骨粗鬆症は、パノラマエックス線でスクリーニングできる
パノラマエックス線は、1年間に国内だけで1,100万枚撮影されていると言われている。パノラマエックス線は歯科疾患の診断だけでなく、骨粗鬆症のスクリーニングができるという研究があるのをご存知だろうか。本記事ではパノラマエックス線での骨粗鬆症のスクリーニングの方法と、その意義についてまとめる。そもそも骨粗鬆症とは?簡単に、骨粗鬆症についてまとめておこう。骨粗鬆症とは、骨密度(単位体積当たりの骨量)が減少し、骨の構造が劣化する進行性の代謝性骨疾患である。骨粗鬆症が進行すると、正常な骨が折れると予想されうる外傷よりも軽い外傷の後に起こる、脆弱性骨折が起きる。脆弱性骨折の好発部位は大腿骨頚部であり、固定にはベッドでの安静を要する。ベッドで安静にしていると筋力が落ちて寝たきりになることもしばしばあるので、骨粗鬆症は間接的に寝たきりの原因になる。寝たきりにならなくても、骨粗鬆症が進行すると、前傾姿勢(脊柱後側彎症、亀背)になり、歯科では診療体位に配慮する(水平位診療は困難でタオルケットやバスタオルでの補正が必要である)。また、骨粗鬆症患者では歯周病の罹患率が高いと言われている。骨粗鬆症は骨折して初めてわかる以上のような症状が起こることも問題だが、さらに問題だと考えられるのは、骨折が起こらない限り骨粗鬆症自体の自覚症状はないということである。つまり、骨折して初めて骨粗鬆症と分かることが問題なのだ。その時には骨粗鬆症は進行した状態で、早期発見とは言えない状態である。パノラマエックス線であれば、歯科医院で初診や定期検診で撮影する機会が多いため、早期に骨粗鬆症のスクリーニングができるのである。では、パノラマエックス線でのスクリーニングはどのように行うのか見ていこう。パノラマX線を使った骨粗鬆症のスクリーニング方法パノラマX線を使った骨粗鬆症のスクリーニングは、下記の3種類に分類される。正常な皮質骨形態のⅠ型皮質骨内面に線状の吸収を認めるⅡ型皮質骨全体に渡り、高度な線状の吸収と皮質骨断裂を認めるⅢ型この写真でいうと(A)はⅠ型、(B)はⅡ型といえるだろう。このようにスクリーニングしたとき、Ⅰ型はⅡ型に比べ、またⅡ型はⅢ型に比べて橈骨骨密度が有意に高かったという研究がある。また、このスクリーニング法についてトレーニングを受けた歯科医師がスクリーニングすると敏感度(正しく骨粗鬆症患者を抽出できる率)は70%を超えているので、スクリーニングとしては十分有用であると言えるだろう。本記事のまとめパノラマエックス線はデンタルエックス線と並び、最も歯科医院で撮影されるレントゲン写真である。口腔外科では顎関節疾患、骨折、嚢胞、悪性腫瘍、歯周病・補綴分野では骨吸収のレベルがよく見られるので、多用されている。パノラマエックス線は歯科疾患の評価だけでなく、骨粗鬆症のスクリーニングを行う事ができるとなると、骨粗鬆症の早期発見・早期治療ができるということになる。骨粗鬆症の治療はビスフォスフォネート製剤やデノスマブ(抗RANKL抗体)を服用することである。骨粗鬆症の治療で使われるビスフォスフォネート製剤やデノスマブは歯科領域では副作用の顎骨壊死の話が頻繁に取り上げられて、なんだか「悪者」のようにも一見見えるが、薬の作用自体は骨を強くして病的な骨折を防ぐため、QOLの向上に直結する薬である。パノラマエックス線の所見により骨粗鬆症をスクリーニングし、適切な医療機関と連携が取れるような歯科医院が、これからは求められるのかもしれない。歯科セミナーなら「1D(ワンディー)」で!日本最大級の歯科医療メディア「1D」では、診療に役立つオンラインセミナーを多数開催中。もっと知りたい臨床トピックから超ニッチな学術トピックまで、参加したいセミナーが見つかります。下記ボタンから、開催中のセミナーを見てみましょう!開催セミナーを見てみる参考文献MSDマニュアルプロフェッショナル版 骨粗鬆症, <URL>, 2019年12月30日閲覧中元崇, 田口明, 浅野晃, & 谷本啓二. (2011). パノラマエックス線画像上の下顎骨下縁皮質骨内面の線状の骨吸収像を用いた骨粗鬆症診断支援システムの再現性と診断精度. 歯科放射線, 51(4), 33-38.樋口智恵美, 小穴修治, 谷口威夫, 青木伸之, 小出浩貴, & 竹内裕. (2011). 歯科パノラマ X 線写真からみた骨密度評価. 信州公衆衛生雑誌, 6(1), 76-77.田口明. (2011). 歯科のパノラマ X 線写真を用いて早期に骨粗鬆症患者をスクリーニングする. 日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学, 31(1-2), 122-125.画像:中元崇, 田口明, 浅野晃, & 谷本啓二. (2011). パノラマエックス線画像上の下顎骨下縁皮質骨内面の線状の骨吸収像を用いた骨粗鬆症診断支援システムの再現性と診断精度. 歯科放射線, 51(4), 33-38.