歯科用語集
2025年10月28日

テクスチャー

「テクスチャー」とは?歯科用語の解説と症例を紹介

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定義・語源

テクスチャーとは、物体の表面の質感や構造を指す言葉である。語源はラテン語の「textura」に由来し、織り成すことを意味する。歯科においては、特に材料の表面状態や質感を評価する際に用いられる。例えば、歯科用材料のテクスチャーは、患者の快適さや治療結果に大きな影響を与えるため、重要な要素となる。テクスチャーは、硬さ、滑らかさ、粗さなどの特性を含む広範な概念であり、臨床現場ではこれらの特性を考慮して材料選択を行うことが求められる。


臨床における位置づけ・判断基準

臨床においてテクスチャーは、歯科材料の選定や治療計画において重要な判断基準となる。例えば、義歯やクラウンの製作において、テクスチャーが患者の咀嚼機能や審美性に影響を与えるため、適切な材料を選ぶことが求められる。また、テクスチャーは、歯科治療における患者の快適さや満足度にも直結するため、歯科医師や歯科衛生士は、材料のテクスチャーを評価し、患者のニーズに応じた選択を行う必要がある。さらに、テクスチャーの評価は、治療後の経過観察や再治療の際にも重要な要素となる。

関連用語・類義語との違い

テクスチャーに関連する用語としては、表面性状、質感、触感などが挙げられる。表面性状は、物体の表面に関する物理的特性を指し、テクスチャーはその中でも特に質感に焦点を当てた概念である。質感は、視覚的および触覚的な印象を与える要素であり、テクスチャーはその具体的な表現方法といえる。また、触感は、物体に触れた際の感覚を指し、テクスチャーはその触感を形成する要因の一つである。これらの用語は相互に関連しているが、テクスチャーは特に材料選定や治療計画において重要な役割を果たすため、歯科医療において特に注目される。

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歯周病ケアに革新!信頼のサイエンスで選ぶ『カムテクト』の実力に迫る

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Pratten et al. Physical disruption of oral biofilms by sodium bicarbonate: an in vitro study. Int Jour Dent Hyg. DOI: 10.1111/idh.12162 2. Jose et al. Six-month evaluation of a Sodium Bicarbonate-Containing Toothpaste for Reduction of Established Gingivitis: A Randomized USA-Based Clinical Trial. J Clin Dent 2018;29:33 -39                                        ー「カムテクト」という名称に込められた意味や思いを教えていただけますか?『カムテクト』という名称は、「噛む(カム)」と守ることを意味する「Protect(テクト)」を組み合わせた造語です。この名前には「歯と歯ぐきをしっかり守る」という製品コンセプトが込められています。単なる歯磨剤ではなく、歯周病予防を目的に、歯と歯ぐきの健康をサポートする存在でありたいというブランドの思いを象徴する名前となっています。現在、日本国内には歯ぐきの悩みを抱える人が4,000万人以上いるとされています。『カムテクト』はそのような方々へ、日常のセルフケアで寄り添える存在であることを目指しています。ー『カムテクト』がもつ主要な有効成分や技術的特徴はどんなものですか?『カムテクト』の最大の特徴は、約70%という高濃度で配合された炭酸水素ナトリウムにあります。炭酸水素ナトリウムには、プラークを軟化させ、ブラッシングによる物理的除去をサポートする作用があり、まさに『カムテクト』の処方設計の核と言える存在です。一方、一般的な歯周病予防用歯磨剤では、殺菌成分や抗炎症成分を中心とした「薬効ベースの処方設計」が主流です。歯周病の原因となる菌を抑制・炎症を抑えることに重点が置かれており、プラーク自体を機械的に落としやすくするというアプローチは、あまり重視されていないケースも見受けられます。また、炭酸水素ナトリウムは日本の薬機法上「有効成分」とはみなされておらず、処方上の差別化にはつながりにくいという理由で、競合製品では積極的に使われていないのが現状です。それでもなお、当社が炭酸水素ナトリウムに強くこだわるのは、豊富な科学的エビデンスと国際的な臨床データに裏付けられているからです。こうしたグローバルで培われた処方設計と研究成果を、日本市場向けにローカライズして展開できる点は、他社製品とは一線を画す、当社ならではの大きな強みと言えるでしょう。ー開発にあたり、特に苦労した点や壁となった要因は何でしたか?『カムテクト』の開発においては、処方設計・製造工程の両面で、いくつか大きな課題を乗り越える必要がありました。なかでも、以下の2点は製品化に向けた大きな壁となりました。炭酸水素ナトリウムと他成分の相性問題『カムテクト』は、約70%という高濃度の炭酸水素ナトリウムを配合した特殊処方です。この処方は、プラークの物理的除去をサポートするうえで大きな価値を持つ一方、他の有効成分との相性において化学的な安定性が課題となりました。炭酸水素ナトリウムの性質上、特定の成分と組み合わせるとpH変動や分離、変質などが起こる可能性があり、配合を断念せざるを得ない成分もありました。粘度の高さによる撹拌・充填の難しさ使用感からも実感いただけるように、『カムテクト』は非常に硬めのテクスチャーが特長です。これは高濃度の炭酸水素ナトリウムを含むことによるもので、製造工程において技術的困難が伴いました。・高粘度により、撹拌時に成分が均一に混ざりにくく、有効成分が偏るリスクが発生・粘度が高くなることで、チューブへの充填が困難これらの課題を解決するために、複数の技術的対応が必要でした。ー「カムテクト」ブランドとして、歯科医療者や患者さんに向けて伝えたいメッセージはありますか?『カムテクト』は、歯ぐきの健康に悩むすべての人々を支え、生涯にわたって口腔内に自信を持てる毎日を提供することを使命としています。現在の日本では、成人の約8割* が歯周病の兆候を抱えていると言われています。このような状況において、『カムテクト』は、誰もが手に取りやすい製品であることが、歯周病予防への重要なアプローチであると考えています。ドラッグストアで購入できる身近さと、科学的根拠に裏打ちされた処方。この両立が、日々のセルフケアを支える「続けやすさ」へとつながっています。『カムテクト』が描く歯科医療の未来像は、「歯科医院と患者さんの間に立つ信頼できる架け橋として、セルフケアの質を底上げし、結果的に歯科医療全体のレベル向上に寄与すること」です。このビジョンは、当社が掲げる「ボトムアップ型の健康支援」という企業哲学とも深く結びついています。また、「Deliver better everyday health with humanity.(もっと健康に、ずっと寄り添って)」というパーパスを掲げ、その実現に向けて、製品開発の革新、サイエンスの追求、そして現場との対話を重ねる姿勢を大切にしています。今後も『カムテクト』は、歯科医療者の皆さまとともに、患者さん一人ひとりの健康意識を支えながら、より良い未来の口腔健康の実現に貢献していきたいと考えています。出典元: *令和4年歯科疾患実態調査Haleonヘルスパートナーに登録して患者さん用無料サンプルをオーダーしませんか?Haleonヘルスパートナーとは?Haleonヘルスパートナーは、歯科医療従事者の皆さまに向けて、オーラルヘルスケアに関する最新情報を提供するコミュニティサイトです。日々の診療に役立つコンテンツや、患者さんとのコミュニケーションを支える資料など、さまざまな情報をご利用いただけます。主なサービス内容・ウェブ講演会の無料配信知覚過敏症ケア、歯周病予防、義歯やマウスピースケアなどをテーマとしたウェブ講演会を、いつでも無料で視聴可能。過去の講演ダイジェスト動画もアーカイブで公開されています。・患者さん用無料サンプルの提供歯磨剤の『カムテクト』や『シュミテクト』、義歯・リテーナー洗浄剤の『ポリデント』、義歯安定剤の『ポリグリップ』など、患者さんのセルフケア習慣づくりに役立つ製品サンプルを、オンラインから簡単にオーダー可能です。・患者指導用資材のダウンロード歯周ケアを含む様々なセルフケア指導に活用できる、わかりやすい説明資料や配布用ツールがダウンロード可能です。登録して『カムテクト』患者さん用サンプルをオーダーしませんか?オーダー方法について1. 会員登録(無料)Haleonヘルスパートナーの公式サイトで、必要事項を入力して会員登録を行います。(※登録フォームへの入力後、承認まで最大5営業日ほどかかる場合があります。)2. ログイン後、サンプル依頼ページへアクセス登録完了後、ログインして、専用ページからサンプル申請が可能になります。3. 患者さん用サンプルを選択してオーダー希望のサンプル(例:『カムテクト』)を選択して、注文を完了します。登録や詳細は、以下の公式サイトをご覧ください。公式サイトで詳細を確認する
1D編集部
2025年5月29日
チオコールラバー印象材の臨床応用と処置における重要ポイント

チオコールラバー印象材の臨床応用と処置における重要ポイント

チオコールラバー印象材の定義と特性チオコールラバー印象材は、歯科において使用される印象材の一種であり、主に歯型を取るために用いられる。これは、シリコーン系の材料と比較して、優れた弾性と寸法安定性を持つことが特徴である。チオコールラバーは、特に細部の再現性が高く、複雑な歯列や補綴物の印象を取得する際に非常に有用である。この材料は、硬化後も柔軟性を保持し、取り扱いが容易であるため、臨床現場での使用が広がっている。さらに、チオコールラバー印象材は、温度変化に対する耐性があり、長時間の保存にも適している。これにより、印象の精度が損なわれることなく、後続の処置においても信頼性が高い。チオコールラバー印象材の使用手順とコツチオコールラバー印象材を使用する際の手順は、以下のように進めることが推奨される。まず、患者の口腔内を清掃し、印象を取る部位を確認する。次に、印象材を適切な割合で混合し、均一なテクスチャーを確保することが重要である。印象を取る際は、材料を均等に塗布し、患者にしっかりと咬合させることが求められる。特に、印象材が硬化する前に、患者が動かないように注意を促すことが必要である。また、印象を取得した後は、すぐに模型に流し込むことが望ましい。これにより、印象の精度を最大限に活かすことができる。さらに、印象材の特性を理解し、適切な保存方法を選択することで、長期間にわたってその性能を維持することが可能である。チオコールラバー印象材のメリットとデメリットチオコールラバー印象材には、多くのメリットが存在する。まず、優れた弾性と再現性により、複雑な形状の印象を正確に取得できる点が挙げられる。また、硬化後も柔軟性を保つため、取り扱いが容易であり、患者への負担も軽減される。一方で、デメリットとしては、他の印象材に比べてコストが高いことが挙げられる。また、特定の条件下では、硬化時間が長くなる場合があるため、臨床での使用に際しては注意が必要である。これらのメリットとデメリットを考慮し、適切な状況でチオコールラバー印象材を選択することが、成功する処置の鍵となる。チオコールラバー印象材の臨床症例と判断ポイントチオコールラバー印象材は、特に補綴治療や矯正治療において多くの症例で使用されている。例えば、インプラント治療においては、周囲の組織を正確に再現することが求められるため、チオコールラバー印象材が効果的である。また、矯正治療においても、歯の移動を計画するための精密な印象が必要であり、この材料の特性が活かされる。臨床での判断ポイントとしては、印象を取得する際の患者の状態や、治療の目的に応じた材料の選択が重要である。これにより、治療の精度が向上し、患者の満足度を高めることが可能となる。チオコールラバー印象材の今後の展望と導入の注意点チオコールラバー印象材は、今後も歯科臨床において重要な役割を果たすと考えられる。新しい技術や材料が開発される中で、チオコールラバーの特性を活かした新たな応用が期待されている。導入に際しては、材料の特性を十分に理解し、適切な使用方法を習得することが重要である。また、患者への説明や、印象取得時の注意点をしっかりと伝えることで、より良い結果を得ることができる。このように、チオコールラバー印象材は、歯科医師や歯科衛生士にとって、臨床での処置を支える重要な材料である。
1D編集部
2024年6月1日
テクスチャーの理解と応用。歯科臨床における症例と処置のポイント

テクスチャーの理解と応用。歯科臨床における症例と処置のポイント

テクスチャーの定義とその重要性テクスチャーとは、物体の表面の質感や構造を指す用語であり、歯科においては特に歯の表面や材料の特性を理解する上で重要である。歯科医師や歯科衛生士は、テクスチャーを把握することで、患者の口腔内の状態を正確に診断し、適切な処置を行うことができる。例えば、歯のエナメル質のテクスチャーは、う蝕のリスクや歯の健康状態を示す指標となる。また、補綴物や修復材料のテクスチャーも、治療結果に大きな影響を与えるため、選択時には注意が必要である。テクスチャーの理解は、臨床での判断や診断において不可欠な要素である。テクスチャーの評価方法と診査手順テクスチャーを評価するためには、視覚的な観察や触診、さらには専用の機器を用いた測定が有効である。まず、視覚的な観察では、歯の表面の光沢や色調、凹凸を確認する。次に、触診によって、表面の滑らかさや粗さを感じ取ることができる。さらに、最新の技術を用いたテクスチャー測定機器を導入することで、定量的なデータを得ることが可能となる。これにより、補綴物や修復材料の選定において、より科学的な根拠に基づいた判断ができる。テクスチャーの評価は、患者の治療計画を立てる上での重要なステップである。テクスチャーに基づく処置の選択と術式テクスチャーの特性に応じて、適切な処置や術式を選択することが求められる。例えば、エナメル質のテクスチャーが粗い場合、う蝕のリスクが高まるため、フッ化物塗布やシーラントの適用が推奨される。一方、滑らかな表面を持つ歯には、ホワイトニングやポリッシングが効果的である。また、補綴物においては、テクスチャーが患者の咬合や審美性に影響を与えるため、材料選定時には慎重な判断が必要である。テクスチャーに基づく処置の選択は、治療の成功率を高めるための重要な要素である。テクスチャーのメリットとデメリットテクスチャーの理解には、いくつかのメリットとデメリットが存在する。メリットとしては、患者の口腔内の状態を正確に把握できること、適切な処置を選択できること、治療結果の向上が挙げられる。特に、テクスチャーに基づく診断は、早期発見や予防に寄与する。一方、デメリットとしては、テクスチャーの評価が主観的になりやすいこと、専門的な知識や技術が必要であることが挙げられる。これらの点を考慮し、テクスチャーの評価を行う際には、客観的なデータを重視することが重要である。臨床でのテクスチャーの応用事例実際の臨床において、テクスチャーの理解と応用は多岐にわたる。例えば、ある患者において、歯の表面が粗いことが確認された場合、う蝕のリスクが高いと判断し、早期にフッ化物塗布を行った結果、う蝕の進行を防ぐことができた。また、補綴物の選定において、テクスチャーが滑らかな材料を選ぶことで、患者の咬合が改善され、治療後の満足度が向上した事例もある。このように、テクスチャーの理解は、臨床での成功に直結する要素である。
1D編集部
2024年6月1日
練和の重要性とその臨床応用。歯科医師・歯科衛生士が知っておくべき処置と症例

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練和とは何か練和とは、歯科において特に歯科材料を扱う際に重要なプロセスである。具体的には、材料を均一に混合し、適切な粘度やテクスチャーを得るための手法を指す。これにより、材料の物理的特性が向上し、臨床での使用において安定性が増す。練和は、特に歯科用セメントや印象材、コンポジットレジンなどの処置において重要な役割を果たす。適切な練和が行われることで、材料の強度や耐久性が向上し、最終的な治療結果に大きな影響を与えることがある。このプロセスを理解し、適切に実施することは、歯科医師や歯科衛生士にとって不可欠なスキルである。練和の手順とコツ練和の手順は、使用する材料によって異なるが、一般的な流れは以下の通りである。まず、必要な材料を正確に計量し、混合するための器具を準備する。次に、材料を均一に混合するために、適切な時間と速度で練和を行うことが求められる。練和のコツとしては、材料の特性を理解し、適切な混合比率を守ることが重要である。また、混合時の温度や湿度にも注意を払い、環境条件が材料に与える影響を考慮する必要がある。さらに、練和後の材料の粘度やテクスチャーを確認し、必要に応じて調整を行うことも大切である。これにより、最終的な治療結果を向上させることができる。練和のメリットとデメリット練和には多くのメリットがある。まず、材料の均一性が向上することで、治療の精度が高まる。さらに、適切に練和された材料は、強度や耐久性が向上し、長期的な治療結果に寄与する。一方で、練和にはデメリットも存在する。例えば、過剰な練和は材料の特性を損なう可能性があるため、注意が必要である。また、練和にかかる時間や手間が増えることで、診療効率に影響を与えることも考慮しなければならない。したがって、練和のプロセスを適切に管理し、メリットを最大限に引き出すことが求められる。練和に関する症例と診断練和に関連する症例としては、歯科用セメントの適用における成功例や失敗例が挙げられる。例えば、適切に練和されたセメントは、歯冠やブリッジの固定において優れた接着力を発揮するが、練和が不十分な場合、早期に剥離するリスクが高まる。診断においては、練和の状態を確認するために、材料の粘度やテクスチャーを評価することが重要である。これにより、適切な処置を選択するための判断材料となる。また、練和のプロセスにおける問題点を早期に発見し、適切な対策を講じることで、治療の成功率を向上させることが可能である。練和の導入と注意点練和を臨床に導入する際には、まず使用する材料の特性を十分に理解することが重要である。各材料には推奨される練和方法や時間が定められているため、これに従うことが求められる。また、練和の際には、器具の清潔さや混合環境の管理にも注意を払う必要がある。これにより、材料の劣化を防ぎ、最良の結果を得ることができる。最後に、練和のプロセスを定期的に見直し、改善点を見つけることで、より高い治療成果を目指すことができる。
1D編集部
2024年6月1日
歯科医師 × フレンチシェフによる、破壊的な「介護食」革命とは?

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1970年の男性の平均寿命は69.3歳ですが、2020年には81.6歳で、人生100年時代というフレーズも耳にするようになりました。社会の劇的な変化に応じて、歯科も大きな変革期にあるのではないでしょうか。次々と明らかになる歯周病と全身の関連、デジタルデンティストリーの普及、歯科訪問診療での摂食嚥下リハビリテーションなどがその一例でしょう。今回の記事では特に、摂食嚥下リハビリテーション専門の歯科医師が「食」の領域でどのような価値を生み出せるかについて書きたいと思います。破壊的な「介護食」革命筆者は現在、総務省の「異能vation」プロジェクトの破壊的な挑戦部門の挑戦者として、フレンチシェフと3Dフードプリンターを用いた介護食改革に取り組んでいます(図1)。「異能vation」は、総務省が2014年から実施しているプロジェクトで、その目的は「ICT分野において破壊的な地球規模の価値創造を生み出すために、大いなる可能性がある奇想天外でアンビシャスな技術課題への挑戦を支援」することです。総務省が「奇想天外でアンビシャス」という言葉を使っていること自体がすでにアンビリーバボーではありますが、その挑戦者として選ばれたことは大変光栄です。介護食は「安全」が最優先だった挑戦課題名は「介護施設で堪能、フレンチフルコース-3Dフードプリンターで実現する食のダイバーシティ-」で、目的は「介護食改革による食のダイバーシティ社会の実現」です。筆者が考える超高齢社会における食のダイバーシティ社会は、年齢も性別も宗教も機能も超えて食事を味わい、楽しみ、驚く体験を可能にすることです。現状、介護食で最優先されているのは、美味しさでも楽しさでも驚きでもなく、安全です。例えば、認知症などの先行期障害の患者で食事が進まない場合、まずい、見た目が悪い、お腹が減っていないなどとても単純なことが原因の場合も少なくありません。先行期障害がなければ、ペースト食で多少見た目が悪かったとしても「栄養のため」「あまりスタッフに迷惑もかけられない」と忖度してくれます。一方で、先行期障害の患者は忖度しない場合もあるので、美味しくないものは食べないわけです。だからといって食事介助で無理やりに食べさせるというのは介護拒否にもつながり、本質的な課題解決ではありません。これらの例からも分かるように、介護食に不足しているのは「おもてなし」の精神ではないでしょうか。お、も、て、な、しです。さらに、介護現場では、咀嚼嚥下機能と食形態が合っていない場合が多いことも報告されています(参考文献1)。介護食には課題が山積しているからこそ、課題先進国である日本からその解決策を発信していくことが重要だと思います。フレンチシェフと介護食を作ったらどうなるのか?今回、筆者はフレンチシェフと協力して、介護施設の摂食嚥下障害患者に3Dフードプリンターを活用したフレンチフルコースを食べてもらうことを一つの目標にしています。もちろん、美味しくて、見た目もワクワクするようなフレンチフルコースを目指しています。なぜ、フレンチ?と思われる方もいらっしゃるでしょう。フレンチはもともと、ピュレ、ジュレ、ムースなど多様なテクスチャーを駆使した調理法があるので、さまざまな機能の対象者に合わせやすいという利点があります。さらに、フレンチはソースをよく使います。筆者らはソースが認知症高齢者の食事摂取量増加に効果があることを報告しており、なぜフレンチをよく食べれるかもエビデンスに基づいて説明可能です(参考文献2)。どことなく敷居が高いと思われがちなフレンチは、実は機能的多様性を受け入れ可能な懐の深い料理の一種だと言えるのです。3D「フード」プリンター3Dプリンターは多くの領域で普及しており、すでにお使いの方もいらっしゃるでしょう。しかし、3Dフードプリンターをご存知の方は多くはないのではないでしょうか。3Dフードプリンターは2016年ごろから一部実用化が始まっていますが、現状、普及していません。パティシエがスイーツのデコレーションに使ったり、一部の先進的なシェフが活用した事例があるくらいです。日本企業が機器を作っているにもかかわらず、用途開発が一向に進んでいない背景には、射出する素材の制限などスペックの問題もあるかもしれませんが、もっと大きな問題は「食」の領域では単一の職種だけではイノベーションが起こらないからではないでしょうか。現在、筆者は3Dフードプリンターのスープとデザートのプロトタイプの制作まで行なっています。食のダイバーシティ社会の実現へシェフだけでも、パティシエだけでも、研究者や医療者だけでも「食」領域でイノベーションを創り出すことは困難です。各々の専門職が有機的な連携をすることで、大きなイノベーションの芽が生まれるのではないでしょうか。しかし、これこそまさに「言うは易く行うは難し」です。摂食嚥下に関わる人間であれば、誰でも一度は介護食の課題を考えたことがあると思いますが、筆者も解決困難な課題が実に多いと実感しております。そのため、失敗をおそれずに挑戦する人を支援する「異能vation」プログラムの懐の広さは大変ありがたい限りです。しかし、フレンチシェフと連携した、3Dフードプリンターによるフレンチフルコースが食のダイバーシティ社会実現に直結するわけではありません。1分1秒に追われる介護の現場で、悠長に料理をしている時間もないでしょう。必要は発明の母です。現場のニーズに合っていないと技術は普及しません。3Dフードプリンターはデータを蓄積していくことができます。今回のもう一つの目的は、フレンチフルコースを作る中で3Dフードプリンターで現場負担を軽減させるような使用法を抽出し、オープンソースで共有することにあります。これはInformation and communication technology 、すなわちICTを使った取り組みになると思います。今回、作られるフレンチフルコースは、摂食機能療法専門歯科医師によるエビデンスの裏付けがなされたコンセプトに基づき、シェフのセンスや経験、日本企業の技術力が融合したものになるはずです。その中には、現場応用可能なヒントが数多く含まれているので、それを共有知として幅広く普及させていくことが食のダイバーシティ社会実現の一歩となるのではと考えています。参考文献服部史子、戸原玄、中根綾子ほか:在宅および施設入居摂食·嚥下障害者の栄養摂取方法と嚥下機能の乖離.日本摂食嚥下リハ会誌 2008;12:101-108.Kimura A, Yamaguchi K, Tohara H, Sato Y, Sawada N, Nakagawa Y, Matsuda Y, Inoue M, Tamaki K. Addition Of Sauce Enhances Finger-Snack Intake Among Japanese Elderly People With Dementia. Clin Interv Aging. 2019 Nov 14;14:2031-2040. doi: 10.2147/CIA.S225815. PMID: 31814715; PMCID: PMC6863177.
山口 浩平
2022年2月3日

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