ピエールロバン(Pierre Robin)症候群とは?
ピエールロバン症候群とは、小下顎症による呼吸困難、摂食・嚥下困難などさまざまな症状を示す先天性疾患のことで、別名ロビン連鎖、Robinシークエンスとも呼ばれます。遺伝的要素があるものはPierre Robin症候群と言われ、遺伝的要素のないものがRobinシークエンスと言われています。出生時の呼吸困難、その後の栄養不全で生命の危険があるが、比較的良好な経過をたどることも多いです。フランスの病理学者Pierre Robinの名にちなんで名付けられました。発生率は、8000~30000人に一人といわれています。
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ピエールロバン(Pierre Robin)症候群の症状
ピエールロバン症候群(Robinシークエンス)の主な症状は以下の通りです。
鳥貌(先天性小下顎症)
ピエールロバン症候群(Robinシークエンス)では、オトガイ後退とともに舌骨上筋群の脆弱化も認めるため舌の後方沈下(舌根沈下)が起こりやすくなります。鳥貌は成長とともに改善することも多いです(catch up growth)。
舌根沈下, 呼吸障害
ピエールロバン症候群(Robinシークエンス)では、舌根沈下の結果、吸気時の上気道閉塞、狭窄が新生児、乳児期からみられ、呼吸障害を起こしやすいです。就寝時や歯科治療時(とくに水平位)の舌根沈下に注意を要しています。呼吸障害の結果、二次的に漏斗胸をきたします。
下顎遠心咬合(骨格性下顎劣成長による)
ピエールロバン症候群(Robinシークエンス)では、下顎近心咬合、反対咬合はみられず、上顎突出(相対的)を伴いやすいです。
口蓋裂(軟口蓋裂)
嚥下機能の重度障害がある場合、経管栄養を行うことがあります。その他、四肢や耳介奇形、先天性心疾患(心奇形)、近視、緑内障などがあります。
ピエールロバン(Pierre Robin)症候群の原因
ピエールロバン症候群(Robinシークエンス)の原因は、常染色体の優性遺伝とされているが、詳細は不明です。ピエールロバン症候群の原因はそれ以外にも、妊娠中の薬物投与や胎内環境など、遺伝以外の原因の考えられています。またピエールロバン症候群(Robinシークエンス)では、子宮内で胎児頭位が過度に前屈し、オトガイが胸骨に圧迫されることで、小下顎症に下顎の後退が生じ、さらに舌根沈下が生じ口蓋裂が引き起こされると推定されています。
ピエールロバン(Pierre Robin)症候群の治療方法
ピエールロバン症候群(Robinシークエンス)の治療は、舌の前方牽引や気管切開などによる呼吸困難の改善や、経管栄養による摂食・嚥下困難の改善が主です。その他ピエールロバン症候群の治療では、口蓋裂や心疾患など合併症の治療も行われます。ピエールロバン症候群(Robinシークエンス)でみられる口蓋裂は、幅広いU字型を呈するのが特徴です。新生児期の呼吸障害によって死に至る症例もみられ、上気道閉塞に対して適切な処置が求められます。軽症例ないし中等度例では鼻咽頭チューブの留置や舌尖を下唇に縫合する舌固定術が用いられるが、重症例では気管切開を要することもあります。舌前方固定術は、他の外科処置と比べて極めて低侵襲であること、術後合併症を低減できること、術後管理の煩雑さが不用であることから、適応を選べば、患者のQOL 改善にとって極めて有効な手法であると考えられます。
ピエールロバン症候群をはじめとして、口蓋裂を伴う疾患の例として以下のものが挙げられます。
ピエールロバン症候群をはじめとして、下顎の発育異常を伴う疾患の例として以下のものが挙げられます。
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Cornelia de Lange症候群(全身的低形成)
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Beckwith-Wiedemann症候群(全身的過成長)