歯科医院での2歳児死亡事故、あす判決。女児の死は回避できたのか?
2017年7月、福岡県の歯科医院にう蝕の治療に訪れていた女児(当時2歳)の容体が急変し、死亡した悲痛な事故が起こった。警察による司法解剖の結果、女児の死因は局所麻酔薬であるリドカインの中毒による低酸素脳症と断定された。女児の歯肉には広い範囲におよぶ出血が確認されたことから、歯科医師が誤って血管内に局所麻酔薬を投与した可能性もあるとみて、業務上過失致死罪で担当していた歯科医師が起訴された。歯科医師には、あす25日に福岡地裁にて判決が言い渡される。この医療事故をめぐっては、歯科医師による対応の難しさに関して歯科業界の内外問わずさまざまな議論がなされており、注目の判決となる。(関連記事)>> 『八王子市歯科医師フッ化水素酸誤塗布事故はなぜ起きたのか?』1D(ワンディー), 2019年10月27日.医療事故の概要業務上過失致死罪に問われているのは、福岡県春日市の歯科医院の元院長で歯科医師の男(56歳)。起訴状によれば、同歯科医師は2017年7月1日、リドカインによる局所麻酔をした女児の容態が急変したにもかかわらず、救急搬送などの必要な救命措置を怠り、2日後に急性リドカイン中毒による低酸素脳症に陥らせ死亡させたとされている。検察側は「歯科医師として基本的な注意義務を怠った」として禁錮2年を求刑しているが、弁護側は女児の死について「予見できなかった」として無罪を主張している。事故当時の流れを時系列で整理当日、女児は母親(当時25歳)と一緒に歯科医院に来院。リドカインによる局所麻酔を受けた後、ラバーダム防湿をし、約1時間のう蝕治療を行った。治療に際しては、抑制具を用いた身体抑制を行なっていた。しかし治療後、女児の身体は硬直し、目の焦点が合わなくなった。歯科医師は「よくあること」だとして院内で休むよう促した。しかしその約50分後、女児は激しいけいれんを起こし、大学病院に救急搬送された。そしてその2日後、大学病院にて死亡が確認された。以上が、今回の医療事故の経緯である。検察側は、治療後の女児に対する歯科医師の対応に関して、適切な観察や対処を怠ったと指摘。歯科医師が治療が終わった17時10分から18時までにパルスオキシメーターなどで正確な測定をしたり救急搬送したりすれば、女児の死は回避できたとしている。一方で弁護側は、麻酔薬の使用量や使用方法に問題はないため、中毒死が起こり得ることは予見不可能であり、死亡は防げなかったと訴えている。主な争点は「予見可能性」と「回避可能性」今回の公判の主な争点は、下記の2点であると考えられる。歯科医師が、女児の死亡を予見できたか?治療後の歯科医師の対処次第では、女児の死を回避できたか?歯科医師も全身管理を学んでいるとはいえ、今回のような稀なケースにおいては、歯科麻酔を専門としない歯科医師では対応が難しかった可能性もある。明日の判決が出しだい、本記事に追記を行なっていく。追記:執行猶予判決(2022年3月25日14時)福岡地裁は3月25日、歯科医師に禁錮1年6ヶ月、執行猶予3年(求刑・禁錮2年)を言い渡した。歯科医師は無罪を主張していたが、福岡地裁は「医学的に知識を持たない父親でも異変に気付いていた」「問診などをしていれば中毒症状が起きている可能性に気付くことができた」などとして、執行猶予付きの有罪判決となった。参考文献毎日新聞『虫歯治療後に2歳児が死亡 歯科医は回避できたか 25日に判決』平塚 雄太, 2022年3月24日.1D(ワンディー)『福岡の歯科医院で女児死亡、報道に対して日本小児歯科学会が抗議』松岡 周吾, 2020年7月2日.