大阪大学歯学部、顎顔面の形成異常を示す遺伝疾患の原因遺伝子を解明
大阪大学大学院歯学研究科の研究チームは、軟骨形成と口蓋発生に必要な遺伝子であるZfhx4を発見したと発表した。ヒトや脊椎動物の骨格形成においては、軟骨形成が必須であり、その過程において、Sox9、Runx2およびOsterixなど様々な転写因子が必要であることが明らかにされてきた。しかしながら軟骨形成が、複雑かつ連続的な生命現象であることに鑑みると、未だ明らかにされていない転写因子の関与が示唆されていた。したがって、軟骨形成過程における連続的な分化というダイナミックな変化のメカニズムに関わる転写因子を明らかにし、その機能を解明することが大きな課題であった。Zfhx4遺伝子が骨形成を司ることを発見研究チームは、発現する遺伝子を網羅的に探索するマイクロアレイ解析を用いた方法により、軟骨を形成する肢芽にZfhx4が高い発現を示すことを見出した。Zfhx4は、骨格および顎顔面の形成異常を示す8q21.11 Microdeletion Syndromeの原因遺伝子の一つとして考えられていたが、その関与および役割は不明だった。Zfhx4のタンパク質は、分子量が約400,000Daと巨大であるために、通常の実験手法では解析が困難であった。そこでZfhx4遺伝子を欠損するノックアウトマウスを作製し、最先端の遺伝子工学技術を駆使して研究を展開した。その結果、Zfhx4遺伝子ノックアウトが軟骨形成不全と口蓋裂を示すことを発見した。さらにZfhx4が、転写因子Runx2およびOsterixと連携して軟骨形成をコントロールすることを細胞レベルおよび動物レベルで明らかにした。口蓋裂の診断等にも応用可能このZfhx4は、遺伝疾患「8q21.11Microdeletion Syndrome」の原因遺伝子の一つとして考えられてきたが、Zfhx4の関与や機能については解明されていなかった。また軟骨形成過程における転写因子の連携が明らかになり、軟骨疾患の新規治療法や診断への応用も見込まれている。さらにZfhx4が、口蓋形成において必要不可欠であることが初めて明らかになり、8q21.11 Microdeletion Syndromeの新たな病態として注目され、口蓋裂の診断にも寄与すると考えられている。遺伝疾患8q21.11 Microdeletion Syndromeの病態解明と診断および軟骨疾患や口蓋裂の新規治療法の開発と診断への応用が期待されている。参考文献Eriko Nakamura, Kenji Hata, Yoshifumi Takahata, Hiroshi Kurosaka, Makoto Abe, Takaya Abe, Miho Kihara, Toshihisa Komori, Sachi Kobayashi, Tomohiko Murakami, Toshihiro Inubushi, Takashi Yamashiro, Shiori Yamamoto, Haruhiko Akiyama, Makoto Kawaguchi, Nobuo Sakata and Riko Nishimura, Zfhx4 regulates endochondral ossification as the transcriptional platform of Osterix in mice, Communications Biology, 2021.11.3.