歯石DNAから、江戸時代の庶民の食生活が解明される
歯石はプラークリテンションファクターであり、歯周病の原因にもなるため、定期的に歯科医院で除去することが望ましい。しかし、歯石が役に立つこともある。琉球大学の研究チームにより、江戸時代の人骨に付着した歯石からDNAを抽出し、当時の食生活を調べる調査がなされた。遺跡から出土したもので食生活を調査する方法は、これまで様々な方法が開発された。遺跡から出土した骨・炭化種子などの形態分析、炭素・窒素安定同位体分析、土器残存脂質分析(土器に付着している脂質を分析する方法)、プラントオパール(植物に由来する珪酸体を分析する方法)・花粉・デンプン粒など微化石の形態分析といった方法など、多種多様だ。しかし、どれも食べられていた動物・植物の属・種レベルの同定が困難であるという弱点がある。歯石はほとんどが口腔内細菌であるが、食物に由来するDNAがわずかに残っていることがすでに発見されている。そこで、歯石からDNAを抽出して、どんなものを食べていたのかを属・種レベルの同定まで含めて調査がなされたのである。調査の結果、江戸時代のヒト(東京・深川で発掘)の歯石からコメ、シソ属やネギ属、ダイコン属など、合計で7科・10属を同定することに成功した。江戸時代の文献に照らし合わせても、全て江戸時代に食用とされていたもの、あるいは利用されていた種を含んだ分類群であると確認ができた。動物由来のDNAに関してはヒト由来のDNAが優先的に検出されてしまい、調査することは出来なかったという。食べ物以外ではタバコ属の植物DNAなど、当時の生活習慣に由来すると考えられる植物のDNAも検出された。また、マレーシアなどの熱帯にしか生息しないフタバガキ科の植物のDNAが検出されたことが興味深い。これは龍脳というフタバガキ科の植物から得られる樹脂が、庶民の歯磨き粉の原料として用いられていたことが由来だと考えられる。科レベルまで同定された植物(参考文献1より)属レベルまで同定された植物(参考文献1より)現代はデータ社会であるから、私たちヒトが何を食べたかというデータは膨大にアーカイブされるだろう。そもそも食生活の多様化で、現代人が何を食べたかは千差万別である。したがって、後世に歯石を残す必要性はない。歯石は歯科医院で除去するに限ると言えるだろう。歯科セミナーなら、1D(ワンディー)で!歯科医療者向けのオンラインセミナーを多数開催中!「知識を増やしたい」「スキルアップしたい」歯科医師・歯科衛生士の皆様におすすめです。まずは近日中に開催のセミナー一覧を見てみませんか?セミナー一覧をみる参考文献1. 江戸の庶民は何を食べていた? ~江戸時代の歯石DNAから当時の食物を復元~,琉球大学 研究成果, <URL>, 2021年2月12日閲覧2. Sawafuji, R., Saso, A., Suda, W., Hattori, M., & Ueda, S. (2020). Ancient DNA analysis of food remains in human dental calculus from the Edo period, Japan. Plos one, 15(3), e0226654.