歯科用語集
2025年10月28日

圧下

「圧下」とは?歯科用語の解説と症例を紹介

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定義・語源

圧下とは、歯科において歯を下方に移動させることを指す用語である。特に、歯の矯正治療において、歯を適切な位置に配置するために必要な動作として重要視される。語源は「圧」と「下」に由来し、物理的な力を加えることで歯を下に押し下げることを示す。圧下は、矯正治療の一環として、歯列の整列や咬合の改善を目的とする場合に用いられる。


臨床における位置づけ・判断基準

臨床において圧下は、特に矯正治療の計画において重要な役割を果たす。歯の圧下が必要とされる状況には、過剰な歯の萌出や不正咬合が含まれる。判断基準としては、患者の咬合状態や歯の位置、歯槽骨の状態などが考慮される。圧下を行う際には、適切な力の加減や期間を設定することが求められ、これにより治療効果を最大限に引き出すことが可能となる。

関連用語・類義語との違い

圧下に関連する用語には「移動」「矯正」「歯列矯正」などがあるが、それぞれの意味は異なる。移動は一般的に歯の位置を変えることを指し、圧下はその中でも特に下方への移動を強調する。また、矯正は歯列全体の整頓を目的とした治療を指し、圧下はその一部として位置づけられる。これにより、圧下は矯正治療の中で特定の動作として理解されるべきである。

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圧下の理解と臨床応用。歯科医師・歯科衛生士が知っておくべき症例と処置のポイント

圧下の理解と臨床応用。歯科医師・歯科衛生士が知っておくべき症例と処置のポイント

圧下の定義とその重要性圧下とは、歯科において歯や顎の位置を調整するために行う処置の一つである。特に、矯正治療や歯科補綴において、歯の位置を下げることを指す。この処置は、歯列の整合性や咬合の改善に寄与し、患者の機能的および審美的なニーズに応えるために重要である。圧下は、特に歯の過剰萌出や不正咬合の改善に役立つ。これにより、患者の口腔内環境が整い、歯周病や虫歯のリスクを低減することが可能となる。したがって、圧下の理解は歯科医師や歯科衛生士にとって不可欠である。圧下の処置と術式圧下を行う際には、いくつかの処置や術式が考慮される。一般的には、矯正装置を用いた圧下が多く、特に固定式矯正装置やインビザラインなどが使用される。これらの装置は、歯に持続的な力を加えることで、歯を所定の位置に移動させる。また、圧下を行う際には、患者の年齢や歯の状態に応じた適切な手順を選択することが重要である。例えば、成長期の患者に対しては、成長を利用した圧下が効果的である一方、成人の場合は、外科的手法を併用することが必要な場合もある。これらの術式を理解し、適切に選択することが、成功する圧下の鍵となる。圧下の症例と診断ポイント圧下が必要な症例には、過剰萌出や不正咬合が含まれる。これらの症例では、圧下を行うことで咬合の改善や歯列の整合性が得られる。診断においては、X線検査や口腔内診査を通じて、歯の位置や顎の関係を詳細に評価することが求められる。特に、圧下が必要な症例では、患者の主訴や口腔内の状態を総合的に判断することが重要である。これにより、適切な処置を選択し、患者に最適な治療計画を立てることが可能となる。診断の精度を高めるためには、最新の診断技術やガイドラインを参考にすることが推奨される。圧下のメリットとデメリット圧下のメリットには、歯列の整合性や咬合の改善が挙げられる。これにより、患者の口腔機能が向上し、審美的な満足度も高まる。また、圧下は、歯周病や虫歯のリスクを低減する効果も期待できる。一方で、圧下にはデメリットも存在する。例えば、圧下に伴う痛みや不快感、治療期間の延長が挙げられる。また、適切な技術や知識が不足している場合、歯の移動が不適切になり、逆に咬合の問題を引き起こす可能性もある。したがって、圧下を行う際には、十分な知識と技術を持った歯科医師が関与することが重要である。圧下を行う際の注意点とコツ圧下を行う際には、いくつかの注意点がある。まず、患者の状態を十分に評価し、適切な処置を選択することが重要である。また、圧下を行う際には、力の加減や持続時間を適切に設定することが求められる。さらに、患者とのコミュニケーションも重要である。治療の目的や手順、予想される結果について十分に説明し、患者の理解を得ることが、治療の成功に繋がる。これらのコツを押さえることで、圧下の効果を最大限に引き出すことが可能となる。
1D編集部
2024年6月1日
歯周病が安定した後、機能回復には何を選択すべきか?

歯周病が安定した後、機能回復には何を選択すべきか?

歯周病患者の口腔機能回復治療の必要性は、歯質の欠損、歯の欠損、歯の動揺、さらに咬合・咀嚼機能や審美性の低下などによって生じる。この治療は、適切な咬合・咀嚼機能や審美性を回復するだけでなく、長期的に歯周組織を安定させて機能を維持するために大切であり、同時に歯周組織の炎症や咬合性外傷を誘発しないように配慮することが重要である。今回は口腔機能回復治療における治療選択について解説する。口腔機能回復治療とは?歯周病によって失われた口腔機能を回復するため、歯周外科治療後に行う治療の総称で、修復・補綴治療、矯正治療、インプラント治療などが含まれる。流れとしては以下の図の通りである。中等度以上に進行した歯周炎では歯周組織の支持能力の低下のため、細菌感染に対する配慮と咬合性外傷に対する配慮が不可欠となる。このため、歯周基本治療中に動揺歯の固定を目的とした補綴装置による連結固定が必要な場合や、可撤性部分床義歯になる場合も多く、進行した歯周病患者の修復・補綴治療は健常な患者に比較して困難であることが多い。歯周治療は、これらの問題点をクリアし、歯科治療の目的の一つである口腔機能回復をはかることが重要である。治療選択のために考慮すべきポイント1)検査項目歯周組織に炎症や咬合性外傷を誘発しないことや、歯周組織が安定した状態を維持できる口腔環境を整備することが重要であり、そのために、細菌感染、炎症や咬合性外傷に関する検査を重視しなければならない。細菌感染、炎症や組織破壊に関連する検査としては、口腔衛生状態(O'Leary のプラークコントロールレコード)、プロービングデプスとプロービング時の出血があげられる。また、咬合性外傷に関連する検査項目としては、エックス線画像(歯槽骨の吸収、歯根の長さ、歯根膜腔の拡大)、歯の動揺度、フレミタス(咬合接触時のわずかな振動)、残存歯数、残存歯の配置、咬合(ブラキシズムの有無,咬合力の強さなど)がある。2)動揺歯の治療に対する考え方動揺の原因が炎症なのか早期接触やブラキシズムなどの外傷性咬合が関与しているのか、注意深く判断すべきである。睡眠時のブラキシズムは最大咬合力を超えるという報告もあり、睡眠時のブラキシズムも含めて過度の外傷力に対する処置が重要である。歯の動揺が著しい場合は、歯周基本治療において咬合調整や暫間固定が必要な場合もあるが、基本的にはプラークコントロールやスケーリングを優先し、これらの治療後においても動揺が残存して機能的に障害がある場合などは、咬合調整や暫間固定を行い、動揺度など歯周組織の変化を評価したうえで、永久固定の必要性と範囲を判定したり、オクルーザルスプリントを製作したりする。3)暫間固定と歯周治療用装置(プロビジョナルレストレーション)による固定細菌感染に対する治療の後に歯の動揺がある場合、暫間固定を行って固定の方法や範囲を検討する。永久固定を行う場合、とくに歯周組織破壊が進行している症例では残存歯の支持力が減少しているため、補綴装置が細菌感染や咬合性外傷の原因とならないかを経時的に検査する必要がある。このような場合、歯周治療用装置による固定は、暫間的に咬合、審美性を回復するだけでなく、清掃性、補綴装置の形態、残存歯の保存の適否などを評価できる。補綴装置の形状や固定の範囲などの検討後、予知性の低い歯や動揺の大きな歯の保存の適否の評価も可能である。補綴治療法の選択と注意点1)歯冠修復(永久固定)歯周基本治療が終了しても、歯の動揺が原因で咀嚼機能の低下あるいは快適な咀嚼機能などが発揮されない場合や、咬合性外傷が依然として存在している場合で、暫間固定では強度が不十分な場合には永久固定を行う。永久固定を目的とした歯冠修復を行う際には種々の問題点や注意点がある。 支台歯の形成、印象の精度、模型製作の問題点、補綴装置の適合性や咬合、合着用セメントの種類、 根管治療の必要な場合は根管治療の問題点も生じる。補綴装置の歯間鼓形空隙、カントゥアなどもプラークコントロールを容易に行えるように製作すべきである。歯間鼓形空隙、カントゥアが適切でない場合はう蝕の危険性が増加する。また、咬合力が強い場合には、永久固定を行う際にどの範囲で固定を行うのかを歯周治療用装置(プロビジョナルレストレーション)や暫間固定などを行って慎重に決定すべきである。固定範囲を誤ると、固定歯や他の残存歯に咬合性外傷を引き起こすことになるだけでなく、補綴装置の脱落や破損などがみられる。補綴装置の長期の維持のためには脱落や破損を減少させる必要があり、とくに咬合力が強い場合は、外傷性咬合に対する配慮が重要である。 2)欠損歯列への対応 歯の欠損がある場合、固定性ブリッジや可撤性義歯、歯の移植、インプラントにより補綴治療を行う。欠損部を補綴することは、歯列の連続性や咬合を確保して残存歯への咬合性外傷を回避するためにも重要である。また、欠損になった理由を知ることは良好な予後を得るために重要である。歯周病が原因で欠損を生じたのであれば咬合性外傷が関与していたのかを知る必要がある。その場合には、咬合に対する対応について十分に配慮する必要がある。外傷性咬合を伴わない大臼歯の遊離端欠損症例では、大臼歯部は補綴治療を行わずに小臼歯までの咬合である短縮歯列でも許容される場合がある。(1)ブリッジブリッジによる補綴は、支台歯のみで咬合力が負担されるため、欠損の範囲や残存歯の分布、支台歯の歯周組織の状態を考慮して設計し、支台歯が負担過重にならないように配慮することが大切である。適切に設計されたブリッジは、固定効果により咬合性外傷の回避に有効となる。(2)可撤性部分床義歯欠損の範囲や残存歯の数、対合歯の位置や数などを考慮して義歯の設計をしていくが、設計によっては鉤歯への負担や咬合性外傷の誘発などがあり、残存歯と義歯粘膜への咬合力 の負担の割合などを慎重に決定すべきである。安定した部分床義歯の条件としては支持(垂直的移 動への配慮)、把持(水平的移動への配慮)、維持(離脱への対応)があるが、口腔清掃性にも配慮した設計が必要となる。また、安定した義歯は鉤歯への負担を減じることができるが、残存歯の負担能力を十分に考慮したうえで設計することが必要である。(3)インプラントインプラントは支持力が大きいため、残存歯の咬合負担を軽減できる場合が多い。また、隣在歯の切削などを伴う固定を回避することもできる。しかし、インプラントの対合歯に外傷力として働くことがあり、咬合力が強い場合には注意が必要である。天然歯からインプラント周囲組織への歯周病原細菌の感染が考えられるので、残存歯の歯周治療は重要である。(4)歯の移植歯の移植には、移植歯の選択、移植部位、移植の技術など、その予後を考えるうえで複雑な因子が関与している。とくに移植歯の抜去時に建全な歯根膜を可及的に多く残す必要がある。矯正治療による対応1)歯列不正 歯列不正には、歯周病罹患前から存在する歯列不正と、歯周病や習癖などにより引き起こされた歯列不正がある。いずれの場合も、プラークコントロールを困難にするようなケースでは、口腔衛生管理を行いやすい環境をつくる目的で、また、咬合干渉など咬合性外傷の原因となるようなケー スでは、咬合異常を改善する目的で矯正治療を行う。 2)矯正治療による歯周組織のリモデリング傾斜や挺出を生じ、咬合性外傷を合併している歯には骨縁下欠損が存在することがある。このような骨縁下欠損に対して歯周治療後に適切な矯正力(アップライト、挺出、圧下など)を加えることで骨欠損の改善が生じることがある。また、骨吸収を起こした歯を挺出させることで骨のレベルリングを行うことも可能である。この観点から矯正治療を単に歯の移動の手段としてではなく歯周組織の環境改善の手法として活用することは意義がある。口腔機能回復治療の意義歯周病患者の口腔機能回復は、歯周治療の一環としても極めて重要で、歯周病患者の補綴治療は、補綴予定部位の当該歯の病状安定後または治癒後に行うことが望ましい。口腔機能回復治療は決してゴールではなく、終わってからが本当の意味でのスタートである。その点をよく認識し、口腔内の健康維持のために適切なメインテナンスを行っていく必要がある。参考文献特定非営利活動法人日本歯周病学会. 歯周治療のガイドライン2022.(PDF)
482 TSUNAGU
2023年3月13日
過蓋咬合に対する矯正治療の臨床的実際

過蓋咬合に対する矯正治療の臨床的実際

矯正治療の目的として、機能の改善とそれに伴う上下顎の大臼歯および犬歯の咬合関係や前歯部のオーバーバイトの改善が必要である。不正咬合のなかでも特に、過蓋咬合症例における前歯部のオーバーバイトの改善は治療が難しいものの一つであり、顎顔面の水平的不正、垂直的不正についても十分に考えていく必要がある。 過蓋咬合の基準過蓋咬合とは、上顎前歯部と下顎前歯部の垂直被蓋が異常に深い咬合を呈するものであり、下顎にスピーカーブが認められる。具体的には咬頭嵌合位における上顎前歯が下顎前歯の唇面1/4から1/3を覆う正常被蓋をはるかに越えて、深く咬合するものを示す。このとき、しばしば下顎前歯切縁が上顎前歯部舌側歯頸部付近の歯肉を咬むような状態をみることができる。また反対咬合の場合にも垂直被蓋が大きければこの語を適用することがある(オーバークロージャー)。過蓋咬合には、骨格的要因として下顎角が小さい下顎骨形態や、下顎下縁平面角の狭小などがある。また歯槽性要因として上下顎前歯の高位や臼歯の低位などがある。 過蓋咬合はさまざまな不正咬合と合併することが多い。たとえば、AngleⅡ級2類のように上顎前歯が下顎前歯の唇側面を大きく覆うものや、AngleⅡ級1類のように上顎前歯の前方位や唇側傾斜によって過度のオーバージェットを生じて下顎前歯が口蓋に噛み込むようなもの。一方では、下顎前歯が上顎前歯の唇側面を大きく覆う反対咬合のタイプもある。 AngleⅡ級2類の場合は、咬合時に上下顎の歯の接触により下顎が後方や前方に機能的に誘導されることによって生じ、顎関節症を伴うこともある。過蓋咬合の背景として、一般的には強い咬合力、場合によっては加齢にともなった歯の咬耗や歯周組織の崩壊、あるいは歯の喪失などが認められる。 過蓋咬合は治療すべきか?一般に過蓋咬合の見られる患者では上下顎全歯の摩耗や咬合位の低下により、そのままの状態では義歯や金属冠などの装着が困難であること、また顎関節部や筋肉への影響、発音や咀嚼機能などの顎口腔系への機能障害、そして回復後の咬合の安定性への低下が懸念される。それと同時に、頬粘膜や舌の咬傷、口角びらん、審美障害、顎関節障害が発生しやすい。これらを改善するためには咬合高径の回復が必要であり、適切な垂直的顎間距離を構築することが大切になってくる。上記のことより、過蓋咬合は適切な時期に治療すべきであると考えられる。 成長時期による治療のポイント乳歯列期や混合歯列期における過蓋咬合の治療は、顎骨の成長を利用し咬合挙上をはかるのが理想的である。乳歯列期では前歯のオーバーバイトが深くなりすぎると、円滑な下顎の前方滑走ならびに側方滑走運動に抑制ないし無理が生じるため、上顎に対する下顎の順調な前方発育が阻害される。その結果、のちに下顎骨の劣成長や下顎遠心咬合を招いたり、顎機能異常症への引き金ともなりうる。しかし、上下の対顎関係が良好なもの(Skeletal1)に対処すべきかは疑問の余地がある。したがって著しいSkeletal2あるいはディスタルステップ型、またはその両方が認められる過蓋咬合と診断できる場合は、咬合の挙上と下顎の前方発育の促進を目的として矯正治療を行うのがよい。 混合歯列期の過蓋咬合は、自然治癒を期待することは難しい。発育成長中の下顎骨の前方成長ならびに前方滑走運動の阻害への対処ということから考えると、咬合の挙上と上下顎第一大臼歯のⅠ級関係にするべく矯正治療を行うのが望ましい。Ⅰ級関係をつくるため上顎第一大臼歯の遠心移動によるのか、下顎第一大臼歯の近心移動ないし下歯列弓の前方への成長によるのか、それら両方によるのかは、上顎前歯の舌側移動の必要があるのか、側方歯群の萌出余地をどのようにして確保するのかなどの条件に応じて、二期治療を前提としての抜歯か非抜歯かの予測を含め、適切な判断が必要である。 また過蓋咬合の改善が臼歯の萌出促進(挺出)によるのか前歯の圧下によるのかそれら両方によるのかに応じ、もし1または3によるべきと判断される場合は、歯根の成長を考慮し、前期混合歯列期での器械的連続力による長期の治療を避けるべきである。 他方、骨格型の不調和(Skeletal2)が著しい場合、大幅な下顎骨の前方誘導や前方成長が期待できないため対処を避けるべきであり、 その後の外科的矯正治療を含む判断が必要である。なお後期混合歯列期のなかごろから第二大臼歯の萌出(咬合)完了の間にいわゆる思春期性成長加速の現象があり、この時期の下顎骨の前方成長を利用してSkeletal2の改善が進むこともあり、考慮しなければならない。 成人の場合は治療方法が異なり、器械的に上下顎前歯の圧下をはかることや臼歯の挺出をはかることによるものが多い。歯の圧下は歯根および歯周組織に大きな負担をかけるため、矯正力の大きさや付与の仕方に注意する必要がある。また、治療後は保定期における慎重な観察と対応が必要である。特に、強い咬合力を有する症例に対しては後戻りを防止するために、咬合挙上板や咬合斜面板、スプリントなどを長期にわたって使用することがある。さらに、骨格性および歯槽性要因がともに強く、オーバーバイトが非常に大きい症例では、矯正治療のみによる改善が困難であるため、歯槽骨の部分的骨切術などを併用した外科的矯正治療を適用することもある。 成人のなかでも成長期に形成された過蓋咬合とは異なり、おもに壮年・老年期に歯周組織の老化や歯周病の罹患、歯の喪失などにより臼歯部の近心および舌側傾斜をきたし咬合高径が低下して、過蓋咬合を惹起あるいは増悪させる場合がある。この際は、歯周病科・補綴歯科・口腔外科などの専門科と連携して、臼歯の整直や前歯の位置を改善させ、包括的に顎口腔の機能回復とその後の長期的な維持・管理をはかる必要がある。 以上のことより、治療を介入する時期に応じた正しい診断とそれに応じた治療をしていくことが重要である。 
482 TSUNAGU
2023年1月12日
いいじゃん、ガミースマイルでも。

いいじゃん、ガミースマイルでも。

楽しい時、嬉しい時、写真を撮る時、満面の笑みを浮かべると見える歯茎。コンプレックスを感じて思いきり笑えていない人もいるんじゃないだろうか。「ガミースマイル」と検索すれば治療法の紹介がずらっと並び、見た目の悩みとして扱われている。もちろん、当事者はすごく気にしているだろうし、できることなら隠したいと考えるだろう。その悩みを否定はしないが、悩みのタネは「ガミースマイル」そのものではなくルッキズム(外見至上主義)からきているかもしれない。検索エンジンの関連ワードには「ガミースマイル 可愛い」というポジティブな言葉も出てくるし、価値観は変わってきている。その反面、ガミースマイルの治療法は発展し続けていて、特に歯科領域で取り上げられているのも事実だ。これはルッキズムに疑問を投げかけている現代に逆行すると捉えられても仕方ない。ではなぜガミースマイルは改善すべきとされていて、歯科で治療を進めているのか。病理的な側面も踏まえて考えていきたい。決して「気にすることが間違いだ」という話ではないと強調しておく。ガミースマイルの定義笑った際に上顎前歯が一部しか見えない場合、リップラインは低位、歯肉が辺縁から1~3mm露出する場合は中位、歯肉露出が3mm以上の場合、リップラインは高位(ハイスマイルライン)と定義される。文献によっては4mm以上歯肉が露出する場合をガミースマイルと定義されていたり、標準化はされていない。審美的な要求がメインのため、笑った時に歯肉が見えればガミースマイルと考えて問題ないだろう。どれくらい見えていたらどうだ、という点で人それぞれの価値観になるものだからこそ明確な定義はできない。ガミースマイルの治療法その治療法は多岐にわたるが、大きく分けると歯周外科治療か矯正治療になる。代表的なものをいくつか紹介する。上唇粘膜切除術(口唇移動術)口唇粘膜と歯槽粘膜を切除・縫合し上唇を上がらなくすることで歯肉の露出量を少なくする歯冠長延長術歯肉を切除し整形(場合により歯冠補綴)することで歯冠長を大きくし歯肉の露出量を少なくする歯科矯正LeFort l手術を併用したりインプラントを用いて上顎骨を持ち上げる外科矯正や、マルチブラケット装置でFH平面と咬合平面を平行にする方法、アンカースクリューを用いて上顎前歯を圧下させるなどボツリヌストキシン注射ボツリヌス菌を上唇挙筋に注射し筋の収縮を抑制することで上唇を上がりにくくする他にも筋機能療法など様々なアプローチがある。治療法の良し悪しは今回のテーマからそれてしまうので列挙するにとどめ割愛させていただく。たくさんの治療法が存在し、改良を重ね発展していることを鑑みると、ニーズは多いと考えられる。一方で医学的に見た必要性はどうか、考察してみよう。歯周組織への影響確固たるエビデンスを持ったガミースマイルの悪影響は見当たらず、病理的に問題ないと断言している論文もある。しかし可能性として考えられているのは乾燥を原因とした歯周炎・う蝕リスクの増加だ。歯肉・歯冠の露出する時間が長ければ、唾液による防御も働きにくく前述のリスク増加も考えられる。これは上顎前突症例や口呼吸患者に言われているもので、原因として上顎前突が多いガミースマイルにも共通する。少なからずこういった影響を及ぼす可能性はあるだろう。パーソナリティを尊重するのが医療のあるべき姿結果的に、ガミースマイルが治療必須な病態とは言い切れなかった。理論上リスクは高いもの、術前から歯周組織は健康そのもの、う蝕もみられないといったガミースマイルの症例もあり、本当に病理的には問題ないのかもしれない。かといって治療を推奨する歯科医院が金儲けでプロモーションしているかというと、そうでもなさそうだ。矯正や補綴を除いての話だが、外科手術にもかかわらず価格設定はそう高くない。需要と供給のバランスが私には丁度よく感じた。時代にそぐう医療とはニーズがあるからこそ行われるべき治療ではあるが、冒頭に立ち返って、もう一度考えたい。そのニーズは痛い・喋りにくいなどの機能障害ではなく、審美障害が大多数だ。審美障害は当事者の、個人の感覚で決まり、提供側が決めることではない。その人がネガティブに捉えていれば改善の手助けができるし、気にしていなければ特に助言の必要もない。しかし論文の中には「歯肉が見えない笑顔が一般的に美しいとされている」などガミースマイルが審美性に劣っていると主張するものもあり、コンプレックスを助長するような風潮もみられた。個人が望む、あるべき姿の支援をするのが医療であってほしい。ないとは思うが、歯科医師から「ガミースマイルを治しましょう」なんてルッキズムの権化、時代にそぐわない。歯科セミナーなら「1D(ワンディー)」で!日本最大級の歯科医療メディア「1D」では、診療に役立つオンラインセミナーを多数開催中。もっと知りたい臨床トピックから超ニッチな学術トピックまで、参加したいセミナーが見つかります。下記ボタンから、開催中のセミナーを見てみましょう!開催セミナーを見てみる参考文献武藤克巳,ガミースマイルへの臨床的アプローチ(2),2000 [PDF]小林義樹,遠藤敏哉,ガミースマイルに対するインプラントアンカーを用いた矯正治療,歯学98,2010 [PDF]Diana Mostafa, A successful management of sever gummy smile using gingivectomy and botulinum toxin injection: A case report, International Journal of Surgery Case Reports, 2018<URL>Jae Hyun Park, Temporary Anchorage Devices in Clinical Orthodontics, 2020<URL>中山真由子,槇宏太郎,久保田雅人,ガミースマイルを伴う骨格性上顎前突症に対し外科的矯正治療およびインプラント補綴治療を行った1症例,昭和学士会雑誌,2014 [PDF]宮地斉,黒柳範雄,落合栄樹,多分割Le Fort I型骨切り術を併用した上下顎移動術-ガミースマイルと上顎歯列狭窄を伴った上顎前突および下顎後退症への応用-,日本口腔外科学会,2014 [PDF]飯倉拓也,口唇移動術を用いてガミースマイルの改善が得られた症例の1年経過,日本歯周病学会会誌,2019 [PDF]水野 利昭,口呼吸の歯こう形成におよぼす影響について:サルにおける実験的研究,日本歯周病学会会誌,1985 [PDF]歯科矯正ネット「手術しないと治らないの?ガミースマイルの治療法とは」<URL>
ユースケ イシカワ
2020年6月27日

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