集中的口腔ケアで造血幹細胞移植における血流感染は減少する
新潟大学の医学部と歯学部の研究チームは、歯科専門チームによる集中的口腔ケアを造血幹細胞移植患者に行うと、移植時の血流感染を減少させる効果があることを発表した。血液疾患に対する造血幹細胞移植においては、一時的免疫低下による重篤な感染症・血流感染が問題となり、命に関わるリスクもある。今回の研究は歯科専門チームによる集中的口腔ケアがそのリスクを3分の1に低下させることを明らかにしたもので、造血幹細胞移植における医科歯科連携の重要性を示していると言えるだろう。集中的口腔ケアで血流感染が減少研究チームは、集中的口腔ケアと血流感染発生率の因果関係を明らかにするために、新潟大学医⻭学総合病院で行われた同種造血幹細胞移植の患者の診療経過をさかのぼった後ろ向き研究を行った。2006年から2017年に造血幹細胞移植を受けた患者を対象としたところ、解析可能なケースは206件だった。全ての患者は移植前に⻭科検診と必要な治療とブラッシング指導を受けていた。セルフケア群は1日2回以上の⻭磨き、消毒薬による含嗽を1日3〜5回行い、⻭科チームによる集中ケア群では、これらに加えて、移植の7日前から週1〜3回、1回あたり15分の⻭科専門チームによる口腔内の診察と洗浄を行っていた。⻭科専門チームによる集中ケア群と自分で行うセルフケア群を比較したところ、好中球生着前の血流感染に違いはなかったが、集中的口腔ケアを受けた患者では、好中球生着後の血流感染、特にコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(非CoNS)感染が著減していたという。中心静脈カテーテルの留置期間や病気の状態、移植方法の違いなどを考慮した場合でも、歯科による集中的ケアは好中球生着後の血流感染を低下させる因子であった。研究チームの解析によって、同種造血幹細胞移植における集中的口腔ケアの具体的な効果を明らかにすることができたと言えるだろう。造血幹細胞移植における医科歯科連携の重要性医療技術の進歩により過去20年で同種造血幹細胞移植の安全性は高まったものの、時に命の危険を生じる合併症がいくつかある。移植後の非再発死亡は約20%とされ、その半分は感染症であり、早急に解決されるべき課題のひとつであった。この研究により、造血幹細胞移植の領域においても、緊密な医科歯科連携を行なっていくことが、患者の合併症予防のために重要であることが明らかにされた。今後の研究に着目したい。参考文献Tatsuya Suwabe, Kyoko Fuse, Kouji Katsura, Marie Soga, Takayuki Katagiri, Yasuhiko Shibasaki, Miwako Narita, Hirohito Sone, Masayoshi Masuko, Intensive oral care can reduce bloodstream infection with coagulasenegative staphylococci after neutrophil engraftment in allogeneic hematopoietic stem-cell transplantation, supportive care in cancer, 2022.1.新潟大学プレスリリース『造⾎幹細胞移植時の集中的⼝腔ケアの重要性を明らかに− 好中球⽣着後の⾎流感染症を軽減する −』2021年12月8日.