エナメル質より硬い?あずきバー VS 歯、硬さを比べると衝撃の事実が!
新型コロナウイルスの話題で隠れていたが、2020年の夏は猛暑であった。9月も中旬に差し掛かろうとしている今日も、厳しい残暑が日本列島にとどまっている。猛暑といえば、アイスである。なかでも歯科業界で話題が上がりがちなのは「あずきバー」ではないだろうか。世の中に流通しているアイスのなかで「最も硬い」アイスとして名高い。あずきバーは硬い井村屋のあずきバーは、40年以上の歴史を誇るベストセラーだ。日本の人口は約1.2億人だが、あずきバーは年間で約2.54億本も売れている。着色料や香料など余分なものは一切使わず、空気もほとんど混入されていない。「ぜんざいを凍らせたようなアイス」をコンセプトとしており、だからこそあの硬さが実現されているようだ。公式ホームページに掲載されている「固く凍っているため、歯を痛めないようにご注意ください」という注意書きが硬さを物語っている。あずきバーは硬い筆者も定期的にあずきバーを食べているが、やはり硬い。冷凍庫から出した直後は硬くて食べられたものではないので、少し待ってから食べるのがいつもの流れである。ネット上でも、「あずきバーで歯が欠けた」という声が後を絶たない。もしかしたら、読者の歯科医師・歯科衛生士の方は「あずきバーで歯が欠けた・折れた」という患者さんを対応した経験もあるのではないだろうか。Googleであずきバーについて調べていると、「あずきバー 殺人未遂」「あずきバー 鈍器」などと穏やかではない関連ワードも出てくる始末である。あずきバーの硬さはどれくらい?実際、あずきバーはどれくらい硬いのか。「あずきバーで歯が欠ける」ということは理論上発生し得るのか。あずきバーの正確な硬さを測定したいと思ったものの、そのような機械は持ち合わせていない。インターネット上で色々と調べていると、岐阜県の刃物メーカーのWebサイトに、あずきバーを実際にロックウェル硬度計で測定した結果が示されていた。前提知識として、ロックウェル硬さ(HRC)はダイヤモンドが HRC 711 相当、石英が HRC 107.3 相当、チタン合金が HRC 25 相当、アルミ合金が HRC 1.5 相当程度である(※1)。そして、実際にあずきバーのロックウェル硬さを測定した結果、圧をかけると溶けてしまうため硬度が定まらず測定不能ではあるものの、HRC 300 を一瞬超えたということだ。これは「あずきバーは石英よりも硬い」ということを示している。歯の硬さはどれくらい?1D読者はご存知の方も多いかもしれないが、エナメル質のビッカース硬さは270〜400である(※2)。ここでは中央地の335をエナメル質のビッカース硬さと仮定して、ロックウェル硬さを求めていこう。ロックウェル硬さは、0.1 ×(ビッカース硬さ - 3)で近似するため、この計算式に当てはめるとエナメル質のロックウェル硬さは HRC 33.8 となる。あずきバーの硬さは測定不能ではあるものの、人体で最も硬い組織であるエナメル質の10倍以上の硬さが出ているのである。主訴:あずきバーで歯が欠けた実際にデータで比較してみると、あずきバーは非常に硬いアイスであるということ、またその危険性がご理解いただけたと思う。あずきバーは特に高齢の方に人気が高い(井村屋談)そうであるから、義歯を装着している方であればなおさら噛み切ることが難しくなるだろう。義歯で使われる人工歯はエナメル質とは比較にならないほど柔らかいためだ。夏の風物詩である「主訴:あずきバーで歯が欠けた」という患者さんの来院は、われわれ歯科医療者がきちんと指導してあげることで未然に防げるのかもしれない。参考文献デジタルロックウェル硬度計であずきバーの硬度を計算してみた, ジー・サカイのNO KNIFE NO LIFE,<URL>, 2020年9月2日閲覧『コア歯科理工学 第1版』, 小倉英夫ら, 医歯薬出版株式会社, 2008.