歯科用語集
2025年10月28日

表面性状

「表面性状」とは?歯科用語の解説と症例を紹介

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定義・語源

表面性状とは、物質の表面における物理的および化学的特性を指す用語である。特に歯科においては、材料の表面が持つ特性が、治療結果や患者の快適性に大きく影響する。表面性状は、表面粗さ、親水性、疎水性、摩擦係数などの要素から成り立っており、これらは材料の選定や治療法の決定において重要な指標となる。語源としては、「表面」は物質の外側を、「性状」はその特性を意味する。


臨床における位置づけ・判断基準

臨床において表面性状は、歯科材料の選択や治療法の判断基準として重要である。例えば、インプラントや義歯の材料選定において、表面性状が生体適合性や耐久性に影響を与えるため、これを考慮することが求められる。また、表面性状が優れた材料は、細菌の付着を抑制し、感染リスクを低減することができるため、臨床現場での評価が不可欠である。これにより、患者の治療結果や満足度を向上させることが可能となる。


関連用語・類義語との違い

表面性状に関連する用語には、表面粗さや表面エネルギーがある。表面粗さは、表面の凹凸の程度を示し、材料の接触性や摩擦特性に影響を与える。一方、表面エネルギーは、材料の親水性や疎水性を示す指標であり、これもまた生体適合性に関与する。これらの用語は、表面性状の一部を構成する要素であり、相互に関連しながら材料の特性を決定する。したがって、表面性状を理解することは、これらの関連用語を正しく使い分けるためにも重要である。


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表面性状の理解と臨床応用。歯科医師・歯科衛生士が知っておくべき診断と処置のポイント

表面性状の理解と臨床応用。歯科医師・歯科衛生士が知っておくべき診断と処置のポイント

表面性状とは何か表面性状は、物質の表面に関する特性を指し、特に歯科においては、歯のエナメル質や補綴物の表面状態が重要である。これらの性状は、歯の健康や治療の成功に直接影響を与えるため、歯科医師や歯科衛生士はその理解を深める必要がある。具体的には、表面の粗さ、光沢、親水性や疎水性などが含まれ、これらは歯科材料の選択や処置方法において重要な判断材料となる。また、表面性状は、細菌の付着やバイオフィルムの形成にも関与しており、これがう蝕や歯周病の発症に影響を与えることもある。したがって、表面性状の理解は、診断や治療において欠かせない要素である。表面性状の診断方法表面性状の診断には、視覚的評価や触診、さらには専用の機器を用いた測定が含まれる。視覚的評価は、歯の色や光沢を観察することで行われ、特にエナメル質の状態を把握するのに役立つ。触診による評価は、歯の表面の滑らかさや粗さを確認するために行われる。これにより、補綴物の適合状態や、歯の磨耗状態を判断することができる。さらに、電子顕微鏡や表面粗さ測定器を使用することで、より詳細な表面性状を把握することが可能である。これらの診断手法を駆使することで、適切な処置や術式の選択が可能となる。表面性状に基づく処置と術式表面性状に基づく処置には、歯のクリーニングや研磨、さらには補綴物の調整が含まれる。例えば、歯の表面が粗い場合、バイオフィルムが形成されやすく、う蝕や歯周病のリスクが高まるため、定期的なクリーニングが推奨される。また、補綴物の表面性状が適切でない場合、適合不良や不快感を引き起こすことがあるため、研磨や再調整が必要となる。これらの処置は、患者の口腔内の健康を維持するために重要であり、歯科医師や歯科衛生士は、表面性状を考慮した適切な術式を選択することが求められる。表面性状のメリットとデメリット表面性状の理解には、いくつかのメリットとデメリットが存在する。メリットとしては、適切な診断と処置が可能となり、患者の口腔内の健康を維持できる点が挙げられる。また、表面性状を考慮することで、治療の成功率を高めることができる。一方、デメリットとしては、表面性状の評価には専門的な知識や技術が必要であり、誤った判断が治療結果に悪影響を及ぼす可能性があることが挙げられる。したがって、歯科医師や歯科衛生士は、常に最新の知識を持ち、慎重に判断を行う必要がある。表面性状に関する注意点表面性状を評価する際には、いくつかの注意点がある。まず、診断に使用する機器や方法が適切であることを確認する必要がある。誤った測定や評価は、治療方針に影響を与える可能性があるため、注意が必要である。また、患者の口腔内の状態や生活習慣も考慮することが重要である。例えば、喫煙や不適切な口腔ケアは、表面性状に悪影響を及ぼすことがあるため、患者への指導も欠かせない。これらの注意点を踏まえ、表面性状の理解を深めることで、より良い治療結果を得ることができる。
1D編集部
2024年6月1日
歯科医院で救える命がある。口腔がん検診・口腔内検診推進月間が開始

歯科医院で救える命がある。口腔がん検診・口腔内検診推進月間が開始

日本の口腔咽頭がんの死亡者数は約7800人と言われており、年々増加傾向にある。また、口腔がんは食事摂取の困難さ等により術後QOLが著しく低下するとされ、また胃がんや肺がんとは異なり、術後に見かけや話し方にも影響が出ることもあり心理的負担が大きいことから、がんの中でも最も自殺率が高いと言われている。そのため、WHOからも早期発見・早期処置が重要であることが強調されている。しかしながら、日本は欧米諸国と比べ、先進国の中でも大幅に死亡率が増加している国であり、歯科口腔外科に携わる医療機関にとって、口腔がんの死亡数と死亡率の大幅低減は、急務な課題であると考えられる。11月は口腔がん検診・口腔内検診推進月間さて、毎年11月は口腔がん検診・口腔内検診推進月間(レッド&ホワイトリボンキャンペーン)である。一般社団法人口腔がん撲滅委員会(代表理事:柳下寿郎日本歯科大学附属病院)によって主催されており、口腔がんの炎症や病変部位の色が赤と白であることから口腔がん撲滅運動の象徴としてレッド&ホワイトリボンを掲げている。また11月15日を「口腔がん検診の日」と位置付けている。このキャンペーンにより、日本全国の歯科医院・デンタルクリニックで、口腔がんを早期発見するきっかけになることを期待したい。口腔がんの正確な早期発見が重要口腔がんおよび口腔粘膜疾患は、粘膜上皮および形態が変化し、様々な臨床所見を呈する。早期口腔がんの診断には、他の粘膜疾患との鑑別をはじめ、早期口腔がんが示す臨床所見を十分に把握することが重要である。口腔がんは発育形態により外向型、内向型および表在型に分類される。さらに、口腔がんに特徴的な表面性状としては、びらん、潰瘍、肉芽、白斑、乳頭、腫瘤の6つに分類される。特に歯肉がんは肉芽型が多く、歯周炎と誤診され抜歯やスケーリングされることがあり、正確な診断をした上での処置が重要であると考えられる。口腔がん早期発見の手法としての蛍光観察装置実際に用いられる検査として、視診・触診、細胞診・組織診、唾液DNA検査など様々な手技も検証されている。株式会社HITS PLANが2021年12月19日に行う口腔がん早期発見セミナー(講師:東京歯科大学名誉教授・柴原孝彦先生、お申し込みは こちらから 可能です)では、口腔がんの早期発見のうち蛍光観察装置に焦点を当て説明が行われる。蛍光観察装置は、2015年に医療機器クラスⅠとして承認され、観察機器として用いられるようになった。蛍光観察装置のひとつであるORALOOK®︎は、病変から8〜10cm離した状態で青色LED照射光を口腔粘膜に照射し、生体内分子の細胞内ミトコンドリアに存在するFAD(フラビンアデニンジヌクレオチド)と結合組織内のコラーゲンマトリックスの自家蛍光を励起させ、それを装置のフィルターを介して評価・判定するという原理で応用されている。既に数百台以上の装置が導入されており、一般開業医のみならず地区歯科医師や基幹病院、国立の医療機関でも採択されているという。歯科医院も口腔がん早期発見を担うべき口腔がんは恒常的に患者の口腔内を診ている、一般的な歯科医院・デンタルクリニックの医師・歯科衛生士が第一発見者になることが多く、早期発見によって速やかに治療が進められれば95%以上の治癒率を得ることができると言われている。歯科医師だけでなく歯科衛生士も口腔がんに対する理解を深めることで、1人でも多くの患者さんの命を救うことができるのである。口腔がん早期発見セミナーの詳細は こちらから どうぞ。参考文献がん種別統計情報 口腔・咽頭, 国立研究開発法人国立がん研究センター, 2021年10月31日閲覧.
k t
2021年11月6日
歯科医師の3割しか知らない、ジルコニアインプラントの話

歯科医師の3割しか知らない、ジルコニアインプラントの話

前回は“細かすぎて伝わらないジルコニア”と題して、急速に普及している歯冠修復材料としてのジルコニアの材料学的性質について解説した。モノリシックによる審美修復で使用されているジルコニアは、高透光性ジルコニアと呼ばれるものであったが、元々歯科用ジルコニアとして承認されたのは100%正方晶ジルコニア(Y-TZP)である。このY-TZPは、単独で歯冠修復に用いる機会は少なくなったが、その高靭性=壊れづらい性質から、現在諸外国においてインプラント体(フィクスチャー)の代替材料として注目されていることをご存知だろうか。今回の記事では、このジルコニアインプラントの現状とオッセオインテグレーションについて解説する。ジルコニアは、チタンに代わる次世代のメタルフリーインプラントとしてゴールデンスタンダードになるのか。ジルコニアの強さやその他の性質については、まず前回の記事をご参照いただきたいと思う。生体材料としてのジルコニア実は、ジルコニアはチタンやハイドロキシアパタイトと同様の生体不活性材料として分類されており(表1)、最近の歯科医師国家試験にも既出している。というのも、ジルコニアは医療用生体材料として1990年台から人工股関節の骨頭に応用されてきた材料であり、現在でも日本の京セラを中心として販売展開されている。ジルコニアが歯科用インプラント体材料として注目され、研究され始めたのは2000年頃からだ。まず商品としてジルコニアインプラント発売に頭角を現したのが、スイスのZ-Systems社である。ジルコニアインプラントを最初に商品化したかどうかは定かではないが、日本に初めてジルコニアインプラントを紹介したメーカーだと思われる。現在では欧州を中心として10社以上あるいはそれ以上のメーカーがジルコニアインプラントの開発、販売を行っている(表2)。 2015年頃には、世界のインプラントで最も多くのシェアを誇るストローマン社からPURE Ceramicという商品名でジルコニアインプラントが発売された(図1)。日本のメーカーではジルコニアインプラントは発売されておらず、薬器法にて承認もされていない。ちなみに日本のストローマンで発売されているRoxolidというインプラントはジルコニアではなく、金属のジルコニウムとチタンの合金であるため、ジルコニアインプラントとは全く関係ない。話を戻すが噂によると、企業としては今後全てのインプラント体のラインナップをチタンからこのジルコニアにシフトしていきたい、と又聞したことがある。また、隣国の韓国では、ジルコニアインプラントがチタンインプラントのシェアをすでに上回っていると現地の歯科医師から聞いたことがある。韓国では国としてベンチャー企業に対するスタート支援が充実しており、独自に開発されたジルコニアインプラントを売る企業が多く存在するそうだ。強調するが、これらはあくまで私が伝え聞いたことであるので話半分で受け取っていただきたいのだが、少なくとも日本は諸外国と比べてジルコニアへのメタルフリー化が遅れているということは断言していいだろう。しかし驚くべきことにジルコニアの原料となる粉末は全て日本の東ソー社で製造されている。つまりジルコニア製の海外製品は全て逆輸入という形で我々の仕事の糧になっているというわけだ。現在、インプラント材料自体もほとんど輸入に頼っている状態の中、ジルコニアインプラントについても、是非自国生産を見据えての製品開発が望まれるところである。ジルコニアインプラントの魅力ジルコニアの材料学的な性質については前回説明の通りであるが、まずはなんと言っても機械的性質が強く、従来のセラミックスよりも数倍以上の高い曲げ強度と靭性を併せ持つことが最大の強みであると考えている。純チタン製のインプラントは、意外に強度が弱く、しばしば破折症例に遭遇することも少なくない。筆者もすれ違い咬合を臨床のテーマにおいてきた関係で数例に出くわしたことがある。機械的強度が高いチタン合金製のインプラントも発売されているが、臨床現場では骨・生体適合性の観点から純チタン製インプラントの方が多く採用されているのが現状であると思われる。対して、ジルコニアは破折に強く、さらに白色であるので歯肉を透けメタルカラーが露出せず、審美的なメタルフリーインプラントとして期待されているのである。メタルフリー化は、現在の歯科界の方向性にも合致しており、金属アレルギーの心配もない。チタンはアレルギーを起こさない、と認識されていると思うが、これは不動態被膜由来の優れた耐食性により極めてアレルギー発生のリスクが低いということであって、論文上ではチタンアレルギーの発生や、それによるオッセオインテグレーション喪失を報告したエビデンスも存在する。実は、チタンアレルギーを検査する試薬が存在しないため、実際にはチタンアレルギーは起こらないとは言い切れないのである。一方、ジルコニアは化学的には疎水性であり、一部ではプラーク付着がチタンより少ないと報告されている。これについても真逆の結論を導き出している報告もあり不明な点は多いところではあるが、アバットメントとして応用され始めた理由もこの低プラーク付着によるところが大きいと考えられる。すなわちジルコニアはインプラント材料としても、インプラント周囲炎を予防できるのではないかと期待されているのである。ジルコニアはオッセオインテグレーションするのか?チタンがチタンインプラントである理由は、言うまでもなく、唯一オッセオインテグレーションを起こす材料であるからである。ではジルコニアインプラントはどうなのかというと、結論から言えば“未だ不明”というのが科学的見地からの現状である。文献検索を行うと、この数年間に限っては、ジルコニアインプラントではチタン同様またはオッセインテグレーション類似の骨反応が認められるという報告が多い。製品化が先行している現状であるので、その結果には多くのバイアスが存在する可能性があると筆者は考えている。チタンよりも骨適合性に劣るとした報告も少なからずあり、どの文献においてもエビデンス量の少なさからまだ結論を導くには早いと議論されている。また、チタンインプラント同様、ジルコニアそのものの化学組成がオッセオインテグレーションに影響しているということに加えて、インプラントの表面性状および形状が依存している可能性が高いとも考えられている。ご存知の通り、チタンインプラントの表面はSLA処理や陽極酸化処理などが施されており、これがオッセオインテグレーション獲得の上で不可欠であることは周知の事実である。一方、ジルコニアでは自身の機械的性質が高いがゆえ、表面加工が難しい。現在、研究レベルで様々な表面加工と骨形成の関係についての検討が行われており、筆者もこのジルコニアの表面改質法について今まさに研究を行っているところである。筆者の所属する研究グループでは、超薄膜アパタイトコーティングやレーザー加工といった方法でより確実な骨適合性を得るためのジルコニアインプラントの表面改質を行っている。最近では歯肉などの軟組織がジルコニアと接着する可能性があることを見出した(1-3)。これはインプラント周囲炎を防ぐための手段として大変有効であると考えている。このように筆者自身もジルコニアインプラントの是非を慎重に問いつつも、インプラント材料としてのジルコニアの魅力に大いに可能性を感じている。ジルコニアはゴールデンスタンダードになるか?さて、ここまでの話をまとめると、ジルコニアはオッセオインテグレーションを起こす可能性があると期待できるが、まだまだ臨床応用されて日が浅く不明な点が多い、という結論に至る。その他の課題も多い。例えば、硬すぎるがゆえの顎骨への応力集中による影響の懸念がある。また、金属と違い展性・延性がないためネジや境目のコントロールが困難であり、2ピースインプラントも一部では発売され始めているようだが、不安が残るという点。まさにコロナ禍のワクチン開発と同じような段階にあると考えて良いかもしれない。繰り返すが、ジルコニアインプラントは日本では薬器法上、未承認である。インターネット検索を行うと臨床応用例や治療紹介が少なからず散見されるが、あくまで所定の手続きを取った上で個人輸入・自己責任で臨床応用しているという段階である。もし臨床応用をご検討されている先生がいるとしたら、適切な手筈を取った上で必ず患者さんと相談、確実な同意を得てから使用していただきたいと思う。言うまでもなく日本は、諸外国の中においてトップクラスの医療安全水準を誇っている。海外では、エビデンスがままならないまま企業発信でジルコニアインプラントが臨床応用され始めているが、今後日本で承認され、インプラント材料のゴールデンスタンダードになり得るどうかは、我々の基礎および臨床研究によるエビデンスの蓄積が急務であると考えている。最後までお読みいただき有り難うございました、皆様の日々の臨床に少しでも役立てていただける情報であったならば幸いです。歯科セミナーなら「1D(ワンディー)」で!日本最大級の歯科医療メディア「1D」では、診療に役立つオンラインセミナーを多数開催中。もっと知りたい臨床トピックから超ニッチな学術トピックまで、参加したいセミナーが見つかります。下記ボタンから、開催中のセミナーを見てみましょう!開催セミナーを見てみる参考文献Hirota M et al. Bone responses to zirconia implants with a thin carbonate-containing hydroxyapatite coating using a molecular precursor method. J Biomed Mater ResPart B Appl Biomater 2014: 102B: 1277-1288.Hirota M et al. Cortical bone response toward nanosecond-pulsed laser-treated zirconia implant surfaces. Dent Mater J 2019; 38: 444-451.Iinuma Y et al. Surrounding tissue response to surface-treated zirconia implants. Materials 2019;13: 30.
廣田 正嗣
2021年1月10日
何がいけないの?歯科医療者も、ネイルしよう。

何がいけないの?歯科医療者も、ネイルしよう。

今や男性もするほど一般的になったネイルアート。多くの人が好みそれぞれに色彩豊かな爪先をしているのではないだろうか。しかし読者のみなさまはどうだろう。学生のうちからネイル・染髪の制限をされたり、歯科医療者でネイルをしている方は少ないように思える。もちろん最近は「ネイルOK!」のような謳い文句の求人なんかも見るし、寛容な世の中になりつつあると感じるが、とても身近とは言えない。でもどうしてネイルアートは禁止されているのだろうか。簡単に思いつくのは、重ねてブリーチしたような髪だったり、派手な色の染髪も同じく”身だしなみ”という文化的な理由だ。このステレオタイプにも疑問を持っているが、ネイルに関してはロジックに乏しい。なぜなら歯科医療者は当たり前にメディカルグローブを着用しているので、直接爪を見る機会は少ないはずだ。もしかしたら絶対的にネイルが禁止される理由があるかもしれない、ということで可能な限りその根拠をリサーチした。爪の医学的リスク前提として、爪を長く伸ばすことは医療従事者としてあまり望ましくない。これは主観的な問題ではなく、爪が長いと手洗い後でも爪下の細菌は除去されにくいことが報告されている。そしてCDCガイドラインでは「爪の長さは6.35mm未満」が望ましいとされ、感染対策面で明確なリスク要因となっている。現代ではメディカルグローブの着用も常識であり、爪が長いとグローブが裂ける可能性は高く、リスクの上昇は明白だ。ただ、これは爪を”伸ばした”時の話であり、マニキュアやジェルなどネイルアートをした場合の話ではない。これだけではネイルアートが禁止される理由にはならない。爪ではなく「ネイルアート」について言及した文献を探し、明確に禁止しているものを見つけた。The WHO guidelines on hand hygiene in health care (1) (Table 4.9.1) recommend to keeping nails short and to remove all jewellery, artificial nails or nail polish before surgical hand preparation. ---GLOBAL GUIDELINES FOR THE PREVENTION OF SURGICAL SITE INFECTION (WHO)WHOはネイルアートを除去するよう推奨している。だが「なぜ除去すべきか」については見つからなかった。また少し違う視点からネイルアートと医療の接点を見てみると、パルスオキシメーター使用時の障害因子だという点も挙げられる。新型コロナウイルス感染症の流行を受け日本ネイリスト協会も検査の妨げになる可能性を指摘し、除去を推奨している。その知識をもともと有する医療従事者は自己管理として平時から避けるべき、という捉え方もできなくはない。とは言えこれも「医療に従事するにあたって」ネイルアートがふさわしくないと断定できない。X線写真撮影やAEDの使用に支障があるのでワイヤー入りの下着を身につけるべきではないと言っているに近い。ここまでで公に禁止されていることはわかった。しかしネイルアートに関して、ダメなものはダメ、みたいな話では納得できないので「なぜ除去すべきか」にフォーカスして考察していく。ネイルアートがダメな理由は?まず、便宜的にネイルアートと一括りにしていたが、より詳しく考察するため種類を明示しておく。マニキュア一般的に想像するネイルアートで、正しくはネイルポリッシュという。成分はニトロセルロースやアクリルなどの樹脂、顔料、有機溶剤、可塑剤。ジェルネイル近年の主流になりつつあるもので、光重合レジンが応用されたもの。成分はウレタン樹脂またはアクリル樹脂、顔料、可塑剤、光重合開始剤など。ネイルチップ俗にいう付け爪。合成樹脂系のものを接着剤や両面テープなどでつける。スカルプチュアいわゆる人工爪で、元々は医療用として開発された。既製のネイルチップとは違い、直接爪に盛るもので、歯科でいう直接法CRベニアみたいなところ。成分はネイルチップ、ジェルとほぼ同じ。簡単に種類と成分を列挙したが、大まかに分けると「塗るもの」と「付けるもの」という感じになる。そして「付けるもの」に関しては前述の根拠から望ましくないと考えられる。爪と指の間に細菌が残留しやすいのであれば、爪と装飾の間も同様だろう。そしてネイルチップやスカルプチュアはそもそも爪を延長する目的で使われることが多い。CDCのガイドラインにも明確に反している。ここからが本題とも言える。「塗るもの」系のマニキュアやジェルネイルはなぜ望ましくないのか。爪と塗料の微細なステップがリスクというのであれば、爪の長さは深爪でも足りない。表面性状の問題、つまり粗造であるとかいう話なら口腔内のCRはどうなのかということになりかねない。構造的な要因で否定するには根拠に乏しいと考えられる。ならば成分的に考える。ネイルの成分が及ぼす悪影響について調べると、ほとんどが人体に対するアレルギー関連の文献であり、その他歯科材料に対する影響などは見当たらなかった。確かにネイルに含まれる成分でアレルギー反応を起こすことはあるだろう。しかし考えてほしい。主成分である樹脂はレジンと同等であり、ジェルに関しては光重合レジンの応用系だ。ネイルアートでアレルギーを引き起こす可能性がある患者は、歯科治療でアレルギーを引き起こす可能性にほぼ等しい。そして、歯科治療はメディカルグローブを着用して行われている。そうなるとネイルでアレルギーが起こるからという理屈も腹落ちしないだろう。結局は”身だしなみ”というモラリズム以上のことから「全ての」ネイルアートが不適切であるとは到底言えない。少なくとも医学的なエビデンスは見つからなかった。可能性の話をすれば歯科材料に悪影響を及ぼすとか、メディカルグローブを劣化させるなど考えられるが、それはネイルに限ったことではなく言い出したらキリがないし机上の空論になる。見た目が悪いという道徳的見解に帰結しているのだ。ネイルの目的は決してオシャレだけでないことも広く伝えたい。爪が薄くて割れやすかったり、コーティングで補強したいという声も多い。それでも同じネイルアートという括りで禁止されているのも現状で、肌色のネイルやトップコートだけでも校則・就業規則違反とされるケースも少なくない。はっきりとした根拠を提示できない中で否定するのは現代的でない規則だろう。派手な染髪やメイク、ネイルが”はしたない”だとか医療従事者の身だしなみにふさわしくないという意見は否定しない。ただそれは個人の見解でありあくまでも「意見」で、オシャレをしたい、好きな見た目でありたいというのも同じ意見だ。嫌ならその職に就かなければいいという意見も聞こえるが、他人に生き方を非難される筋合いはない。お互いを尊重し合うことが現代のテーマであり、右へ倣えという考え方から世の中は大きくシフトしている。長々述べてきたようにネイルを完全否定できるエビデンスは確立していない。時代に取り残されないように、むしろ歯科業界が率先して改革していってほしいと願う。歯科セミナーなら「1D(ワンディー)」で!日本最大級の歯科医療メディア「1D」では、診療に役立つオンラインセミナーを多数開催中。もっと知りたい臨床トピックから超ニッチな学術トピックまで、参加したいセミナーが見つかります。下記ボタンから、開催中のセミナーを見てみましょう!開催セミナーを見てみる参考文献東京医療保険大学「看護師を対象とした手の爪下の菌に影響する因子についての研究」[PDF]日本環境感染学会「手指消毒効果と手指細菌叢に影響する爪の長さ」[PDF]日本臨床麻酔学会「周術期の感染症:Surgical Site Infectionの予防と対策」[PDF]日本臨床麻酔学会「周術期モニタリング」[PDF]日本皮膚科学会,皮膚37巻3号「人工爪による陥入爪の治療」[PDF]日本皮膚科学会「歯科用接着システム材料による即時型アレルギーの1例」<URL>三協化学株式会社「ネイルについて」<URL>日本ネイリスト協会「お客様のアフターフォローについて」<URL>
ユースケ イシカワ
2020年6月20日

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レジン修復 (238)

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