歯周治療が成功すると、便中のFusobacterium nucleatumが減少する
横浜市立大学の研究チームは、歯周病に関連する口腔内常在菌であるFusobacterium nucleatumが、歯周治療により便中から減少することを明らかにした。Fusobacterium nucleatumは大腸がんの発症・進行に関連があることが指摘されており、歯周病と大腸がんの関連について注目が集まっている。同大学は13日付でプレスリリースを出しており、論文は12月9日にScientific reports誌に掲載されている。<関連セミナー>ペリオを極める、全11回のオンラインコース。詳細・お申し込みは下記ボタンから。コース詳細を見てみる大腸がん研究で注目されるF. nucleatum歯科医療者なら知っているだろうが、Fusobacterium nucleatumは歯周病に関連する口腔内常在菌である。近年、Fusobacterium nucleatumが大腸がんの発がんと進行に関連があることが次々と指摘されており、大腸がん研究では非常に注目される細菌となっている。今回の研究は、歯周治療を行うことにより、便中のFusobacterium nucleatumも減少するということを明らかにした、世界初の研究である。歯周治療が成功すると便中のF. nucleatumが減少する大腸内視鏡検査を受け、大腸腫瘍を認めた患者の唾液や便、大腸腫瘍組織の一部を採取し、歯周治療を約3ヶ月間行った。歯周病治療後に大腸腫瘍を切除し、その際に再度、唾液、便、腫瘍組織を採取する、という方法で研究は行われた。歯周病治療前後のこれらの検体のFusobacterium nucleatumの動向をdigital PCRで調べたところ、如実な違いが出てきた。歯周治療が成功した患者では便中のFusobacterium nucleatumが減少し、歯周病が改善しなかった患者では便中のFusobacterium nucleatumは減少しなかったのだ。一方で、異型度が高い腫瘍組織をもつ患者の便のFusobacterium nucleatumは、異型度が低い腫瘍組織をもつ患者の便よりも多く検出され、腫瘍の進行に伴ってFusobacterium nucleatumが増加していくことが示唆された。大腸がんの予防に光明か日本では、悪性腫瘍のうち大腸癌の罹患数は第2位だ。非常に多くの人が大腸がんで苦しんでおり、その予防は喫緊の課題である。例えば胃がんは、ピロリ菌を除菌することによって予防効果が期待できると知られているが、大腸がんは特定の微生物をターゲットとする治療法は確立されていない状況である。口腔内のFusobacterium nucleatumと大腸に存在するFusobacterium nucleatumには関連性があり、歯周治療を適切に行えば、大腸がんの発がん予防や進行抑制に対して、恩恵を受けることができる可能性がある。このことが明らかになったことは、非常に大きな進歩であろう。しかし「なぜ歯周治療で便のFusobacterium nucleatumが減少したのか」という機序は解明できておらず、今後の検討課題である、と研究チームは付け加えている。ペリオを深く学びたいなら!冒頭で触れたように、1Dでは12月21日から「ペリオアカデミー」を開講する。歯周組織・歯周病の基礎から診査診断、基本治療〜外科〜メインテナンスの流れに沿って、歯周治療の全てを網羅し徹底的に学ぶことができる。総勢6名、プロフェッショナルの講師陣が全11回にわたってレクチャー。希望者は講師から症例のフィードバックが受けられる。ぜひご参加いただきたい。講義詳細を見てみる参考文献Rohani, B. Oral manifestations in patients with diabetes mellitus. World J. Diabetes 10, 485-489, doi:10.4239/wjd.v10.i9.485 (2019).Chistiakov, D. A., Orekhov, A. N. & Bobryshev, Y. V. Links between atherosclerotic and periodontal disease. Exp. Mol. Pathol. 100, 220-235, doi: 10.1016/j.yexmp.2016.01.006 (2016).Sen, S. et al. Periodontal disease, regular dental care use, and incident ischemic stroke. Stroke 49, 355-362, doi: 10.1161/STROKEAHA.117.018990 (2018).Komiya, Y. et al. Patients with colorectal cancer have identical strains of Fusobacterium nucleatum in their colorectal cancer and oral cavity. Gut 68, 1335-1337, doi: 10.1136/gutjnl-2018-316661 (2019).Tsutomu Yoshihara, Mitomu Kioi, Junichi Baba, Haruki Usuda, Takaomi Kessoku, Michihiro Iwaki, Tomohiro Takatsu, Noboru Misawa, Keiichi Ashikari, Tetsuya Matsuura, Akiko Fuyuki, Hidenori Ohkubo, Mitsuharu Matsumoto, Koichiro Wada, Atsushi Nakajima, Takuma Higurashi. A prospective interventional trial on the effect of periodontal treatment on Fusobacterium nucleatum abundance in patients with colorectal tumours. Scientific reports, DOI: 10.1038/s41598-021-03083-4 (2021).歯周病の治療が、大腸がんの病態に関連する細菌Fusobacterium nucleatumの動向に影響することを発見, 横浜市立大学プレスリリース, 2021年12月16日閲覧.