歯科用語集
2025年10月28日

根管処置

「根管処置」とは?歯科用語の解説と症例を紹介

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定義・語源

根管処置とは、歯の内部にある根管を治療する手技である。主に、歯髄が感染したり、炎症を起こした場合に行われる。語源は「根管」と「処置」に由来し、根管内の病変を取り除き、感染を防ぐための治療を指す。根管処置は、歯を保存するための重要な手段であり、適切な技術と知識が求められる。


臨床における位置づけ・判断基準

臨床において根管処置は、歯髄炎や根尖性歯周炎などの病状に対する主要な治療法である。判断基準としては、患者の症状、レントゲン検査による根管の状態、感染の広がりなどが考慮される。根管処置を行うことで、歯を保存し、痛みを軽減することが可能である。さらに、適切な根管充填が行われることで、再感染のリスクを低減することができる。

関連用語・類義語との違い

根管処置に関連する用語には、「根管治療」や「歯髄治療」があるが、これらは基本的に同義で使用されることが多い。しかし、根管治療はより広義な意味を持ち、根管処置を含むすべての治療を指す場合もある。一方、根管処置は特に根管内の感染や病変に対する具体的な処置を指すため、明確な違いが存在する。

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根管処置の実践ガイド。歯科臨床で役立つ症例と術式の判断ポイント

根管処置の実践ガイド。歯科臨床で役立つ症例と術式の判断ポイント

根管処置の定義と重要性根管処置とは、歯の内部にある根管を清掃し、感染を除去する治療法である。この処置は、う蝕や歯髄炎などによって感染した歯を保存するために不可欠であり、歯科臨床において非常に重要な役割を果たす。根管処置を適切に行うことで、歯を抜かずに済む可能性が高まり、患者のQOL(生活の質)を向上させることができる。根管処置の手順と術式根管処置は、以下の手順で行われる。まず、局所麻酔を施し、歯の冠部を開放する。次に、根管内の感染組織を除去し、根管を清掃・形成する。続いて、根管を消毒し、最終的に根管充填を行う。これらの手順は、使用する器具や材料によって異なる場合があるため、歯科医師は適切な術式を選択することが求められる。根管処置における症状と診断根管処置が必要となる主な症状には、歯の痛み、腫れ、歯肉の炎症などがある。これらの症状が見られた場合、歯科医師は詳細な診査を行い、X線検査を通じて根管の状態を確認する。診断が確定した後、適切な処置を行うことが重要である。根管処置のメリットとデメリット根管処置のメリットには、歯を保存できること、感染の再発を防げること、そして患者の痛みを軽減できることが挙げられる。一方、デメリットとしては、処置が複雑であるため、技術的な難易度が高いことや、場合によっては再治療が必要となることがある。これらの点を考慮し、患者に適切な説明を行うことが求められる。根管処置の注意点とコツ根管処置を行う際の注意点として、感染の完全な除去が挙げられる。感染が残ると、再発のリスクが高まるため、徹底した清掃が必要である。また、根管の形状や長さを正確に把握するために、適切な診断機器を使用することも重要である。さらに、根管充填材の選択や充填方法にも注意を払い、最適な結果を得るためのコツを身につけることが求められる。根管処置の症例と臨床応用根管処置の症例としては、急性歯髄炎や慢性根尖性歯周炎などがある。これらの症例に対して、適切な診断と処置を行うことで、歯を保存することが可能である。臨床においては、症例ごとの特性を理解し、柔軟に対応することが求められる。根管処置の今後の展望根管処置の技術は日々進化しており、新しい材料や器具の開発が進んでいる。今後は、より高精度な処置が可能となり、患者の負担を軽減することが期待される。また、根管処置に関する研究が進むことで、より効果的な治療法が確立されることが望まれる。
1D編集部
2024年6月1日
歯科治療における感染性心内膜炎のリスクと予防策

歯科治療における感染性心内膜炎のリスクと予防策

感染性心内膜炎(infectious endocarditis,IE)は心疾患に伴う心臓内の異常血流の影響や、人工弁などの異物の影響で形成される心内膜血栓の表面に細菌が付着するために生じる疾患である。歯科治療後にはしばしば菌血症が生じるため、IEのリスクがある患者では歯科処置時の処置の内容によって、抗菌薬の予防処置が必要とされている。今回は感染性心内膜炎と歯科治療の関連性をまとめ、注意すべき点について解説したい。歯科治療が菌血症がもたらす可能性成人における菌血症を起こす歯科処置として、出血を伴ったり、根尖を越えるような侵襲的な歯科処置があげられるが、そのうち抜歯が最もよく認識されている処置だろう。そのほかにも、出血を伴う口腔外科処置やインプラント治療、スケーリング、感染根管処置、ラバーダム処置なども菌血症を誘発する処置である。小児領域においても、予防策を必要とする歯科処置は、基本的には成人における歯科処置と同様である。成人で最も菌血症の誘因となる抜歯だが、歯根の吸収を伴っている乳歯の場合は永久歯の抜歯ほどの侵襲性はない。また、 乳歯の脱落時に出血を伴うことがあるが、通常は菌血症が考慮されることはない。小児のIEでは先天性心疾患が多く重症化しやすいという特殊性から、予防の重要性はむしろ成人よりも大きいと考えられている。また、歯科処置をせずとも、日常生活における咀嚼やブラッシングでも出血することがあるため、菌血症は引き起こされうる。口腔内の衛生状態の悪い場合は、より菌血症が引き起こされやすいと考えられ、日常の口腔衛生状態の管理が菌血症の発症抑制にきわめて重要であるといえる。歯科処置に対する予防的抗菌薬投与では、実際にどのような患者に対し、抗菌薬の予防投与を行うべきなのか。以下に示した高度リスク群に対しては、予防的抗菌薬の投与が推奨されている。中等度リスク群に対しては、予防的抗菌薬の投与が提案されている。中等度リスク群はIEを発症したとしても重篤な結果に至る可能性が高くはない群であるが、個々の症例において患者と話し合い、予防投与についての決定がなされることが望ましい。〈成人〉1. 高度リスク(感染しやすく、重症化しやすい患者)【推奨の強さ1:強く推奨する、エビデンス総体の強さ:B(中)】生体弁、機械弁による人工弁置換術患者、弁輪リング装着者IEの既往を有する患者複雑性チアノーゼ性先天性心疾患(単心室、完全大血管転位、ファロー四徴症)体循環系と肺循環系の短絡造設術を実施した患者 2. 中等度リスク群(必ずしも重症とならないが感染性心内膜炎を引き起こす可能性が高く、予防した方が良いと考えられる患者)【推奨の強さ2:弱く推奨する(提案する)、エビデンス総体の強さ:C(弱)】ほとんどの先天性心疾患(単独の心房中隔欠損症(二次孔型)を除く)後天性弁膜症(逆流を伴わない僧帽弁狭窄症では感染性心内膜炎のリスクは低い)閉塞性肥大型心筋症弁逆流を伴う僧帽弁逸脱人工ペースメーカ、植込み型除細動器などのデバイス植込み患者長期にわたる中心静脈カテーテル留置患者〈小児/先天性心疾患〉1. 高度リスク群(感染しやすく、重症化しやすい患者)【推奨の強さ1:強い 、エビデンス総体の強さ:C(弱)】人工弁術後IEの既往姑息的吻合術や人工血管使用例も含む未修復チアノーゼ型先天性心疾患手術、カテーテルを問わず人工材料を用いて修復した先天性心疾患で修復後6ヶ月以内パッチ、人工材料を用いて修復したが、修復部分に「いざん病変を伴う場合大動脈縮窄2. 中等度リスク群(必ずしも重症とならないが感染性心内膜炎を引き起こす可能性が高く、予防した方が良いと考えられる患者)【推奨の強さ2:弱く推奨する(提案する)、エビデンス総体の強さ:C(弱) 】高度リスク群、低リスク群を除く先天性心疾患(大動脈二尖弁を含む)閉塞性肥大型心筋症弁逆流を伴う僧帽弁逸脱3. 低リスク群(感染の危険性がとくになく、一般の人と同等の感染危険率とされる患者)【推奨の強さ3、エビデンス総体の強さ:C(弱)】単独の二次孔型心房中隔欠損術後6ヶ月を経過し残存短絡を認めない心室中隔欠損または動脈菅開存冠動脈バイパス術後弁逆流を合併しない僧帽弁逸脱生理的、機能性または無害性心雑音弁機能不全を伴わない川崎病の既往抗菌薬の標準的予防投与法【成人】抗菌薬の選択として、経口投与でも筋肉内投与に匹敵する血液中濃度が得られ、さらにその効果が長時間維持できることからアモキシシリン2gが推奨されている。βラクタム系薬アレルギーの場合は、クリンダマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシンが推奨されている。何らかの理由でアモキシシリン2g投与を減量する場合は、弁膜に付着した細菌の増殖を抑制するという薬理学的な根拠から、初回投与の5〜6時間後にアモキシシリン500mgの追加投与を考慮する。【小児】経口投与可能な対象であれば、アモキシシリンを選択する。アレルギーなど、使用する抗菌薬に関する考え方は成人に準ずる。わが国における小児の新生児心疾患の有病率は約100人あたり1人とされており、一般開業歯科医もIEの発症リスクを有する小児に遭遇する機会は多い。IEリスクを有するすべての小児が、発症予防を念頭に置いた歯科治療を受けられることが望ましい。(注1)または体重あたり30mg/kg(注2)なんらかの理由でアモキシシリン2gから減量する場合は、初回投与5〜6時間後にアモキシシリン500mgの追加投与を考慮する日頃からの意識を予防的抗菌薬投与を行なっても、必ずしもIEを予防できない例も残念ながら存在する。しかしながら、IEはいったん発症すると、入院や手術、脳梗塞や志望に至ることもあり、患者個人に対する影響は甚大である。歯科医院においての、抗菌薬投与以外の口腔衛生の維持などによるIE予防の徹底、早期発見のための教育なども重要である。
482 TSUNAGU
2023年2月21日
【クッキリわかる】歯性上顎洞炎、ベストプラクティス

【クッキリわかる】歯性上顎洞炎、ベストプラクティス

歯性上顎洞炎は歯科と耳鼻科の両方で治療しており、治療方針も施設毎に異なる疾病である。外科治療を必要とする場合は、口腔外科単独で手術するケースもあれば、耳鼻科と連携して手術するケースもあり、確実な知識とスキルを必要とする。本記事では、歯科医院において歯性上顎洞炎に対応するための基礎知識を整理していく。歯性上顎洞炎の概要1943年、Bauewによって最初に上顎副鼻腔炎(MSDO)と呼ばれる。それ以降、疾患としての認識が広まった。Abrahamsらは、上顎臼歯部の感染が60%で上顎洞病変を示したMattilaは、根尖部周囲骨炎の約80%の歯に洞粘膜過形成が見られた。大林らは、感染症患者の71.3%に上顎洞粘膜の変化を認めた。Melenらは、慢性細菌性上顎洞炎の244症例の患者198例の研究で、症例の40.6%に歯の病因を発見。Mailletらは、上顎洞炎と一致する所見を有する82のCBCTより50%以上が歯性であると結論付けた。 Bomeliらは、副鼻腔疾患が重症である程、原因歯を有し、それが86%もあると発見した。松本らは、片側性副鼻腔炎の症例の72%に歯性の原因があることを発見した。歯性上顎洞炎の発生率は上顎洞病変の10〜12%と比較的頻度の高い疾患で増加傾向にあると言われてるが、依然歯に原因がある副鼻腔炎の診断は、見落としや誤診が多いのが現状である。見落としの結果、耳鼻科で行われるESS(内視鏡下副鼻腔手術)だけを行った後も再発をし、抜歯及びESS再手術となったケースも存在し、Longhiniらは見逃されている歯性上顎洞炎はESS術後の再発の危険因子であると報告している。歯性上顎洞炎の原因と症状、診断とは?歯性上顎洞炎の原因は、主に下記の3点である。根尖性歯周炎の拡大抜歯時穿孔(上顎第一大臼歯、第二大臼歯)異物の混入歯性上顎洞炎の特徴や症状としては、下記が挙げられる。片側性原因歯動揺原因歯部歯肉頬移行部の炎症患側の偏頭痛前額部痛、頬部痛鼻閉・後鼻漏歯性上顎洞炎の診断、読影、臨床検査について歯性上顎洞炎を診断する要素としては、下記を診るべきである。病歴の聴取(副鼻腔疾患や歯科治療歴) 副鼻腔症状:鬱血、鼻閉、後鼻漏、顔面痛、悪臭口腔内症状:原因歯の生死判定、fistelの有無、根尖圧痛の有無画像及び臨床検査(洞粘膜変化、原因歯の歯根周囲の所見の有無)エックス線画像において歯性上顎洞炎を診断するための所見には、主に下記がある。原因歯の歯槽硬線の消失上顎洞底線の消失上顎洞不透過性亢進(=液面形成)上顎洞粘膜の肥厚臨床検査の所見としては、下記が挙げられる。鼻の評価:22項目副鼻腔評価尺度(SNOT-22)、副鼻腔炎の主症状の有無、中鼻道の内視鏡的所見(浮腫、ポリープ、化膿)の有無。患側鼻閉感、鼻粘膜や下鼻甲介の発赤・腫脹、後鼻漏、味覚異常の有無。歯髄および根尖組織の歯内療法評価:温度診、電気歯髄診、打診、触診、プロービング、動揺度検査。患側犬歯、歯肉頬移行部から頬部、眼窩下部にかけての発赤、熱感、疼痛、浮腫性腫脹の有無。炎症評価:血液検査。発熱、全身倦怠感の有無。上顎洞粘膜繊毛機能評価:上顎洞内に造影剤を注入し、その排泄機能を数日後に調べる。歯性上顎洞炎に対するベストプラクティス歯性上顎洞炎の治療について、急性の場合と慢性の場合とに分けて解説を行う。急性の場合急性の歯性上顎洞炎の場合の治療・対処法は下記である。抗生剤、解熱鎮痛剤、栄養補給、安静消炎処置(炎症が洞内に留まっている場合):未処置歯・根管処置歯であれば経過観察。根尖病変・歯根嚢胞があれば原因歯抜去、ドレナージ、洞内洗浄消炎処置(炎症が洞外に波及している場合):骨膜炎や頬部蜂窩織炎は通常の切開保護床装着なお耳鼻科の場合は、消炎治療(抗菌薬、解熱鎮痛)や補助的治療(抗アレルギー薬、鼻粘膜充血改善薬)やドレナージ(上顎洞穿刺・洗浄)を行う。慢性(3ヶ月以上経過)の場合慢性の歯性上顎洞炎の場合の治療・対処法は下記である。原因歯治療:未処置歯・根管処置歯であれば経過観察→歯根部処理 or 抜歯原因歯治療:根尖病変・歯根嚢胞があれば原因歯抜去、ドレナージ、洞交通部からの洗浄、保護床装着抗生剤(マクロライド少量長期療法)+消炎酵素剤上顎洞炎根治術(Caldwel-Luc法、Denker法)洞口腔瘻閉鎖術なお耳鼻科の場合は、マクロライド少量長期療法や、鼻漏や鼻閉、疼痛などの症状や画像所見(洞内陰影残存)がなければ経過観察を行う。症状や画像所見がある場合は、内視鏡下副鼻腔手術(ESS)を行う。歯性上顎洞炎の対応で留意すべきこととは?歯性上顎洞炎の対応については、下記の項目に留意すべきである。画像検査はパノラマX線、デンタル検査に加え、CBCTは必ず併用し、確実な画像診断をすべき。初期治療として抜歯を行ったが再発してしまい、ESSを行なった症例もあり、必ずしも抜歯が第一選択ではない。根管治療が完了している場合、ESSを初期治療として行なった症例での短期的な上顎洞炎のコントロールが可能。外科的介入は根管治療完了後にすべき。耳鼻咽喉科医と歯内療法専門医との間の協力的な取り組みが重要。参考文献歯性上顎洞炎に対する内視鏡下鼻内手術時の原因歯処置 佐藤公則 耳鼻臨床 99:12;1029~1034, 2006歯性上顎洞炎の画像診断モダリティと治療方針に関する比較検討 桐広樹ら 頭頸部外科 28(1):39〜44,2018Maxillary Sinusitis of Endodontic Origin AAE ポジションステートメント
Imani
2022年3月3日
歯科治療による死亡事故 File.02:訪問歯科での感染根管治療で...

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超高齢化社会を迎え、訪問歯科診療のニーズは年々高まっている。これから更に高齢化が進み、歯科医院に通えなくなる患者も増えると予想される。しかし、訪問診療が患者のQOLを必ず上げるとは限らない。本記事では、訪問診療で感染根管治療を受け患者が死亡した一例を取り上げる。処置の詳細、なぜ死亡したか、今後私達はどう対応するべきかを考察したい。事故の経緯67歳の男性(以下、Bさんとする)。糖尿病による慢性腎不全で週2回の透析を受けていて、肝硬変の既往があった。平成15年12月某日、Bさんは下顎右側第一大臼歯の疼痛を主訴に訪問診療を受けた。診療に当たった歯科医師は所見から根尖性歯周炎と診断、感染根管治療を行った。診療時に異変は見られなかったが当日夜、右側顎下部に疼痛が生じた。その後Bさんは食欲低下、全身倦怠感を訴え、翌日に救急搬送された。救急搬送されたときの状態は以下の通りである。バイタルサイン体温:36.9°C血圧:86/60mmHg脈拍:90/分意識レベル:Japan coma scale(JCS) I-3 (刺激しないでも覚醒している状態だが、自分の名前、生年月日が言えない。)局所所見右側頬部から頸部にかけてびまん性腫脹があった。発赤なし。触診で同部に熱感があり、圧痛が著明であった。X線所見X線CTでは右側頬部から下顎部にかけて皮下軟組織の腫脹があった。下顎部の肥厚した皮下軟組織内にガス像を認めた。初診時の臨床検査所見白血球数:12074/mm3赤血球数:2.61万/mm3血色素量:8.0g/dlヘマトクリット値:25.1%PLT:19.2万/μlCRP:23.88mg/dlざっとみると、白血球数やCRPが高く炎症の所見がみられ、右側顎下部は腫脹し、X線でもガスが中に溜まっていることが分かる。<臨床診断>右側急性下顎骨骨炎ならびに頸部蜂窩織炎画像:日本有病者歯科医療学会雑誌よりBさんは即日入院となり抗菌薬が投与されたが、入院翌日には血圧低下、意識の混濁が見られた。動脈血ガス分析からpH:7.289、PCO2:23.2mmHg、PO2:91.8mmHg、代謝性アシドーシスを認めた。動脈血培養および閉鎖膿からMRSAが分離培養された。X線写真では右側顎下部のさらなる腫脹、ガス像の増大がみられ、右側耳下腺も変形していた。以上より臨床症状と合わせて敗血症と診断された。薬剤を変更し、透析の管理も行うために腎臓内科に転科となった。徹底した全身管理と局所洗浄、ドレナージを追加したがCRPは高いままで炎症は収まらなかった。これ以上の回復は見込めないと判断し、透析を中止、数日後Bさんは死亡した。死因はカリウム、尿酸の増加による心不全であった。訪問診療がゆえのリスク通常、感染根管治療で死亡するリスクは殆どないはずだ。神経の治療を前にして「遺書書いてなかったな…」などと思う患者はいないだろう。しかし、事実としてBさんは「歯の根っこの治療」のあとで体調が悪くなり、その1ヶ月後には死亡してしまった。健常者の場合一時的な菌血症に止まり敗血症に移行することは稀である。しかしBさんは糖尿病性腎症に罹患し、易感染状態であったことから重篤化してしまった可能性が高い。また早期にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が検出されたことから、処置による感染も否定できない。訪問診療は患者のベットサイドに往診し処置することが求められているため、衛生面に置いて良好な環境が得られるとは言えない。そして患者はBさんのように有病者であることが一般的とも言え、病歴の聴取と全身管理にはより一層の注意が必要だと、改めて考えさせられる例となった。要因が重なったことにより起こった悲劇かもしれないが、誰にでも遭遇し得る状況だということを覚えておきたい。根管治療と言えど観血処置である以上、徹底した問診と医科への対診、最大限の環境整備、全身疾患に配慮した処置と感染対策が求められる。そして何よりも”訪問診療”にこだわりすぎず、臨機応変に患者と向き合うことが大切ではないだろうか。歯科セミナーなら「1D(ワンディー)」で!日本最大級の歯科医療メディア「1D」では、診療に役立つオンラインセミナーを多数開催中。もっと知りたい臨床トピックから超ニッチな学術トピックまで、参加したいセミナーが見つかります。下記ボタンから、開催中のセミナーを見てみましょう!開催セミナーを見てみる参考文献藤井景介, 今井謙一郎, 都丸泰寿, 内藤実, 坂田康彰, 福島洋介, ... & 依田哲也. (2005). 訪問歯科診療における感染根管処置後に発症した敗血症の 1 例. 有病者歯科医療, 14(2), 81-86.
宇梶 淳平
2020年6月16日

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