歯科用語集

2022年03月13日

DMF歯数

「DMF歯数」とは?歯科用語の解説と症例を紹介

DMF歯数とは?

DMF歯数とは、う蝕経験がある歯の合計数のことです。DMF歯数は、う蝕に関する疫学的指標の一つです。Dは「未処置のう蝕歯」、Mは「う蝕を原因とする喪失歯」、Fは「う蝕による処置歯」をそれぞれ指しています。

う蝕経験歯の判定基準は?

う蝕経験歯としては、未処置歯(D)、う蝕よる喪失歯(M)う蝕による処置歯(F)があり、これらを利用してう蝕経験について1回の検診により評価できる疫学指標がDMFおよびdef(あるいはdmf)に関する指標です。

D、M、Fは永久歯、d、e(もしくはm)、fは乳歯のう蝕経験歯に用います。同じ口腔内であっても、乳歯と永久歯を分けて数えることが基本です。

DMF歯の定義

次に、DMF歯の定義に関してそれぞれ解説を行います。

【D歯(decayed tooth)】
D歯は、「未処置のう蝕歯」のことを指します。D歯には二次う蝕が含まれています。ただし、エナメル質形成不全歯、フッ素症歯、斑状歯などはう蝕の既往が無いことから含まれません(エナメル質形成不全歯、フッ素症歯、斑状歯に齲蝕を伴っている場合はD歯と判定します)。なお、学校歯科健康診断ではCOはD歯に含みません。

【M歯(missing tooth)】
M歯は、「う蝕を原因とする喪失歯」のことを指します。歯周疾患、矯正、外傷などう蝕以外の原因による抜去歯はM歯として判定しません。ただし、30歳以上では便宜的にう蝕以外の喪失歯もM歯とすることがあります。また、高度の未処置う蝕歯をM歯に含める場合もあります。

【F歯(filling tooth)】
F歯は、「う蝕のための処置歯」のことを指します。外傷や欠損補綴のために健全歯を支台歯としたブリッジなど、う蝕以外の原因で処置されたものはF歯としません。また、予防填塞した歯も、う蝕が原因ではないためF歯には該当しません。

WHOのう蝕の判定基準

WHOによるう蝕の判定基準では、確実にう蝕部分を探知できたもののみをう蝕として、疑わしいものはう蝕としません。

【う蝕とするもの】
CPIプローブを用いて、下記のものが認められるものをう蝕とします。ただし、いずれも疑わしい場合にはう蝕としません。

  • 軟化底・軟化壁
上記のほか、下記のものもう蝕として扱います。

  • 治療途中の仮封処置歯
  • シーラント墳墓がなされているがう蝕になっている歯

【う蝕としないもの】
  • 白濁斑やチョーク様斑
  • CPIプローブにてソフト感がない変色や粗造部位
  • 脱灰・侵蝕された徴候が認められない着色小窩裂溝
  • CPIプローブにより軟化壁、軟化底が探知し得ない着色小窩裂溝
  • 中程度および重度の歯のフッ素症にみられる暗黒色の固い小窩
  • 摩耗により生じたと思われるもの

dmf指数

dmf指数は、乳歯のDMF指数のことです。永久歯と区別するため小文字で表されます。5歳以上の小児では乳歯の自然脱落が始まるため、喪失歯の正確な評価が困難です。このため、5歳未満の小児に使用することが好ましいとされます。

世界のDMF歯数

WHOの地域別う蝕有病状況によれば、35-44歳のDMFTは地域によって大きな差がみられ、東南アジア、アフリカで少なく、アメリカやヨーロッパではその2〜3倍多いというデータがあります。

また、東南アジア、アフリカでは未処置歯(D)の占める割合が処置歯(F)よりも多いですが、アメリカやヨーロッパでは処置歯(F)の占める割合が未処置歯(D)よりも多いです。

DMFTの地域差は、甘いものを好む・好まないといった食生活の違い、単位人口当たりの歯科医師数の違い、また水道水フロリデーションの実施、フッ化物洗口の実施の有無などが理由として挙げられます。

DMF歯数の有意差の判定方法

DMF歯数の有意差の判定方法は、χ自乗検定(χ二乗検定)が使われます。χ自乗検定(χ二乗検定)は、対象とする2群間の割合や比率の違いを検定するときに用いられます。歯科領域においてはDMF者率、 DMF歯率、 D歯率などの比較に用いられます。

歯科疾患実態調査におけるDMF歯数

最近の歯科疾患実態調査におけるDMF歯数の概況を、下記に示します。

  • 5歳以上15歳未満の一人平均DMF歯数(DMFT指数)は、近年著明な減少傾向を示していた。
  • 15歳以上において一人平均DMF歯数(DMFT指数)は、若年者において減少がみられるだけでなく、各年齢階級においても緩やかに減少する傾向にあった。
  • 12歳児の一人平均DMF歯数(DMFT指数)は平成23年の調査で1.4、今回の平成28年調査で0.2であった。

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