口腔の機能と状態が要介護の発生リスクに作用する
これまで口腔機能と要介護発生との関連に着目した研究は少なく、特に口腔乾燥やむせについてはほとんど報告がありませんでした。また口腔状態の集団全体に対する要介護発生への寄与の大きさを調べるために、人口寄与割合(PAF)を計算し比較した研究はありませんでした。そこで東北大学大学院歯学研究科 国際歯科保健学分野の小坂教授らのグループは、およそ44,000人の高齢者を対象に調査を行いました。調査の結果、4項目の口腔状態の悪化が、それぞれ要介護発生リスクの上昇と関連することがわかりました。研究の背景これまで口腔機能と要介護発生との関連に着目した研究は少なく、特に口腔乾燥やむせについてはほとんど報告がありませんでした。また人口寄与割合(PAF)を計算し比較した研究もありませんでした。そこで本研究では、口腔の状態(現在歯≤19本、咀嚼困難、むせ、口腔乾燥)が9年間の追跡期間における要介護発生にどのように関わるかを調査しました。研究の対象と方法本縦断研究では、日本老年学的評価研究機構の2010年調査をベースラインとした、9年間の追跡調査データを使用しました。ベースライン時点で日常生活に誰かの介助を必要としている対象者を除外し、自立高齢者のみを解析対象者に含めました。また各変数は以下の通りとしました。また共変量として以下を含めて解析を行いました。性別年齢婚姻状態社会経済的状況(教育歴、等価所得)既往歴(糖尿病の有無、高血圧の 有無、脳卒中の有無、がんの有無)身体機能(歩行時間)生活習慣(喫煙歴、飲酒歴)統計解析にはCOX比例ハザードモデルを用いて、ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)と、人口寄与割合 (PAF:Population attributable fraction)を算出しました。PAFは、もしそのリスク因子に曝露されている人 がいない場合、集団において要介護の発生が減少する割合を表す指標です。研究の結果解析対象者は44,083人(平均年齢:73.7±6.0歳、女性:53.2%)でした。また追跡中(中央値3,040[2,753- 3,303]日)に、8,091人(18.4%)が新たに要介護認定を受けました。全体での100人年あたりの発生率は2.39に対して、以下のような結果が得られました。多変量解析の結果、新規要介護認定リスクは咀嚼困難あり、口腔乾燥あり、現在歯数≤19本、むせありの順で高く、HRはそれぞれ以下の通りでした。人口寄与割合(PAF)を算出し比較したところ、新規要介護認定の発生における口腔4項目のPAFは、現在歯数(12.0%)が最も大きく、次いで咀嚼困難(7.2%)、口腔乾燥(4.6%)、むせ(1.9%)でした。研究の結論9年間の縦断研究の結果、4項目の口腔状態の悪化が要介護発生リスクを高めることが明らかになりました。また新規要介護認定リスクとの関連は、4項目の口腔状態のうち、咀嚼困難でもっとも大きく、むせがもっとも小さいことがわかりまし た。要介護認定の発生に対するPAFでは、4項目の口腔状態の中で、歯数(≤19本)が最も大きく、歯の喪失の高い有病率が理由として考えられ、歯の喪失の予防の重要性が示唆されました。研究の意義適切な予防方策や治療介入・保健事業介入を通して、高齢者の口腔の健康の低下の防止・維持・向上を図ることが、将来の要介護発生リスクを低減することに寄与する可能性が示唆されました。参考文献東北大学プレスリリース 歯数・口腔機能の維持は将来の要介護認定リスクを下げる(URL)