咬合採得

「咬合採得」とは?歯科用語を解説
最終更新日: 2021年06月14日

咬合採得とは?

咬合採得とは、「中心咬合位における上下顎の位置的関係を再現して取リ出してくること」と定義されている。補綴装置の製作や咬合診断などにおいて、上下顎の歯列模型、あるいは顎堤模型をそれぞれの目的に応じた顎位で咬合器に装着するために、種々の材料や機器を用いて上下顎の顎間関係を記録することをいう。無歯顎患者においては咬頭嵌合位を喪失し、歯を指標とした三次元的な咬合の記録が不可能なことから、咬合採得のことを顎間記録あるいは顎間関係記録(maxillomandibular relationship record)ともいう。咬合採得を英語ではmaxillomandibular registrationという。

全部床義歯での咬合採得の方法

全部床義歯での咬合採得の方法を、ラボサイド・チェアーサイドに分けて解説する。

(以下ラボサイドにて)
  • 作業模型の調整
  • 咬合床の作成

(以下チェアーサイドにて)
  • 口唇の豊隆の調整(=リップサポートの調整)
  • 上顎前歯部の咬合堤の高さの調整
  • 仮想咬合平面の決定
  • 下顎咬合堤の調整
  • フェイスボウトランスファー

(以下ラボサイドにて)
  • 上顎模型の咬合器への付着

(以下チェアーサイドにて)
  • 垂直的顎間関係の決定
  • 水平的顎間関係の決定
  • 顎間関係の不正の点検
  • 咬合堤への標示線の記入
  • 人工歯の選択
  • 上下顎咬合床の結合

なお、顎間関係の不正の点検後にフェイスボウトランスファーを行うことも可能である。

局部床義歯での咬合採得の方法

咬頭嵌合位を取ることが可能かどうかによって、大きく分けることができる。

【残存歯によって適切な咬頭嵌合位が確保されている場合】
  1. 模型が咬合位で落ち着く場合は、模型をそのまま咬合させて上顎と下顎の模型を咬合器にマウントする。
  2. 模型が咬合位で落ち着かない場合は、シリコーンゴム、ワックス、酸化亜鉛ユージノールペースト、ポリエーテルゴムを使い、インターオクルーザルレコードを採得するか、咬合床を使い顎間関係を記録する。

【残存歯の対合接触はあるが咬頭嵌合位が明確でない場合】
残存歯の対合接触はあるが咬頭嵌合位が明確でない場合は、咬合床、メタルフレームを使う。

【残存歯の咬合接触がない場合】
残存歯の咬合接触がない場合は、無歯顎と同じ咬合採得の方法を使い、顎間関係を決定する。

クラウン・ブリッジにおける咬合採得の方法

クラウンやブリッジにおける咬合採得の方法は、局部床義歯の方法に準じるが、特殊な方法として「咬合印象」がある。咬合印象とは、支台歯と対合歯およびその咬合関係を同時に採得する印象のことをいう。咬合印象にはインターオクルーザルレコードの要素も含まれる。

咬合印象の方法

咬合印象の方法・術式・手順を下記に解説する。

  1. 専用のトレーを試適する
  2. 専用のトレーの両面に印象材を盛る
  3. 患者の口腔内にトレーを挿入して咬頭嵌合位にて噛ませる
  4. 硬化後、印象体を撤去し、支台歯側に超硬質石膏を注入して咬合器に装着する
  5. 支台歯側が硬化したあと、対合歯側の印象面にも石膏を注入し、咬合器へ装着する
  6. 石膏硬化後、トレーを外す

インプラントでの咬合採得の方法

次に、インプラントにおける咬合採得の方法について解説する。

【少数歯中間欠損症例】
少数歯中間欠損に適用されるインプラントの上部構造製作用の咬合採得は、クラウン・ブリッジの咬合採得に準じて行う。

【遊離端欠損症例の場合】
原則として可撤性義歯における咬合採得と同様に行う。この際に用いる咬合床はインプラント支持とする。

【多数歯欠損症例の場合】
多数歯欠損症例における咬合採得は、すでに装着されている補綴装置の咬合・顎位の再現を目標とする。具体的には、インプラントを用いない多数歯欠損における咬合採得法と同様に、咬合床を用いて咬合採得を行う。

咬合床を用いた咬合採得の注意点

咬合堤のワックスは十分に軟化し、軽度な噛み締めで咬合採得が得られるようにすることが必要である。それを守らない場合、咬合高径の高い補綴物が制作される。

咬合採得に用いる材料

咬合採得に用いる材料としては、以下の材料が挙げられる。

  • ワックス
  • シリコーンゴム
  • 酸化亜鉛ユージノール(ペースト)
  • ポリエーテルゴム
  • 速硬性の石膏

「咬合採得」の文献・書籍など

【読み】

こうごうさいとく

【文献・書籍】

『歯科補綴学専門用語集 第5版』, 公益社団法人日本補綴歯科学会, 医歯薬出版株式会社, 2019.
『クラウン・ブリッジ補綴学 第4版』, 佐藤亨ら, 株式会社学建書院, 2014.
『無歯顎補綴治療学 第3版』, 市川哲雄ら, 医歯薬出版株式会社, 2016.
『スタンダードパーシャルデンチャー補綴学 第3版第1刷』, 藍稔ら, 株式会社学建書院, 2016.
『歯学生の口腔インプラント学 第3版』, 高森等ら, 医歯薬出版株式会社, 2014.

著者/監修者情報
歯科医師

歯科医師。文系大学卒業後、歯学部に再入学。歯学部卒業後に歯科医師免許を取得したのち、歯科医師として勤務する傍らワンディー株式会社でライターとして勤務。

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