岡山大学、「舌の動きの衰え」とフレイルが関連することを発見
岡山大学の研究チームは、フレイルになりやすい人の特徴として「舌の動きの衰え」が関連していることを明らかにした。高齢者の健康寿命を延伸するために、舌の動きのトレーニングや衰えの予防などが有効である可能性が示唆されている。本研究成果は、2022年1月にスイスの学術雑誌・International Journal of Environmental Research and Public Healthに掲載されている。今さら聞けない「フレイル」とは?研究の解説に入る前に、「フレイル(虚弱)」という概念についてご紹介しておこう。フレイルとは、年齢とともに身体や精神の力、社会的つながりが弱くなった状態のことを表す概念である。フレイルのまま放置すると、疾患にはかからずとも介助・介護が必要な状態になる可能性が高くなるとされる。しかし、フレイルは適切に対応をすることで予防・改善することができるとされており、特に口腔の機能もフレイルに関係する重要な器官であることが指摘されている。日本老年医学界による定義(2014)によれば、フレイルとは下記の概念のことである。高齢期に生理的予備能が低下することでストレスに対する脆弱性が亢進し、生活機能障害、要介護状態、死亡などの転帰に陥りやすい状態で、筋力の低下により動作の俊敏性が失われて転倒しやすくなるような身体的問題のみならず、認知機能障害やうつなどの精神・心理的問題、独居や経済的困窮などの社会的問題を含む概念「舌の動き」とフレイルとの関連研究チームは、岡山大学病院の歯科・予防歯科部門を受診した60歳以上の患者を対象にフレイル評価を行い、健康と判断された人を2年間にわたって追跡調査した。2年後に健康のままだった人とフレイルになった人とにどのような違いがあるかを分析したところ、フレイルになった人は、すでに舌の動きが衰えていたことが明らかになった。具体的に言えば、「タ」の1秒間に発音できる回数が少ない人は、2年後にフレイルになりやすいという結果であった。舌の動きが衰えることによって、コミュニケーションの障害や栄養摂取の障害などが引き起こされ、フレイルに影響している可能性が示唆された形だ。口腔機能から健康長寿を作るこのことから研究チームは、「舌の動きは訓練をすることにより維持・改善できると言われているため、舌の動きが衰えないようしっかり動かすことでフレイルを予防できるかもしれない」と語っている。本研究について、筆頭著者である竹内倫子講師(岡山大学病院歯科・予防歯科部門)は、「身体の健康と口腔の健康はつながっている。元気な身体で楽しい人生を過ごすためにも、う蝕や歯周病といった疾患に注目するばかりでなく、口腔の機能の面も大事にしていただきたい」と語っている。今後の研究にも注目が集まる。参考文献Noriko Takeuchi, Nanami Sawada, Daisuke Ekuni, Manabu Morita, Oral Factors as Predictors of Frailty in Community-Dwelling Older People: A Prospective Cohort Study, International Journal of Environmental Research and Public Health, 10.3390/ijerph19031145, 2022.1.22.『フレイルになる人は 2 年前に舌の動きが衰えていた!』岡山大学プレスリリース, 2022年3月17日.