患を理解し、適切な治療法を提供することを目的としている。


臨床における位置づけ・判断基準

臨床において老年歯科医学は、高齢者の口腔ケアや治療において重要な役割を果たす。判断基準としては、患者の全身状態、口腔内の健康状態、治療に対する理解度などが挙げられる。高齢者は多くの場合、複数の全身疾患を抱えているため、治療計画は個別化される必要がある。また、老年歯科医学では、口腔機能の低下や認知症の影響を考慮し、患者の生活の質を向上させることが重視される。

関連用語・類義語との違い

老年歯科医学に関連する用語には、老年医学、口腔衛生、歯科保健などがある。老年医学は高齢者全般の医療を指し、老年歯科医学はその中で口腔に特化した分野である。口腔衛生は、口腔内の健康を維持するためのケアを指し、老年歯科医学はその実践において高齢者特有のニーズに応じたアプローチを行う。歯科保健は、歯科医療全般を含む広い概念であり、老年歯科医学はその一部として位置づけられる。

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老年歯科医学の実践。高齢者の口腔健康を守るための処置と症例の判断ポイント

老年歯科医学の実践。高齢者の口腔健康を守るための処置と症例の判断ポイント

老年歯科医学の定義と重要性老年歯科医学とは、高齢者の口腔健康を維持・向上させるための専門的な分野である。高齢者は、身体的な変化や疾患の影響を受けやすく、口腔内の健康状態も多様な問題を抱えることが多い。したがって、老年歯科医学は、単なる治療にとどまらず、予防や健康維持の観点からも重要である。高齢者の口腔内の問題には、う蝕、歯周病、義歯の適合不良などが含まれ、これらは全身の健康にも影響を及ぼす。歯科医師や歯科衛生士は、老年歯科医学の知識を活用し、患者の生活の質を向上させるための適切な処置や術式を選択する必要がある。高齢者における口腔疾患の症状と診断高齢者に多く見られる口腔疾患には、う蝕や歯周病があるが、これらの症状は若年者とは異なる場合がある。例えば、う蝕は初期段階では無症状であることが多く、進行することで痛みや腫れが生じることがある。歯周病も同様に、初期には自覚症状が乏しいため、定期的な診査が重要である。診断においては、患者の既往歴や生活習慣を考慮し、必要に応じてX線検査や口腔内の視診を行うことが求められる。特に、高齢者は多くの薬剤を服用していることが多く、薬剤の副作用による口腔内の変化にも注意が必要である。老年歯科医学における処置と術式老年歯科医学では、高齢者特有の問題に対処するための処置や術式が求められる。例えば、義歯の作製や調整は、高齢者の口腔機能を改善するために重要な手段である。義歯の適合不良は、咀嚼機能の低下や口腔内の不快感を引き起こすため、定期的なチェックと調整が必要である。また、歯周病の治療においては、スケーリングやルートプレーニングが一般的な処置であるが、高齢者の場合は全身状態を考慮し、適切な麻酔や術式を選択することが重要である。高齢者の口腔健康を守るためのコツと注意点高齢者の口腔健康を維持するためには、日常的な口腔ケアが欠かせない。歯科衛生士は、患者に対して適切なブラッシング方法やフロスの使い方を指導し、定期的な歯科受診を促すことが重要である。また、高齢者は口腔内の乾燥や味覚の変化を訴えることが多いため、これらの症状に対する理解と対策も必要である。例えば、唾液の分泌を促すための水分摂取や、口腔内の保湿剤の使用を提案することが有効である。老年歯科医学の未来と展望老年歯科医学は、今後ますます重要性を増していく分野である。高齢化社会の進展に伴い、高齢者の口腔健康を守るための新たなアプローチや技術が求められる。例えば、テレデンティストリーの導入により、遠隔での診断や治療が可能になることで、高齢者の通院負担を軽減することが期待されている。また、地域包括ケアシステムの中で、歯科医師と他の医療従事者との連携が強化されることで、より包括的なケアが提供されるようになるだろう。
1D編集部
2024年6月1日
【1D的セミナーログ】けっきょく、砂糖とフッ素。

【1D的セミナーログ】けっきょく、砂糖とフッ素。

先日、1Dでは日本大学松戸歯学部衛生学講座専任講師・田口千恵子先生をお招きし、『けっきょく、砂糖とフッ素。う蝕の機序・予防とパブリックヘルス』と題したWebセミナーを行った。1Dでは本セミナーの他にも、多数の歯科臨床セミナーを開催している。プレミアム会員であれば追加料金ナシでセミナーや講義動画が見放題となるため、歯科医師・歯科衛生士の方はぜひご活用しただきたい。1Dプレミアムでセミナーを視聴する当日は多くの歯科医師・歯科衛生士の方々が参加し、質問も多く盛況となった。本記事では、そのセミナーの内容をかいつまんで解説する。構成は、1.う蝕の発生機序 2.う蝕と砂糖 3.シュガーコントロール 4.栄養としてのフッ素 5.フッ化物応用の種類と有用性 6.フッ化物による予防機序 7.パブリックヘルスとウォーターフロリデーションの7項目に分かれており、それぞれ豊富なデータに基づいた解説がなされた。う蝕の発生と砂糖の関係日本の子どものう蝕は経年的に減少傾向にあるが、その罹患率は他の疾患と比較しても高く、また成人では約 3人に1人が未処置う蝕を有し、高齢者ではう蝕経験者は増加している。う蝕の発生要因としては、ご存知のように口腔内細菌、基質、宿主、時間といった4つがあり、砂糖を含む食品が食事とともに与えられた場合に比べ、間食に与えられた場合はう蝕は増加することが分かっている。一人当たり砂糖消費量の国際比較推移(1956-2020年)によると、日本は料理やお菓子に含まれるものも含め、1人年間15.6kgの砂糖を消費している。米国にいたっては31.4kgであり、日本の約2倍もの砂糖を1年間に消費している。それにも関わらず、12歳児のう蝕(DMFT)のデータで見てみると、米国の方が日本よりう蝕は少ない。英国も砂糖の消費量は日本に比べ、かなり多いのにも関わらず、う蝕は日本の半分である。これから考えると、単に砂糖の摂取量が増えたからといって、う蝕の数が増えるのではないことが分かる。また歯磨きに関してだが、頻度を考えると、日本人はかなり歯を磨いていることが調査によっても分かっている。しかし、プラークの問題とう蝕との関係性についてはあまり示されていないこと、咬合面の小さな溝に歯ブラシの毛先はなかなか届かないため、う蝕になりやすい咬合面に対して対応ができていないことをきちんと理解しておかねばならない。フッ化物によるう蝕予防法う蝕予防のフッ化物応用は75年以上の歴史で安全性と有効性が繰り返し確認されており、中でもフッ化物配合歯磨剤は日本で広く普及している。フッ化物応用の研究のアップデートや、市販歯磨剤のフッ化物濃度の変更、国際的な推奨の更新を受け、2023年1月には「フッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法について」4学会(日本小児歯科学会・日本口腔衛生学会・日本歯科保存学会・日本老年歯科医学会)合同の提言が発表されたのが記憶に新しい。様々な食品に含まれているフッ化物であるが、1日における適正な摂取量として考えると、日本人は足りていないのが現状である。また矯正用ワイヤーやチタン製インプラントに関してだが、フッ化物歯面塗布や歯磨剤は推奨されており、フッ化物応用を中止する利益はなく、むしろ中止したことによるう蝕リスクが懸念される。ただ、リン酸酸性フッ化物歯面塗布剤などの場合は、強酸性がチタンやチタン合金に影響を与える可能性があることを覚えておきたい。臨床に役立つセミナーなら1Dプレミアムこの他にも、1Dではさまざまな臨床・学術セミナーを配信中である。配信中のラインナップや1Dプレミアムの詳細は、下記ボタンからご覧いただきたい。1Dプレミアムでセミナーを視聴する
1D編集部
2023年7月25日
フッ化物配合歯磨剤の使用法を歯科4学会が公開

フッ化物配合歯磨剤の使用法を歯科4学会が公開

う蝕予防におけるフッ化物応用は、その安全性と有効性が確立されている。国内に市販されているフッ化物配合歯磨剤の市場シェア率は9割を超えており、広く普及しているといえるだろう。今回、一般社団法人日本口腔衛生学会、公益社団法人日本小児歯科学会、特定非営利活動法人日本歯科保存学会、一般社団法人日本老年歯科医学会の4団体は、フッ化物配合歯磨剤の使用法をめぐり、共同で「推奨される利用方法」を取りまとめ、公開した。世界的には国際歯科連盟(FDI)や世界保健機関(WHO)がフッ化物配合歯磨剤の推奨を作成しており、これに国内の状況を考慮して今回の声明が作成された。今回の声明の背景とは?日本の小児におけるう蝕は減少傾向にあるものの、その罹患率は他の疾患と比べ高い。また成人では3人に1人が未処置のう蝕を有しており、高齢者ではう蝕経験者が増加傾向にある。4団体による声明では、「フッ化物応用の研究のアップデートや、市販歯磨剤のフッ化物濃度の変更、国際的な推奨の更新を受け、(中略)現在の我が国における推奨されるフッ化物配合歯磨剤の利用方法をまとめることとした」としている。フッ化物配合歯磨剤の利用方法具体的な利用方法は、下記の通りだ。歯が生えてから2歳は、フッ化物配合歯磨剤のフッ化物濃度は1000ppmF、使用量は米粒(1〜2mm)程度。就寝前を含めて1日2回の歯みがきを行い、歯みがき後にティッシュなどで歯磨剤を軽く拭き取ってもよい。また、歯磨剤は子どもの手の届かない所に保管し、歯みがきについては専門家のアドバイスを受ける。3〜5歳も同様にフッ化物濃度は1000ppmFとし、使用量はグリーンピース(5mm)程度とする(子どもが歯ブラシに適切な量をつけられない場合は保護者が歯磨剤を出す)。歯みがきの後は歯磨剤を軽く吐き出し、うがいをする場合は少量の水で1回のみとする。6歳以降では、フッ化物濃度は1500ppmF、使用量は歯ブラシ全体(1.5cm〜2cm程度)。使用方法は前項と同様で、チタン製のインプラントなどの歯科材料が使用されていても、天然歯が存在する場合はフッ化物配合歯磨剤を使用する。歯磨剤市場を取り巻く課題同声明では、成人における根面う蝕の予防について「5000ppmFのフッ化物濃度の歯磨剤のう蝕抑制効果が認められている」とし、「現在日本では市販されていないため認可されることが望まれる」「処方箋なしで購入できる国も増えている。日本においても5000ppmFの歯磨剤の販売の認可が求められる」と明言した。特に初期活動性根面う蝕については、5000ppmFのフッ化物濃度の歯磨剤の使用により進行が停止するエビデンスが示されており有用であり、本声明がその認可に一石を投じることになればう蝕予防に大きな影響がもたらされるだろう。また、国内で市販されているフッ化物配合歯磨剤の多くには、国際規格で規定されているフッ化物濃度の記載がされていない。今回、4団体が推奨されるフッ化物濃度について明言したものの、消費者が確認できなければ意味がない。このため、国際規格に合わせたフッ化物濃度の明記が、日本メーカーが製造する歯磨剤についても必要である。歯磨剤の飲み込みや誤嚥に注意小児に関しては、誤って歯磨剤のチューブごと食べるなど大量に歯磨剤を飲み込まないよう、使用方法や保管場所に注意すべきとしている。国内で販売されている歯磨剤では、乳幼児向け歯磨剤についてはチューブを1本飲み込んでも問題ない総量の製品が基本的に製造・販売されているが、大量摂取には気を付けるべきである。また、要介護者で嚥下障害を認める場合、ブラッシング時に唾液や歯磨剤を誤嚥する可能性も考えられ、「ガーゼ等による吸水や吸引器を併用するのもよい」としている。また、歯磨剤のために食渣等の視認性が低下するような場合には、それらを除去してからブラッシングを行うことが望ましいとしている。チタンインプラントへの影響は?前述の通り、高齢者においても根面う蝕をはじめとするう蝕予防の観点からフッ化物配合歯磨剤の利用が推奨されている。しかしチタンインプラントが埋入されているケースにおいては、高濃度で酸性のフッ化物歯面塗布によってチタンが腐食してしまう可能性があるものの、低濃度で中性のフッ化物配合歯磨剤においてはそのリスクはないと考えられる。そのため声明では、「国際的にも全ての人へのフッ化物配合歯磨剤の利用が推奨されている」とした上で、「インプラント患者にもフッ化物配合歯磨剤の利用が推奨されている」とした。参考文献一般社団法人日本口腔衛生学会,公益社団法人日本小児歯科学会,特定非営利活動法人日本歯科保存学会,一般社団法人日本老年歯科医学会『4学会合同のフッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法』2023年1月1日(URL)
1D編集部
2023年1月10日
義歯の設計は機能性よりも着脱性の方を優先すべきか?

義歯の設計は機能性よりも着脱性の方を優先すべきか?

日本では超高齢化社会が年々進展し、現在全人口における高齢化率の割合はの28%以上。さらに2040年には40%にも増加すると推測されている。高齢化とともに平均寿命は年々延伸している一方で、健康寿命については平均寿命と比較するとおよそ10年ほど短くなっており年々その差がひらいていてきた。健康ではない期間が延伸していくということは、同時に介護や支援が必要な人が増加している事になる。その中でも「認知症」の数は最も多く社会的問題として大きく取り上げられているのはご存じだろう。歯科医療においても認知症患者との関わりは深く、さまざまな問題や課題に直面する。特に義歯の機能性、着脱性に関しては歯科医にとっても大きな課題であり、かなり悩ましい問題だ。今回は認知症患者の「義歯設計」にフォーカスして、優先すべきは機能性なのか、はたまた着脱性なのか、認知症患者の義歯診療ガイドラインを基に解説していく。認知症患者における義歯設計の重要性認知症患者の義歯使用可否については、認知能力低下が一つの要因ではあるものの「認知症の人への歯科診療ガイドライン」でも単に認知症を理由に義歯の装着や治療が不可能と判断するべきではないとしている。つまり認知機能低下に伴いまず第一に判断するべきは装着の可否ではなく、認知機能レベルに合わせ義歯設計について考慮するべきということだ。そして義歯設計について慎重に判断するべきは「機能性」と「着脱性」である。認知症患者の義歯診療ガイドラインでも、認知症患者の義歯を設計する場合、義歯本来の機能を求め従来からの健常者に対する義歯設計と同様にするのか、一日でも長く義歯を使用してもらえるよう着脱性を重視した設計にするべきかさまざまな議論が交わされている。機能性・着脱性の判断基準認知機能の低下により着脱や管理など自身で不可能な場合には、他者の介助や支援が必要不可欠となる。しかし本人の全身状態や協力度合いによっては介助者がいたとしても着脱が困難なケースもあるはずだ。認知症患者の場合、認知機能や全身状態、介助者の理解や協力、生活環境などすべてをトータルで考慮した上で機能性・着脱性のどちらを優位にすべきか慎重な判断が重要となる。現状「認知症患者の義歯診療ガイドライン」でも重度認知症患者においては「機能性」よりも「着脱性」の方を優先することを考慮してもよいとしているが、判断基準について明確には定められていない。しかし着脱性を優先しすぎても、義歯としての機能が損なわれ咀嚼の妨げや誤嚥などの安全性の問題も起こり得る。さらに歯科医師の資格も持つ認知症専門医の松本一生氏(松本診療所ものわすれクリニック理事長・院長)のデータによると、噛み合わせの回復を諦めた患者は認知症が進行し、一方義歯の使用を開始した患者は亡くなるまでほとんど認知症が進行しなかったという。噛むことで脳へ刺激を伝達し、認知症の進行を抑制するということだ。認知機能を維持するために「使える義歯」を作る認知機能が著しく低下しておらず、自身で着脱できる場合には機能性・着脱性どちらも優先できればベストだ。認知機能の低下がみられる患者は着脱性を優位にしつつも、機能性についても100パーセント諦めないことが認知症を進行させないための鍵となる。認知症患者の場合、さまざまなケースで義歯設計については慎重な判断が必要となるが、人は誰でも噛めること食べられることに幸せを感じ生きている。それは認知症患者もそうでない人間も同様で、認知症患者だから着脱が容易にできればいい、噛めなくてもまずは安全性を考慮するべきという偏った考えは持ってはいけない。歯科医師として認知症患者として向き合うことも重要だが、同じ人間として安心して噛める、使える義歯設計について、多方面からの情報を適切に考慮していくことが重要ではないだろうか。参考文献一般社団法人日本老年歯科医学会, 認知症患者の義歯診療ガイドライン2018(PDF)
1D編集部
2022年12月18日
【認知症患者の義歯臨床】新義歯製作と義歯修理・調整、どちらを優先すべき?

【認知症患者の義歯臨床】新義歯製作と義歯修理・調整、どちらを優先すべき?

超高齢社会に突入している日本では、有病者に対する歯科治療のニーズが高まっている。中でも認知症患者の診療にあたるシーンは多いだろう。認知症患者に対してリリーフや咬合調整といった小規模な義歯調整であれば問題になることは少ないが、新義歯製作や義歯形態が変わってしまうような大きな修理・調整を行った場合、新しい義歯に適応できなくなる場合がある。今回は認知症患者への対応の中で「義歯調整」に焦点を当て、ガイドラインを基に考察してみる。義歯調整は有効か?一般的な診療に対し日本補綴歯科学会のガイドラインでは、義歯床が不適合、かつ下顎位・咬合高径・咬合関係が誤っており、調整により改善しない場合には新義歯製作が必要としている。認知症患者や要介護高齢者に対し、新義歯製作と修理・調整とを直接比較した論文は存在しない。しかし、介護力強化型病院に入院中の要介護高齢者を対象として義歯製作時期と義歯の使用率を調査した報告(※1)では、入院前に義歯を製作していたすべての人が入院後も使用していたのに対し、入院後に義歯を製作した人の使用率は低く、さらに認知症患者ではその差は顕著であったとされている。またBritish Society of GerodontologyとBritish Society for Disability and Oral Healthのガイドライン(※2)でも、義歯を再製作する場合には、義歯に対する受容性の観点から複製義歯などを使い旧義歯の特徴を踏襲しつつ、徐々に形態を整えていくべきであるとされている。一方で、新義歯製作をした場合と修理・調整のみの場合の比較において、使用率以外のもの、つまり咀嚼や嚥下などの機能的な観点や栄養摂取、食事内容などをアウトカムとする報告は見られない。これらの点より、義歯修理・調整の方が新義歯製作よりも有効であるとする確たる根拠はない。しかし装着して使用できる義歯が存在するのであれば、まず調整・修理を行うことが推奨されている。さらに新義歯を製作する必要が生じた場合には、認知症の重症度認知症患者の義歯診療ガイドライン2018/一般社団法人日本老年歯科医学会(※3)や進行度を考慮に入れた上で現義歯の特徴を生かしながら徐々に新義歯製作を行うことが奨められる。認知症患者だからこそ配慮を患者本人や家族・介護職からは新義歯製作に対する期待は大きい。一方で、中等度・重度認知症患者において新義歯を製作しても、新義歯に適応できない場合が認められる。認知症患者においては義歯に対する受容性が低下している可能性を認識し、使用している義歯が口腔内で機能している場合には、受容できている義歯の状態や経過をよく検討しその優位点と欠点をより慎重に見極めることが必要だ。また義歯修理・調整においても装着している義歯の優位点を失わないように適切に対応することが求められるだろう。歯科セミナーなら「1D(ワンディー)」で!日本最大級の歯科医療メディア「1D」では、診療に役立つオンラインセミナーを多数開催中。もっと知りたい臨床トピックから超ニッチな学術トピックまで、参加したいセミナーが見つかります。下記ボタンから、開催中のセミナーを見てみましょう!開催セミナーを見てみる参考文献前田直人, 坂本隼一, 兒玉直紀, 沖 和広, 柴田豊文, 曽我恵子, 白髭智子, 西川悟郎, 皆木省吾:高齢者施設における認知症および寝たきり状況と義歯使用状況の関連:予備的研究, 日本補綴歯科学会誌, 4(4):419~426, 2012. 【Ⅳb】Fiske J, Frenkel H, Griffiths J, Jones V; British Society of Gerodontology. British Society for Disability and Oral Health.:Guidelines for the development of local standards of oral health care for people with dementia, Gerodontology., 23(Suppl. 1):5~32, 2006.【A】認知症患者の義歯診療ガイドライン2018, 一般社団法人日本老年歯科医学会
ユースケ イシカワ
2022年8月29日

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