歯科用語集
2025年10月28日

低栄養

「低栄養」とは?歯科用語の解説と症例を紹介

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定義・語源

低栄養とは、必要な栄養素が不足している状態を指す。栄養素には、タンパク質、ビタミン、ミネラルなどが含まれ、これらが不足すると身体の機能が低下する。語源は「低」と「栄養」の組み合わせであり、栄養が不足していることを示す。低栄養は、特に高齢者や慢性疾患を抱える患者に多く見られ、食事の摂取量や質が影響を与える。歯科医療においても、低栄養は口腔内の健康に直結し、歯周病や虫歯のリスクを高める要因となる。


臨床における位置づけ・判断基準

臨床において低栄養は、患者の全身的な健康状態を評価する重要な指標である。特に、歯科治療を行う際には、患者の栄養状態を確認することが求められる。判断基準としては、体重の変化、血液検査による栄養素の測定、食事摂取状況の評価が挙げられる。低栄養が疑われる場合、歯科医師は栄養士との連携を図り、適切な栄養指導を行うことが重要である。また、低栄養は治療の効果にも影響を与えるため、早期の介入が求められる。

関連用語・類義語との違い

低栄養に関連する用語としては、「栄養失調」や「栄養不良」があるが、これらは微妙に異なる。栄養失調は、栄養素が極端に不足している状態を指し、低栄養よりも重篤な状態を意味することが多い。一方、栄養不良は、栄養素の過不足がある状態を広く指すため、低栄養とは必ずしも同義ではない。歯科医療においては、低栄養が口腔内の健康に与える影響を理解し、適切な対策を講じることが求められる。

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低栄養が歯科臨床に与える影響とその対策。歯科医師・歯科衛生士が知っておくべき症例と処置のポイント

低栄養が歯科臨床に与える影響とその対策。歯科医師・歯科衛生士が知っておくべき症例と処置のポイント

低栄養の定義と歯科における重要性低栄養とは、必要な栄養素が不足している状態を指す。特に高齢者や慢性疾患を抱える患者においては、低栄養が口腔内の健康に深刻な影響を及ぼすことがある。歯科医師や歯科衛生士は、低栄養のリスクを理解し、患者の栄養状態を評価することが重要である。低栄養は、歯周病やう蝕の進行を助長する要因となるため、早期の診断と適切な処置が求められる。特に、栄養不足が口腔内の免疫力を低下させ、感染症のリスクを高めることがあるため、注意が必要である。低栄養の症状と診断方法低栄養の症状は多岐にわたるが、口腔内に特有の症状が現れることがある。例えば、口腔乾燥や味覚の変化、歯肉の炎症などが挙げられる。これらの症状は、患者の生活の質を低下させる要因となるため、早期の診断が重要である。診断方法としては、栄養状態の評価に加え、口腔内の診査を行うことが推奨される。具体的には、BMI(体格指数)や血液検査を通じて、栄養素の不足を確認することができる。歯科医師は、これらの情報をもとに、適切な処置を判断する必要がある。低栄養に対する処置と術式低栄養の患者に対する処置は、栄養状態の改善を目的とする。具体的には、栄養指導や食事療法が考えられる。歯科衛生士は、患者に対して口腔ケアの重要性を説明し、適切な食事の選択肢を提案することが求められる。また、低栄養が進行している場合には、歯科的な処置が必要となることもある。例えば、歯周病の治療やう蝕の処置を行うことで、口腔内の健康を回復させることができる。これにより、患者の栄養摂取が改善される可能性がある。低栄養に関連する症例と注意点低栄養に関連する症例としては、高齢者や慢性疾患を抱える患者が多い。これらの患者は、栄養状態が悪化しやすく、口腔内の健康が損なわれることがある。歯科医師は、これらの患者に対して特別な配慮が必要である。注意点としては、低栄養の改善には時間がかかることが多いため、長期的な視点でのアプローチが求められる。また、患者の生活習慣や心理的な要因も考慮し、包括的な治療計画を立てることが重要である。低栄養対策のメリットとデメリット低栄養対策を講じることには多くのメリットがある。まず、患者の口腔内の健康が改善されることで、全身の健康状態も向上する可能性がある。また、栄養状態が改善されることで、治療の効果が高まることが期待できる。一方で、低栄養対策にはデメリットも存在する。例えば、栄養指導や食事療法には時間と労力がかかるため、患者や医療従事者にとって負担となることがある。これらの点を考慮し、適切なバランスを保つことが求められる。まとめと今後の展望低栄養は、歯科臨床において無視できない問題である。歯科医師や歯科衛生士は、患者の栄養状態を評価し、適切な処置を行うことで、口腔内の健康を維持する役割を担っている。今後は、低栄養に関する研究が進むことで、より効果的な対策が明らかになることが期待される。また、歯科医療と栄養学の連携が強化されることで、患者の健康を総合的に支えることができるようになるだろう。
1D編集部
2024年6月1日
義歯の使用でタンパク質の摂取量に違い 東北大研究

義歯の使用でタンパク質の摂取量に違い 東北大研究

タンパク質は、人体の15〜20%を占めるものです。ご存じの通りタンパク質は筋肉や臓器を構成するため、全年齢においてとても重要な要素です。特に高齢者におけるタンパク質の低摂取は問題となります。タンパク質の低摂取は筋肉量の低下につながるため、フレイルやサルコペニアのリスクを高めるのです。これまで、残存歯数によるタンパク質の摂取量変化に関する研究は行われてきましたが、義歯などの補綴装置の使用の有無で、タンパク質の摂取量に変化が生じるかは明らかにされていませんでした。そこで東北大学大学院歯学研究科・助教の草間太郎氏は、これに関する調査を行いました。本研究結果から、残存歯数の少ない人でも、義歯などの補綴装置を使用していることにより、タンパク質の摂取状態を維持または改善できる可能性が示唆されました。 本研究成果は、2023年7月2日に国際的な歯科医学学術誌である「Journal of Oral Rehabilitation」にも公開されました。研究の背景高齢者では筋肉量の低下により、フレイルやサルコペニアのリスクが高まります。筋肉量を維持するためには、適度な運動はもちろん、普段の食事から十分な量のタンパク質を摂取することが重要です。これまでの研究から、歯を多く失っている人では、タンパク質の摂取量が減少することがわかっています。しかし義歯などの補綴装置を使っていることが、タンパク質の摂取量にどのように影響するのかは明らかになっていなかったため、本研究では歯を失っている高齢者において義歯とタンパク質摂取量の関連を調査しました。対象と方法2019年に実施されたJAGES(Japan Gerontological Evaluation Study:日本老年学的評価研究)調査に参加した高齢者のうち、岩沼市に居住している74歳以上の高齢者を対象とし、2019年時点での歯の本数(20本以上/10~19本/0~9本)および義歯・ブリッジ・インプラントを含む補綴装置の使用を調査しました。そして簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)により推定した、総摂取カロリーあたりのタンパク質(総タンパク質・動物性タンパク質・植物性タンパク質)の占める割合(%E)との関連を評価しました。分析では、歯数と補綴装置との交互作用を考慮した重回帰分析を用いて、歯数20本以上と比較した歯数10〜19本/0〜9本のタンパク質摂取量の差を95%信頼区間とともに推定しました。補綴装置を使っている場合・使っていない場合それぞれにおいて調査しました。また残存歯数10〜19本/0〜9本それぞれの場合において、歯数が少ないことによるタンパク質摂取量の減少が、補綴装置によってどの程度改善されたのかについても算出しました。分析では以下による影響を除外しました。性別年齢教育歴等価所得(世帯の年間可処分所得(いわゆる手取り収入)を世帯人員で調整したもの)婚姻状況世帯人数併存疾患(がん・脳 卒中・糖尿病)ADL東日本大震災による住居の影響喫煙歴飲酒習慣研究の結果対象者2,095人における、総タンパク質摂取量の平均は17.4%E(SD=5.1)でした。歯数と補綴装置使用とを組み合わせた、群ごとの総タンパク質摂取量の平均値は以下の通りでした。重回帰分析の結果、以下のことがわかりました。動物性タンパク質の摂取に限っても同様の結果が得られましたが、植物性タンパク質の摂取においては、歯数および補綴装置の有無による有意な差は見られませんでした。本研究では、74歳以上の高齢者およそ2,000人を対象とした横断調査により、歯が20本以上ある人と比べて、0~9本の人で補綴装置を使っていない人では、1日の摂取エネルギーあたりのタンパク質摂取量が2.3%低いことも示されました。しかし、同じく歯数0〜9本の人でも、補綴装置を使っている人ではタンパク質の摂取量低下が0.5%と、8割ほど小さくなることが明らかになりました。研究の結論本研究から、多くの歯を失った高齢者において、義歯・ブリッジ・インプラントなどの補綴装置を使用することにより、歯の喪失によるタンパク質の摂取量の低下を防ぐことができる可能性が示唆されました。研究の意義歯の喪失は、高齢者において有病率の高い健康問題の一つであり、さまざまな疾患・障害の発生につながる可能性があります。歯の喪失は不可逆的な状態ではありますが、義歯やブリッジ・インプラントなどを用いた適切な歯科補綴治療を受けることによって、栄養状態の改善および低栄養状態に起因するさまざまな健康問題を未然に防げる可能性があります。参考文献東北大学プレスリリース「歯が少ない人でも、入れ歯を使っていれば、タンパク質の摂取低下は小さい」(URL)
1D編集部
2023年10月20日
歯科医院は「認知症患者」にどう対応すべきか?

歯科医院は「認知症患者」にどう対応すべきか?

超高齢社会の我が国において、認知症は「身近な疾患」となっている。歯科医院においても、これまで通院していた患者が罹患する可能性も高く、対応に関する知識習得が必要だ。もし、認知症の患者が「義歯を盗まれた」と言ってきたら。もし、頻繁に治療日を勘違いしてしまったら。あなたは適切な態度で向き合うことができるだろうか。知っておくべき認知症のキソ知識まずはじめに、認知症について知っておくべき基礎知識を整理しよう。日本神経学会の『認知症疾患治療ガイドライン』によれば、認知症とは下記の疾患と定義される。認知症とは、アルツハイマー病その他の神経変性疾患、脳血管疾患その他の疾患により日常生活に支障が生じる程度にまで認知機能が低下した状態として政令で定める状態をいう。認知症の主な症状は、下記1〜5の「中核症状」と、6の「周辺症状」とに大別できる。記憶障害見当識障害(時間や場所がわからなくなる)理解力・判断力の低下失語・失行(日常的にできていたことができなくなる)、失認(目の前のものが何かわからない)遂行機能障害(約束が守れない)行動・心理症状(BPSD)また認知症の分類は、脳細胞の変性のない「神経変形性疾患」と、変性のある「脳血管障害」、「混合型」、「その他(感染性疾患など)」に分けられる。また、認知症の検査には、改定長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)、ミニメンタルステート検査(MMSE)、FAST(Functional Assessment Staging of Alzheimer's Disease)など、スクリーニングを質問形式で行うものがある。その後、必要に応じて脳画像検査(CT、MRI、SPECT)を行う。なお、認知症に対する治療は基本的には対症療法となり、根本的な治療は現在のところない。認知症による歯科診療上の問題とは?認知症によって出現する歯科診療上の問題や臨床におけるポイントとしては、下記の6点が挙げられる。健常者よりう蝕・歯周病が多い義歯の取り扱い・管理ができなくなる開口拒否のため粘膜疾患の悪化が著しい咀嚼機能の低下により低栄養リスクが高まる摂食嚥下機能が低下する義歯未装着者は認知症を発症しやすい上記項目について、それぞれ詳しく解説していこう。健常者よりう蝕・歯周病が多い認知症患者は、自発的な清潔行動の低下、手指の巧緻性の低下、視空間認知障害により、セルフケアは困難となるため、歯周病や歯頸部う蝕が多発してしまう。義歯の取り扱い・管理ができなくなる義歯の着脱ができなくなり、支台歯や粘膜が不潔となり、口腔状態の悪化へとつながる。逆に新義歯を未装着のまま過ごすこともあり、栄養状態の悪化の原因ともなっている。開口拒否のため粘膜疾患の悪化が著しい認知症においては口腔清掃の必要性を理解できなくなり、開口拒否が目立つようになる。そのため、口内炎やカンジダが発生しやすく、難治性となってしまう。また潰瘍や腫瘍の発見も遅れ、重症化することもある。咀嚼機能の低下により低栄養リスクが高まる認知症患者は義歯装着困難により、機能歯数の減少が起き、咬合支持を失うケースが多い。そして廃用による筋機能の低下を引き起こし、摂食可能な食品が減少するため、低栄養となってしまう。摂食嚥下機能が低下する食具の使用の失行により、手づかみ食べとなり、一口量の調節ができないため、誤嚥や窒息のリスクが上がり、誤嚥性肺炎を合併しやすくなる。義歯未装着者は認知症を発症しやすい歯がなくても義歯装着している人と20本以上歯を有した人とで比較したところ認知症発症リスクに差がなかったという結果が出ており、認知症と咀嚼能力、歯の喪失、口腔衛生の関連を示唆する報告もある。いかにして認知症患者に対応すべきか?歯科診療上、認知症患者に対して気を付けるべきポイントは理解できた。それでは実際に、どのようにして認知症患者に対応するべきだろうか。ポイントは、下記の点である。歯の定期ケアをつづけ、関わりを途切れないようにすること信頼関係を築き、お互いの言いたいことを伝えあうこと急かさないこと。本人のペースを尊重し、イライラしない環境づくりをすること笑顔で接すること声かけは正面から目線の高さを合わせて一人で話しかけること被害妄想(義歯を盗まれた、など)への対応は否定せずに、共感してあげること感情のコントロールができず、暴力をふるう方への対応は同じ力で返すのではなく、その場を一旦離れ、冷静になってから、穏やかに対応すること服薬拒否や治療拒否への対応は、医師が処方した薬の写真やメモを書いて本人にあげることで改善することもあるが、まずは認知症の主治医に相談すること認知症患者の自立を助けるために些細なことでも早期に発見すれば、認知症患者の自立を支援する機会も広げることができる。例えば、急激にプラークコントロールが悪化したり、う蝕・歯周病が増えたなどの口腔内の変化や、会計や予約時の不安な様子、頻回の予約間違い、診療室内での挙動やユニットの移乗・うがいをする場面でのたどたどしさ、診療に対する不安を話してくるなどがサインとなってくる。口腔内に変化がなくても、行動から早期発見できることもあるため、歯科医師・歯科衛生士のみならずチームでの認知症に対する理解が必要だ。われわれ歯科医療者にできることは、認知症患者を見捨てないでサポートしていく、あたたかい世の中づくりへの担い手となることではないだろうか。参考文献『認知症患者の歯科的対応および歯科治療のあり方:学会の立場表明 2015.6.22版』日本老年歯科医学会, 2015.06.22.『認知症疾患診療ガイドライン2017』日本神経学会, 医学書院, 2017.07.31.『こころの病気を知る 認知症』厚生労働省, 2022年3月29日閲覧.『学研CoCofump 【専門家監修】認知症の方への対応方法 家族の接し方・収集癖やせん妄等の対処法を紹介』矢野大仁, 2022年3月29日閲覧.
Imani
2022年4月3日
【1D的セミナーログ】訪問診療の現場における歯科チームの価値とは?

【1D的セミナーログ】訪問診療の現場における歯科チームの価値とは?

先日、1Dでは東京医科歯科大学教授の戸原玄先生、および同大学特任助教の山口浩平先生による「世界一わかりやすい嚥下機能検査〜スクリーニングから内視鏡まで徹底解説〜」と題するWebセミナーが行われた。戸原教授は「声を出せない」患者さんを対象としたマウスピース型の装置「Voice Retriever」の開発も行っており、先日1Dでも取り上げている。>> 「失われた声を取り戻す」。医科歯科大チームがクラウドファンディング開始当日は多くの歯科医師・歯科衛生士の方々が参加し、質問も多く盛況となった。本記事では、そのセミナーの内容をかいつまんで解説したい。講義動画(120分)を視聴するVEですべてがわかる?巷ではよく、「VEで誤嚥と咽頭残留の有無がわかれば、嚥下診療の大部分ができている」と誤解されている。しかし、VEなどの検査はその患者さんの時系列軸の中の一時点を評価しているのに過ぎず、患者さんを取り巻く環境や疾患の多様な症状に対して根本的な解決策を提示することはできていないと言える。私たち歯科医療者は、どのような役割を担い、どのような価値を出して、摂食・嚥下治療に介入していけばいいのだろうか。共通言語が異なる診療現場歯科医院の外来・診療所と比べて、訪問における歯科診療の環境は大きく異なる。外来では歯科の専門性を十分に理解しているスタッフしかいないが、訪問での歯科診療では、自分たち以外は「歯科は専門外」の職種だ。当然のことながら、略語などの共通言語や考え方が異なる。歯科以外の職種の方から、口腔全般の意見が求められることもある。さらに、私たちが日常臨床でフォーカスする「口腔」が、廃用・低栄養・サルコペニアなどの問題の中のひとつとして扱われているということに大きなギャップを感じることだろう。訪問現場における歯科医療者の価値とは?そのような環境のなかで検査を行なうとき、私たち歯科医療者が出せる価値とは何か。ここで摂食嚥下の専門医と一般歯科診療プラスアルファで嚥下診療をする場合で方針が異なる。専門医は「なぜ起きたか」を考えるが、専門医でなければ、まずは「問題提起」するだけで十分な価値が産み出せる。つまり、問題解決のために歯科医師としてできることを他職種に示し、できないことを他職種に依頼することである。実際に、摂食・嚥下において「顎口腔の調整」は調整困難なものとされているが、その分野こそ歯科ならではの介入をしていける部分であると考えられる。その役割を担うことができ、ケアマネジャー以外の職種から仕事を依頼されて初めて多職種連携していると言えるのではないだろうか。脱・医療者の安心のための方法私たちが用いている定番の手法が、「患者さんの快適さ」ではなく「医療者の安心のため」になっていないか、よく吟味すべきである。患者さんそれぞれの嗜好性も治療のアイデアに入れながら治療を進めていくことが、嚥下治療ならではの診療である。期間限定でセミナー動画が視聴可能本セミナーの視聴お申込みは下記ボタンから可能である。嚥下機能検査や摂食・嚥下にに関心がある先生方は、ぜひご視聴いただきたい。講義動画(120分)を視聴する
1D編集部
2021年12月2日
日焼け止めクリームが引き起こすエナメル質形成不全

日焼け止めクリームが引き起こすエナメル質形成不全

MIH:切歯と大臼歯に限局したエナメル質形成不全小児歯科領域で症例の報告が増加している、MIH(用語解説)と呼ばれる病態を知っているだろうか。MIHは「Molar-Incisor-Hypomineralization」の略で、日本語にすると「臼歯と切歯の低石灰化」といったところだろう。MIHは第一大臼歯および切歯に限局して発症するエナメル質形成不全であり、2000年以降は論文の報告数がそれ以前より多くなっている。第一大臼歯と切歯は出生前後から歯冠の石灰化が始まることから、MIHの発症原因は分娩時の低酸素、低栄養、妊娠期間中の薬剤や低栄養などが考えられる。未だに詳しい原因は解明はされていないものの、ひとつの原因は「妊婦の日焼け止めクリーム」なのではないかという仮説を立てた研究がある。原因は日焼け止めクリームかもしれないなぜ日焼け止めクリームなのか、と思う方は多いだろう。ポイントは、日光によるビタミンDの生合成にある。ビタミンDは日光により皮膚で合成されるが、日焼け止めクリームはビタミンDの合成を阻害してしまう。活性型ビタミンD3は歯原性上皮細胞においてエナメル芽細胞への分化誘導因子であることから、日焼け止めによってビタミンDが不足し、エナメル芽細胞の分化が阻害され、エナメル質形成不全が起きるというわけだ。画像はマウスでの実験を撮影した写真で、左が正常なマウス、右がビタミンDが欠如した餌を与えられたマウスである。右のビタミンDが不足した方のマウスは、歯が白濁しているのがわかる。石灰化度は両者で変わらないものの、右のマウスは切歯の切端や臼歯の咬頭の摩耗が通常のマウスと比べ亢進していたという。東北大学の報告によれば、健康な妊婦は血中ビタミンDが正常より低下している場合が多い。つまり、エナメル質低石灰化症はヒトでも起こり得るため、日焼け止めクリームは塗らない方が良いのだろうか。結論、辞めなくても良いしかしながら、日焼けは痛みを伴うし、シミや皮膚がんにつながる可能性もある。また免疫抑制の作用もあることが、最近になって知られている。デンマークの大学の研究で、ビタミンD製剤を妊婦に投与した結果を示した論文がある。2009年に623人の24週目の妊婦の方を集め、約半分の妊婦が産後一週まで高用量のビタミンD製剤を服用してもらい 、もう半分の妊婦の方にはプラセボの錠剤を服用してもらった。子供が6歳になったときに歯の状態をチェックした結果、乳歯でも永久歯でもエナメル質の低形成の割合が少なかったのだ。つまり、日焼け止めクリームの使用を中止することではなくて、ビタミンD製剤を服用することでエナメル質形成不全は防げるかもしれないという結果が出たのである。予防は出産前から?これが示唆するのは「歯科疾患の予防は出産前から始まるかもしれない」ということだ。エナメル質低石灰化症は歯の色が変わるが特に切歯は審美領域なので、将来的に気にする子供も出てくるだろう。また、マウスの実験で分かるように摩耗が早く進むということは、第一大臼歯部が噛みにくくなる可能性もあるということである。これらの歯科的な問題を防ぐのは子供がお腹の中にいる時からと、診療室で指導する時代がこれから来るのだろう。歯科セミナーなら「1D(ワンディー)」で!日本最大級の歯科医療メディア「1D」では、診療に役立つオンラインセミナーを多数開催中。もっと知りたい臨床トピックから超ニッチな学術トピックまで、参加したいセミナーが見つかります。下記ボタンから、開催中のセミナーを見てみましょう!開催セミナーを見てみる参考文献科学研究費助成事業 研究成果報告書 「妊婦授乳婦の日焼け止めと子どものエナメル質低石灰化症発症との関連」,<URL>, 2020年3月19日閲覧Nørrisgaard, P. E., Haubek, D., Kühnisch, J., Chawes, B. L., Stokholm, J., Bønnelykke, K., & Bisgaard, H. (2019). Association of high-dose vitamin D supplementation during pregnancy with the risk of enamel defects in offspring: a 6-year follow-up of a randomized clinical trial. JAMA pediatrics, 173(10), 924-930.Nakamura, T., Jimenez‐Rojo, L., Koyama, E., Pacifici, M., de Vega, S., Iwamoto, M., ... & Yamada, Y. (2017). Epiprofin regulates enamel formation and tooth morphogenesis by controlling epithelial‐mesenchymal interactions during tooth development. Journal of Bone and Mineral Research, 32(3), 601-610.皮膚科 Q&A 日焼け, 日本皮膚科学会 , <URL>, 2020年3月21日閲覧
宇梶 淳平
2020年3月25日

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