B型肝炎患者「歯科医院で差別的扱い受けた」報道をどう見るか?
12月28日、毎日新聞は「B型肝炎感染者の2割が歯科で差別的な扱いを受けた経験がある」とする記事を掲載した。全国B型肝炎訴訟原告団・弁護団のアンケートより、歯科医療機関でB型肝炎に感染していることを伝えた患者の約2割が治療を断られたり、後回しにされたりするなどして差別的な扱いを受けたと感じた経験があると報じている。全国B型肝炎訴訟原告団・弁護団のアンケート弁護団は19年8月に原告約2万5000人にアンケート用紙を送付し、10歳未満~70代の7030人が回答。計3699人が受診時の問診票で感染を「常に伝えている」「伝えたことも、伝えなかったこともある」と答えた。B型肝炎感染者であることを伝えた際の対応には、「特別な部屋や椅子に案内された」7.9%(293人)、「自分の椅子だけシートを敷かれたり、周りをラップで覆われたりした」7.5%(276人)、「診療時間や予約時間を他の患者の後にされた」5.4%(198人)、「治療を断られた」3.6%(134人)など回答し、約2割が差別的な対応をされたと感じていた。「断られた」とした134人のうち、厚労省が感染防止の新基準を設けた18年10月以降に「断られた」と回答した人も11人いた、と続けている。このアンケート結果から弁護団は「感染症対策を徹底すれば偏見は解消できる。全ての歯科医は対策に取り組んでほしい」と訴えている。毎日新聞の見解また記事内では、厚労省の研究班の調査で「ハンドピースを患者ごとに交換、滅菌していると答えた歯科医は52%にとどまる」ことを受け18年10月、感染防止対策の研修を受けた歯科医を配置することや、十分な滅菌体制の整備などを届け出た医療機関の初診料と再診料の報酬を加算する一方、未届けの場合は減算する施策について言及し、19年10月現在において全国の歯科医療機関の5%程度が未届けという実態を指摘。「新型コロナウイルスの感染拡大で感染症に対する意識は高まっているが、標準予防策の理解は歯科医師によって濃淡があり、研修などを通じて理解を深める必要がある」と提言した。一筋縄ではいかない感染症患者対応国の推計では、未発症者を含む感染者は110万~140万人であり、弁護団は「多くの患者は感染を知らずに受診している。問診票で感染の有無を聞いても、感染対策の効果は低い。歯科医療機関は、患者が感染者であるかどうかを問わず、一律に器具を交換したり、滅菌したりしてほしい」と述べている。確かに、感染症患者からすれば「自分の椅子だけシートを敷かれたり、周りをラップで覆われたりした」ことや「診療時間や予約時間を他の患者の後にされた」ことが差別的な処遇であると感じるだろう。しかし医療側からすれば、医療機関である以上、従事者への感染と患者間の水平感染を起こすことは許されない。感染症であると判明した以上は感染のリスクを最小限にする、最大限の工夫が求められている。そして内科診療所と違い歯科診療所は基本的に「外科治療」を行う。日常生活での感染はないと言われている感染症であっても、接触感染のリスクが伴う特異的な場所になる。だからこそ全ての患者に、同等の感染症対策をすべきという、スタンダードプリコーションの概念は必須だという話なのだろう。そうすれば差別的な処遇にもなり得ないと。現状を省みて、「全ての患者」に同等レベルの対策をするのは現実的だろうか。新型コロナウイルス感染症対策の実情を見れば、その答えは自ずと出てくると思う。リテラシーの低い人たちはまた別だが、以前からスタンダードプリコーションに取り組んでいる歯科医療機関はたくさんあるはずだ。特に歯科医療者は自身の感染リスクが高いことを認識しており、保身のためにも徹底した対応をしている。一方的に「歯科」を標的とした記述はただのネガティブキャンペーンに過ぎない。大手メディアだからこそ、問題解決できるよう建設的な議論に持ち込んでほしい。参考文献毎日新聞, 2020年12月28日, B型肝炎感染者2割、歯科で「差別的な扱い」訴訟原告団・弁護団アンケート <URL>