歯科医療、すべての歴史を「365日」で表してみた

歯科医療、すべての歴史を「365日」で表してみた

1D編集部
2022年1月16日
歯科医療のすべての歴史を、「365日 = 1年」というスケールで表してみると、意外な発見がある。歯科医療史を身近なものに感じていただけたら幸いである。

歯科医療のはじまり、元旦0時

歯科医療の歴史は、紀元前1700年頃にさかのぼる。歯科医療のはじまりは、エジプト医学『パピルス・エーベルス』での、歯痛や歯肉の炎症に対する薬物治療法に関する記述が初出であると言われている。同時期の『パピルス・スミス』には、脱臼した下顎の整復固定術についての記載もある。

エジプト医学は、インダス文明から生まれたインド医学と融合して、のちにヒポクラテス(B.C.4世紀頃)らを輩出したギリシア医学を形成することになる。

これを元旦・1月1日の午前0時0分に置いて、歯科医療史の主要なできごとについて振り返ってみよう。

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放映予定の1D歯科動画

    古典的な医学理論が完成

    ガレノス(A.D 129〜A.D 216)は、医学に関する膨大な書物を残した。彼の著作『ガレノス全集』は近代に至るまでの1400年間、医学の聖典として扱われた。もちろん現代の医学体系と比べると誤りも多いものの、自然観察では足りない概念を実験で補った点が今日でも評価されている。

    ガレノスによる歯科医療の記述は、歯の解剖の詳解や、歯痛は「歯自身の痛み」と「歯肉の痛み」に分けられること、う蝕、歯牙漂白法、抜歯、髄腔穿通法など多岐にわたる。髄腔穿通法は現在でも行われている感染根管に対する穿通法である。

    そんなガレノスによる古典医学理論の完成は、歯科医学の勃興から1900年後のことである。既に時刻は、7月6日の深夜1時20分頃になっている。

    中世ヨーロッパからルネサンスへ

    ルネサンス以前の中世ヨーロッパの医学・歯科医学は、学問的な発展が少なく、停滞期であったと言える。この時代、「歯抜き師」や「歯科施術者(Dentature)」という職業が存在したという文献は存在するものの、不明な点が多い。歯抜き師に至っては街の広場にいたという記述もある。この時点で、10月16日の20時30分頃。まだ記事の冒頭だが、年末になってきた。

    ルネサンスでは、前時代と比べ自然科学の重要性が提唱され、歯科医学も科学としての道を歩み始めた。特にレオナルド・ダ・ヴィンチ(1452〜1519)とミケランジェロ(1475〜1564)は、人体を表現するために解剖学を探究し、それが新しい医学研究へとつながった。ダ・ヴィンチの『解剖図譜』には、歯の解剖に関する詳細な記述もある。

    ルネサンス期における歯科医学者として、アルコラーニ(生年不明〜1460)とビーゴ(1460〜1525)が挙げられる。アルコラーニはペリカンという抜歯器具や、金箔充填について言及している。またビーゴは、う蝕をノコギリやヤスリなどで除去し、金箔充填をすることを推奨している。ビーゴは、ローマ教皇ユリウス2世に招かれ、金箔充填を施したと言われている。

    この時代は、床屋外科医(当時は床屋で外科的処置が施されていた)や歯抜き師が「抜歯」を標榜し、実臨床を行っていた。また、大道香具師やニセ医者など技術的・学問的裏付けのない者が歯科医業を行っており、混沌とした時代だったようである。この時代は、だいたい11月5日の午前中あたりだ。

    近代歯科医学への道が開く

    前出のガレノスは「下顎骨が2つある」と主張していたが、ヴェサリウス(1514〜1564)は下顎骨が1つの骨であることを観察した。ヴェサリウスは近代解剖学の祖であり、歯の解剖学にも多大な功績を残した。歯と骨を初めて区別したこと、歯髄腔が歯に対する栄養を供給すること、智歯抜歯における切開の重要性などが主な功績である。しかし「歯は一生にわたって萌出し続ける」「永久歯は乳歯の歯根から発生する」などの誤った見解も多かった。

    この時代は、コロンボ(1516〜1559)による歯根膜の発見、エウスタキオ(1502〜1574)によるエナメル質・象牙質の区別、レーヴェンフック(1632〜1723)による口腔内細菌の発見(それまでう蝕は "歯の虫" が原因と考えられていた)など、近代歯科医学に続く研究が花開いた。

    この時代の日本では、和歌山県で世界最古の義歯が発見されている。1538年4月に没した中岡テイのもので、木でできた全部床義歯であった。木床義歯は日本独自の文化であり、その後江戸時代の鎖国時代に職人による精巧な手作業によって独自の発展を遂げた。

    ルネサンス後の17世紀頃、近代国家が力を持つようになると、医療も国家により統制されるようになった。1685年には、ドイツ・ベルリンに良いて医術令が発布され、歯科医学の実施者にも試験による認定を受けさせることになった。同時期にフランス・パリでも歯科医師の試験が開始された(現実的には試験は形骸化していたとの指摘もある)。職業としての歯科医師の誕生である。これが、11月28日の10時45分頃の話だ。

    フォシャールの登場

    それから時は流れ、近代歯科医学の父、フォシャール(1678〜1761)が登場する。フォシャールは歯科医師を単なる歯抜き師から独立した職業としての立場を確立し、歯科医学自体の義務と歯科医師の仕事、その名称をはっきりさせた。

    フォシャールの『歯科外科医ー歯に関する論文(1746)』では、う蝕の切削や窩洞形成、部分床義歯・全部床義歯に関する記述がなされている。さらに、歯肉の疾患を予防するためには歯石除去と根面滑沢化が必要であると考え、予防歯科医学を主張した。歯科用ユニットが作られたのもこの頃で、彼による開発である。

    同時期の出来事としては、18世紀最大の外科医・ハンター(1728〜1793)による犬歯・小臼歯の命名(彼の私塾の門下生には天然痘ワクチンを発見したエドワード・ジェンナーがいる)、ボンウィル(1833〜1899)による咬合器の開発などがある。

    近代歯科医学の誕生、時刻は既に、12月14日の昼頃である。

    世界初の歯学部が設立される

    1840年、米国にボルチモア歯科医学校が設立され、卒業した者にはDoctor of Dental Surgery(D. D. S)の称号が与えられるようになった。これに続いて、1859年にイギリス・ロンドンにメトロポリタン歯科医学校、1867年にハーバード大学歯学部、1884年にベルリン大学に歯科医師養成学校が誕生した。

    日本においては、1890年に高山紀齋(1850〜1933)によって高山歯科医学院が創設された。高山歯科医学院は1899年に血脇守之助(1870〜1947)に譲渡され、東京歯科医学校を経て現在の東京歯科大学に発展している。

    現代歯科医学に続く研究が出現

    ブラック(1836〜1915)の名を知らない歯科医師はいないだろう。彼は独学で歯科医師となり、21歳で歯科医院を開業した。窩洞形成の標準的原則である「ブラック窩洞」があまりにも有名だが、歯のフッ素症(斑状歯)、抜歯時の笑気麻酔応用、予防拡大の概念など、さまざまな分野で近代歯科医学の確立に貢献した。

    レントゲン(1845〜1923)によるエックス線の発見もこの頃である。1895年のことだ。1年で表すと12月19日の深夜0時15分となる。レントゲンの発見からわずか8ヶ月後、ケルズ(1856〜1928)によりエックス線が歯科医療に応用された。

    一方その頃日本では...

    アメリカを中心に現代歯科医学に続く研究が出現していたこの頃、日本は江戸時代であった。鎖国政策の影響からか、お歯黒や木床義歯、房楊枝など独特な文化が栄えた。歯痛が起こると、民衆は祈祷や厄除けに頼った。当時、浅草寺などの人が多く集まる場所には、歯痛に対する薬や歯磨剤、抜歯や木床義歯などを売る商人が存在していたという。

    1867年、明治新政府が誕生し、日本は近代化に舵を切ることになる。1875年には医務条例により医術試験規則が出され、小幡英之助(1850〜1909)が最初の歯科専門医となった。当時は身分上・制度上ともに歯科医師という職種は存在せず、医師の範疇で歯科医業が行われていた。しかし1884年、医業を行う者と歯科医業を行う者とが別の身分制度を確立すべき端緒が開かれ、医籍とは別に歯科医籍が誕生した。

    時刻は12月17日の深夜になっている。

    歯科医師法の公布をめぐる争い

    1899年、東京帝国大学医学部の関係者を中心とする明治医会は、医師法案を発表し、「歯科医師には本法を適用しない」とした。こうした医師側の情勢を鑑みて、当時の全国的歯科医師団体である大日本歯科医会は、独自の立場から歯科医師に関する特別法、すなわち歯科医師法を1904年9月27日に決定した。

    中心となって動いていたのは高山紀齋、血脇守之助、伊澤信平、広瀬武郎ら。一方の医師法案は1906年に第二十二回帝国議会に提出されたため、大日本歯科医会は歯科医師法案を急遽提出することを決め、衆議院に提出された。歯科医師法案は衆議院、貴族院において一部修正された上で、同年3月に通過成立し、医師法と同時交付された。歯科医師の身分を定める歯科医師法は、政府から与えられたものではなく、私塾や師弟制度から生まれたものであるというユニークな歴史がある。

    前述のように1890年に高山歯科医学院(現在の東京歯科大学)が創設されたが、1907年には中原市五郎(1867〜1941)によって共立歯科医学校(現在の日本歯科大学)が設立される。1911年には大阪歯科医学校(現在の大阪歯科大学)、1920年には東洋歯科医学専門学校(現在の日大歯学部)、1928年には東京高等歯科医学校(現在の東京医科歯科大学)が設立された。

    この頃の時刻は、12月22日の早朝あたりである。

    戦後、現代歯科医療の時代へ

    12月22日の午後には、さまざまな歯科医学に関する専門学会が誕生した。歯科医師法の制定や歯科医学教育体制の充実に伴う変化だろう。

    1902年には日本歯科医学会が創設され、1918年の日本歯科口腔科学会(現在の日本口腔科学会)、1926年の矯正歯科学会(現在の日本矯正歯科学会)、1931年の日本補綴歯科学会、1935年の口腔外科学会(現在の日本口腔外科学会)へと続いた。

    第二次世界大戦の終戦後は、GHQによる占領政策で医療制度は大きく変化した。当時の医師・歯科医師は戦時末期に急増しており養成期間も短期であったことから、その資質向上が課題となった。これまでは許認可のある大学・専門学校を卒業すれば無試験で医師・歯科医師の免許を得ることができたが、国家試験の合格が免許要件となったのもこの頃である。

    歯科衛生士法は、1948年に保健師助産師看護婦法とともに制定された。1年で表すと12月24日、クリスマスイブの朝である。1955年には歯科技工士法が制定され、歯科医師・歯科衛生士ともに歯科三職種の身分が明確化された。

    この頃のできごととして特筆すべきは、ブローネマルク(1929〜2014)によるオッセオインテグレーションの発見(1952)と、それに伴うデンタルインプラントの開発だろう。これがちょうどクリスマスイブからクリスマスに日付が変わる頃の話だ。

    歯学部の新設ラッシュが始まる

    1960年代に入ると、歯科医師不足の風潮もあいまって、全国各地で歯学部が新設されるようになった。最も新しい歯学部は1980年に開設された岡山大学歯学部と長崎大学歯学部である。両大学の開設は、1年というスケールで表すと12月27日の朝8時00分である。

    歯科医師臨床研修が義務化されたのは2006年だ。これは、12月29日の夜21時である。この日から現在を表す12月31日23時59分までのあいだで、歯科医師過剰問題の議論、アライナー矯正の誕生、全身の健康との関連に関するエビデンス蓄積などのできごとが発生した。

    紀元前1700年から受け継がれる歯科医療・歯科医学の歴史を振り返ってみると、昨今の医療技術の発展は凄まじいスピードであることが見てとれるだろう。現代を生きる歯科医療者として、日々知識やスキルのアップデートをしていかなければならない。
    1D編集部
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    1D編集部は、臨床経験のある歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士で構成されています。歯科業界の最新ニュースから歯科医療の臨床・学術情報、歯科医療者のためのライフスタイル記事まで、歯科医療の専門家の視点で、ただしく・おもしろいコンテンツをお届けします。

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    「歯科医師の年収は今後上がっていきます」。1Dの対談動画は、この言い切りから始まる。出演者は110秒の時点で「上がります!」と答え、そこから理由を3つに整理していく。画面の左上にも「歯科医師の年収が上がる3つの理由」という見出しが出て、以後は「歯科医師・診療所の減少」「患者数・歯科医療費は減らない」「歯科医療の市場拡大」と小見出しが切り替わっていく。ただ、この話を自分の手取りの予想として受け取ると読み違える。3つの理由は、同じ強さの根拠で支えられているわけではない。統計で確認できるもの、割り算の結果として出てくるもの、まだ文書の段階にあるもの――性質の違う3つが並んでいる。本記事では、どこまでが確かめられる話で、どこからが見通しなのかを分けて読む。「上がる」と言われているのは、誰の、どの数字か動画が最初に片づけるのは、「上がる」の主語である。出演者は「インフレだからではないですね」(120秒)と断ったうえで、「令和6年度の診療報酬改定で収載されたんですけど」(125秒)「それは勤務医とか歯科衛生士とか歯科助手さんとかの話ですよね」(135秒)と続ける。賃上げを目的に新設された評価料はあるが、それは院長自身の収入の話ではない、という整理だ。ここは一次資料で確かめられる。令和6年度診療報酬改定で新設された歯科外来・在宅ベースアップ評価料について、厚生労働省保険局医療課の説明資料は、賃上げの対象となるのは「主として歯科医療に従事する職員(医師及び歯科医師を除く。)」だと明記している(令和6年度診療報酬改定と賃上げについて)。歯科衛生士・歯科技工士・歯科業務補助者などの賃金を引き上げるための点数であって、開設者である歯科医師は制度上その対象に入らない。制度としてすでに「上がる」仕組みが用意されているのは、スタッフの側である。「歯科医療者の年収は上がっていく」(115秒)という言い方と「自分の年収が上がる」という受け取り方の間には、一段の飛躍がある。動画の3つの理由は、その飛躍を埋めるために置かれた議論だと読むと構造がつかみやすい。一つめ・担い手が減る――確認できる部分と、確認できない部分一つめの理由として画面に出るのは「歯科医師・歯科診療所の減少」(205秒)である。出演者は「『医師・歯科医師・薬剤師統計』という統計があるんですけど」(250秒)と資料名を挙げ、「歯科医師数でいうと2176人とか」(255秒)「だいたい歯科医師の2%ぐらい減ってるんですよ」(260秒)と述べる。この数字は照合できる。厚生労働省の令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計で、歯科医師数は105,267人、前回調査から2,176人・2.0%の減少。平均年齢53.0歳という点も「歯科医師の平均年齢って約53歳とかで」(285秒)という発言と合う(令和4(2022)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況)。さらに、動画公開(2025年8月)より後に出た令和6(2024)年の同統計では、歯科医師数は103,652人、前回比1,615人・1.5%の減少だった(令和6(2024)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況)。減少は続いているが、減り方は前回より緩んでいる。歯科診療所も、動画で語られた「今6万5千件台とかに突入したんですよ」(280秒)という水準をすでに下回り、医療施設動態調査の令和8(2026)年7月末概数で64,975施設である(医療施設動態調査)。「減っている」という向きは、一次資料でも確かめられる。一方、同じ箇所には確認できない話も混ざっている。出演者は「高齢化」と「女性歯科医師の増加」を合わせて「ダブルパンチ」(334秒)と呼び、女性歯科医師は男性と比べて「稼働率がちょっと下がるんですよね」(331秒)と述べる。ここには調査も出典も示されず、性別による働き方の差を前提にした推測になっている。本記事ではこの主張を採らない。統計で確認できるのは頭数の減少までで、「稼働量」がどう動くかは、それ自体が別に検証を要する論点である。二つめ・分母が減っても、分子が減らないなら二つめの小見出しは「患者数・歯科医療費は減らない」(215秒)。人口が減れば患者も減るのだから差し引きゼロではないか――「ニーズ側が減ったらトントンじゃね?」(400秒)という当然の反論に、出演者はこう答える。「人口の減りに対して歯科診療所に訪れる患者数って」「割と一定なんですよね」(410~420秒)。「患者数の絶対数は減るんですけど」(415秒)、「要は一人当たりの平均点が上がっているみたいな」(425秒)状態で、「トータルで考えると」「予算や医療費みたいなところは変わらない」(460~470秒)という見立てである。背景として挙がるのは、歯科医院が「健康な人も来るっていう場所になりつつある」(430秒)という変化だ。治療のためだけでなく、予防や管理のために通う人が増えれば、来院一人当たりの点数は上がる。分子にあたる歯科医療費が横ばいで、分母にあたる担い手が減るなら、「相対的に年収は上がるじゃんって話ですけど」(475秒)という結論になる。割り算そのものは筋が通っている。ただし出てくるのは全体の平均であって、個々の医院の数字ではない。出演者はこのあと「1990年代頭とかぐらいの水準になるんですよ」(485秒)「バブル末期ぐらいの水準になる」(495秒)と時期まで挙げるが、その試算の中身は示されないため、本記事では水準の話は扱わない。自院に引き寄せるなら、問われているのは「患者が何人来たか」ではなく「一人当たりで何をしているか」のほうである。三つめ・市場の拡大は、まだ点数ではなく文書の段階にある三つめの小見出しは「歯科医療の市場拡大」(570秒)。根拠として挙がるのは、「先々月ぐらいに公表された」(565秒)「『経済財政運営と改革の基本方針2025』」(570秒)、いわゆる骨太の方針である。そこに「いわゆる国民皆歯科検診みたいなもの」(580秒)が含まれており、歯周病と全身疾患の関連について「エビデンスが出てきてるってことは明らかじゃないですか」(590秒)と続く。ただし出演者自身が「僕も見てないのでちょっと分からないですけど(笑)」(535秒)と置いているとおり、この三つめは文書を読んだうえでの説明ではなく、報じられた範囲での見通しとして語られている。編集部で確認した範囲では、「経済財政運営と改革の基本方針2025」は令和7年6月13日に閣議決定されており(内閣府)、その歯科関連の記載として日本歯科医師会は「生涯を通じた歯科健診(いわゆる国民皆歯科健診)に向けた具体的な取組の推進」「歯科医師の不足する地域の分析等を含めた適切な配置の検討を含む歯科保健医療提供体制の構築と強化」などを引用している(日本歯科医師会)。方針に位置づけられていること自体は確かめられる。ただし、方針に書かれることと、点数が付くことと、実際に収入が動くことは、それぞれ別の段階である。一つめが統計の話、二つめが割り算の話だったのに対し、三つめはまだ文書の話にとどまる。出演者が「多分しれっとフェードアウトするんじゃないか」(530秒)という可能性にも触れているとおり、ここは確定した話として数えないほうがいい。「上がる」を、待っていい話として読まない動画の結論は、意外と威勢のいいものではない。「現状のパイでどうなるっていうのを予測するんじゃなくて」(645秒)「本当にでっかい施策で変えていく必要もあるぞ」(655秒)。画面には「『時代を作り上げるんだ』という主体的な努力が必要」(650秒)という大きなテロップが出る。市場が広がるかどうかは、担い手が何をするかにかかっている、という着地である。そのうえで出演者は、「小さい虫歯を見つけて削って詰める歯医者がいるので」(665秒)と言いよどみ、「『健康は口から作る』という意識で歯科医療に取り組んでほしい」(685秒)と述べる。行政の側に「歯科医師を抑制しろ」(610秒)という議論があるなかで「担い手もたくさん必要だ」(620秒)と言い返すには、その説明を日々の診療の中身で裏づける必要がある――という順番だ。これは出演者の立場からの主張であり、制度の決定を予測したものではない。タイトルは「【朗報】」で始まるが、中身は朗報の受け取り方の話だった。確かめられるのは、担い手が減っているという統計までである。その先の「だから一人当たりは上がる」は条件つきの割り算で、「市場が広がる」はまだ方針文書の段階にある。来期の計画をこの見通しの上に立てるのは早い。先に見ておきたいのは、全体の平均で起きていると言われる変化が、自院でも起きているかどうかのほうだろう。元動画を見る【朗報】歯科医師の年収は今後上がっていきます(2025年8月7日公開)
    1D編集部
    2日前
    「紙でも回っているから」で、予約台帳を続けていませんか?――回しているのは仕組みではなく、受付に立つ人かもしれない

    「紙でも回っているから」で、予約台帳を続けていませんか?――回しているのは仕組みではなく、受付に立つ人かもしれない

    予約システムの話は、たいてい「便利そうだ」から始まります。1Dの対談動画「【歯科医院】予約システムを絶対導入すべき理由」は、そこから入りません。画面の章立てテロップで最初に出るのは「導入しない医院がある理由」です。導入を勧める回でありながら、対談はまず、入れていない医院の側の理屈を言葉にするところから始めます。
    対談が先に説明するのは、メリットではなく「入れない理由」
    出演者が挙げる理由は、意外なほど単純です。「紙の予約台帳で回っちゃっているからですよね」「回るからいっかみたいな」。実際、紙の台帳でも「回るっちゃ回るじゃないですか」と対談は認めます。そのうえで、入れない側の言い分として「いらないって思っている人も」いること、規模が小さければ「そんなに経営インパクトはないので」と判断されること、そして「めんどくさい」「分かんない」という感覚が残ることを並べます。
    ここは記事として重要なところです。導入しない理由が「知らないから」ではなく「困っていないから」だと整理されると、検討の問いが変わります。問うべきは「便利かどうか」ではなく、今の台帳で回っている状態が何によって成り立っているか、になるからです。
    紙でも回る。ただし、回しているのは誰か
    対談はその答えを、笑いながら一言で言います。「歯科助手さんや歯科衛生士さんが頑張ってるから」。後半でも「スタッフがみんな取ってくれていると思うんですけど」という言い方が出てきます。つまり紙の台帳が回っているのは、台帳の性能ではなく、人が差分を吸収しているからだ、という見方です。これは出演者の解釈であって、何かの調査で示された結論ではありません。それでも、院長が自院を点検するときの問いとしては具体的です。
    もう一方の軸は、人が頑張っても残るものです。出演者は「先生ちょっとこの前のやつ漏れてましたよ」と言われた経験を挙げ、前日や「もう1週間前とか」の連絡は「紙じゃできないので」と述べます。「僕も絶対忘れちゃうんで」という自分の患者としての感覚も添えられます。期待されているのは、来なかった人を責める仕組みではなく、「来ていなかった人がリマインドによって来る」という取りこぼしの回収です。待たせ方や遅刻への対応は、この回では扱われません。
    「ペーパーレス」と「DX」は違う、と対談は線を引く
    中盤で、対談は自分たちの話に注釈をつけます。画面には「ペーパーレスとDXはちょっと違う」という言葉が出ます。紙をやめて画面に置き換えただけで「何の連携もできない」なら「それDXって言わなくない?」「それじゃあんまり意味ないですよね」というわけです。
    では何が違うのか。対談が例に出すのは、予約に「何の治療をしたとか」の記録が紐づく状態です。気をつけたい患者に「カルテにマークとかつけていた」、しかも「隠語にしている」という院内の工夫が語られ、それを人の記憶や符丁ではなく、いわゆるサブカルテや患者管理(CRM)として持つ、という整理になります。出演者は「その考え方は結構一般企業だと当たり前」だと言い、連携が生まれると「新しい提案ができるみたいになった」と続けます。
    もっとも、ここで言われる「提案」は自費の販売の話にも触れています。本記事はその是非には立ち入りません。記録が次回の判断材料になる、という範囲で読むのが妥当なところです。
    おすすめの製品は出てこない。出てくるのは機能の条件
    この回のもう一つの特徴は、具体名を出さないことです。出演者は「ここでおすすめの予約システムみたいな」話はしない、と明言します。理由も率直で、「角が立つし」「これがいいとかって全部見比べたことないし」。代わりに示されるのが、章立てテロップで「これは外せない必須機能」と見出しのついた条件です。
    挙がるのは三つの方向です。患者情報と「顧客管理的に連携ができるもの」。大きなテロップで出る「LINEでリマインドできる機能はあるべき」。そして、ホームページにウェブ予約の入口がある場合に、空いている枠を含めて「予約状況を一括管理できる機能があると良い」こと。最後の点について出演者は「アポ帳が患者側からも見える」状態だと言い換えます。加えて、選ぶ側の留保も置かれます。「あんまり使いにくいものを導入したくないじゃないですか」「コストバランスは考えるべきだと思うんですけど」。
    製品名が出ない以上、この回は比較表の代わりにはなりません。使えるのは、自院が何を解決したいのかを先に決めるための項目として、です。
    費用の話は最後に出てくるが、回収の計算は示されない
    費用に触れるのは終盤です。出演者は月々の負担感に言及したうえで、「計算はできないですけど」と前置きし、患者側の使い勝手の向上まで含めれば「十分元は取れそうですけどね」と述べます。前半でも「投資に対してそこまでの不利益性はなさそうですよね」という言い方が出ますが、同時に、規模が大きくなければ回収できるかどうかが変わる、という指摘も置かれています。
    本記事では、この回で挙がる金額も普及率の数字も書きません。金額は出演者がその場で口にした体感で、回収の計算は本人が示していないと述べているためです。普及率についても、出演者自身が「民間の調査しかないんですけど」「公式的な統計ではないんですけど」と断っており、調査名も年次も示されません。確かめられるのは数字ではなく、順番のほうです。紙で回っているなら、まず誰の手数でそれが成り立っているかを見る。そのうえで、前日の連絡と記録の引き継ぎを人の記憶から外せるか考える。製品を見比べるのは、その後でも遅くありません。
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    元動画を見る(2025年8月14日公開)
    1D編集部
    3日前
    「口コミを増やす方法」を探していませんか?――対談が先に分けるのは、低評価をなくす話と、高評価を増やす話

    「口コミを増やす方法」を探していませんか?――対談が先に分けるのは、低評価をなくす話と、高評価を増やす話

    口コミの評価を上げたい、という相談は、たいてい「どう増やすか」の話から始まります。1Dの対談動画「歯科医院が口コミ高評価を獲得するための戦略とは」は、そこから入りません。画面に出るのは「高評価を増やす」と「低評価をなくす」という二つの言葉で、対談はまずこの二つを分けます。どちらも星の数を動かす話ですが、向き合う相手が違うからです。
    星の数が重いのは、患者が探す場所がそこにあるからだ
    対談が重要性の根拠に置くのは、患者の探し方です。出演者は「飲食店とかでもとりあえず見るじゃないですか」と前置きし、「みんなGoogleマップで探してますからね、歯医者とか」と続けます。画面にも「口コミ獲得は超重要」というテロップが出ます。「Googleに牛耳られてますからね」という言い方は出演者の表現ですが、議論の前提はそこで固定され、以降は「これは基本Googleマップの話なので」と範囲を限って進みます。
    もう一つ置かれるのは、一件の重さです。出演者は、書いた人が一人でも「結構めちゃくちゃ拡散性が高い」と述べ、「流されやすい性質はありますからね、人間」と付け加えます。そして「良いものも当然一緒で」「結構単純なものなので」と、負の方向にも正の方向にも同じ力が働くという見方を示します。ここまでは、評価を上げたいという話ではなく、評価が効いてしまう理由の説明です。
    対談が最初にするのは、「なくす」と「増やす」を分けること
    「どうやったら高評価を獲得できるんですか?」という問いに対し、画面には「高評価を獲得する方法」という見出しが出て、その下に「高評価を増やす」「低評価をなくす」という二つが並びます。順番としては、低評価の側が先に扱われます。
    分ける理由は、中身が違うからです。低評価には、診療への不満だけでなく「事実無根だったりとか」が混じる、と出演者は言います。一方で高評価は、書いてもらう相手が目の前の患者です。同じ星の数を動かす作業に見えても、前者は投稿した誰かへの対処で、後者は日々の診療と伝え方の話になります。編集部の整理としては、この二つを一つの「口コミ対策」にまとめてしまうと、打ち手を取り違えやすい、という読み方ができます。
    低評価は、消す話ではなく、相手が誰かの話になる
    低評価について、出演者は「Googleの口コミって削除できないんですよ」と述べます。だから働きかける先は媒体ではなく「投稿した人に」なり、「内容証明を送るというパワープレイですけど」という手段や、「これはもう容赦なく弁護士の先生を使って訴える」という選択が語られます。出演者自身も「いかついですよね」と言い添えています。
    ここは、記事として踏み込める範囲が限られます。削除の可否や法的手段の見込みは、投稿の内容と媒体の規定、そして法律の専門家の判断によって変わります。動画内では請求できる金額にも言及がありますが、根拠となる事案や算定の説明は示されないため、本記事では扱いません。実際に動くときに最初に確かめるべきなのは、金額ではなく、その投稿が媒体の削除基準に当たるかどうかと、弁護士に相談すべき事案かどうかの切り分けだと言えます。
    付随して出てくるのは、書く人が偏るという話です。出演者は「結構関係ない歯科医院の口コミとか見ちゃうんですけど」と自分の習慣を挙げつつ、強い言葉を書く「キャラクター」はいる、満足した人は「わざわざ書かないですからね」と述べます。星の平均は患者の満足の平均ではない、という前提は、ここから読み取れます。
    「増やす」側の前提に置かれるのは、依頼の文面ではなく信頼だ
    では高評価を増やすコツは何か。問われた出演者の答えは「真摯に向き合って頑張るみたいなところしかないとは思うんですけど」でした。期待されたテクニックが出てこないという意味ではなく、画面にはこの区間で「患者さんからの信頼を得ることが前提」という一文が大きく表示されます。対談の結論に近い位置に置かれているのは、この一文です。
    具体例として挙がるのは、診療室の外の接点です。「夏祭りみたいなのがあったら出展したりとか」という例から、「地域とか地盤で評価を集めていくみたいな」という方向が示されます。出演者はこれを簡単だとは言わず、「なかなか難しいところなのかなとは思いますね」と留保しています。医院の努力で星が上がると保証する話ではありません。
    同時に、全員から高評価は取れないという前提も置かれています。日々の意見は「バイネームで言われていることもあるんじゃないかというぐらい」届き、「嫌いな人は嫌いですから」とも語られます。信頼を前提に置くという言い方は、評価をゼロリスクにする方法ではなく、動かせる場所がそこにしかないという意味だと読めます。
    「書いてくださいね」と「星5つけてくださいね」の間に、線がある
    依頼の仕方については、対談のなかで線引きが示されます。出演者は「『口コミ書いてくださいね』はややOKだったと思うんですけど」とし、「『星5つけてくださいね』みたいな」依頼は「買収みたいになっちゃって」と退けます。歯科治療をして何かを渡す例も、言いかけたところで自分で打ち切っています。
    「その他にテクニカルに高評価を集める方法」についても触れられます。ウェブサイト上で星5を付けさせるようなツールの存在が挙げられ、しかし「今言ったみたいなのは『ダメだろ』っていうことが分かると思うので」と続きます。代わりに語られるのは、「星1〜5まで選んでどうしますか?」と委ねる形と、「すごく良くしていただいてありがとうございます」という言葉から始まるやりとりです。出演者はそれを、要は「ポジティブな評価だったら評価お願いします」ということだ、と自分で言い直しています。
    この線引きは、感覚の問題ではなく規定の問題でもあります。Googleのユーザー投稿コンテンツ ポリシーは「評価の操作」として、「クチコミの投稿や否定的なクチコミの修正または削除と引き換えに、インセンティブ(金銭的報酬、割引、無料の商品やサービスなど)を提供する行為」を禁じています(出典:Google マップ ユーザー投稿コンテンツ ポリシー https://support.google.com/contributionpolicy/answer/7400114?hl=ja / ビジネス プロフィール側の案内では「虚偽のエンゲージメントと見なされ、固く禁じられています」と記載 https://support.google.com/business/answer/3474122?hl=ja )。また、事業者が第三者に依頼して投稿させる表示は、景品表示法のいわゆるステルスマーケティング規制(令和5年10月1日施行)の対象になり得ます。消費者庁は、広告には「企業がインフルエンサー等の第三者に依頼・指示するものも含まれます」としています(出典:消費者庁 https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/stealth_marketing/ )。
    なお、「満足した人にだけ声をかける」という依頼の仕方そのものを禁じる明文は、上記の日本語のポリシー文面では確認できませんでした。編集部としては、禁止・容認のどちらとも断定しません。確かめられるのは、対価を渡す依頼は明確に禁止されていること、そして対談の出演者自身が、星の数を指定する依頼には「ダメだろ」と線を引いていることです。自院で文面を決める前に、使っている媒体の現行規定を一度読み直すのが順番だと言えます。
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    元動画を見る(2025年9月11日公開)
    1D編集部
    2026年10月4日
    「開業すれば、思うように診療できる」で準備していませんか?――手に入るのは診療環境で、先に減るのは診療の時間

    「開業すれば、思うように診療できる」で準備していませんか?――手に入るのは診療環境で、先に減るのは診療の時間

    開業の理由をたずねると、返ってくるのはたいてい診療環境の話です。使いたい機材、やりたい治療、自分の判断で進められる診療。1Dの対談動画「「こんなはずじゃなかった…」開業後に後悔しないために知るべき3つの落とし穴」は、その動機を否定しません。ただ、開業で手に入るものと、開業後に減っていくものは別の種類だ、という整理から入ります。
    落とし穴は、診療の腕の話ではない
    対談が最初に置くのは、勤務医の開業動機です。出演者は「割と勤務医の先生で多いのが」と前置きして、「自分の城で自分のこの診療環境で好きに治療ができるという」期待を挙げます。そのうえで、「自分の診療の城を持ちたい!」という意図だとうまくいかないことが多い、と続けます。
    理由として置かれるのは、開業が診療の延長ではないという一点です。「会社はシンプルに起業しているわけじゃないですか」と並べられ、考えることは違う、と整理されます。出演者は「実際やってみたらそのギャップに苦しむ人は多い」と述べ、歯科医師は開業する人が7割ぐらいだという見方も口にします(この割合は出演者の発言で、動画内に出典は示されません)。
    そして画面には「歯科医師が開業前後に感じるギャップ」という見出しのテロップが出て、以降は「コスト意識の違い」「スタッフマネジメントの難しさ」「採用の難しさ」という三つの小見出しが順に切り替わっていきます。落とし穴という言葉は使われていても、避けられない罠の紹介ではなく、知っていれば驚かずに済むことの列挙として語られています。
    一つめ・コスト意識の違い――院長の時間は、診療以外へ流れていく
    「歯科医師は診療がメインじゃないですか」。そう確認したうえで、開業すると途端にそれ以外の業務が増える、という話になります。出演者が挙げる体感は具体的で、歯科医院の院長の業務時間のうち「7〜8割は歯科医師じゃなくてもいい業務に使っている」という言い方が出ます。これは出演者の見立てであって調査の数字ではなく、本人も待っている時間なども含めたトータルの話だと補っています。
    中身として挙がるのは、「非医療業務とまでは言わないけれども」という留保つきの、いろいろな雑務です。お金の扱いも入ります。診療だけに集中していたところから、「この材料は〇〇円だ」とかが自分で分かってしまう。勤務医のときは視界に入らなかったものが、開業後は診療のあいだも視界に入り続けます。「こんなはずじゃなかった…」が生まれるのは、診療が下手になったからではなく、診療に充てられる時間と注意の配分が変わるからだ、という筋です。
    二つめ・スタッフマネジメントの難しさ――「人間関係」で止めると、打ち手が出てこない
    二つめのテロップが出るのは、話題が人に移ったところです。歯科衛生士も歯科助手もほぼ女性で、若い人が多く、ライフイベントによる離職も起きる。そのうえで出演者は、人間関係が原因でみんな辞めていくという研究がある、という言及をします。
    対談がそこから一歩進めるのは、その人間関係が誰と誰のものかという点です。歯科衛生士同士ではなく、院長を指しているのではないか。「原因は院長にある」という言い方まで出ますが、研究の名称も出典も動画内では挙がらないため、ここは出演者の解釈として読むのが妥当です。
    いずれにしても、ここで必要になるのは診療の技術とは別の仕事です。「自分のCRだけで食っていけるという人は本当にごく一握り」で、マネジメントをしなければならない――「自分なりの診療がしたい」と意気込んで開業した人ほど、この部分が重く効いてきます。
    三つめ・採用の難しさ――採れる採用と、採れない採用は別物である
    三つめで対談が分けているのは、同じ「採用」でも性質が違う二つです。
    開業時のオープニングスタッフは人気の求人で、「多少条件が普通でも全然応募が来る傾向にある」と言います。問題はその後で、運営していくなかで必要になる欠員の募集では、応募が全然来ない。しかも開業した後すぐ辞めてしまうアルバイトや助手もいる、という話が重なります。新規開業という珍しさが効いているあいだと、一人分の欠けを埋めたいだけの募集とでは、応募する側から見た魅力がそもそも違う、という理解になります。開業前の採用がうまくいったことは、その後の採用の予告にはなりません。
    出演者は有効求人倍率が20倍を超えていると言われる、とも述べています。この数字の出典も動画内では示されていませんが、採用は本当に採れない、という言い方は対談のなかで繰り返されます。
    ギャップは、分解してから準備する
    対談の締め方は、脅しではありません。出演者は、開業前後で感じるのではないかというギャップを分解して、雑務が多い、マネジメントが大変だ、というところまで具体にしてから準備してほしい、という言い方をします。先に経験した側からは「開業前よりも想像を超えて大変だよ」という声も紹介されます。
    裏を返せば、分解できたものは準備の対象になります。診療以外の時間が何にどれだけ使われるのか、開業時の採用と欠員補充の採用をどう分けて考えるのか。開業の判断そのものを止める話ではなく、「こんなことあるんだな」を開業後ではなく開業前に済ませておく、という提案です。
    対談そのものは、具体的な手順書ではありません。出演者も、いろいろな問題が待ち受けていると伝えたうえで「頑張ってください」と送り出す程度の締め方をしています。それでも、開業で手に入るのは診療環境であって時間ではない、という一点だけは、開業計画のどの段階にいても自分の前提と突き合わせられるはずです。
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    元動画を見る(2025年9月25日公開)
    1D編集部
    2026年10月3日
    「開業はいつにするか」から考えていませんか?――先に動かなくなるのは、引退する側の日付だった

    「開業はいつにするか」から考えていませんか?――先に動かなくなるのは、引退する側の日付だった

    開業のタイミングは、たいてい手前から考える。研鑽を何年積むか、資金がいつ貯まるか、勤務先でどこまで任されるか。1Dの対談動画「歯科医師が後悔しないキャリアの歩み方」は、その順番を逆から置く。先に置かれるのは開業ではなく引退で、そこから手前を数えると、同じ一年の重さが変わって見えてくる。
    対談が先に置くのは、開業ではなく引退の話
    対談は「歯科医師も当然引退するタイミングがくる」という一言から入り、画面には「独立・引退のタイミング」というテロップが出る。いつ独立すべきかを論じる回でありながら、独立の話の前に引退の話が置かれている。
    出演者が挙げる引退の理由は、身体のことだけではない。「目が見えなくなるとか腰が痛くなるとか」に続けて、「それ以外に引退すべき理由」として「もう疲れちゃった」という言い方が出る。長く続いたスタッフが辞めた、個別指導が入った、子育てが終わった――そうした場面が並び、「じゃあセカンドライフを送ろう」という流れはよく聞く、と語られる。
    つまり引退は、ある日の体調で決まるというより、いくつもの事情が重なったところで決まる。出演者はそれを「なんとなくで開業して、なんとなくのモチベーションで独立してしまうと」という言い方と対にして置いている。決め方が曖昧なまま始めたものは、終わり方も曖昧になる、という含みである。
    引退の日付が動かないなら、手前の一年の意味が変わる
    この回の背骨は、中盤の一文にある。「つまり引退するタイミングっていうのは一定なので」。
    そこから先の計算は単純である。「歯科医師として稼働できる年数って限りがある」「65歳・70歳で引退するとしても、できる年数は限られている」。具体的には「35歳で開業して65歳で引退したら30年間しかできないわけですよ」と言う。だから「なるべく早めに開業した方が生涯年収は上がる」し、「ゴールを考えた上で開業のタイミングを考える」ことになる。
    この見方が効いてくるのは、途中の遅れをどう数えるかのところである。出演者は歯学部の留年を例に出し、失っているのは学費と生活費の一年ぶんだけではない、と言う。「留年することによって最後の一年が押し出されちゃっている」。終わりが動かないのだから、手前で一年遅れれば、削られるのは最も脂の乗った時期ではなく、最後の一年である。
    留年に限った話ではない。勤務先を決めかねて過ごした一年も、開業を見送った一年も、同じ計算に乗る。なお対談で挙がる留年費用の金額は出演者がその場で口にしたもので、大学や学年によって異なる。ここで確かなのは金額ではなく、押し出される先が決まっているという構造のほうである。
    それでも「早いほどいい」で終わらない
    対談は早期開業を勧めて終わらない。すぐに反対側の事情が置かれる。「自分のスキルとかいろんなことを身に付けないと開業できない」と考えれば「研鑽を積む期間」が要る。35歳で開業するなら勤務は10年ほどで、「10年で習得できるものがどれくらいあるのか」という問いが残る。
    出演者は自分の経験も挟む。久しぶりに支台歯形成をやってみたら「ガッタガタで『こんな感じだっけ?』って思って」、「できそうだなって思っていたけど、もう全然できない」。手は離れた分だけ落ちる、という実感である。
    結局、対談が置くのは答えではなく二つの向きだ。生涯年収で考えれば早いほうがいい。技術で考えれば積む時間が要る。出演者の言葉では「いつ・どこのタイミングでそのスキルを身に付けて、どれぐらいで開業するか・独立するか」を「設計していかなきゃいけない」。どちらかが正解なのではなく、両方が同じ一本の時間を取り合っている。
    引退の時期は、自分の都合だけでは決まらない
    引退の側にも、自分で動かせない要素がある。「ある程度アクシデントがない限りは」、60歳・70歳になれば30代ほど細かいものは見えず、「多少の衰えは出てくるのが予見される」。ここまでは自分の話である。
    もう一つは相手の話だ。「後継者がいるか・いないか」。出演者は「継がせることができる相手がいるのかみたいなのも、だいたい分かるじゃないですか」と言い、それを早く知ることの意味をこう置く。引退するタイミングと継ぐタイミングが同じでは「もうちょっと遅い」。「継ぐ相手がいないんだな」と気づいた瞬間から、「キャリアプランとしてそこは設計していかなきゃいけない」。
    引退の日付は自分で選べても、渡す相手が現れる日付は選べない。だから気づく時期のほうを早める、という順序である。
    閉めるのか、渡すのか
    医院をやめる出口は一つではない。対談では「M&Aという売却する」道と、「シンプルに親族なのか、関係性の高い勤務医とかに継承もしくは承継する」道が並べられる。
    出演者はここで、いま起きていることとして「歯科診療所は微減している」と述べる。この点は統計で確かめられる。厚生労働省の令和6(2024)年医療施設(動態)調査によれば、歯科診療所は同年10月1日現在で66,378施設、前年から440施設の減少である。歯科医院の数が一気に増えた時期に開業した院長が「だいたい今65歳とかに差し掛かっている」という対談の見立ては、この減り方と地続きに置かれている。
    だから閉めるのはもったいない、と出演者は言う。何十年も続けた医院には「そこに根づいている患者さん」がいて、「地域医療に貢献している医療機関が一つなくなってしまう」ことになる。「引退だ」と言って「閉める」と言えば、その患者はもう誰にも診てもらえない。
    ただし渡す側にも難しさがある。親族への承継は「やりやすい側面もあるけど、やりにくい側面はめちゃくちゃあるでしょうね」と語られ、継ぐつもりだった子がうまくいかずに辞めた例も挙がる。第一選択肢が子どもであること自体は否定されないが、そこで決まるとは限らない。
    対談の二人は最後に「引退もクソもない、まだ若造二人で話した結論ですけれども」と断っている。だから、この回から持ち帰れるのは引退の作法ではない。出口の日付が先に決まっていると仮に置いてみると、手前の一年ごとの意味が変わる――その置き方のほうである。そして出演者は、考え始める時期について「実はもうちょい早い方が」「早めに考えておかないといけない」と言い添えている。
    元動画を見る(2025年10月30日公開)
    1D編集部
    2026年10月2日

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