仮封材とは?
仮封材とは、治療途中の歯面や根管を一時的に細菌や汚染物質から守るために用いられる材料のことです。窩洞形成や覆髄処置を行ったあとの歯面の印象採得後から修復物が完成するまでの期間、あるいは感染根管治療を行なっている途中の根管を次の治療までの期間など歯科臨床ににおいて一時的に細菌や汚染物質、唾液などの侵入を防止するために封鎖が必要な場面は多々あります。そのような場面で一時的な封鎖(仮封)を行うために用いられる材料を仮封材といいます。
仮封材の所要性質
仮封材は、臨床的に用いられる場面では、一定期間口腔内に露出し放置される場合が多いです。そのため、仮封材には望まれる所要性質がいくつかあります。仮封材に求められる所要性質は以下のものが挙げられます。
- 生体安全性に優れること
- 化学的に安定していること
- 辺縁漏洩を起こさないこと
- 充填や除去などの操作性に優れること
- 咬合圧に耐える機械的性質を有すること
しかし、これらの要件を全て備えている仮封材は現在のところ認められず、実際の臨床においては、症例や場面ごとに判断して使用していくことが必要であります。
仮封材の種類
仮封材を、大きく種類分けすると、①テンポラリーストッピング ②セメント系仮封材 ③レジン系仮封材の3つに大別されます。それぞれについて以下で詳しく説明します。
仮封材の種類:テンポラリーストッピング
主成分はガッタパーチャであり、そこに酸化亜鉛、蜜ろう、ワックスなどを加えたものです。蜜ろうを加えることで粘着性を付与しています。熱可塑性であるため、熱を加えると軟化し、常温では硬化します。操作性に優れています。
テンポラリーストッピングの使用方法は、専用のストッピングキャリアー内に入れ、キャリアーごと熱を加えることで軟化させて使用するか、直接熱を加えて成形して使用します。除去は容易であり、探針、エキスカベーターなどで除去できます。封鎖性が劣るため単身での使用には適しておらず、二重仮封の内材として使用される事が多いです。
仮封材の種類:セメント系仮封材
セメント系仮封材は、①リン酸亜鉛セメント ②酸化亜鉛ユージノールセメント ③ポリカルボキシレートセメント ④グラスアイオノマーセメント ⑤水硬性セメントなどが主にあります。
①リン酸亜鉛セメント
酸化亜鉛(粉)と正リン酸(液)を主成分とするセメントです。歯質接着性はないが除去は困難であり回転切削器具が必要です。機械的強度に優れています。しかし、リン酸には歯髄刺激性があるため生活歯への使用時には注意が必要です。
②酸化亜鉛ユージノールセメント
酸化亜鉛(粉)とユージノール(液)を主成分とするセメントです。歯質接着性はありません。機械的強度は他のセメントと比べると低いです。歯髄鎮静作用があります。ユージーノールがレジンの重合阻害を持つため、最終修復や合着用セメントにレジン系の材料を使用する場合には使用を避けます。テンポラリーストッピングと組み合わせて二重仮封に用いられることが多いです。
③ポリカルボキシレートセメント
酸化亜鉛(粉)とポリカルボン酸(液)を主成分とするセメントです。歯質接着性があります。機械的強度強度に優れています。歯質接着性があるため除去が困難です。回転切削器具を用いて除去します。
④グラスアイオノマーセメント
フルオロアルミノシリケートガラス(粉)とポリカルボン酸(液)を主成分とするセメントです。歯質接着性があります。機械的強度に優れています。フッ素徐放性があります。回転切削器具を用いて除去します。
⑤水硬性セメント
酸化亜鉛と硫酸マグネシウムの油性練和物です。パテの性状をしており仮封部分に直接充填して使用します。水硬性のため唾液などの水分と接触することで効果を発揮します。歯質接着性はありません。硬化時に硬化膨張が起きます。除去は容易であり、探針やエキスカベーターで除去可能です。
仮封材の種類:レジン系仮封材
レジン系仮封材は、粉と液を練和する化学重合型と1ペーストタイプの光重合型の2種類があります。どちらも仮封材として用いられるものは可塑剤を添加している軟質レジン材料です。化学重合型は、主に筆積法で使用されます。光重合型は、充填操作を行なったのち光照射を行い用います。
仮封材使用時の注意点
仮封材を使用する際は、その後の処置の流れを妨げないものを選択しなければなりません。例えば、窩洞形成後の窩洞の仮封には歯質接着性がなく除去が容易なものを選択しなければなりません。