東北大、P.g.菌が血管修復を妨げるメカニズムを解明
歯周病の病態には、複数の歯周病原細菌が関わっている。なかでも、Porphyromonas gingivalis(P. gingivalis)は歯周病の発症に最も深く関わるキーストーン病原体として着目されている。東北大学の多田浩之講師らの研究チームは、P. gingivalisが血管の修復を妨げる仕組みを明らかにした。歯周病患者におけるP. gingivalisには、plasminogen activator inhibitor-1(PAI-1)というタンパク質を分解する作用がある。PAI-1は血管の修復を担う血管内皮細胞の細胞移動に関わるため、これが分解されてしまうことによって、血管の修復が阻害されるという仕組みだ。P. gingivalisをヒトの血管内皮細胞に感染させると、PAI-1の産出量が著しく減少したことから、本研究の成果につながった。本研究によって、アルツハイマー型認知症や心血管疾患など、血管の異常が関わる全身疾患に関する研究が前進することが期待される。ペリオアカデミーを開催1Dでは、12月21日から歯周病のトップランナーの講師陣によるオンライン研修コース『ペリオアカデミー』を開講する。全11回、最先端の歯周病臨床を知ることができる。ペリオを学びたい歯科医師の先生方は、ぜひ参加をご検討いただきたい。コースの詳細を見てみるP. gingivalisが血管の修復を阻害する本研究について、より詳しく見ていこう。P. gingivalisは、タンパク質分解酵素であるジンジパインを分泌し、ヒトの免疫に関わるタンパク質を壊し、殺菌されないよう抵抗している。また、ジンジパインはアルツハイマー型認知症の悪化に寄与することも、近年の研究によって明らかにされている。歯周病では、歯周組織が慢性的な炎症に陥理、歯周ポケットのなかで血管が破れ、出血する。P. gingivalisは自身の増殖のために鉄を必要とする細菌で、ジンジパインにより赤血球を破壊しヘモグロビンからヘム鉄を摂取する。歯周ポケットの出血は、P. gingivalisの増殖にはうってつけの環境となる。血管の内側は血管内皮細胞で裏打ちされており、出血を生じると血管内皮細胞は破れた穴を埋めるように移動し、血管を修復する。この移動に、PAI-1タンパク質が必要であるが、これがP. gingivalisによって分解されてしまう、という機序だ。研究の方法と詳細のメカニズムP. gingivalisをヒトの血管内皮細胞に感染させると、PAI-1の産出量が著しく減少した。しかし、人為的にジンジパインを欠損させたP. gingivalisを感染させても、PAI-1の産出量は減少しなかったという。さらに、P. gingivalisから精製したジンジパインでPAI-1を処理すると、PAI-1が複数の断片に分解されることが確認された。このことから、P. gingivalisから分泌されたジンジパインはPAI-1をタンパク分解していることが明らかになった。血管内皮細胞の創傷は、細胞の移動により24時間程度でほぼ閉鎖される。しかし、血管内皮細胞をPAI-1阻害薬やPAI-1受容体であるLRP1拮抗薬で処理すると、24時間経過後も創傷はほとんど閉鎖されなくなる。そこで、血管内皮細胞にP. gingivalisを感染させると、血管内皮細胞の創傷治癒は遅くなった。それに対して、ジンジパインを失活させたP. gingivalisでは、血管内皮細胞の創傷治癒は遅くならなかった。血管内皮細胞に精製ジンジパインを添加すると創傷治癒は遅くなったことから、ジンジパインによりPAI-1が分解され、その結果として血管内皮細胞の創傷治癒が妨げられることが明らかになったのである。歯周病 × ヘルスケアにさらに注目が集まる血管の修復が遅れると、歯周病の場合、歯周ポケットの出血が持続する。その結果、P. gingivalisはさらに増殖し、歯周病は悪化の一途をたどる。また、P. gingivalisが破れた血管から体内に侵入することで、アルツハイマー型認知症や心血管疾患など血管の異常が関わる全身疾患を悪化させる可能性も考えられる、と研究チームは指摘している。本研究は、先月25日に学術誌Journal of Innate Immunityのオンライン速報版に掲載されている。ペリオを深く学びたいなら!冒頭で触れたように、1Dでは12月21日から「ペリオアカデミー」を開講する。歯周組織・歯周病の基礎から診査診断、基本治療〜外科〜メインテナンスの流れに沿って、歯周治療の全てを網羅し徹底的に学ぶことができる。総勢6名、プロフェッショナルの講師陣が全11回にわたってレクチャー。希望者は講師から症例のフィードバックが受けられる。ぜひご参加いただきたい。講義詳細を見てみる参考文献Porphyromonas gingivalis Gingipains-Mediated Degradation of Plasminogen Activator Inhibitor-1 Leads to Delayed Wound Healing Responses in Human Endothelial cells, Li-Ting Song, Hiroyuki Tada, Takashi Nishioka, Eiji Nemoto, Takahisa Imamura, Jan Potempa, Chang-Yi Li, Kenji Matsushita, Shunji Sugawara, Journal of Innate Immunity, 2021.11.歯周病菌が血管の修復を妨げる仕組みを発見 -歯周病菌は血管内皮細胞の創傷治癒を遅延させる-, 東北大学プレスリリース, 2021年12月9日.